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【まとめ】妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?【語り継がれる話/2013年7月~2016年3月】144,202 文字


妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?

6 :1:2013/07/17(水) 21:49:47.00 ID:AtSO6Bij0

22歳男。中卒、身長174cm。
まだ駆け出しで、流派は一応「搬山」ってやつ。
顔はイケメンだと支障が出るから、ブサメンよりのフツメン。
童貞。これもそっちのほうがつごうがいいから。

うちの実家、田舎だったんだけど。
小さい頃、一回変なのに憑かれて、退治しに来たのが俺の先生にあたる人。
うちの家族ほとんど死んじまったから、先生に引き取られて今に至る。
先生は京都大学の文学部の考古学専門だったらしいけど。

月収はとくにない。たまにお寺とか神社とかからい依頼来て。
それで見積もって、お金もらってる。

まぁ、大体一回くらいで100~300万。やばいヤマなら1000万以上は、いくね。
でも、そういうのって基本2、3ヶ月くらいに一回しか来ない。

妖怪って本当はあんまり河童とか、天狗とかみたいにカテゴリされてなくて、全員が全員ちがうものなの。
だから、その場に合わせて対策考える。

うちの流派はどっちかというと結構無理やりに解決するのが多いかな。
他とかだと風水とか陣とかやるとこもあるけどね。

例えばこの前の先生のした仕事で、わるい座敷わらしみたいなやつ退治したんだけど。
お札ぺたぺた貼って普通に家燃やしてたww
まぁ、効果は早い分乱暴なんだよ。

妖怪の漫画とかだと。結構そういうのとは交流できたりするけど、実際そんなことはない。
ほとんど自分の寿命をお金を交換してるようなもの。

ちなみにお札とかなんだけど。
自分たちで作ってるわけじゃなくて、徳の高い偉い人にお願いしてる。
めっちゃたかい。

妖怪っていうと、京都、出雲、遠野のイメージ強いけど、表現しずらいけど、そういう場所にいるのは昔、時の天皇がちゃんと陰陽師とか通して契約したやつだと思う。

外国とかだとよく王朝が変わったりするけど、日本はほとんどずっと天皇家なのはそのため。
天皇の権威がないとかなりヤバいことになるらしい。
実際、仕事するときは、天皇の写真もってるwww

他にもいろんな場所にもいるよ。大抵そういうはぐれメタルみたいなやつが危険。

たぶんやつら敵って概念ないのかも。
悪いやつは害虫みたいなやつで、ただそこにいて悪さをするw
悪意とか感じたりするかもだけど、それはあくまで習性の一環。
昔だと式神様とかそんな感じのやつに手助けしてもらっていたらしいけど、最近はそういうのができなくなってる。
一番大きな原因が、天皇家が契約の更新みたいなのをしていないから……
っていうかできなくなった。
結構戦争でいっぱい人死んで、そういう分化が途切れちゃったんだろうね。

妖怪と神社は、関係しているところは関係しているよ。
お稲荷様だけど、ウィキペディアに結構詳しく書いて合うよw
びっくりするほどね。

それ関係で思い出したんだけど、九尾のキツネいるじゃん。あれって悪いきつねの代表格みたいなもんだけど。
描写を見る限り、どうしてもいいきつねのはずなんだよなぁ……

うちらは、陰陽師とはちょっとちがうかも。
そっち系の流派の人はちゃんと理屈があって、こうしたら、こうなるから、こうするべき的なものがある。

でもうちはもっと乱暴で、ただ、今までの経験でこうすればよくなるよ!確信はないけど!みたいな感じ。

では、始めます

書きだめとか一切ないからご勘弁。

あと、いろいろこっちの都合もあるから隠す部分も多いかな。
中卒だからいろいろ言葉おかしかったらごめん。

多分いまから2、3年前くらいの話かな?

その時も普通に師匠に仕事あるって言われて、ついていったんだけど。
場所は某県で、太平洋側の島の話。
島といっても、結構近くて、橋がつくられる計画とかもあったらしくて、宿とかたくさんあった場所だった。
まぁ、一回したいってないから、今はどうなったか知らんが。

事前に師匠から話を聞く限り、あまりやっかいなヤマでもなかった。
まぁ、よくある系の、家になんかいるみたいな感じのやつで、

・布団をだすとよく獣の毛みたいなのがはさんである。
・屋根裏からトントンと足音みたいなのが聞こえる。
・いろいろ調べたけど、何も出てこない。
・子供が夜トイレに行くときに「へんなもの」をみた。

……みたいなものだった。

その家はかなり古いもので、戦争の間の空襲からも生き残ったという、すごい物件だった。
相談のルートはよくわからないけど、その島の漁業組合みたいなのがあって、そこの歳とった人から紹介されたみたい。

その一家の構成は子供一人と、その親、そして、半身不随で迷信とか、かなり信じてるおじいちゃんの4人だった。

4人にしてはすこし広い家だったんだけど。

まぁ、こんなもんかと、現地に到着したらさっそくオウチしらべ。
一周して俺は特に何も感じなかったんだけど、先生はどうおもったかしらん。
とりあえず、布団に挟まってた獣の毛とかをみせてもらったんだけど。
俺の知識的ではそれだけじゃあやっぱり何とも言えなかった。

でも、先生の見立てでは、その動物の毛が毛女郎に似たなにかだっていわれた。

まぁ、さっきも言ったように、妖怪は種類なんて存在してなくて実はみんな違うんだけど。
でも、いちおうこんな感じのものかなぁ?みたいな経験則で、むりやり色々分けてるみたい。
そんでその毛女郎ってのは昔の風俗。遊郭だっけ?によく出てくるやつで、子供が「へんなもの」といったやつは一応ヒト型という話もあったから。
先生はその線で進めることにした。

それで、その毛が誰の布団によく出るとかそういうのはないのか?って聞いたら。
どうやら、おかあさんの布団からよく出てくるらしい。

あ、ちなみに布団にどんな感じについているかというと。
猫とか犬とかがソファ荒らした後、毛がたくさんついているって感じかな。

でもその妖怪って風俗に多いんですよね?って先生に小声で聞いたら、
「依頼主のそこら辺はあんまり詮索するな」っていわれた。
その家が悪いのかどうかわかんないんだけど。
その時点で、もしかしたら、って考えが浮かんだ。

とりあえず、こういう系の妖怪は駆除するのは簡単だけど、すぐに戻ってくるという厄介な奴だから、まずは、駆除。
そんでそれから戻ってこないようにするための措置、ってだんどりになった。

まずは家の四方に縄で囲んで、東南側をあけておく。
理由きかれてもよくいえないんだけど、まぁそういうもんだと思ってくれ。
そして専用のお香みたいなのをたくさんつけて、家をもくもくとさせる。
一通りお香がたき終わったら、ロープに火をつけて、ゆっくりと燃えて一周するのを確認する。
燃えきれば妖怪はでていったことになっているらしいんだけど、その日は素直にでていってくれなかったらしい。


なので、少々めんどくさいことになった。

妖怪と幽霊の違いは、妖怪のほうがあまりしつこくないっていうところなんだけど。
しつこい場合は大抵何か理由があるから。

そういう場合、一番手っ取り早いのは家をヒャッハー!すればいいらしいけど。
もちろん、その時はそれができなかったから。
歌?みたいなのを歌うことにした。

歌の歌詞は企業秘密だからいえないけど。
大体の意味合いは、
こんにちは!陰陽師のなになにのすじをうけついだ何代目なになにです!
昔きちんと天皇との契約のうんぬんを知っている。ナのある主なら名前教えてっちょ。
まぁ、おしえてくれないとしてもいいさ。でもここは人間の住むところだから、出ていってくれないかな?
もちろんタダでとは、いわないから、なんかあげるよ。
おねがいしますよ、おねがいします。
……のようなやつだ。

この歌を歌うのは決まって夜っていう規則があるんだけど、それも理由はよくわからない。というか多分先生もその歌の意味を完全に把握してないと思う。

歌い始めてからすこしして、俺的には耳鳴り?みたいなのがして、屋根裏のほうから軽くとんとんって声がした気もした。
そんで歌っていうか詩ていうか、それが中盤のあたりになって、俺は部屋の電気全部消して、蝋燭を部屋の東側につけた。

先生が歌ってたんだけど、そのろうそくが消えるまで歌った。
消えるっていうのは蝋燭の火が最後まで燃えて消えるって意味じゃなくて、なんか急に消えるっていう意味でねw

あ、忘れてたんだけど、その間、一家はどっか別なところに泊ってもらった。

蝋燭が消えると、先生も歌うのをやめた。
辺りはシーンとなるんだけど、なんていうかな……生き物みないなものの息遣いがひとつ増えた気がした。
そして、そこで俺の仕事が来た。童貞であった俺の。

簡単に言うと自慰行為をした。
そんで、放出したものを特製の紙に包んで、それを燃やさないように気をつけつつ、火であぶりながら、外まで持って行った。
その間、先生は家の周りにまた縄で囲い玄関のほうだけ開けておいた。
そして、俺が出ると、その縄を完全に玄関も囲むようにして、縄をしめて、『締め切った』という。

俺はそこで放出液をを燃やした。

さらに、夜風にさらされながら、そこでもう一発抜いた。
まぁ、普通2回くらいなら、なんとかなるんだけど、その時は結構俺はヘトヘトになった。

短いけど妖怪駆除は大体こんな感じかな。
すまんが、いくつかの過程は隠させてもらった。

あの家だけど、奥さん浮気してたんじゃないかなぁとか、帰りに先生と話した。

わりと安全だったヤマで、お駄賃もそんなすごくなかった一件。
でも、射精したのが、かなりいまだに印象に残ってる。

よし、時間できたからじゃあ少し長めの話でもしようかな。

94 :1:2013/07/17(水) 21:51:15.00 ID:ARiZHcLV0


俺がなぜこの仕事を始めたかって話をw
まぁ、前半はほとんどおれのおじいちゃんの話だから、俺が直接かかわるってるって言うのはないんだけど。
後半は俺につけが回ってきた感じの話。

うちのじいちゃんの小さい頃の話なんだけど、戦争で空襲のため、小さい子供とか女とかは田舎に疎開されてたじゃん?
俺の爺さんその時は12歳か13歳くらいで、疎開のために、じいちゃんの父方のばあちゃんの家に疎開した。

じいちゃんはどっちかというと結構ガキ大将気質があって、まぁまぁの都会そだちだったんだけど、すぐに田舎に慣れて色々友達もできたりした。

戦争中ってこともあって、あんまりたくさんご飯が食えるわけじゃなかったし、よく友達とかといっしょにそこら辺にいるウサギとか、タヌキとかを捕まえて焼いて食べたりしていたらしい。

捕まえ方は、いろいろあるんだけど。
おじいちゃんたちは地元の猟師がよく使う動物の足を挟むあのでっかい挟みみたいなヤツを何個かかってに回収して。
それをまた設置直してたらしい。

子供は山の中に入るのは危険だって禁止されていたんだけど。
そもそもその時代、働ける男はほとんど軍隊にいったし、見張る人もいなかったから、畑仕事を手伝っているとき、抜け出せば簡単に森に入れたりもした。

じいちゃんは、よくいえば活発的な奴だったらしく、畑の仕事ほったらかしてヤマにいって遊んでいた。
もちろん帰るとばっちゃんに叱られていたけど、それでも懲りずに、よく山に入って遊んだり、たまに動物を捕まえてBBQしてた。

それは9月あたりの話だったらしいんだけど、ある日、じいさんがヤマに入り、ついでに仕掛けた罠に動物がかかってないか確認しに行ったら足の挟まれたでっかいねこをみつけた。
毛の色は赤が少しかかった感じだったらしい。

じいさんまた肉が食えるっておもってかなり喜んだんだけど。
その時後ろから足音みたいなのがきこえた。

後ろのほうを見るとやってきたのは村に残った数少ない猟師のおっさんだった。
そのおっさん、かなり性格悪いやつで、たまに子供のとった獲物とか、子供がとれるわけがないだろとかいって、勝手に奪っていくいじわるのやつで、ヤマで遊んでいるのをみられると、よくちくられたりもした。

じいさんは「うわ、やなやつがくる。あいつこの猫見かけたら絶対またとっていかれる」と考えた。
あんな奴にあげるくらいならこの獲物逃がしたほうがいい。
そう判断したじいさんはねこに仕掛けていた罠を外してやると、っしっしって猫を驚かして、逃がそうとした。

すると、ねこがじいさんが殺す気がないとわかると、まるで感謝するみたいに、じいさんのほうをうるうるしためで見つめて、そのまま林の中に逃げて行った。

そんで意地悪なおッさんがやってきた。

「おい、何か見なかったか」

「ねこがいたけど、あんた来たから驚いて逃げてったよ」

みたいな感じに話して、おっさんは猫は怪我してそう遠くに逃げられないだろうとふんで、急いで猫を追いかけて行った。

じいさんも、その日はそれで家に帰った。

それから一ヶ月くらいたって、旧暦でいう10月、つまり神無月のころになった。

まぁ神無月はみんなもしってのとおり、神様たちが出雲とかに向かうころなんだけど。
大抵の妖怪とかは、そんなにくらいが高くないから、人間でいう正月みたいなもので、妖怪たちであつまったりしているらしい。
表現がかわいいかもしれないけど、もっとおどろおどろとしたもので、昔の人間なら旧暦の10月はあまり山に入りたがらないとかそういう話もあるみたいよ。
俺も入りたくない。
でもじいさんはそういう迷信を一切信じてない人間で、やっぱり山に入ったりしていた。
でも、その頃になると、少しだけ雪が降ったりしていて。
じいさんはばあさんから危ないからもう山に行くなって言われてたんだけど。
じいさんは最後に一回だとおもって、やっぱり山に入って行った。

そんでじいちゃんが森から帰ってきた次の日。

旧暦の10月だから実際はたぶん11月とかそんくらいだと思うし、かなり寒かったんだろうけど。地面には雪も積もってて、着こんでいてもしばらく外に立っていればそこ冷えする感じだったのは簡単にわかるよね。

そんなに日に急にうちのじいちゃんはまるで狂ったかのように真っ裸で、村のゆくの積もった畑あたりで狂ったかのように高笑いしながらごろごろしはじめた。
もちろん、村の人たちもすごいとめたんだけど、狂ったじいちゃんの力が異常に強くて、3、4人の大人でもとめることができなかった。

村の人たちはじいさんがよく山にいっていたのは知っていたし、暴れまわるじいさんをみてやっぱすこしこわくて、なんかヤマヒジリとかオゴリ様とかそういう系にたたられたんじゃないか、とか迷信の老人たちが言い出して、しかたなくじいさんを囲んでただ見ているだけだった。

しばらくして、医者をよんできたんだけど。
暴れるじいさんをみることなんてもちろんできなくて、じいさんのおばあちゃんが自分の孫がこんなことになるなんてと泣き叫びまくって、結局かわいそうに思った、大人たち総がかりでじいちゃんを抑えて、縄で縛りつけて部屋まで運ぶことにした。

そこで医者さんとかいろいろ調べたけど、やっぱり何もわからないってことになって、医者さんの知り合いならなんとかできるかもって話で、その人を呼ぶことになった。

まぁ、呼ばれたのがそっち関係の人でさ。
とりあえずじいさんの様子を見た後、少し考えたら
生姜をゆでて作った生姜汁を大量に作らせて、その中に塩大量にぶっこんで、じいさんにのませた。

そのころのじいさんは、一応布団の上に縛っておいておいたんだけど。
顔色寒いからか真っ青なのに、汗はだらだらたれていた。

じいさんのことが心配だったばあさんはその対処法聞くとすぐに実行して、生姜汁塩たくさんをごくごく無理やり飲ませた。

するとじいさんは突然目をまん丸にして体を起こすと、わっと、吐き始めた。
でも、出てきたものは消化液とか、たべものの消化されてないものとかそういうものやなくて、まっくろいどろっとした黒い物体だった。
あまり水分とかなくて、ものすごい悪臭がした。

呼ばれた人は、それに火をつけてもやした。
すると、じいさんは弱弱しくなりながらも、正気をとりもどした。

ちなみに生姜水塩たっぷりは割とお勧め。
みんな墓地とかいったあとは飲むといいよ。

生姜水塩たっぷりは吐き出さないといけないのかなぁ。
一応指突っ込まなくても吐ける体質だから出来なくないけど。

じいさんが目を覚ますと、呼ばれた人は淡々と、じいさんに昨日今日で何があったのか聞いた。
じいさんは聞かれると、とりあえず前の雪が少し降ってた日に起きたことを話し始めた。
そろそろ雪が積もって山が完全に入れなくなるから、その前に最後に一回、
なんか獲物取れてないのかじいさんはこっそり山に入ってみにいったんだけど。
どうやらどの罠にっも獲物なんてかかっていなくて、少しやけになったじいさんは、夕暮れくらいまで探していたんだけど、やっぱりなかった。

