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霊恋【怪談・怖い話】


あの夜、人知れず事件が起きていた。

都会の片隅に佇む古びたアパートには、不気味な因縁が潜んでいた。独身男性の俺は、そこに住む機会を得たのだが、入居早々、奇妙な出来事が次々と起こり始めた。

ラップ音が聞こえたり、気配を感じたりする日々が続いた。しかし、俺は科学的な精神の持ち主で、そうした現象をただの気のせいだと片付けていた。だが、その考えは大きく覆されることになる。

ある日の昼寝からの目覚めは、異様な体験となった。突如、金縛りの現象に見舞われたのだ。目だけが自由に動くその状況は、まさに恐怖そのものだった。

そして俺の視界に映ったのは、長い黒髪をなびかせた若い女性の姿だった。その霊は俺の横に佇み、じっと見つめながら、腕や首を優しく撫でまわした。科学的な常識を疑わされるその出来事に、俺は戦慄を覚えた。

だが、その恐怖はやがて別の感情に変わっていく。

女性の霊は無表情ながらも、生前の若さが残る可憐な容姿をしていた。そして、彼女の肉体からは、甘酸っぱい好ましい香りが漂っていたのだ。その刹那、俺の内に湧き上がったのは、霊への劣情だった。下腹部の一部が痛いほどに屹立してしまうくらいの激しい生理的欲求だった。
40代の独身男が、なんと若い女性の霊に恋してしまったのだ。

だが、その有り様に気づいた霊は、
侮蔑の表情で「は?キモ」と呟き、俺の前から消え去ってしまった。
さすがに、傷ついた。

後日談

しかし、それは物語の終わりではなかった。自身の姿を嫌悪された俺は、自分の中に募る何かに気づき始めていた。それは、ただの生理的な欲求ではない、霊との交わりへの渇望だった。

俺は霊との接触を求め、様々な方法を試みた。古びた儀式書を手に入れ、呪文を唱えた。不気味な霊媒の力を借りようとした。そして、ついには自らの肉体さえ捨て去ろうとするほどの狂気に陥ったのだ。

しかし、そうした努力は実を結ばず、ただ俺の精神を蝕んでいくばかりだった。最後に残されたのは、人でなし扱いされた恥辱心と、霊への執着心だけだった。

俺の堕落はそこから始まった。

刃物を手に、次々と若い女性を襲った。彼女たちの肉体を手に入れて、そこに魂を宿らせようとするのだ。しかし、その試みは失敗に終わり、俺は罪の重さに気づいていった。

ある日、俺は自らの魂と引きかえに、あの世の存在と接触することになる。それは恐ろしく、痛ましい体験だったが、同時に真実を知る機会でもあった。霊は人の思うような存在ではないのだ。霊は人の理解を超えた、別の次元の存在なのだった。

それ以来、俺は目に見えない領域と距離を置くようになった。あの出来事は、科学の領域を越える驚くべきものがあると気づかせてくれた。俺は本当の恐怖を知ったのだ。


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