行ったことない地元神社【怪談・怖い話】
これは、職場の同僚から聞いた話だ。
彼は大学時代から都内で暮らしているが、実家は東北の片田舎にある。数年前、コロナが流行る直前のお盆の時期、久しぶりに実家に帰省したときのことだった。普段は電車で最寄り駅まで行き、そこから両親に車で迎えに来てもらうのが常だったが、その日は両親が外出中で迎えに来られないと言われ、歩いて帰ることになった。歩いて30分ほどの距離だったので、少しの運動になるだろうと気軽に考えていた。
道中、彼の足はとある神社の前を通った。幾重にも鳥居が連なる参道が印象的だったその神社は、彼の実家のすぐ近くにあるにもかかわらず、彼は一度も中に入ったことがなかったことに気づいた。子供の頃からその存在は知っていたものの、なぜかいつも避けて通っていたのだ。その日も、気にはなりつつも足を踏み入れることなく、そのまま実家に向かった。
実家に戻り、家族と夕食をとりながら、ふとその神社の話を親にした。「あそこの神社、行ったことないよな?」と問いかけると、母親も「私もない」と言い、さらに父親までもが「そういえば、俺も行ったことがないな」と答えた。父親は地元生まれで、何十年もその地域に住んでいるにもかかわらず、だ。そんなことがあるのかと、彼は不思議に思ったが、そのときは深く考えず、その話題はそれで終わった。
翌日の夜、彼は中学時代の同窓会に出かけた。昔からの友人たちと久しぶりに酒を酌み交わし、神社の話をした。「地元にある神社なんだから、誰か行ったことがあるだろう」と思ったのだが、驚くべきことに、誰一人としてその神社に足を踏み入れたことがなかった。彼も含めて約20人が、その神社を避けるかのようにしてきたというのだ。
彼はその後、神社がどうしても気になり、意を決して翌日に一人で行ってみることにした。鳥居を4つくぐり抜けて進むと、神社の本殿らしき建物が見えてきた。しかし、最初の鳥居をくぐった瞬間から、妙な感覚が彼を襲った。まるで重い霧が心に降りかかるような、言いようのない不快感と、居場所を間違えたかのような疎外感が増していくのだ。
鳥居をくぐるたびに、その感覚はますます強くなり、最後の鳥居に達したころには、彼の心臓は激しく高鳴り、視界が狭まり始めた。体全体が異様な緊張感に包まれ、目の前の風景が歪んで見えるほどだった。ようやく本殿の前にたどり着いたとき、彼はその異常な様子に目を奪われた。拝殿も賽銭箱もなく、代わりに古ぼけた建物が一つだけ建っている。正面に掲げられた木の板には「八」や「社」といった、何か読み取れない文字が刻まれていた。建物の中を覗くと、そこには多角形の骨壺らしきものと、白鞘の刀のようなものが安置されていた。
彼が恐怖を感じ、すぐにその場を立ち去ろうとしたとき、不意に「何をしている」と背後から声が聞こえた。振り返ると、作業着を着た中年の男が立っていた。男は驚いた表情を浮かべながらも、「ここにいるのはつらいだろう。早く帰りなさい」と静かに言った。彼はその言葉に従い、慌ててその場を後にした。鳥居をくぐるたびに、さっきまでの不快感が嘘のように薄れていき、最後の鳥居を抜けたときには完全に元に戻っていた。
彼はその後、家に帰り落ち着いてから、あの神社がただの神社ではないのではないかと考え始めた。あの場所は「神様」を祀っているのではなく、何か別の「よからぬもの」を封じ込めているのではないかと。そして、その場所に近づかないよう本能的に避ける結界のような力が働いていたのではないか。男が結界を張った人物なのか、それともただの管理人なのかはわからないが、彼は今もあの神社に近づくことを避けている。
「二度と関心を持たない方がいい」そう直感したからだ。
[出典:126 :本当にあった怖い名無し:2023/03/07(火) 22:51:48.37 ID:Q1vEET1X0.net]
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