しかたないと思ったじいさんは、寒かったし、腹も減ったしで、昼飯にかすめ取ってきた芋を焼いてくったら帰ろうと思って、割と樹の茂ったほうにむかった。

普段あまん魔理行かないあたりだったけど、そんなに遠くなかったし、冬だから樹が多いところのほうがまきとか見つけやすかったんだろうね。
すると、うしろから嬉しそうな声がした。

じいさんはびっくりした。そのころになると、少し空も暗くなったし、森の中で急に声掛けられるんだから。
一応じいさんも昔の人だからすこしは迷信的な部分もあって、一瞬悲鳴さえあげそうになった。

でも、すぐに後ろにいるのは誰なのか気がついた。
例のいじわるなおっさんだった。
おっさんは妙に親しげに方とかに手をおいたりして、夜遅いから、探しに来た。早く帰ろう。などといってきた。

じいちゃんはすこし、そのおっさんがなれなれしすぎて気持ち悪いと思い。その手を振りほどいて、帰る時は自分で帰る。
誰があんたと一緒に帰るか、とかいった。

おっさん、それ聞くと妙に焦った感じになって、もう遅いから、ヤマは危ない。早く帰ろうと無理やりじいさんをひっぱって、帰る方向に連れて行こうとした。

じいさんは普段おっさんと仲が悪かったし、毛嫌いしてたから、おっさんから逃げた。

山の中だったし、おっさんも割と年だったらしいから、じいさんはすぐにまくことに成功した。すると、急に体中が寒くなった。さっきまであんまり寒くなかったのに。
はしりまわって体が冷えたのか?と思って、これもそれも全部あのおっさんのせいだといらいらした。

そんで、やっぱ寒いし腹減ったし、疲れたので芋を焼くことにした。
どっか乾燥して、火を起こせる場所がないか少し探すと、林の中に、少し開いたところがあって、開いているせいか、雪が全部溶けていて、真ん中あたりにおれたでっかい樹があった。

樹はかなり古い感じで、中の部分は腐りきっていて、結構乾燥していた。
樹の根ものあたりには穴が少し開いていて、じいさんはこの穴ならちょうど火を起こしやすいと喜んで、そんなかに枯れた枝とか葉っぱとか詰め込んで、火をつけた。

しばらくすると、あなから黙々と煙が出てきて、じいさんがよっしゃ、あったまろう!とおもったとき。
穴から「ち、っち!」みたいな動物の鳴き声がした。よく見ると、穴のほうからネズミのような生き物がっしゅっとでてきた。煙でよく見えなかったが少し大きめのリスがそこにていた。

山の中ではリスなんてそんな珍しいもんでもないし、じいさんは山のいきものなら割と色々食ったことあったし、ちょうど寒くて腹減ってたから。
お、丁度ここに手ごろな肉が!ってきに思った。

だから、すぐにじいさんはその逃げようとしたリスをふんずけて殺すと、火の中にほおりこんだ。

すると、穴の中から「っち、っち」ってかなりたくさんのリスの鳴き声が聞こえてきて。
じいさんは結構たくさんいるな、こりゃ腹いっぱい食えそうだって思って、穴とかに樹の枝とか葉っぱとか大量に突っ込んで半分ふさぐ感じにして、逃げられないようにした。

10分ぐらいたつと、穴からの動物の鳴き声がやんだんだけど、その頃になって煙に乗って焦げた肉の匂いがしてきた。

じいさんは実際、ねずみとかも焼いて食ったことあったし、リスも焼いたことあった。でも、その匂いはどうもそのどれにも属さない、ものすごい悪臭のする感じだった。

おかしいなぁとおもったじいさんは樹の棒をつかって、すこし樹の穴の中をいじくりまわしてみると。なかから10何匹くらいの動物の死体が見つかった。

よく見てみるとイタチだった。
イタチは肉質がかなりわるくて、筋が多く、さらに匂いもきついから、猟師はおろか、少しくらい山に知識のある人間なら食べたりしないものだ。

まぁ、あとイタチはキツネとかと似て、よく化けて出るとか言われてるしね。
あんまりかかわりたくない生き物の一つなんだけど。

最初に逃げだしたやつはどうやらまだ子供のイタチで、まだ小さいから、一瞬リスに見えたようだった。
じいさんも、うわ、ついてねぇなぁ的に思って。
急に首の後ろあたりに寒気を感じて、気味悪く感じたのか、そのまま芋もすてて、家まで急いで帰った。

その話を聞くいた呼ばれた人。うちではこういう場合こういう人のことを「助搬」っていうんだけど。
助搬も「あ、これ無理やわ」的な感じになった。
それでも、ばあちゃんとじいさんがものすごい泣きながらお願いすると、まぁ、詳しいこともまだわからないけど、もし殺したのがただのイタチならさすがに人間をのろいころすほどのちからはない。
でも、こうなってくるってことは多分その樹の穴の中にはイタチのほかにもっと別な何かがいて、その何かが化けて出てるんだといった。

何度も言うけど、妖怪のいいところはしつこくないところなんだけど。
話に聞く限り、もし、その妖怪がもう殺された場合、怨霊として出るから。
専門外だし、生きていることわりから外れてるから。
まともに話し合ったり、天皇の権威うんぬんでなんとかすることもできない。

というか、もしイタチの妖怪の一種なら、イタチはかなり報復心がつよいから。
当の本人が死ぬだけじゃなく、周りにも危害が及ぶ。
助搬さんも自分に飛び火するのをおそれて、どうしても手伝おうとしなかった。

それでもいろいろお願いしていると、助搬さん自分一人ではやっぱり無理だから仲間を呼ぶので、一日待ってくれと言ってきた。

そして、その一日じいさんにとってわりと地獄だったんだけど。
黒い妙な物体を一日中ずっと吐いてるんだよ。

その間に、助搬さんは友人のこういう場合「?搬」っていうんだけど。
?搬のひとを呼んできた。
そして、次の日の夜に、2人体制で解決を試みた。

儀式の決行は夜中にやることになった。

なぜ儀式をやる時は夜中にやるか思いだしたんだけど、妖怪たちに対する最大限の尊重らしい。
妖怪も人間も平等で、妖怪退治っていうのも実はあんまり正しくなくて、ほんらいは妖怪と話し合って、示談させる民事裁判所てきな仕事なんだよね

俺がようかいを見下すと痛い目に合ったという話もあるんだけど、まァそれは、いいとして、夜になると、?搬と助搬は体中におしっこをたがいにかけます。
ここが少し妖怪退治のあれな部分だけど、神主さんとかは体を清めたりするんだけど。
こっちは逆に汚くしないといけない。理由は分からないw

部屋の明かりを全部消して、東側に蝋燭をたてる。そして、?搬さんは一定間隔をあけながら打楽器みたいなやつ(名前忘れたあんまり使わない)をたたきます。
助搬さんはその間、じいさんにひたすら軽くビンタし続ける。

楽器の音が部屋の中でやまびこみたいに反射していくんだけど、そのうちふっと蝋燭の灯が消えて、その反射する音がまるで、別のところから演奏しているように聞こえてきたら成功。

あとはレッツ交渉になる。

レッツ交渉タイムに入ると、じいさんは急に白目向いてがくがくと震え始めたらしい。
そして、楽器の演奏をやめ、消えたろうそくを部屋の真ん中に移し、蝋燭をもう一度つけた。ここでじいさんの薬指に針で軽くさして、ちょっと血を出したりとか、いろいろ細かいことがあるんだけどそこは省くね。

そんで、詩みたいなのを読むんだけど。
大体の意味は
来てくださりありがとうございます!
とりあえず、まずはゆっくり座って休みましょう。
最初はちょっと果物でもいかがですか?

ってそこらあたりで、どんと、じいさんはガタガタしながら強く手で床をたたいた。
これで半人前の俺でもわかるんだけど、この詩みたいなのは世間話みたいなもので、会社同志が交渉するときにやる、最近どうですか?みたいなものなんだけど。
これも聞いてくれないとなると、かなりヤバい感じになってる。
サジ投げて逃げたほうが絶対いいんだけど。
その場にいた2人はなんとか続けようとした。

いったはずだけど、こういうのってわりかし力技が大きいんだよね。

最初にでた提案が、とりあえずじいさんをやるから。
あと他の人間は許しておくれというもの。

ここでいうやるっていうのも実はアレなんだけど。

つまりは妖怪退治する人とか許してもらって、ここを去るまで我慢してもらって、こんな露骨に呪い殺すんじゃなくて、もっと、事故に見せかけた感じに殺せってこと。
まぁバレないように勝手にしていいよ。ってことなんだけど。

それをいうと今度は部屋の真ん中にあった蝋燭が消えた。
この蝋燭が付いている間は交渉をする気がまだあるっていうアレなんだけど。
消えたらまじでやばい。何が起きるかもうわからなくなる。

すると、じいさんがすごい嫌な声を上げながら暴れだした。

しかも、部屋の中にいやな気配がでてきた。具体的に言うと、狭い部屋の中に?搬と助搬とじいさんしかいなかったはずなのに、何十人もギュウギュウ詰めになっているかんじ?

しかたないから、いったん力技で無理やり離脱することに?搬と助搬は決めた。
助搬はあらかじめ用意したじいさんの名前が書かれていた藁人形に、じいさんの指ぶっさした針を刺して、じいさんに犬の血をぶっかけながら、部屋のそとにひきずりだした。
?搬はその間、激しく楽器をたたいて、送り言葉って感じの詩を読んだ。

まぁ、そんなこんなで、?搬と助搬はじいさん守りながらなんとか朝になるまでねばった。

そんで朝になると、またじいさんに生姜水飲ませて、今度は塩水で濡らしたしめ縄でじいさんを囲い。一夜疲れたじいさんはそん中ですやすやと眠った。

本当はこういう風に結構簡単に守れたりするんだけど。根本的な解決手段にならないし、縄は常に濡らしていかないとアウトになる。

なぜ最初からこれをやらないかというと、因果応報というか、もとはと言えば、最初に悪いのはうちのじいさんのわけで、少しはイタチ(の妖怪?)にいじめさせて、夜のときに「ほら、もう困難になるまでいじめたし、ゆるしておくれよ」的なことをおねがいしたかったんだけど、相手方の態度がものすごく悪くてそんな暇ももらえなかった。

じいさんが寝ているあいだ、?搬と助搬とじいさんのばあちゃんと村長とかと作戦会議をした。

とりあえず相手方はイタチの妖怪で、イタチ入道に間違いはなかった。
何々入道ってよくあるけど、この入道ってのは一種の敬称みたいなもの。
何々さんみたいな。

入道の意味は道行の入ったって意味で。道行ってのはまぁ修業した年数とか、修業した気合いとかそんな感じだと思ってもらうといいと思う。

仕事断るときとかたまに私の道行じゃあ、こんなこと無理ですって言ったりする。

そんでそのイタチ入道なんだけど、まぁ別にすごいイタチとかってわけじゃなくて、多分別物なんだけど、イタチとすごい仲良くて、じいちゃんが燃やした日は、神無月でみんなで集まってわいわいやってたら、じいちゃんに放火されて全滅。
……って感じだったかもしれない。

そりゃあ、イタチ側からしたら、自分たちなんも悪いことしてないのに、急に殺されたんだから、そりゃあマジギレするわな。

話し合いなんてできっこないし、たぶんじいさんを呪い殺しても、気は収まりそうになかった。
もしかしたら、村が全滅するかもしれないとかなんとか。

そこでみんなどうするべきか困ったんだけどそこで助搬が、じいさんから聞いた話だと、その日いじわるのおっさんにあったらしいから。
そのおっさん何か知らないか聞いてみようってことになった。

でも、そのおっさんを呼んできて、話を聞いても、前の日は山になんか登っていないというんだよ。

そこで助搬さんはピーンとなった。
どうやらこの件にはもっと別の何かがかかわっているみたいだから。
もしかしたら、そっちのほうから解決の糸口が見つかるかもしれないって。

そんでみんなでじいさんたたき起こして。
最近他に動物とかとかかわったことないか?
とか、不思議なことにあったことないかとか色々聞いたけど、特に思い当たる点がなくて。最後にやっとねこを助けた時の話を思い出した。

ここで猫について少し紹介だけど。
まぁ、みんな化物語とか猫娘とかすきかもしれないけど、多分一番有名なねこの不思議系はねこは9つの命があるとかだともう。
そんで猫系の妖怪の厄介なところはそこらへんにもあって、他の妖怪と違って一端つかれるとかなりしつこいんだよね。
まぁ、あんまり人間には積極的にかかわろうと思ってないけどね。

そんで?搬と助搬さんは色々考えた結果、そのねこに長命牌をたてることにした。

つまりはネコを神様として祭るわけだね。

そんで、もし、本当にその猫がかかわっているとしたら、猫的にはあれ?俺神様として祭られてる?なんでなんで?みたいな感じになって、見に来るはずだから。
その時に、その猫と交渉できないか試してみることにした。
まぁ、風水的な部分俺良くわからないから、はぶくけど。
とりあえずネコに牌をたてて、石とか、木とか並べて、ばあちゃんの家を簡易の神社みたいなの作る感じ。

それがやり終わったあたりになると、また日が沈んできて、いざ決戦、みたいな感じになった。

夜になって、また再び前日にやった作業をやるんだけど。
今度はじいさんをちゃんと縄で囲って守っていた。

そんで東側の蝋燭が消えると、その縄がものすごい勢いで乾き始めたから。
塩水どんどんつけたしていった。

周りは真っ暗になっるんだけど、部屋に息遣いというかそういうのが10何にもなって、空気がものすごく重くぴりぴりしたらしい。

そんな状況がつづいて。このままだと自分たちもやばいなと思ったころ、じいさんがむくりと体を起こした。その目は真っ暗の部屋だったのに。妙に光って見えたらしい。

ここで少しわかると思うんだけど。
こういう風に守ったりできるのは、相手側に悪意がある場合になるんだよね。
実は大抵の妖怪って無邪気に人に害をなしたりするから、無自覚でこういうのが効かなかったりすることも多い。

そこで?搬と助搬たちはキタコレってなって。
蝋燭を部屋の真ん中に移して、もう一回火をつけた。

火はものすごく揺れて、すぐにも消えそうだったけど、消えなかった。

光の都合かどうかわからないけど、部屋にはたくさんの人の影がうつったらしい。

そこで?搬さんは詩を歌うのをやめた。

さらに助搬さんは、じいさんの周りにあった縄とかも全部撤収して、初々しく2人で部屋から出た。

そんで、ばあちゃんにもし、明日の朝になってじいさんが生きていたらまずは一安心。でも、たぶんもうこの村から出たちはあまりしないほうがいい。
森にも二度と近づくな。
ネコの長命牌を家に祭って、毎晩その前に少し食べ物と、いっぱいのお水をおくこと。
その水を次の日じいさんに飲ませること。

などなど、たくさんの約束事を言い渡して。夜の間に急いで村を出た。

俺的には、この二人かなり賢いなぁとおもった。

もし、これでやっぱりじいさんが死んだら、多分あとは何もできないだろうし、次はもしかした自分たちがターゲットにされるかもしれないから。
まだ注意がじいさん周りに間にあるときに逃げたのは正しいし、妖怪はなのある主以外あまり関東に近づきたがらないから。
そこら辺まで行けば安全かもね。まぁ、戦争で空襲うんぬんで危険だけど。

そして、一夜じいさんの部屋にあった蝋燭はついたままで、朝になると同時にふっと消えたらしい。

まぁ、俺の爺さんの話はこんな感じだ。

その次が孫である俺の話になるんだけどね。

その後の話なんだけど、じいさんがちょうど中学入るあたりに戦争は終結。
じいさんの親は空襲とかでなくなって、結局じいさんはばあさんの家に残ることになった。
あのよる、一体その部屋で何があったのかわ誰も知らない。
妖怪たちが運動会してたのかもねwww

まぁ、ばあさんは割と金持だったらしくて、家は広かったんだけど。
そこで育った。
例のイタチの件もあってなかなか結婚相手見つからなかったんだけど。
割と年になってから村の女の人と結婚して、子供を産んだ。
そして、子供を産んだ次の年、がけ崩れでしんだ。
そんでその子供が育って、俺の父親になってわけ。

色々かたずけて暇になったから、書いていくよ。

203 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/07/17(水) 21:53:04.00 ID:bX77PU0N0

俺が経験した最初の妖怪関連の事件で、たぶん、一番危険になったんだとおもう中学の時の話。

俺のじいさんはがけ崩れで死んだんだけど、その嫁。
つまり俺のばあちゃんにあたる人は生き残った。
その頃はじいさんのばあちゃんも結構前に病気で死んで。
俺のばあちゃんは女手一つで俺の父さんを育てることになった。

小さな村だった集落は他の村とかと合併したりして少しずつ発展して、小さな町になった。相変わらずド田舎だけど。

俺の父親はそこで普通に育てられた。
俺のばあちゃんは正直あまり迷信とか信じてなかった。
だから呪われたとか言われている俺のじいさんとも結婚できたんだろうね。

だから、一時期ネコを祭るのを怠ったりした。
でも、そのたびに、父親はひどい病気になったりしていたから。
ちゃんとその守りごとを守るようになった。

俺は霊感とかからっきしだったんだけど。
俺の父親は少しあったみたいで。小さい頃はよくまっくろの影のような絵を書いていたらしい。

そんでばあちゃんに、これなに?ってきかれると
窓の外にたくさんいるよっていつも答えていたらしい。

それを聞くと、ばあちゃんは、いつも
「ああ、イタチたちは、いまだに復讐をあきらめていないんだな」って思ったらしい。
まぁ、そういうのもあって、俺の父はかなり内気で寡黙の人間だった。
つまりコミュ障だった。

父はあまり活発的じゃない人だったし、早熟の子でばあちゃん苦労も知っていた。だから、ばあちゃんにいわれたことは、いつも忠実まもって。
森とかに近寄ろうともしなかった。

そのためか父親は健康に育った。
地元の高校から出た後は関東のほうで就職した。
もちろんねこさんの神棚みたいなやつを一緒にうつした。
そこで恋をして結婚して、そして俺をうんだ。

しかし、俺の母さんも父親が色々迷信めいた儀式を毎日やってるのをみて、宗教にはまってるんじゃないかって心配したりしたけど
父親も頑固でやめようとしなかった。

それから何年、俺がうまれた。

俺が生まれて3年後、妹も誕生。

そんで、毎年のお盆は、父親の実家、つまり例の町に帰ることになってる。
俺は父親に教えられていたとり、毎日儀式めいた何かをやっていた。
ていうか、小さいころからやっていて習慣的になっていて、むしろ他の人ってやってないの?的な状態だった。

田舎の小さな町だったから、各家同士はほとんど知り合いってわけで、そういう帰省のときは、いろんな家とかの子供同士もよく一緒にあそんだりした。

ただ、みんながやまで虫取りとか、川遊びとかの時は俺と妹は、いつも、ばあちゃんと父親にいくなって止められた。

同じ年齢の仲間たちが楽しそうにそういうの行くのを見るとすごくひかれた。

まぁ、母方の実家もあったから、毎年そっちに行っていたわけじゃないけど。

俺が中学2年で妹が6年くらいのとき、その町に帰省したとき、事件はおきた。

近所のガキ大将的な奴が、夜に家を抜き出して、近所の墓地で肝試しをやるといいだした。

俺はその年でも、ずっと夜道で歩きを父から厳重に止められていて、結構そういうのにあこがれがあったし、少し悩んだんだけど、友達とかに説得されて結局行くことにした。
俺の妹もその話を小耳にはさんで、行きたいと言い出した。

俺と妹はよる、親とばあちゃんが寝た後、こっそりと家を出ることにした。

そんで玄関に向かおうとした時、急に神棚みたいなところに飾ってあった。ねこさん長命牌が結構でっかい音立てながら畳に落ちた。
その時は焦っていてあまり気にしなかったんだけどさ。
畳なのにあんなに大きな音立てておちるのかって?今だと少し不思議。
多分何か警告しようとしたんだね。
まぁ、風に吹かれて落ちただけかもしれないけど。偶然にしてはなぁって感じ。

しかし、その時の俺と妹は急いで長命牌を元の位置に戻して、親とばあちゃんがその音で起きなかったことにむねをなでおろした。

そこからは、みんな子供たちで合流して、墓地に向かった。
集まったのは5,6人くらいだった。
墓地はそこまで広いもんじゃなく。
肝試しの内容もシンプルだった。
墓地の一番奥には一個名前が書かれていない、かなり古い感じの墓があっるんだけど。
そこに目印としてあらかじめ色のつけた割り箸があるから。
一人づつそれをとってくるというものだった。

俺の順番は前から3人目、妹は最後の一個前になった。

俺の番になって、俺は特に何もななく目印をとってきた。
俺は驚くほど霊感がないから、何も感じなかったし、何も見えなかった。

そして、妹の番になって、妹はひとり、墓地のほうにすすんでいった。

そんで、そこで少しおかしなことがおきた。
かなり待ったんだけど、一向に妹が戻ってこなかった。

ここらへんで寺生まれのTさんが来てくれたらありがたかったんだけど。
あいにくいそがしかったらしい。

しかたないからといって、兄の俺と、ガキ大将で様子を見に行くことにした。
そして墓地を進んでいって、真ん中あたりに、妹は、いた。
妹の様子が少しおかしくて、墓地に生えていた木のそばに立っていて、木のほうに顔を向けてなにかぶつぶついっていた。

俺とガキ大将は妹のことを呼んだんだけど、特に返事はなかった。

俺とガキ大将もこわくなったから。
とりあえず、妹に近寄って、妹をこちらに向かせた。
すると妹はやはりなにかぶつぶつ言っていたんだけど、微かに震えていた。

俺たちもどうしようか悩んだけど、とりあえず、妹をつれてみんなのところに戻った。
みんなも妹の様子をみると不安になって、色々話しかけるんだけど、妹は無反応。
とりあえず、肝試しはお開きになって。
肝試し自体大人に秘密だったし、怒られたくないから。
こっそり家に帰って、あすの朝になれば妹もよくなるだろうと安直に考えた。

俺は妹の手を引いて一緒に家に帰って、彼女をベットまで誘導した。
幸い、軽く手をひくと、ついてきたので、あまり苦労しなかった。
彼女を寝かせた後、おれもこわかったんだけど、大人に相談すると怒られそうで怖かったし、そのままにしてねることにした。

まぁ、いまだと、少し妹のこの時の状態がわかるんだけど。
妖怪に「?」された感じだと思う

「?」まぁ、もっと複雑に?っても書くんだけど。
これってのは何かというと、昔の人が妖怪の鳴き声を漢字に表したみたいなものらしい。
いまだと、さらに深い意味も入ってきて。
妖怪にびっくりさせられて、魂の一部を持って行かれたっていう感じだ。

人間の魂は本当かどうかわからないけど、七魂八魄あるらしくて、その一部を持って行かれた状態かな。

持って行かれ方は色々あって、その対処も違ったりするけどね。

カギカッコの中の漢字はこれ。

「まぁもっと複雑に?っても書くんだけど」
っていってる漢字はこれ。

とりあえず、妹はほったらかして、俺は布団に入ったんだけど。

俺と妹は同じ部屋で、布団を畳に敷いて並んでねていた。

やっぱり俺も妹のことは心配だし、すごくこわかったから。
よく眠れなかった。

そんでしばらくうとうとしていると、となりからなんか変な音がした。
妹のほうからだった。
妹のほうに少し顔を向けると、妹は体を起していた。

最初は何をしているのかわからなかったんだけど。
じっとみつめると。妹が自分の髪むしゃむしゃしているのがわかった。

妹は肩まで髪を伸ばしていたのだが、その髪の毛を自分で引きちぎって、その髪の毛を、喉につめるようにむりやり口の中にいれてた。

悲鳴を上げたかった。
でも、喉の奥がまるで詰まったように声が出なかった。
金縛りとかそういうのじゃなくて、多分びっくりしすぎた感じだと思う。

そこから妹のことをじっと凝視して。しばらくたってからよっと、なんとかなしないとって思って。

すぐに電気をつけた。
そして、妹のほうを見ると、髪の毛を無理やり引っ張ったせいか、頭皮の一部から血が出ていた。布団には妹の髪の毛がたくさんあったんだけど。
それと同時に、妹のものではないと思われる短い毛もいっぱいあった。

今度こそ、俺は悲鳴を上げながら、父さんと母さんとばあちゃんを起こしに行った。
それから朝までは色々あって。
怖かったとこともあるし、色々混乱しててよく覚えてない。

父さんと母さんとばあちゃんが起きて、妹をなんとか無理やり止めて、それでも暴れたから、縄で縛った。
そんで、俺から話聞いたり、他の子供の家に電話したりで、俺はとにかくあんたは大丈夫か?何か気分が悪いところは?とか聞かれて。
大丈夫だって答えたら、母親に別の部屋に連れていかれて、布団に入れさせられ、とにかくあんたはねなさいっていわれた。

俺が翌朝起きた時は、妹の様子はかなり落ち着いていた。
でも、かなりの高熱出していたらしくて。

一回様子を見に行った時はすごいうなされてたみたい。
俺はばあちゃんに呼び出されて、そこで例の俺のじいさんの話をしてくれた。

俺もやっと、なんでいままであんな儀式めいたことしていたのか理解した。

そして、家から出るなって言われて、家のテレビのある部屋で、ポケモンをずっとやってた。
金銀世代なんだけど、ポケモンって式神っぽいよねwwwなんか。

昼ごろになって、ばあちゃんの知り合い?よくわからないけど、よくお盆とかでいっしょに遊ぶ他の家の大人とかがうちの家に集まったりした。
それなりに年の人とかもいた。

大人たちは妹を車に乗せて、どこかに連れて行った。
まぁ、多分大きな病院とかそこら辺にいったと思うんだけどね。
俺とばあちゃんは留守番をすることになって。

その間、妹と俺の寝ていた部屋はほぼ開かずの間で。
俺もばあちゃんもそこに入ろうとしなかった。
夜になっても、大人たちは帰ってこなくて。
俺とばあちゃんはすごく不安になったんだけど。

だからと言って、家から外に出て、他の家まで行く気にもならなかった。
一番近い家まで歩いて10分なんだけど。
家の外に出て夜道をあるきたくなかったんだ。

すると、妹のいた部屋のふすまの向こうで、何かカリカリする音がするようになった。

最初はさ、おれとばあちゃん怖かったし、お互い聞こえないふりしてさ。
様子を見に行こうとしなかった。

そんでどんどんその音ひどくなって、最後には、なんか部屋の中から話声みたいなのが聞こえ始めた。
ひそひそはなしみたいなので内容は特に聞こえなかった。
それでも無視していたんだけど。

晩御飯食べていた時のこと。
バキって音がして。

飾ってあった神棚が倒れた。
いそいで起こしたりしたんだけど。
ねこさんを祭っていた長命牌にひびが入ってた。

俺とばあちゃんはもうそれで参ってしまって。
電話で近くの家にいた仲がいいおっさんみたいな人に来てもらった。
妹の部屋のほうを確認してもらったら、なにもなかったらしい。

そのまま俺とばあちゃんは明け方になるまで起きてて。
そこらへんで俺の母親から電話があった。

妹は病院で様態が急変して死んだらしい。
死因は急性の肺炎とのこと。

病院から帰ってきた父さんと母さんはかなりやつれていた。

とりあえず、おれはその時点で徹夜の眠さに負けて、ねることにしたんだけど。
途中一回起きて、水を飲みに行った時、大人たちが葬式うんぬんの話をしているのを聞いた。

そんでもう一回部屋に戻って、眠って。起きたのは翌日の朝だった。
起きると体が妙にだるくて。嫌な汗をべっとりとかいていた。

だから、シャワー浴びようと思って、部屋から出て、風呂場に向かおうとしたら
母さんに会って。母さんは俺の顔を見た瞬間大声をあげて悲鳴を上げた。

鏡で自分の顔を見せてもらった。
なんか変な赤い点々がたくさん顔にできていて、気持ち悪い感じだった。

顔から首にかけてそれはあった。
特に痛いとか、痒いとかはなかったんだけど、とにかくけだるくて。
熱も測ったけど、熱は特になかった。

俺はまた部屋に戻されて、眠るように命令された。
そんで、大人たちが隣でまた話し合いみたいなのをして、しばらくすると、口論みたいなのが始まった。

半分意識がもうろうそして、具体的な内容は特に覚えてないけど。
とりあえず、俺をどうするてきな話だった。

そのまま俺は寝たんだけど。妙に鮮明で奇妙な夢をみた。
夢の中で、俺は冷蔵庫の前にいたんだけど。
冷蔵と壁の間の隙間に、人間の顔が半分くらいめり込んでいて、そんで甲高い感じの声で、あっちいけあっちいけっていってくる。

でも俺すごくのどか湧いてて、冷蔵庫からジュースとりたかったから。
無視して冷蔵庫をあけた。すると中に女の人の体が入っていて。

なんて表現したらいいんだろ。女の人といっても多分スーパーとかにある。マネキンみたいに頭と足と手がなくて、肩と太もものうえらへんまである感じのあれ?
その女の体が、ま○こみたいなのをこっちにつきだす感じで、冷蔵庫にはまってた。

おれ、なんかスゲーむらむらして。そんで思わずズボンをぬいで……

まぁ、後は想像通りなんだけど。

目を覚ますと、夜になっていて。そんで下半身のほうも少しべたべたしていて、濡れてて、きもちわるかった。
ああ、これやらかしたかなぁっとおもって。

電気つけて、布団を確認したら。

少しくらい例の白い液体もあったけど、それ以上にその液体に混ざった感じで、ドバッて、血が付いていた。赤い粒々みたいなやつ?
体確認してみたら、それが腹よりすこし下までドバってわいてた。

大人たちにに布団についたもの含めて、それを見せたら、母さんが大丈夫、大丈夫だから、と泣きながら抱きついてきた。

それから、しばらくかあさんがご飯作ってくれて。
茶碗蒸しと、おかゆを少し食べて。かきこおりもすこし食べさせてもらえて。
ポケモンもやってたら、深夜になって。

うちの玄関のチャイムがならされた。
そんで、中年くらいの男が俺の部屋に来たんだけど。

それが、おれと先生が初めて会ったときだ。

今日はキリがいいしここら辺まで、いつも余り進まないでごめん。
ここらへん、結構書いててグッてくるものあるんだ。

まぁ、じゃあここでいったん式神とかの話、挟ませておくれ。

最初のほうにいったけど、式神とかを今実際に使える人は、いないと思う。

表現しずらい点が多くて、俺も理解できてない部分も多いけど、とりあえず先生に聞かされたこと。

なぜ使えないかというと、現代日本に住む人間なら無理な可能性が高いからだ。

入道とか、道行うんぬんって話覚えているよね。
道行ってのはそのまま道を行くって感じで理解していいと思う。
つまり、実際に道を行って、その体感とか、世界に対する理解とか、そういう口では説明できないものを実感して、そして入道に至るみたいな感じかな?

しかし、その入道を一番邪魔をするもの。それは何かというと、文字なんだ。
まぁ、あと言葉もそうかな?すごい抽象的で申し訳ないんだけど。

例えば「一」って漢字があるじゃん。
これは一を表現していて、これをみると「あ、一だ。」
みたいな感じになるんだけど。実際の「いち」って概念はこんな「一」という、文字では表せない。一個とか、一枚とかいろいろあるんだけど。

でも、俺たちがその一という字を知ってしって。
そうすると、俺たちは一という言葉というかそういうもので自分の見解を縛ってしまって、本当の意味で「いち」を理解することを阻害してしまう。

昔の力持ちたい人とかは、小さいころから決して文字の勉強はしなかったとか。

だから、動物がなぜ比較的入道しやすいかというと。

やつらは言葉も文字もなくて、じぶんのそういう見解に縛りがなくて、それで道行をつみやすくなっているらしい。

もちろん、言葉や文字によって逆に概念を縛って、それでよりコントロールしやすくするという観点からもこういうのをみることもできるけど。
少なくても道行をつむという観点からしては、これは人間が他の生物と比べて大きなハンデを被っているんだ。

だから、こういう不思議系の修行法とかはあまり本とかには載っていない。
本で文字にしてしまうと、その修行法とかに対する見解を縛ってしまって、結局修業できなくなるから。
ほら、例えば同じ文章でも、たくさんの解釈とか持てたりするじゃん?

そのため、口伝いが基本になるんだけど。
戦争のために、日本はたくさんのものを失った。

現代日本社会になると、たぶんも文字や文献ばっかでそういうものを使えようとして、使おうとしても、「見解」が狭まって使えなくなっている。

ガラにもなく、中卒なくくせに難しい話してすまん。

俺とか、先生と勉強するときはかなり苦労する。
やっぱ文字があるかないかじゃあ理解の早さが全然違う。

PS:西洋の話になるけど。
昔の修業するひとで、がちな人って、目をつぶして耳もつぶして、修業したりするんだけど。やっぱそこまでしないと見えてこないものがあるかもね。

うちに問い合わせに来たその女の人は、姉についての相談だった。

280 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/07/17(水) 21:54:21.00 ID:teUJElzc0

姉は結婚していて、8歳の子供がいたんだけど、その子供が水におぼれて死んだ。
そんで姉はとっても悲しんだんだけど、さらに青天の霹靂で、姉の夫が姉と離婚することになったんだ。


そんで姉は一時期かなり沈んでいたんだけど、子供の死んだ一周年くらいに
子供が帰ってきた!とかわけのわからない感じの話をし始めた。

姉を知っているひとは、みんなな悲しさのあまり、おかしくなったんだと思ったけど、相談者の妹だけが、姉はおかしくなってないって言ってた。

ある日、妹さんが姉の家に夜に尋ねたら、なんか部屋が真っ暗にしてあって、そんで姉の部屋からかすかに話し声が聞こえた。
姉の部屋に行くと、ドアが半開きで、姉が鏡の前に座ってなにかひそひそばなししていた。

そんで妹さんの目が暗闇に慣れると、その鏡にぼんやり、黒い影みたいなのが映ってて、その輪郭はとてもぼやけていたんだけど、間違いなく姉の子供の形だと、妹さんは言った。

そんで最近になって、その子供の9歳の誕生日が近いんだけど。
急に家を片づけたり、子供のおもちゃとかかったりしていた。

なんでってきいたら、姉は子供が誕生日の日に戻ってくるからその準備をしているといった。
そして、今までは子供に会うことはできたけど、抱きしめることもできなかった。
でも今度はやっと抱きしめられる!とよろこんだ。

妹さんは怖くなって、別の霊能力者つうか、そんな感じの人に聞きに行って、これはどういうことだって問い合わせた。

すると霊能力者さんは

「子供が溺れて死んだから、五行の中では水に属していて、鏡になんか変なの映ってたから。これは五行で金。姉の子供は、金で葬式をして、土で葬式しなかったから、化けて出た」

とかそんな感じなこと言ってた。(長ったらしいうえに、俺意味がわからなかったんだけど多分こんな感じ)

そんで、その人はそれ以上かかわろうとしなかったから、うちに来たみたい。

そんで、先生はこれはうちの専門じゃないんです、みたいなことを言って、別なところを紹介して、帰らせたんだけど。

そのあと、俺に対して、

「霊能力者もあながち嘘っぱちじゃないかもな」

「え?どういうことですか?」

「土で葬式してないってのはつまり、火葬していないって意味だと思う。
つまり、さっきの人のねえさんの子供はちゃんとして、死体を火葬して供養してないからばけた」

「でも、そんなんで化けるんですか?」

「まぁ、たぶんそれは子供の死体の行方の話だな」

「そういうえばそれなら死体どこ行ったんでしょうね」

「多分知っているのは2人だろうね」

「二人?」

「多分あの人の姉と、その夫。急に離婚したみたいじゃないか。
もしかしたら夫さん子供を愛する場から、死体持って隠れちゃったのかもね。
そんでその夫の居場所を知ってるのはその妻である姉だけ」

ってところで、先生はバカなとこはするもんじゃないなぁとか言って、話を締めくくった。

まぁ、この話がどんな意味もちだして、何言いたいかというと。

多分霊とか妖怪とか使役したいなら、それなりの「道具」と「感情」とか必要なんだろうね。どっちも、現代社会だと難しそうだ。

初めて会った先生は結構ちゃんとした身なりで、スーツ姿だった。

298 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/07/17(水) 21:54:39.00 ID:kQtQEwsv0

俺は最初先生のことを医者かなんかだと思った。

なんせ体の調子はどう?とかどこが痛い?とか、そういうことを聞いてきて、そんでおなかを押したりしてた。

そんで、どこも痛くないけど、だるいみたいな感じを伝えたら、先生は最近のこととか聞き始めた。
学校のこととか、家族のこととか、友達のこととか、世間話的な感じだったんだけど、まぁ、最終的には妹のこととか肝試しのこととか、あと夢の話とかもした。

先生はかなりの聞き上手で、話してて結構楽しい人だった。
一通り話をし終わると、先生は部屋から出て、隣の部屋で大人たちとなんか話し始めた。
そんでしばらくして、先生はまたもどってきたんだけど。

今度は手に生きたニワトリを持っていた。
そんで、ごめん、びっくりするかもだけど。ちょっと我慢してね。
といって、ニワトリをその場で殺した。

さらに、新聞とか敷いて、その上に盆とかのせて、そこでニワトリをさばき始めた。

やっぱニワトリはさ。それなりに暴れて、羽めっちゃ飛んで、正直少しビビった。
ニワトリをさばき始めると部屋の中が生臭くて、俺部屋から出たいとか、こんなことやってる意味がわからないとかいったんだけど。
ここにいなさい、って先生にいわれた。

もくもくとニワトリさばいている先生は軽くトラウマものだった。
そんでしばらくすると、部屋の中に生くささ以外に別の匂いがし始めた。
なんかが焦げたにおいだった。

そしたら、先生は部屋の電気を消した。
そんで、蝋燭一本だけ部屋の真ん中に置いて、ニワトリの血ぬき?みたいな作業を始めた。

でも、ここで俺でも少しおかしいなぁと思うことが起きた。
ニワトリから出る血の量が明らかに少ないんだ。

俺はその時ニワトリとかさばいたことはないんだけど、そこら辺はフィーリングかな?
あれくらいの大きさなら、こんぐらい血出るんじゃないかなぁーみたいな感じの予想を遥かに下回る血しか、出てこなかった。

そんで、ニワトリの血が流れなくなったら。
先生は部屋の窓を開けて、ニワトリを家の外にぶん投げた。

そんで蝋燭を消したらり、電気をつけたりして、抜いた血とかを持って、部屋を出ようとした。襖があいたとき、母さんがこっちに入ってこようとする姿が見えたんだけど。
先生が静かに首を振って、とめた。

俺はもうわけがわからなかったんだけど、なんとなく先生は医者とかじゃなくて、まじない師みたいな感じな人だと理解した。

しばらくして、先生帰ってきたんだけど、今度は手にひよこを持っていて、それを俺の手に渡して、それを左手で握り殺せって言ってきた。

この時の俺にとって先生はただのキチガイだった。

まぁ、いろいろもめたりしたんだけど、結局先生の言うとおりにした。
そんでひよこをつぶすんだけどさ。
ここでまた少し奇妙なことがおきた。

ひよこをつぶすと、体が少しだけ軽くなった感じがした。
そして、いつの間にか、焦げくさいにおいとかも消えてた。
すると、朝結構ねむったはずなのに、どっと疲れが出て、すごく眠くなった。

先生はぐったりしたひよことか回収して、今日はもう大丈夫だから寝なさいと言って、
部屋を掃除したりしてくれて、俺はそのままねた。

その夜は、何の夢もみずにぐっすりと寝ることができた。
朝起きると、結構いい感じの目覚めだったんだけど。
結局赤いぽつぽつはなくなってなくて、むしろ膝あたりまで増えていた。

時間は7時くらいだったから。
母さんとか父さんおきてるかなぁとか思ってへやから出て、腹減ったし、冷蔵庫でもあさるつもりだった。

すると、リビングらヘんに先生がいた。
俺が顔を出すと。今日は2人きりだ。と言ってきた。

もちろん、最初は「はぁ?」って感じだった。
まぁ、先生とはあってから一日もたってないうえに、俺的にはにわとり云々で、俺のためだとは理解したけど、やっぱり怖い人で、二人きりは少し嫌だった。

親たちがどこ行ったの?って聞いたんだけど、その時は教えてくれなかった。
朝ごはんにインスタント麺つくってくれたんだけど、食べている間は気まずかった。
うちでは飯の間に話をかしながらワイワイ食べたりしたんだけど。
先生は食事中はしゃべらない人間らしく、俺がなんか言おうとしたら、あとでゆっくり話そうみたいな感じで軽く止めてきた。

質問:
『妖怪退治っつうとイメージ的に漫画チックだけど、悪魔祓いとか除霊を生業にしている人も居る訳だし、妖怪専門の人がいても可怪しくはないのか。』

これは俺も漫画のイメージなんだけど。
例えばさ、悪魔払いは聖書とかよむじゃん。

妖怪の場合それと似たものがあって、詩みたいなのをよむんだよ。
もともとこういうのは全部昔から伝わったもので、いまだと意味も完全に理解できなかったりするんだけど。
本来は八百万の神それぞれのための詩と、さらに詩を作った当時の妖怪とかのために三百万の詩があるらしくて。
それをつかって妖怪と「交渉」?みたいなことをするんだ。

そういう意味では悪魔と妖怪はにてるのかもねw

でも、そういう詩とかどんどん失われて行って、いまはほとんど邪道なやりかたと、一番使ういくつかのものしか残ってないしね。

なんかみんな難しいそうな話してるね。
多分信じてる人は、何言っても信じるし、信じない人は何言っても信じないから。
論破みたいなのをしようとしても無駄だと思う。

でも、いるにしても、いないにしても、そういうなんて言うかな……
自然っていうか、世界に対して畏怖を抱くのは、いいことだと思う。
人間が一番偉いって勘違いしないためにもね。

ただ、一つだけ言えるのは。妖怪とか死後の世界とか信じてるとかいっちゃうと確実にモテない。
ソースはこういう仕事してる俺。

妖怪には妖怪の自分たちの利益があって、人間にも人間の利益がある。相容れないときは
「そうですか、では私たちは敵同士ですね。ただ、私も私の利益のためにあなたを退治しますから。うらみっこなしでいきましょう!」
みたいなことを詩でいうんだよね。

朝ごはんを食べ終わると、先生は昨日窓の外に捨てたニワトリは覚えているかと聞いてきた。

もちろん覚えてたと答えると、先生は俺を連れてニワトリの死骸を見に行った。
すると、ニワトリの死体なんだけど、何か食い散らかされた感じになっいて、骨とか散乱していた。

まぁ、田舎だし、なにか野生の動物が食べに来たって可能性は十分にあったけど、先生は、それを見せながら、

「お前は、いまこれを食ったやつらに呪われてる。このままだと死ぬ。原因は多分お前のじいさんが焼いた『もの』たちのせいだ。その話は聞いてるか?」
みたいなことを言ってきた。

ちょうどばあちゃんから聞いたばかりだったと答えると先生は、残念ながら俺の爺さんはかなりしつこいやつらから恨まれたらしくて、多分、払っても払っても、また戻ってくる。ああいうタイプは一家が全員死ぬよいに追い詰めるまではきっとあきらめない。

だからもう普通の方法じゃあほとんどどうしようもないかもしれない。と言ってきた。
そんで、おれが選べる道は3つあるといってきた。

一つ目は俺があきらめて死ぬこと。
そんときの俺は結構普通だったんだけど、それは多分にわとりに気をとられているから。
多分、また夜が来たら、今度こそ、やばいことになって死ぬ。
だから、その前に先生がいろいろ準備して、俺をねこ様のかわりに神棚にあげるというものだ。

つまりねこ様はなぜか知らんけど、多分あの肝試しの日に、妹が何かにあって、それがきっかけに家を守るのをさじげた。ねこは移り気が激しいから、一度あきらめると、もうどんなに頼んでも意味がない。
だから、その代わりのものとして少年よ神話になれって話だよねw
つまり、俺が死んだあと、俺を神さまかなんかとして祭って、俺が家族を守るてきなそういう。

この場合、先生は幽霊専門じゃないから、実際これをやっていみがあるのかわからない。
というリスクつき。でも、先生の見立てでは一番楽だから、おすすめの方法だった。

そういえば、思い出したんだけど、人神みたいはやつもあるよね。
それににてるんだけど、ぜんぜんちがうものだから、気をつけてね。守護霊とかとも違うし。

こんばんわ。暇ができたから、みにきたけど。

多分あまり長くいれないから、少しだけ解説。

にわとりを使った、妖怪駆除みたいなのは結構メジャーな方法らしい。
まぁ、いろいろ方法が違うんだけど、まとめて「こけおどし」っていうみたいよ。
あくまで先生がそうよんでるだけかもだけど、「こけ」はニワトリのこけこっこからきてるのかもねw

こけおどしは大抵4種類に分かれていて、方法とかいっちゃうと、適当にやってしまう人とか出てきそうだから。あまり詳しく描写できないけど。

「朱」「化」「疾黄」「瓦割り」ってよんでる。
最初の「朱」はおもにニワトリの血をころして、血を使う方法。
昔だと、にわとりとかうしとかころして、神さまにお祈りしたりするけど、そんな感じ。にわとりを殺して、妖怪さんにたべさせる感じかな?
よく動物の入道につかったりする。

「化」は身代わりのようなもの。これは手相の世界の話らしいんだけど。
昔だと、人を殺す手相ってのがあったらしい。
そういうひとには手にひよこを握らせて、将来殺すであろう人の代わりに、ひよこを殺すってぎしきがあったんだ。
まぁ、先生もこれを俺にやらせたんだけど、その理由はまたあとでわかるので、

「疾黄」は多分に一番使わない方法。
妖怪に住んでいる家にニワトリと生んだ卵を入れて、そん中で卵を孵らせるという。少し時間がかかるけどそんな感じの方法。
主に、蛇とか虫とか、そんな感じの入道につかったりする。

最後の「瓦割り」は、いたずら好きな妖怪に使ったりする方法。
妖怪を呼んで、にわとりを斬首して殺す。
そのあと棒でニワトリのあたまをものすごいぐちゃぐちゃになるまで叩き潰す。

これで、大抵のそういう妖怪はびっくりして、にげていく。
そんな感じです。

第二の方法。棚おろしっていう方法。

これは先生的には、あまりというか、絶対やりたくない方法。

ここで、入道がいかに神様になるっていう話になるんだけど。
通常入道になったものは神火をともし、神性をもち、神格を与えられれば神さまになる。
これはどういうことかというと、すごい複雑な話で、俺も理解できないんだけど。
簡単に言うと、魂だけの存在になって(多分少し違うけどそんな感じ)
神になり、その役割を全うすると誓う。
そして、人から、その役目を与えられて、晴れて入道は神になる。

しかし、この道はとても気わしいもので、そんな簡単にぽんぽん神さまは生まれない。

例えば誓いの部分なんだけど。人でも神さまになる時があるよね。
その時に発するその誓いのことを「広願」というの。

具体的に内容は

「私は永遠に自分にまかされた役割を果たします。
たとえ、この後、私を祭っていた人々が私を忘れようとも
住む場所が路傍の石になろうと、だれも私を覚えてなかろうと」

みたいなもの。

でも、実際にそんなことできるやつなんてめったにいないよね。
たとえ、誓う時は本心でも、本当に時代の流れで、その心が変わらないかっていうと疑わしいからね。

だから、神さまになることは決して楽しいことではなく、本当の意味で善良で、見返りを求めない存在じゃないと、まっとうできない。

それでも、たまに神さまが禁とか破って、妖怪に落ちることもあるしね。

猫様とかは、実は、本当の意味で神さまにしたわけじゃない。
単純に、「よ、あなたかみさまー」みたいにおだてあげて守ってもらうみたいなもの。
だから実はただの妖怪だったり。

そんで棚おろしは、そんな神様を一時的だけ、神様じゃなくする方法なんだ。

なんでこんな方法があるかというと、大昔の人が、神様を殺すために作ったのかも。
神さまは神さまのままだと死なないからね。

まぁ、やることはやることだけに、すごい罰あたりだけどね。
そして、その棚おろしという方法と組み合わさって使うのが「ハセツ」って、もともとは呪いみたいな感じのもの。

なにをするか、これも簡単にいうと、神様を一時的に神さまの坐から引きづり落として、怒り狂った神さまはもちろんそんな儀式をやった人をのろおうとするんだけど。

そこで儀式をやった人は、いやいや、みてください。私はただの人間で、なんの力もなく。
あなたを引きづり落とせるわけがないじゃないですか。

それをやったのはここにいる入道ですよ!みたいに流して、代わりにおっぱらいたいやつらをやつざきにしてもらう。というもの

ただ、この方法には危険性が大まかに2つある。ひとつが神さまが本当に騙せるのか、もうひとつが、神さまがおっぱらおうとおもうやつらを倒せるのか?というもの。

先生によると、昔の神さまは八百万いるのに、200年くらい前には多分三十万か、そこらヘんらしい。
その理由としてが、まぁ、自分たちで禁をあぶって妖怪に下るやつもいれば。
この儀式でたくさん他の妖怪と戦って神じゃない間に死んじゃったらしい。

神さま、実はよわかったり。
まぁ、だからどんどん日本の国力が弱くなって、最後戦争うんぬんがあったとかないとか、

もし、神さまが負けたりした場合は、神さま殺されちゃうから。その業を誰が背負うかというと術者が背負うことになるんだよね。天罰?みたいなのがくだるのかな。天罰ってなんぞって俺もなるんだけど。
たぶん、不治の病とかかなぁ?

そんで、術者に天罰が下る可能性と、術者にそのまま神さまが呪いをかける可能性で、実質成功率が2割きっているらしい。

先生の師匠に当たる人も、これで死んだとか。

だから、先生は、この方法が成功すれば、イタチたちは多分多い払えるけど、自分的にはすこしいやだ。とのこと。

三種類目の方法、それは「かりびらき」というものだった。

かりびらきはどういう感じになるのか実際よくわからないんだけど。
仮開くって意味じゃないのかな?

これを説明するためにはまず妖怪的な意味での人の誕生を説明しないといけないかな?
これも先生の受け売りなんだけど。
古事記とかそういう日本の神話では人の誕生は直接描かれていないんだけど。
なんかの神さまが、人間は土から生まれたとかそういうのを言っていたらしい。

多分そのもとになったのが中国の半分体が蛇だった神さまが人を作る際、人を自分に似せて土くれをこねて、息を吹きかけたらしい。

進化論信者が顔真っ赤にしそうな話だけど。

息を吹きかけると、土くれだったものが動き始めて、それが繁殖して今の人間になったとか何とか。

多分、日本神話的にも、その大陸側人間創造の神話の影響受けているのかもね。
でもまぁ、ここで人間の魂がいかに神さまに近い存在かうかがえる。
つまり、人間の大抵の構成は土くれで、魂みたいなものは神さまの息みたいなみのらしい。
でも、神さまは多分肉体とかもってなくて、息を吐くっていう表現もおかしく。

極論神さまの息もまた神さまの一部で、最後までつきつめると人間の純粋な魂は神さまの一部になる。

もちろん、その一部というのは、人間でいう、細胞ひとつとかそんな感じのものだろうけど、質的な意味では同じになる。
しかも、天地創造級の神さまのね。

だからなんだ?って言われると。おしまいなんだけどさ。
それを利用したのがかりびらきって方法だ。

とても危険で、人間を霊的な意味で死なせる方法だった。

どこまで書いていいのかわからないから、かなり簡潔に書くんだけど。

とりあえず、色々準備する
→水をかぶる
→髪の毛を全部切ってもやす
→その燃えカスで、かすに泥を混ぜてこねる
→体に塗る
→水で流す
→ねる
→その間にいろいろやる。

みたいな感じです。
試されちゃったりするとかなり困るから、ここら辺の省略は勘弁。

それをして何になるかというと、妖怪は人間の魂の部分を人間だと思っているんだけど。
これで泥とかと一緒に魂が一時的に体から流されていくらしい。
それで妖怪のめをごまかしたり、人柱にしたりとか色々できるみたい。
でも、実際にそれをやると色々不都合が出る。

何せ、つまり魂がなくなるって意味だからね。

この儀式をやっても、魂っていうのは、けなげなもので、しばらくすると人の体に戻るらしい。
でも、実際問題は、妖怪はこの魂みたいなものを喜んでばらばらにしたりするから。
そのせいで、もどってこれなくなっちゃう。
儀式の間にねむるんだけど、目を覚めたとき、魂が体に戻ってないとどうなるかというと、その人間は霊的にはしぬらしい。

つまり、この方法を使用して、いったんイタチさんたちをごまかして殺したと勘違いさせる。

そんで満足したイタチさんたちを帰らせるみたいな感じ。
ただ、まぁ問題点としては2つ。
ひとつは俺が確実に霊的に死んで、しかも、イタチさんたちはどうやら、単純に俺を殺したいというより、俺の一家自体を呪っているから。

俺をなんとかたすけても、他の家族は全滅する可能性が高い。そして、他の家族はこの方法が使えない。

理由は簡単で、童貞じゃないから。
ほんと、童貞はこの世界だとすごい。30歳で童貞とか、マジ魔法使い並みにつよい。

先生はこの3つの方法を詳しく説明してくれると、どの方法を選びたいかは俺が決めろ、と言ってきた。

俺はなんか自分の話をされている感じが全くしなくて、あ、ふーんみたいな感じだった。
でも、いざ君が選んでくれっていわれると。そんなの、答えは決まっていた。もちろん、一つ目の方法。俺は死ぬことにした。

なんていうか、俺はあまり他人の負担になるような人間になりたくなかった。
まぁ、理由とかあまりないけど、なんていうかだれにも迷惑をかけたくなかった。

2つ目の方法は、先生がかなりのリスクを被う。
先生とはほとんど初対面で、そんな人に命の危険を背負ってまで、助けてくれなんて言いにくいし、なんせ成功率も低いとか、3つ目の方法はもう論外だった。
俺だけ生き残っても、家族全滅とか何にも面白くない。

両親にはもうお金とか、色々迷惑とかかけて、そんでのうのうと自分ひとりで助かるとか、屑すぎて、中学当時の自分にはありえなかった。

まぁ、しかも神さまになるって少し興味がひかれた。
ほら、中学だったから、察してくれ。もりだったんだよ、そういうのに対して、

先生は俺が1番目の方法を選ぶと知って、なんだか安心したように見えた。

まぁ、他の二つはどっちにしても、少なからず先生としてはめんどくさかったんだろうね。

とりあえず、俺は先生の指示通りに色々やった。
まずは下剤を大量に飲んだり、いちじくを決めたりして。そんでもう出ないぐらいトイレにこもった。そして、睡眠薬を少し飲んで、これで悪い夢をみずに気持ちよく逝けると説明された。

人生最後の食事がインスタントのらーめんだったのは少し不満だったけど、しかたなく納得した。当時はガンダムシードディスティニーとかみてて、結局どうなるのかなぁーとか気にしながら、眠ることにした。

ねると、すぐに俺は夢をみた。
これも少し奇妙な夢でさ、俺は自分が夢を見ていることを自覚していた。
そんで、あ、先生のうそつき。夢見ないと言ったのにとか思ったりもした。
夢の中ではずっと、たーたーたーたーっていう感じのBGMがながれてて、シチュエーションは俺の通っていた学校だったんだけど。
俺はそこで転校生になっていた。

そんで文化祭みたいな行事を準備する中、担任が劇をやろうみたいなこと言って、そんでオーディションをやることになった。

担任は台本みたいなものを出して、

「この劇をやるのですが、オーディションの際一個だけ気をつけてほしいことがある。
このオーディションを受けた人は、二度とオーディションした部屋から出られない」
みたいなことを言っていた。

俺のクラスにはなぜか俺の妹がいて、妹はなぜか、やるきまんまんでオーディションを受けることにした。

前の分でミス、オーディションを受けたら部屋から出れなくなるわけじゃなくて、オーディションで外れたやつが出れなくなるらしい。
俺も「あ、これ夢だ」って自覚していたけど、なぜ妹についていって、オーディションの部屋に行った。
その部屋は音楽室なんだけど。
俺の母さんと父さんがいて、その二人は教室の後ろでひそひそばなしをしていた。
そんで室内にはまだ色々おかしいものがあった。

確か、バーベキュー用の網が壁に立てかけていて、ゴルフクラブが地面に散乱していて、音楽の先生がピアノをどんどんバラバラにしていた。

俺はなんだかどんどん不安になって、なぜか震え始めて、オーディション受ける人が10数人いたんだけど。
そいつらの顔だどんどん歪んでいくみたいで、そんで、担任が入ってきて、いまからオーディション始めよといった瞬間、俺の中でなぜか恐怖が爆発して、音楽室から飛び出した。

学校の中庭くらいの場所まで走って、俺のクラスで俺が結構気にしていた女子がいるんだけど。
その子がいて、彼女は俺に近づいてきて、「あれ?オーディションうけにいったんじゃないの?」みたいなことを聞いてきた。

俺は「あ、え」みたいな感じでそれに答えられなくて、すると、彼女はすこし笑って「ダウト」って言ってきた。

その瞬間、悲鳴が頭上から聞こえた。
上を向くと、そこにはオーディションを受けていた同級生たちとか妹と父さんと母さんが首をつっていた。
なんか表現しずらいけど、とりあえず夢だからなぜロープが伸びて、なぜかつるされてた。

俺は、いそいで二階の窓みたいなところに行って、つるされた妹をじっとみつめた。そしてものすごい後悔の念がして、もしあの時オーディションに残っていれば、一緒に死ねたのかなぁとか考えて、俺は目をさました。

目を覚ますと、周りは真っ暗だった。

頭がすごく痛くて、しばらく自分がだれで、どこにいるのかわからなかった。
そんで何分かたった後に、やっと今いるのはばあちゃんの家の一室だとわかった。

どうやら、俺が寝たと記憶していた部屋とは別の部屋だった。
誰かがはこんでのだろうか?とかぼんやり考えて、喉がひどく乾いたから、厨房に行くことにした。

だれか夢占いに詳しい人とかいないかなぁ、いまだにあの夢の意味とかわからないんだよなぁ……

俺は厨房に行って部屋から出ようとしたら、襖のあたりでごろりとしたものに躓いて転んだ。

割とでかいものの感じがして、はっきりとした質量というか重さというかそういうのを感じた。何だろうと思って、足元を見てみたんだけど、何もなかった。

そんで、そこで頭がすっとさえわたった。
あれ?俺死ぬんじゃなかったけ?なんでいきてるの?
ていうか先生は?今何時、どうなったの?
とかいろいろ頭の中で渦巻いた。

とりあえず、時計が部屋にあったはずだから、電気をつけた。
深夜の一時半であった。

俺はものすごく不安だったし、怖かったから家中の電気をつけまくって、リビングみたいなところでテレビもつけた。
家の中には俺以外に誰もいなくて。ただ少し気になったのが、家のいたるところに黒いねばねばした奇妙などろ?表現しにくいけど、そんな感じのものがたくさんあった。

俺はその時、猛烈にトイレとかに行きたくなったんだけど。
黒い泥とかみて、怖くなって、どうしても自分で行く勇気はなかった。
だから、厨房の流し台でおしっこをした。
今思えば汚い話だ。

ばあちゃんの家は一番広いリビングの部屋と、厨房みたいなとこがつながっていたから。
俺はリビングと厨房をつなぐ通路と厨房の間の襖を全開にして、他の部屋の扉とかは全部閉めて、その前に机やいすとか置いて、軽いバリゲードとか作ってみた。

なぜそんなことをしたのか、その頃の自分はまったくわからなかったんだけど。
多分半分パニックになって、とりあえず、恐怖の本能とかにしたがって、自分のテリトリー?みたいなのを作りたかったんだと思う。

それを全部やり終わったころには、夏場だったし、夜だから涼しいとは言え汗だくになっていた。

冷蔵庫から麦茶をだして、がぶ飲みしながら、ぼんやりと大音量のテレビを眺めていると玄関のほうから(もちろんそこまで行くドアは封鎖済み)ばあちゃんの家にある電話がりーんりーんってなった。

飛び上がるくらいびっくりしたんだけど、少し落ち着くと、もしかしたら、父さんたちからの連絡かもってよろこんだ。

そんで、自分で運んだいすとか机とかまたすばやくどかして、ドアノブに手をかけた瞬間、全身をすごく嫌な感じが駆け巡った。

どう説明すればいいのかわからないんだけど、間違いなく、ドアの向こう側には何かがいた。息を殺して、潜んでいる感じがどうしてもいた。

今思うと、もしかしたら、それは被害妄想みたいなものだったかもなんだけど。
その時の俺はドアノブを握ったまま、固まった。
そんで、電話のベルは2,3ふんかな?ずっと鳴っていて、その後、静かになった。

俺はハッと安心して、ドアノブから手を離したんだけど。
そんでびっくりした。
ドアノブを握っていた手が、なぜかすすまみれになっていた。
いそいで水道まで行って、手を洗った。正直もう何が何でも動きたくなくなった。
でも、再度気合いを入れてバリゲードを再建して。
録画してあったホームアローンをテレビで大音量で流しながら麦茶を飲み続けた。
トイレに行きたくなったら、そのまま厨房の流しに流し続けて、たまに別の部屋とかで物音したけど、風の音だとか自分に言い聞かせて、そのまま籠城し続けた。

結構ずっとねっぱなしだったから、夜中とは言えぜんぜん元気で、4時近くまでそのまま過ごした。
そして、玄関のほうですこし物音がして、「おーい、もうおきたか?」的な感じで、先生の声がした。

それでも何もせずにじっとホームアローンがおわって、今度は天使にラブソングを流しといたテレビを見つめていたら、
どんどんと、ドアらヘんが震えた。
さらに無視していたら、バンバンとドアが強く推されて、ドアからあちら側が少し見える。隙間みたいなのができて、そこには本当に先生がいた。

先生はなんとかバリゲードにふさがれたドアを押しあけて入ってきて、俺をみると。
あ、怖がらせてみたいだね。さっきは電話に出てくれなかったし。
みたいなことを言ってきた。

先生は全身泥だらけで、頬には蚊に刺された後もあった。
俺はとりあえず先生に、どこに行っていたとか、母さんたちは?とか、俺死ぬんじゃなかったの?とか色々聞いた。

先生はまぁまぁおちつけと俺の質問をとめると、今夜はもう眠れそうにないし、ゆっくり話そうといってきた。

そして、先生が何を話し始めたかというと。陰陽師とか日本でのそういう系の妖怪退治の由来だった。

もともと、そういうものがどこをもとにしているかというと。
もちろん大陸側で、国でいえば中国であった。
そして、中国では風水とか易経とかそういうのはかなり昔にまとめられたものなんだけど、
実際にそれを妖怪退治とかに応用し始めたのは三国志とかのあの時代であった。
まぁ、有名な人の話なんだけど。
当時の曹操って人が、中国の北側を統一する前に、敵として袁紹がいた。
曹操がかなりの劣勢で、金でも、軍隊の数でも、食糧とか人口とか土地とかでも負けていた。もちろん曹操は最終的に逆転して勝つんだけどね。

その差を少しでも埋めようとした曹操が考えた策の一つが、ひそかに一部の部下に命じて、歴代の貴族とかの墓を荒らすというものだった。
もちろん、墓あらしとか、当時の時代ばれたらまじでやばかったから(主に民衆から嫌われたりして、ほんとに極秘で行うしかなかった。
当時は貴族とかが死ぬと、膨大な数の副葬品があった。

曹操はそこに目をつけた。その金銀品を回収して、少しでも軍事費用に当てたかったのである。
そして、昔の墓っていうのは風水とかに合わせて作ったりしていて、いい風水ほど、いい墓が建てられていた。
墓の内部は、罠とかもあったんだけど易経に従ったものが多くて、曹操の部下たちはより墓を簡単に荒らすために、まずはその二つを勉強しながら作業を進めた。
そして、そのおかげで、莫大のお金が曹操の手に入ったんだけど。
ここで問題が起きた。墓をあらしてるんだから、もちろん罰があたるというか汚いものとかがついて来るよね。

そして、そこで、対そういうものについて組織的に色々策を考えることになった。

そんで、先生がそんな感じの話すると、俺は今そんな話をする意味ってどこにあるのか、疑問に思った。
そんなことより、両親が今なにしているのとか、俺がナンデ生きているのかとか、そっちのほうが気になった。

それを先生に言うと、先生はまぁ、まて。あと少しで本題だ。と言ってきた。

墓あらしが、除霊とか、陰陽術とか、そういうものの大本に当たるんだが、これはつまり、そういったものは式典とか祭りとかそういう。感謝や畏怖の気持ちで神さまに対して行うものとは大きな違いがある。

根幹に位置する意味というのには反省や贖罪になっているのだ。

因果って言葉があるように、物事には因つまり、理由があって、「果」結果が伴う。
俺の家とかでいうと、俺のじいちゃんが先にイタチたちを丸焼きにした。
だから、恨まれた。

妖怪とかは特にそうで、理由がなければあまり人間にかかわろうとしない。これは道行を積むいみで重要なんだけど、今の話にはあまり関係ないからすこし省くね。簡単に言うと、妖怪はあまり人間と付き合うと、人間の欲望というか、そういうのに毒されるから好ましくないらしい。

まぁ、一部のやつは自分から面白がって近づくが、そういうやつは大抵弱いやつで、人間の命を脅かすとかはまずなく、いたずらとかが目的が多い。
そして、そういういたずらっ子は、「おまえ、いたずらはよくないぞ」と教えれば、すぐに素直に聞いてくれる。

だから、最初のほうではどうやってイタチをだますとか、追っ払うとか、3つの方法云々と言ったが。実は半分くらいはうそだ。

実は、先生が使った本当の方法は、まぁ、うちの得意とする交渉であった。
何度も言うように、妖怪退治とか言ってるけど。
少なくても俺や先生みたいなタイプは妖怪を殺したり、封印したりするほどの力なんかない。

一時的に退散させることはできても、恨みとかそういうのが深ければまたすぐに戻ってくる。
しかも、その時は、退散させた人も恨まれたりしてかなり損な仕事だ。

先生はイタチにこういう条件を出した。
確かにイタチ一家をうちのじいさんが殺してしまった。
その罪は重い。だから、イタチたちも、俺の一家を根絶やしにしたいと思っているであろう。
だが、はたして、殺してしまえば、それで罪は償われるのか?
イタチたちの気持ちは本当にそれだけで治まるのか?

ちがうだろう、多分殺しても、その憎しみは晴れないだろう。
ならこうしようではないか。
殺すのはもったいないから、生かしておこう。

ただ殺すだけなんかより、より苦しんで生きさせたほうがずっと復讐心を満たす。
しかも、普通に殺すより、そっちのほうが妖怪側にとって、業の少ない手になる。
最初はもちろんイタチたちはすぐにはこの案には同意しなかったらしい。
確かに、そのようにいじめたほうがずっと、楽しいかもしれない。

でも、あまりにも長い間待ったから、やっぱり今すぐに殺したいとのこと。

だから先生は新しくこう提案した。
では、こうしよう。
この家の人間で一番家族思いの人間をのみ残して、他のやつを全員殺そう。
そうすれば、君たちはすこしは気が晴れているだろうし、残された人間はひどく悲しんで、苦しむだろう。

さらに、私はこの家に残った家族からたくさんのお金をもらえる。
まさに一石二鳥だ。どうだ?私と組んで、この家のものをだまさないか?

先生は最初から、家族全員を助ける気などなかった。
罪は罪だから、償う必要がある。
彼はある意味とても公平な人だった。

まぁ、だからこそ、妖怪と交渉できるんだと思う。そういう風に人間の利益だけでなく。
妖怪側の利益、さらには、自分の利益すべてを秤に乗せて、バランスをとる。
これが、過去の墓あらしたちが生み出した、妖怪退治という仕事だった。

それに、実際のところ彼は全然仕事をしなかったわけでもない。現に、俺の一家全員死ぬところ、こういう風にして一人を生かす道を見出したんだから。

そして、3つの方法うんぬんの話。

この話で、家族愛というかそういうのを、先生はためしたらしい。
一つ目の方法をやるってことは自分より家族を優先しているんだから。
家族愛がすばらしいであろう。
この方法は実際はただ、簡単な妖怪払いみたいなもので、こいちは生きたままくるしめようぜげへへマーキングだね。
2
つ目の方法は、自分の危なさを強調することで、この方法を選んだ人から、お礼の金をたくさんぶんどるためのもので、実際にぞんざいする方法ではあるが、現代の人間が実行してもただ失敗するだけの方法。

ちなみにばあさんがこの方法選んだらしい。ばあさんからは成功しても、失敗しても、多額のお金を受け取る約束をしていた。

3つ目の方法は単純に、妖怪に襲われやすくなるだけ。というもの。
俺の父さんとかあさんはこれを選んだらしい。案外、怖がっていたのかもね、2人とも。

先生の話を聞き終わった俺は茫然とした。

まぁ、つまり、俺は結果的には「助かった」らしい。
でも、決してイタチたちから逃げれたというわけでもなく。
むしろ、イタチたちは多分、これからも、夜な夜な君をいじめて楽しむであろう。
というようなことを言った。

ここからは、もう妖怪とあまり関係ないし、俺が思い出したくもない話だから、詳しくは言わない。ただ、色々あって、俺の父さんと母さんと、ばあちゃんはそれから一週間の間に立て続けになくなった。

俺は中学生だったんだけど、親戚も全員いないし、何の当てもなくなった。
先生は、そんな俺を養子にするとかいいだしたけど、俺はあんたみたいな野郎の息子になるかよ、死ね屑、ハゲ。みたいな感じだった。

だから先生は、でも、お前どうせこの先どうしようもないんだろ?
しかも、イタチどもがずっとお前をいじめていくぞ。なら、俺の弟子入りでもしないか?
ちょうど、仕事手伝ってくれる人間がほしくなってきたころだし、バイトとか雇うわけにもいかない。
まぁ、給料は出さないが、それなりに知識が身に付いたりするぞ?
みたいなことを力説してきた。

当時の俺は都会育ちのゆとりだったから、正直なところ、どうするべきかわからなかった。そんで、先生のうまい感じの口車に乗せられて、半分強引に弟子入りした。うちの遺産とかうんぬんはうまいぐらいに先生に持って行かれた。

かなり前に、俺が先生のことをどう思っているかという質問があったけど。
まぁ、正直、自分でもよくわからない。
憎いというかそういう気持ちもあるし、尊敬の念もあるし、でも、やっぱりゆるせない。
まぁ、これが、俺んちの話だな。

質疑応答の時間

【質問】
崇徳上皇の事をどう思いますか、日本三悪妖怪の一つに数えられ。日本を乱世に導く怨霊達の頭領とも書かれ。
「皇を持って民と為し、民をもって皇と為す」との呪詛と共に日本の大魔縁にならんと宣言したと言われる存在の事を。
今でも天皇家が四国に来ると怪異がおこるそうですが。

崇徳上皇についてはおれよりウィキペディアのほうが詳しいと思う。
三大妖怪の一つとかいっても、怨霊は妖怪ではないんだから、その頭領っていわれても微妙な感じがするんだよな。
まぁ、いるかいないか。本当に妖怪になったかどっちにしても、生前は色々不幸だったんだと思うし、ちゃんとお祈りを捧げたりしても罰は当たらないんじゃないかな。
四国にはその上皇の墓があるらしいんだ。
だから何か起きるとか言われているのかもね。

【質問】
伯家神道の継承者、白川家が断絶したことについてはどう思われますか?
妖怪の頭との契約更新ができていない、と前に書いてられたので、何か関係あるかと思ったので。

まぁ、この分野の人間って基本もてないし、子孫も残しずらいからね。世の中は公平にできているから、他人を助ける分、自分の福とかそういうので穴埋めしないといけないから、大抵は碌な末路をたどらない。お金や地位があれば、まだ風水とか色々気にしてリカバリーできるけど、近代になると大抵は没落するしかないさ。

【質問】
例えば女系の天皇でも護りとしては大丈夫ないのかな?(女性の天皇自体は過去いたが次代は男系に戻ってる)
男系にこだわる人々はそういうのもあるのかなとか、ふと思いまして、昔の日本の民家は必ず天皇皇后の写真が飾ってあったよな~

どうなんだろ。よくわからないや。とりあえず現在の天皇のやつが一番きくと思う。

【質問】
いもしない存在のために、生き物を殺すとか。
カルト教団もそうだけど、何が楽しくて命を粗末にするのかな。

楽しいっていうか、強いて言うなら商売かな?
詐欺とか、カルトっぽいといわれると何も反論は言えないよ。ただ、そこまでたちの悪いことはしてないかな?
占いとか風水とかそんな感じだと思ってくれ。
あとはそうだね。
そういう宗教はたぶん、命以上に大切な何かがあるって感じがある。っていう風に教えているんだと思う。
例えば、昔の貴族たちにとっての名誉とか、オタクにとっての嫁のフィギュアとか。
少し前に、学校が廃校になるのをやめてほしいために、自殺した小学生とか、たしかに、他人から見るとバカらしいけど、そういうものがあっても、おかしくないと思う。それが、人間の人間らしいところかな?
まぁ、洗脳は、いけないと思うけど。

【質問】
妖怪では無いんだけど。
幼稚園入る前に、ベッドで寝るとたまーに変な物が見えた事が何度かあるんだ。粘土の塊みたいなのがうにょうにょ動いたり、カエルみたいなのがとび跳ねたり。妄想とか夢だったのか、現実にいたのか本人にもわからない。小学校入ってからは一度も見た事ないんだけど。小さい子にしか見えない妖怪みたいなのっている?もしいるならそれは今現在も見えないだけでウロウロしてる?

地域によっては色々かあるから何とも言えないけど、前それに似たやつで、ハエ枕って妖怪いたよ。
そのときはとび跳ねながら、蠅みたいにひたすら、安眠妨害してたらしいけど。小さい子によく見えるというか、妖怪的にも、大人より子供のほうがめんどくさくないから、からかいやすいのかもね。

【質問】
人間は神様の一部か、神を持たないといわれてる朝鮮民族もそうなの?

いわれているっていわれるとよくわからなくなる。いわれているだけど、もしかしたらいるかもしれないじゃん。

よくわからないけど、ユダヤ人とかも最初は神からすてられたとかいってたっけ?
宗教とか人種的な部分はからっきしだから、あまり議論したくないかな?

妖怪とかでいうなら、大陸の妖怪とこちら側の妖怪は縄張り意識みたいなのがつよいから。あまり行き来してないと思う。

これも天皇の契約うんぬんの話から来ていて、あっちの妖怪は大本をたどると、「清」の王朝を最後に、そういうのを一切更新していないから。

妖怪退治はもっとめんどくさいらしい。

【質問】
自分は仕事の都合上、どうしても人が入らないような山の奥地に入る事が結構あります。(技術系の仕事のため)
よかったら、そういう妖怪に会わないor防止?方法や、常に持っていたほうがいい物とかあったら教えて欲しいです。
一応お守りは持ってるんですけど効いてるのか、どうかわからないし、心配な面があるんですよね。

山奥行くときとかは、すぐ直前に風呂とか入らないほうがいいかもね。
こぎれいにしていると好かれるかも。
あと食べ歩きとかはしないほうがいいともう。

実際神社とお寺とかのお守りとかどうかって聞かれると、場所によって違ったり。
あと、実際同じ場所でも、個体差って大きいから何とも言えないかな。

お守りは天皇様の写真とか財布でいいともう。なんか右翼くさいって、知り合いにいわれたことあるとおもうけど、そこが難点かな?

【質問】
童貞は強いなら、処女はどうなの?
やっぱり生理とか来るから童貞とは違うのか。

女性がなぜだめなのか、今日さりげなく先生に聞いてきた。
うちはあくまで退治する方法みたいなのに詳しくて、原理自体はそこまで詳しくないから適当に聞き流して、別に男女差別とかそういう意味じゃないから。

女の人は「五漏の体」になっているから、いろいろ汚いものを体にため込むらしい。そして、その汚いものが最終的に経血になって出てくるんだって。

そんで、人間は女性から生まれるらしいんだけど。
その汚いものを元にしてできたから、純粋な神の一部だった魂が汚れて、神に至れなくなっちゃうらしい。

だから、修業とかは、そういう穢れみたいなのをどんどん落としていくみたいな感じかな?

そんで精子とかは、純粋の魂みたいなもので、それとその汚いものと合体して人間の赤ちゃんができる。だから、精子は神聖的なもので、経血は汚い、みたいな見方があるよ。

【コメント】
需要があるところに供給することで糧を得ることは否定しない。
だがそのやり方と言うか、ただのパフォーマンスで、命を粗末にする行為がものすごく嫌だと感じただけ。
古くはパナウェーブ研究所とか、TVで叩かれたりしてたが、スカラー電磁波が妖怪に変わっただけで、やってることは同じだよな。

「命を無駄にした」という事に対して、自分の正義に照らし合わせて強く否定したい気持ちは分かるけど、自分とは違う風土で、自分とは違う常識、環境のなかで育ってきた人間にその言い方はちょっとヤボな感じだなぁ……と思った。気分悪くしたらすまん。

まぁまぁ、あれだよ。
結局のことろ、ニワトリの命とかなんかよりは、妖怪がいるかいないかって話になるよね?いれば無駄にならないわけだし。

よくあれな話なんだけど、妖怪と交渉できるなら、じゃあ、実際妖怪よんできてみせろよ!っていう人がいるんだよね。

でも、そこら辺は十八禁六大則ってのがあって。
そういうのはできない決まりなんだよね。
なぜできないか言うのも禁止な感じの決まりごと。

だから証明しなさいって言われても、何も言い返せないから。
信じるか信じないか本人次第だと思う。

ただ、もし信じてない人なら。
こういうスレみているだけで、自分の命を無駄にしてるから、やめたほうがいいよ。
ただ、論破したいなら、俺みたいな中卒より、多分もっといい大学の教授とかいると思う。
そんで、もし「なんてバカな人たち!私がすくってあげなきゃ」っていう親切な人なら、たぶん、ここにいる人たちの大半は、面白半分の人とか多いから、教会とかに行って、神は死んだ!とかいうといいと思う。

すこし過酷な仕事終わりで、疲れてるから、もし、いいかたわるかったらごめん。

ただ、俺も一生懸命仕事でやっていることを「ごっこ」っていわれると少し泣きたくなるわけで、そこらヘんも理解してもらえるとありがたいかな。

これはちょうど去年のこのころの話

854 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/07/17(水) 22:03:55.00 ID:AtFE2iYh0

先生がマレーシアの友達に会いに行くから、お前も来るか?
みたいなことを言っていた。

その時はめずらしく、先生が交通費を持ってくれるという話だった。
ちょうど、その時はすこし稼ぎがいい仕事が終わった後で先生の機嫌がかなり良かったのが理由かも。

成人してからは、先生からなけなしだけど、給料をもらっていたんだけど。
仕事の時、新幹線とかの移動費用も自分持ちが多かったから、かなりめずらしい話だった。

特に仕事関係のものでもないらしくて、俺はどうせならと考えて、ついていくことにした。まぁ、軽い旅行気分だった。

ちなみに、この話は妖怪関係とすこし違う話で、どっちかというと、人が怖いみたいなやつ。

その先生の友達って人は、昔仕事ですこしお世話になったという人で、中国人のおっさんらしい。そんで霊感がすごいうんぬんで、金牌術っていうよくわからない分野のものに詳しく、妖怪から、除霊とか、風水とか、なんでもござれの感じな人だった。
現地ではそれなりに有名な人らしい。

俺としては、その頃にはそれなりに貯金があったから、到着してからはすぐに先生と別行動して、帰るときに合流するみたいな感じに持って行きたかった。
行く前にはそれなりホテルとか物価とかしらべて、ひとりでインジョイするつもりだったんだけど。
そんな俺の考えを知ってか、先生は飛行機で俺にマレーシアの女はすごいんだぜ、ゲヘへ、みたいな話をしてきて。
そんで、友達に会った後に、俺を東南アジアの女の素晴らしさを知ることができる場所に連れて行こうか?と聞いてきた。

俺は3、4分 グヌヌって悩んだけど、やっぱり男なわけで、童貞を異国で捨てるのも悪くないなぁとかなんとかw

一人でホテルを予約していたんだけど、キャンセルした。

そんで空港から、先生に連れられて、その人の家に行くことになったんだけど。

最初はバスに乗って、2,3回乗り換えて、さらにタクシーに1時間半揺らされて、その後さらに車が通れないような細い道(町中なんだけど、なんか細かった)を徒歩で1時間。それでやっと着いた。
ちなみに、その間の荷物持ちはもちろん俺だった。

もしかしたら俺は先生に荷物持ちとして連れられてきたのでは?
とかおもった。

先生の知り合いの住んでいる場所はかなり古い感じのアパートみたいなもので、そのアポート一つ、まるまるその人のものみたいな感じ?
ぼろいけど、中は結構きれいで、住むには、いい感じだった。

俺と先生を出迎えてくれたのは、かなりのイケメンで俺と多分ほぼ同じ年の青年だった。
日本語ペラペラで、先生と話していたんだが、俺はほぼ無視された。
たぶん、雇われた荷物持ちだと思われていたのかも。

そんで、話の内容から、その青年の名前は、ワンなんちゃらで、中国人で、先生の友達ので弟子的な人だった。

無視されて少しムッとしたから、わんとか犬かよとか、大人げないことを思ったりもした。
そんで案内されてやっと、先生の友達の人にあったんだけど。
これまたかなりのイケメンで、後から、先生よりも年上で50台後半だと知ったんだけど40代のナイスミドルみたいな感じだった。

少し前にも質問あったけど、うちの業界ではイケメンは少し少ないという話をしたよね。これはとくに理由というのは定かではないんだけど。
最近自分が思うに、たぶん、イケメンのほうが女性的な部分が強いからじゃないかな?
あくまで憶測だから気にしなくてもいいが。

そんなジンクスを真向に崩された気がして、俺はすこしこの子弟に興味がわいた。
最初ナイスミドルのおっさんは先生とひさしぶりとか日本語で色々話して、そんで、俺の存在に気がつくとこの子は誰だ?と聞いてきた。

先生は俺のことを紹介すると、おっさんはリーなんチャラだと紹介した。
リーのおっさんは物珍しそうにすこし俺を眺めたりしたんだが、俺と先生を座れる席に案内して、ワンくんにお茶を出させた。
その間に先生とリーのおっさんが世間話を色々していて、俺がちょうどお茶を口にしようとしたら、先生にそのお茶は飲まないほうがいいぞ、と、たしなまれた。

先生にえ?って感じな顔をしたんだけど。
先生は呆れたかのように、昔は教えただろ?綺麗な部屋には気をつけろって。

そんで、そこでやっと思い出して合点した。
この家ってもしかしたら蠱を飼っているんですか?
って聞いたら。リーのおっさんはそうだ。と答えてくれた。

まぁ蠱毒って割と有名だから、wikiにも割と詳しく書かれていてるんだけど。
多分みんなが思っているような式神みたいなものとはまた違うんだよね。

かなり前に、そういった式神みたいなものは多分使える人は、いない、といったよね。

じゃあ蠱ってのは実際のところどういうものかというと……

ではまずは蠱についてかな。

蠱ってのは一種の人工的に妖怪に似た何かを作り出す手法なんだよね。まぁ、作り方とかはwikiに色々書いてあるんだけど。

蠱は呪いの道具として使われていて、蠱をすりつぶして、呪いたい相手に飲ませると、相手は呪われて死ぬ、というもの。

ただ、うちの先生によるとそんなもんマユツバにもほどがあるとのことだ。

普通に現代の常識的に考えて、たくさんの虫とか蛇とかを共食いさせたりとかすれば、それだけ生き残ったやつにたくさんの寄生虫が集まるし、それがないとしても、かなり汚い。
そんなものをすりつぶして誰かにのませたら、病気の一つや二つにもなる。しかも昔は医療環境がひどいから、多分そのまま死ぬ。

ただ、これだけだと、蠱の使い方としては下の下。
結局のところ、ただ毒を盛るのと同じだからね。

本物の蠱使いってのはもっと恐ろしいものなんだよ。

最初に言った通り正しい蠱とは一種の人工的に作り出された妖怪で、人間に対してはかなり悪い方向の感情をもっているらしい。
そして、その力というのは、どっちかというと座敷わらしに似たもので、昔話では、とある金持ちの一家が歴代にわたって蠱を飼っていたんだけど。

新しく嫁が家に入り、嫁には蠱を飼っているとは言わなかった。ある日、その家の他の人が外出して、嫁だけが留守番していたら、突然部屋に置いてあった大きな桶から物音がして、嫁が確認すると中には大きな蛇がいた。
びっくりした嫁は急いで、お湯を沸かして、その蛇にかけてころした。
家の他の人が返ってきた後、その話を聞いたら、みんな泣きだして、すこししたら、家の人間全員が病気でなくなった。

というものがある。

蠱の専門家でも何でもないから、説明がうまくなかったり、詳しくなかったらごめん。結局のところ蠱はなんの働きをするか簡単にいうと「寄生虫」みたいなもの。

蠱を作った人は、それを他人に「憑かせる」
作られた蠱によっては、その憑いた人から運気とか寿命とか色々吸い取って、そんで憑かれた人間が死んだりすると、また作った人の元に戻っていく。

ただ、ここで気をつけないといけないのは蠱はより住みやすい環境に住みつく習性があるから、たまに憑いた人の家が心地よくてそこに居座ることもあるんだけど、その場合、作った人も、憑かれた人も色々吸い取られて死ぬ。

しかも、蠱は一定時期に人を殺したりしないと作り手を殺すので、いったんつくったら、三年おきぐらいに新しく人を殺さないといけないとのこと。
じゃないと、作り手を殺す。

さらに、もし蠱が見つかって、誰かほかの術者とかに殺されればそれでも作り手は死ぬ

大体こんな感じかな?

そんで蠱をどうやって放つかというと。
これも方法が色々あるんだけど。

どの方法でも、あげる→受け取る、というサイクルが必要みたい。
例えば、財布みたいなものに蠱を仕込んでおいて、それを道端に置いていく。
そんで、その財布をねこばばすると、蠱はねこばばした人につくとか、
放つ側としては「財布を上げる」そして拾う側としては「財布をもらう」みたいな関係ができて、そこで蠱は拾った人に憑く。

だから、道端に物が落ちていたらむやみに拾わないほうがいいし、拾ったとしても警察に届けたほうがいい。
そして、蠱の厄介どころとしては、作り手が仕込む場合もあるけど、蠱は式神とかと違って自分の意思があるから。
たまに、独断で誰かについてしまうことも多い。

例えば、蠱を飼っている人が友人を誘って食事をするとしよう。
その友人とは親しいとしても、飼っている人は「食事をあげる」
友人は「食事をもらう」って関係ができると、蠱が無断に友人について、友人を吸い殺すことも多いらしい。

まぁ、これでも軽いほうで。
ひどいと握手を求める、それに応じられるとかだけでも、相手に憑いたりする。

だから、蠱を飼っている人は碌な人間関係はつくれない。
身内から死んでいくからな。

ちなみに買い物の場合では、お金を渡す→かわりに何か貰う。というものだから、憑かれる心配はないらしい。

そして蠱を飼っている家の特徴としては、ほこりがひとつもないほど綺麗。

人がたくさん住んでいる場所に家が建っている。写真が飾っていない、とかなんとか……
もちろん、蠱の予防策的なものもあって、他人の家で、ご飯とかいただくときは、箸でまずお椀をたたく。
ネギを持ち歩いて、他人の家に入る前に、齧る。万能な塩たっぷりしょうが水を外出後に飲んでみるとかとか……
ちなみに、蠱のいる家でお酒飲むのは厳禁で、かなりやばいらしい。

ここで話を戻すんだけど、俺はそんなことを思い出しながら、口をつけそうになったお茶を置いた。

蠱を飼っているなら、相手側に何も悪意がないにしろ、むやみに何かをもらったりするのはかなり危ない行為だった。

同時に、なんて物騒なもん飼っているんだ。
しかも、お茶を出してくるとか憑かせる気満々じゃないかとも思った。

すると先生はそんな俺の考えを読みとったのか、リーのおっさんは好きで蠱を飼っているわけではないと説明してきた。
どうやらそれは親から受け継いだものらしく、俺でいうイタチみたいなものだという。

そんで、それでもお茶を出したりするのは、礼儀がなっていないと。
蠱に愛想尽かされる可能性があるかららしい。

それで、もし憑かれたとしても、それは自己責任だとのこと。

一通り世間話が終わると、リーのおっさんは先生に見せたいものがあると言って、先生を別の部屋に案内していたった。

俺も付いていこうとしたんだけど、リーのおっさんは若い人にとってはつまらないものだといって、ワン君に町の観光案内でもしてもらいなさいと言ってきた。
俺はしかたなくワン君について行って、そこらヘんを散歩することになった。

ワン君も日本語がすごく上手だったんだけど。
なんか態度が悪いというか、微妙にこちらを見下している感じがあって、すこし気に食わないやつだった。

しかしワン君の対応自体は丁寧だし、お願いごととかは普通に聞いてくれる感じだった。彼としばらく町をうろついて、屋台みたいなところで色々食べたんだけど。

ワン君は結構すごかった。
なにがすごいかというと、みんなからの人気がやばかった。
なんか現地の言葉は理解できなかったんだけど。
町の殆どの人と知り合いみたいで、みんなから挨拶してもらったり。
お店なら、普通に食べ物ただでくれたりした。

現地に到着したのが午後の3時頃だったんだけど、そのまま町を2、3時間回って、特に観光スポットはないけど、異国の文化というかそういうのが新鮮だった。

お守り屋さんとかもあったんだけど、物珍しさから色々買ってしまったら、そんなもの何の役にも立たないから、もしほしいなら、私が効力のあるものをあげると、ワン君が言い出した。蠱のこともあるから丁重にお断りした。

そんでなんだかんだでリーのおっさんの家に戻ると、リーのおっさんと先生が消えていた。

そんでワン君によると、どうやら書置きがあって、二人で飲みに行くらから明日の朝まで留守番を頼みたいとのこと。

まぁ、二人は古い友人みたいだし、2人きりで話したいことでもあったのかもね。でも次の日の朝までとは……

まさか例の東南アジアの女性のすばらしさを知ることができるいいところじゃないよな……とか思ったけど、先生は帰るときに連れて行ってくれるという約束を信じて我慢することにした。
ワン君は俺に部屋を用意してくれたあと、この家で夜を過ごす時の色々の注意を言ってくれた。

まずは夜の間、決して目を手で触っては、いけない。
もし触りたい場合は、何か布とかでクッションしてから触るとか、夜の間は決して「死ぬ」とかそういう系の言葉を言っては、いけない。もしどうしても言いたい場合は「ああいうこと」とぼかすこととか色々……

用意してくれた部屋はまぁ、ビジネスホテルみたいな感じな部屋で窓がなかった。
でも、割と快適みたいだったから、ネギを少し時間置くごとに齧って、ワン君のくれた蠱よけの笛みたいなのを一定期間おいて吹いて、風呂を浴びて寝ようとしたそのとき、事件が来た。

俺がちょうどベッドに入ろうとしたら、全部屋中に響き渡るようなブザーの音が鳴った。

どうやら誰か来客が来たようで、俺は、まぁワン君が対応してくれるだろう。とおもって放置するつもりだったんだけど。

しばらくすると、下の階ほう(俺は二階の部屋を使わせてもらっていた)がすこし騒がしくなって、子供が泣き叫ぶ感じの声がしたりして、好奇心がわいてきたから、パジャマから普段着に着替えて様子を見に行くことにした。

すると、朝に俺が案内されたあの応接室?みたいな場所で、現地の人っぽい男3、4人と女の人が一人いて、その人が子供を抱きかかえていて、子供は泣いていた。

男の一人がワン君となんか話していて、ワン君は話を終わらせると、部屋から出て行った。
なにがあったの?って聞いたけど、急いでいるみたいで無視された。

俺は、なんだなんだ?とおもって野次馬根性で眺めていたら、ワン君が聴診器をもって再び部屋に戻ってきた。

聴診器を持ってきたワン君は子供に診察のようなことを始めた。
そんで、難しい顔をして大人たちと話し始めた。

しばらくそれをぼんやり眺めていたら、ワン君と目があった。
するとワン君はやっぱり難しそうな顔で俺のほうにやってきた。

何かあったのか?ときいたんだけど、どうやらリーのおっさんとワン君が住んでいる街には正式な医者がなくて、普段彼らが医者まがいみたいなことをしていて、それで、今日も今着ている人たちの家の子供が朝からお腹が痛いと言って、最初は気にしていなかったんだけど、夜になってから急に痛すぎてわめき始めて、しかたないからリーのおっさんを訪ねた。みたいな感じだった。

それで、なんでワン君とかが現地の人にあんなに尊敬されているのかが少しは分かった気がした。近くにいる唯一の病気が見れる場所のひとなんだもんな。

それで、まぁ、弟子のワン君もまだ半人前だけど、一応それなりに知識を持っているみたいで、その子供はどうやら急性盲腸炎みたいだ、とのこと。

それでどうやら結構切羽詰まっていて、今すぐ手術をしないとやばい症状らしい。
一応リーのおっさんとワン君は外科的な知識もあって、普段は本当に極たまに小さな手術もやったりしているし、盲腸もきったことあるらしいんだけど。
いつもはリーのおっさんがメインで、ワン君がお手伝いみたいな感じだった。

まぁ、もちろん2人は医者免許なんてないんだけどね。

それで、今日リーのおっさんは出かけているし、近所のでかい病院までといっても歩きで30分、さらに車で3時間かかるらしい。

子供の盲腸は進行が急速で、穿孔しやすいらしいから。さすがにそれでは命の危機がある。だから、今からなんとか手術をしたいんだが、手伝ってほしいとのことだった。

俺は、ハァ?みたいな感じだったんだけど。
ほかに手伝えそうな人くらいいるだろと、初めてエヴァに乗れと言われたシンジくん状態だった。

その時はナンデ俺が?とかおもったけど、どうしても手伝ってほしいとお願いされたから。
どうなっても知らんぞと無理やりワン君と現地の人たちに懇願されて、手術室みたいなところに行くことになった。

手術室みたいなところはアパートでいう3階のはじっこにあって、確かに清潔っぽかったけど、でもやっぱり衛生的には気になる環境ではあった。あと、機材もすごい簡易的なものばっかで、おいおい、こんなんで大丈夫かよ!とおもった。

そんで、一応白衣みたいなのを着替えさせられて、新品みたいな感じで袋に入っている手術道具とかを使って、ワン君は手術を始めた。
でも、妙なことに、俺に手伝えとかいった割には、なんにも俺にやれとか指示はくれなかった。

棒立ちのまま、手術を眺めていたんだが、ワン君の手並みはみごとなものだった。ブラックジャックみたいでカッコよかった。それでよくわからないまま、手術は1時間半から2時間?ほどで終わった。

子供はすやすや眠っていたんだけど、ワン君は疲れ果てたみたいな感じだった。

そして、ついてきてくれと俺に言うと、切り取った肉片?多分盲腸みたいなとこだと思うんだけど。
それを持つように指示されて、彼は手術室の地面にあった出っ張りみたいなのをひっぱた。

すると、そこには狭い階段みたなのがあって、すまない、今これを一緒にやることを頼めるのは君しかいない、三尸虫は分かるか?ときいてきた。

三尸虫というのはわりとしっているものだった。
先生によれば、一番かかわりたくない系のものの一つらしい。

昔の人は、なぜ人が年をとるのか知らないから、虫が人の命を食べている。と理解していた。
三尸虫は人の体に住んでいて、人の精神力というか、気力というかそういうのを食べて生きている。しかも厄介なのはこいつらは吸えれば吸えるほど喜ぶやつらで、宿主のことなんか全く考えずに、ひとを殺すまで吸ってしまう。

その後、また知らん顔をして新しく生まれる子どもとかに憑いたりしているんだ。
人間が道行をつもうとする場合、まずは最初のこの虫たちをなんとか殺さないといけない。
だから、昔の道士とかは重金属の水銀とかでできた丹をたべたりしていた。
三尸虫をころして、自分が死ぬ前に入道してしまえば!
みたいなかんじだけど、そうそう簡単にいかないからなぁ。

あと、神さまも三尸虫に吸い殺されることがあるとか。
つまり、マジでやばいものなんだ。
悪い例かもしれないけど、もののけ姫とかで、最初にでてきたあの豚の神さまから、すごいくろいにょろにょろがたくさん出ていたんだけど、あれを三尸虫のイメージにしてもいいかも。

まぁ、そんな感じなのが三尸虫で、それがどうしたのか、と俺が聞いたところで、ワン君は俺をつれて階段を少しおりながら、断龍杭のことは?と又聞いてきた。

断龍杭ってのも結構有名な話だ。
これまた起源は昔の中国だったんだけでど、明朝をひらいた朱元璋は、自分の作った王朝がまた、別の王朝に滅びされるのをおそれ、部下に命じて、中国全土の龍脈つぶしにかかった。

龍脈はまぁ、なんか風水的にすごいところで、昔は、龍脈の力を借りないと皇帝になれないと信じられていた。
まぁ、借りたとしても、その後の地殻変動とかで、龍脈の流れが変わったりして、王朝が入れ替わったりするらしいけどね。
そんで、その龍脈をすべてつぶす方法に使われたのが断龍杭。

でも、明朝のその行為により、明朝の龍脈が弱くなっても、漢民族から別の王朝が生まれず、代わりに異民族の清によって支配されるとかなんとか……
近代でこれにまつわる話だと、二次大戦中の日本とかあるね。
小国の日本は東南アジアを占領したりしたんだけど、支配している国のほうが圧倒的に人が多いし、土地もでかいということから。

とりあえず、そこら辺にある龍脈をつぶしまくったらしいね。
まぁ、結果、これは無駄になったかは知らんが、東南アジアではなく、新大陸がわからたたかれたわけですが。

と、そういう話をしながら、階段を下りていたら、急に肩から、後ろに向かって引っ張られる感じがした。

階段の中は結構真っ暗だったんだけど、後ろに人がいないのは確かだった。

でも、後ろからたくさんの息づかいというか、そういうのを感じた。
そして、妙に焦げくさいというか、そんな匂いがした。

すこし立ち止まったから、ワン君は少し不思議に思ったのか、早く来てくれ、と言ってきた。

すまないけど、俺はこの先から降りていけないんだ。と、俺は答えた。

前の話でしたように、例の俺のじいさんが焼き殺したイタチたちは別に、完全に復讐を遂げて満足しているわけじゃない。
そいつらはずっと、いまだに、俺をいじめてあそんだりしているわけなんだけど。

俺もどっちかというといじめてほしかった。なんというか、おれはMじゃないんだけど。
でも、家族がみんな死んだのは俺のせいというかなんというか、妹をあの日とめていればとか、そういうことで結構罪の意識があるんだと思う。
だから、何か罰がほしかったのかもね。

そんなこんなで、どうやら、彼ら的には、まだ俺は結構いじめがいがあるみたいで、極たまにやつらが役に立つこともある。
俺が死んだり、それに近いことになってもらってはつまらなくなるらしいから。

だから、なにかとマジでやばいところとかに行こうとするときはこういうふうにとめてくる。
霊感皆無の自分としては助かるんだけど。
存在は迷惑だった。

仕事柄、そういう危ないところに行くのはしかたないことだから。
ただ、無駄に恐怖心をあおられるだけで、結局行かないとだ学んだから。

でも、今回は違って、別に行かないといけない理由は何もないわけだから。
危ないなら近寄らないのがいちばんだ。

だから俺はワン君のお手伝いを断ろうとした。

すると、ワン君は、いらいらしげに、この下に断龍杭が刺さってあるんだ。
ひとりじゃむりだから、手伝え。と言ってきた。

俺は、えええ?みたいな感じになったんだけど、それを聞いて納得した。
断龍杭と三尸虫の組み合わせでいうとかなりメジャーで、つまり、俺は手術の手伝いとして呼ばれたわけではなくて、「祝死」という儀式の手伝いをするためにおばれたわけだ。
「祝死」というのは中国の「清」の時代にうまれた文化で、薩満たちによってうみだされたものだ。
清は中国の女真族という少数民族によって作られた国家で薩満はその民族のオラクルみたいな存在かな。

そして、この「祝死」ってのは非常におそろしい儀式なんだよね。

これは、三尸を寸断された龍脈に植えてるというもので、詳しい、理屈とかはわからないんだけど、とりあえず龍脈の「死骸?」をかりて、ものすごい勢いで増える。

これで、人工的に三尸を増やすことができる。
これを利用して色々三尸でやるんだけど。
この儀式にはすごいデメリットがあった。

当時の薩満たちは将来とかのことはあまり考えていなかったみたいだけど。
植えられていた三尸が龍脈を食い荒らしながら、どんどん増えて、最終的にあふれだしてしまうんだよ。

中国の18世紀とか19世紀初頭とかはかなり戦争で人が死んだりしたんだけど。
それが、この「祝死」によって、最終的に三尸が増えすぎて、マンホール的存在だった断龍杭をふっとばして、湧き出てきてしまったのが理由とか何とか……

すごく複雑で、俺もうまく言えないんだけど。
まぁ、因果ってものがあるじゃん。

原因があって、結果が生まれる。この概念がとても大切なんだよね。
たとえば、そうだね。誰かからプレゼントをもらうとするじゃん。

その誰かは、多分好意とか、まぁおかえしがほしいとか、そういう感情があって、それをおくってくる。
そしてそれを受け取る側としては、たとえそれに対してどんな思いを抱いたとしても、その二人の間に、つながりみたいなものが生まれる。
このつながりのことを因果みたいなようにいうんだけど。

昔の仙人修業とかは、なるべくこの因果がないほうがいいらしい。
浄化する人とかの話だけど、実際にいるかわからないがもし本当にいたとしたら……
たとえば、道端になんかの妖怪があるとしよう。
その妖怪は何も悪いこともしないで、ただ人間って面白いなぁーって人間を観察していた。
そこにその浄化する人が通りかかる。妖怪は浄化されて、ちりいっぺんもなくなってしまう。しかし、その妖怪にも友達とか家族とかがいる。
その浄化する人はなんの悪意もないけど、いつの間にか、その妖怪のそういう仲間と悪い関係を結んでしまう。

悪い原因があれば、いい結果が生まれるわけがない。この悪い原因のことを俺は先生から『『業』』とおしえられた。

問答無用で浄化するのは、つまり、街に出て問答無用で町の人を無差別に殺して、町のものを無差別にぶっ壊すのと同じ意味だと思うから。すくなくても、俺としてはかなりヤバい感じはする。

あとは、そうだね……
例えば、借金を背負った人がいるとしよう。
そんで、ある人が、その借金を背負った人をころしてしまいました。
そして、その借金を、背負った人は返せなくなっちゃうよね。じゃあ、その借金はどうなるかというと、因果の世界では背負った人を殺した人が返さなくてはなくなる。

妖怪とか殺すと、その妖怪がした悪さの分のつながりは、殺した人のものになる。それが殺したほうの責任というかそういうものだとおもうんだ。

まぁ、簡潔にまとめると、悪いことをしたてるんだから、そのうち罰あたってもおかしくないよな?みたいな感じだと思う。

浄化するのがわるいこと?って思うかもしれないけど、たとえ汚いものでも、存在しているならば、それには一定の天の意思というか、自然の摂理というか、うまく表現できないけど、そういうのがあるから、それをただひたすらぶっこわすのはよくないと思う。

ただ、どんな方面でも、害をしている=じゃあ、浄化すればいいじゃん。っていうのは絶対に間違えていると思う。
現代社会でそんなことができる人がいるなんて、少なくても俺は信じないんだけど。
いたとしても、やっては、いけないことだと思う。

ちなみに『業』の話の続きだけど

悪いことをする=いつか報いが来るというわけじゃないんだ。

いじめをすれば、いじめをされた人から恨まれるじゃん。
なら、その恨んでいる人が急にぶち切れて、殺しにかかってくる「可能性」
というか、そういう感じのものが『業』なんだと俺は理解している。
悪いことがいい結果につながる可能性は少ないけど、いいことをしても、その結果が悪いことを引き起こす可能性はかなり高いのも因果をむやみやたらに結ぶなということなのかもね。

『業』についてだけど、清めることができないから、恐ろしいんだと思う。
少なくても方法は俺は知らない。
死んでもなくならないらしいし、他人に移すことはできるらしいけどね。

妖怪と幽霊とか念とかの違いは、妖怪は生きている。幽霊は死んでいる。
ってのが一番の違いかな。

幽霊は足がないっていう話があるけど、あれはつまり、幽霊は死んでいるから、実際に物理的なちからがないんだよ。
じゃあ、どう人とかとかかわりあうというと、人に幻覚とかみせたりている。
妖怪は物理的なものかな?例えば部屋の中でなぜか足音がするとしよう。
この場合、周りを探してもなにもなけてば、それは幽霊がきかせている幻覚の可能性が高い。

もし、なにか物理的な証拠、たとえば足跡とかあれば、それは妖怪だよ。

音は幻覚の可能性があるから、どっちかといえない。
妖怪なら、何かしら証拠みたいなのはあると思う。獣の毛とか、変な足跡とか……

人間が妖怪になる方法だけど

そういうのはあまりわからないけど、『人不死、即成妖』って中国の言葉があるから。
とりあえず長く生きればいいと思う。

まぁ、中国はほぼ自業自得で祝死の影響をうけていたんだけど。
実は、日本も結構これの被害があったりするんだよ。
これは前にも言った通り、第二次大戦中に日本は東南アジア諸国の龍脈を寸断してまわったんだけど。

その時の話で、どっかの国の、とある風水わかる人に、日本軍にむりやり道案内をさせたんだが、その人は日本軍の軍人たちをつれて、龍脈にたどり着くんだけど。
その人はかなりすごい術師だったらしくて、色々策を巡らせて、龍脈を切断させたあと、軍人たちを殺した。

そして、その軍人たちの死体と三尸を龍脈に埋め込んで、祝死をして、軍人たちのしたいとか持ち物とかも利用して、半永久的に、日本を呪うすごい術を構えた。
そのある術ってのが、降頭術の由来というか、そういうものの大本かな。
基本的な部分は、ほとんどそれに似ていて、当時これを考えた人はマジですごいと思った。それが今回の本題である、降頭術である。

日本が呪われているって話なんだけど、日本人はほかの国の人間と比べて、現在はうまれながら三尸が一匹多いらしいよ。
いろんな人が色々試していたけど、結局直すのは無理だって話になった。そのため、修業とかそういうのはほぼダメになっている。
それも、式神とか霊使役とかが無理な要因の一つかな。

ここでひとつ、そういった系の修業とかの話を

なんかよくわからずにそういうおまじないとかに手を出すのはよろしくないことだからね。

もともと修業はなんのためにあるかのかという話なんだけど。
聖人になるためらしい。
その聖人ってのがなにかというと。
例えば、この世界が将棋の盤上だとすると、一般人は全員ただのコマなんだよね。

でも、聖人はこの将棋盤から飛び出して、将棋を指す人となっている。
つまり、聖人は天地と合一した存在になるということらしい。

それじゃあ、それにむけて何が必要かという話になるんだけど。
道、法、術、器の4つの概念をまず理解する必要がある。

なんか難しそうかもしれないけど、これを簡単にたとえると、ある人が車で青森から、東京までいくとしよう。この場合、この車が器。いい車ほど、スピードが出て、早く目的地に着くよね?
ちなみに「器」は使う道具とかの意味じゃなくて、才能とかそういうものをさすらしい。
そして「術」は技術、つまり、車では確かに少しくらい差がでるけど、片方が車運転歴10年のベテランドライバーで、片方が免許取りたての新人ドライバーだとたとえ器に少しくらい差があったとしても、ベテランのほうが確実に早く到着するよね?

「法」はなにかというと、これは方法。
つまり、青森から東京までどうやっていくのかということ。
例えば、片方が車でいくけど、もう片方が新幹線か飛行機で行くとしよう。新幹線や飛行機で行くほうは、どんなに器がだめでも、技術がだめでもより早い方法をとっているから、確実に早く東京に着く。

そして、最後が「道」だ。
道はつまり青森から東京まで行く方向だ。

どんなに早い方法でいい技術で、すごい機材をつかったとしても全然違う方向に行ったら、地球一周しても、目的地にはつけないよね。
「入道」「入道」ってよく言うけど。これはつまりこの「正しい道のりをみつけ、入ることができた」
ということ、つまり、どんなに時間がかかろうとも、でも正しい方向はつかめたから。
いつかはたどり着けるだろう、のような感覚でいいと思う。
ただ、目的地は青森から東京までとかの比じゃなくて、何億光年も離れて星とかなんだけどね。

現在でいう、霊能力者とか霊感があるとかいうひとは、この概念でいうと、器に頼る人間。

そして、式神とか、お札とかそういうのをできるという(実際できるのかうたがわしいけど)が術に頼る人間。

俺の先生によれば、人と妖怪とかとの間の関係を正しく認識し、交流する。我々のような人間がつかんでいるのが「法」

単純に「道」をめざすものもいるんだけど、これは無理なので、ただのバカであるとのこと。
これは多分まじめなお坊さんとかそういう人のこと言っているんだと思うけど。
別にお坊さんとかをバカにするつもりはないんだけど。

何がいけないかというと、ただ単純に道を極めては、もしその道の途中で何かしらアクシデントに出会うと対処できないからである。

我々は人間だから、世の中にいる限り様々な『業』を知らずの内につくってしまう。その『業』のせいで、たまに悪いこととかとも出会ってしまい。それで命を落としてしまうかもしれない。それじゃあ、いままで頑張ってきた意味が全部パーになる。

でも、だからといって、だたひたすら法や術、器に頼っていてはどんどん道を踏み外し、悪い方向に行ってしまう。

歩く神社とかという浄化する人だけど、やっていることは、車で道端にいる人を目的もなくひたすらひきまくっているのと同じなんだよ。
じゃあ、どうすればいい?って聞かれても、俺にはどうしようもないけどね。

ひたすら自分の利益のために「術」を磨くのもよくない。これは目的は特にないけど、とりあえず、車で他人の道をふさごう!みたいな感じになる。

そして、方法だけど。
これ自体はどんなに間違えても少なくても他人には迷惑はかからない。ただ、法は人が決めるものだから、それで自分を縛ってしまうと、もし方法が間違いの場合、正すのはかなり難しくなる。

青森から東京に行くためには、飛行機が一番はやいのに、車で出発してしまい。取りかえしのつかない感じね。

その呪いってのは誰がやったのかはわからないし

331 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/09/26(木) 23:32:28.49 ID:eukASd4w0

くわしい方法も少なくても俺は知らない。降頭術使いじゃないし。

とりあえず、死んだ日本軍の死体を断龍杭のまわりにうめる、そんで何かしらの方法で、その死体が生きていると、日本軍の兵士魂とその三尸の虫に勘違いさせる。

魂は体が死んでいないと勘違いするから、死体から完全に離れない。三尸の虫は、死体に入って、「あ、これやっぱ死体だ」と思って、這い出てきて、死んだ龍脈に寄生する。そして、龍脈に寄生した三尸の虫が増えすぎて、臨界値になると、また龍脈から這い出る。でも、そこで、三尸の虫を食い止める陣みたいなのをしく。

その結果三尸の虫はどうするかというと、日本軍さんたちの死体の中の魂は日本を思う気持ちというか、そういうのでいっぱいで、人の思いは、道を作る力がある。
三尸の虫はそのおもいで出来る道のみを頼りに、日本にやってきて、日本の新しい子供たちに寄生する。

わかりにくかったらすまんが、多分大体こんな感じ。

そんで降頭術ってのは大体こんな感じで、だれかの体の一部とか、思い入れのすごいものとか、そういうのを利用して、三尸の虫で、人を潰す。

蠱とにているけど一番の違いはここかな?でも誰が術をしているかがばれると被害者は、術をかけた人を怨むよね?その恨みによって、被害者と術者の間に思いの架け橋ができて、被害者が死んだら、術者も次に死ぬ。

だから降頭術のタブーは、自分がやったと決してばれては、いけない。

そして、色々話がそれたけど。俺は目的がわかったし、祝死ならしかたないか、とおもって、後ろから引っ張られるのを無視して、ワン君についていくことにした。

祝死の儀式には、一時的に三尸の虫を鎮める方法があって、その鎮めている間に、昔の薩満たちはそれらを取り出していたわけなんだけど。

いまだと、薩満の大体の文化は失われて、一部しか現存していない。その一部と他の左道の文化と結びあわせられ、生まれたのが金牌術だ。

ちなみに左道ってのは「道」をあまり考えず、ひたすら「術」を極めんとする人に対する軽蔑用語かな。

薩満のそういう部分のものを応用して、現代では三尸の虫だらけの龍脈を安定させてたりするんだ。

俺はその時、それについてのくわしいやりかたとかはしらなかったんだけど。
その存在自体は知っていた。

ワン君が俺を必要とすると判断したんだから、彼にしたがうしかなかった。

道、法、術、器があったとして、方法、行くまでの術、そこにたどり着く器があるとすると一番大切なのは道(到達点)と仮定して「人の思いは、道を作る力がある。」とすると、帰結を何処に持っていけば……10人10色だと解釈自体が成り立たない訳で。

金牌術というのは具体的にどういうものかというと

「法」の範囲に属すもので、代々「金牌」というものを受け継いでいる。
継承者というか、そういう人は、いろんな所を旅して、なるべく多くの友人をつくり、多くの妖怪とかそういうものと触れるようにする。その分『業』を背負う可能性があるんだけどね。

そして、最終的になると、たとえば、妖怪にちょっかいだされたら、
「ほら、この金牌がみえないか。俺は何々の弟子の弟子の弟子の…だ!
友達たくさんいるんだぞ!俺をやったらやばいんだぞ!」
とか、

困った時は、「ほら、この金牌がみえないか。俺は何々の弟子の弟子の弟子の…だ!
友達たくさんいるんだぞ!俺に恩を売るのは悪くないぞ!」
みたいに金牌が伝わった代とかが多ければ多いほど、虎の威を借りるキツネ的に、どんどんとそのコネ的な力を強める。すごいところだと、神さまでさえ命令できたりする。

階段をおりきると、真っ暗な、少し開けた空間についた

そして、さっきまでは全く気がつかなかったのだが、そこらあたりからものすごい腐った肉のようなにおいがしていた。

俺はまっくらだから、明かりつけなくていいのか?とワン君に聞いたけど、ワン君は付けないほうがいいといった。

そんで、ワン君は手術で取り出した内臓をもって、暗闇の中に進んでいった。
俺はその場に立ったままでいいと、指示をされた。
真っ暗だったから、すぐにワン君の姿は見えないようになった。真っ暗の中一人ポツンと置いてかれたから、すこしこわかった。

しばらくすると、奥のほうでたんたんたん、とリズミカルに手を打つ声が聞こえてきた。そして、ワン君が大声で「ソンセンラァーー」云々と叫び始めた。

中国語くさかったから、意味はよくわからなかった。
こういうのってパクれるところはパクリたかったんだけど、中国語の知識はなかったから。少し残念だった。

しばらくその声を聞いていると、空間の奥のほうで足を引きづるような音が聞こえてきた。しかも、すごくゆっくりだけどなにやら、俺のいる方向にやってきているようだ。

すーっと寒気がしたんだけど、大丈夫だと自分に言い聞かせて、何か使えるものがないか、念のために考えた。

何も準備してなかったから、専用のものはなかったんだけど。
ポケットにあらかじめ忍ばせておいた●ンドームがあった。

俺は急いで両手に唾を吐きつけて、●ンドームを取り出した。
そしてその中に髪の毛を一本だけ入れて、特に尿意はなかったんだけど。
その中におしっこをした。

そんで、それの口を結んでおいた。すこし手におしっこがついて嫌な感じだった。

俺子供の頃、犬と猫を虐めて死なせちゃった事があるんだけど、何か影響受けたりすんのかな?30年は経つけど、思い出す度に申し訳ない気持ちになるよ。

勘違いしては、いけないけど、たしかに『業』はやばいものだけど。

多分それじゃあ、あんまりかわらないし、それに『業』を背負ったのに、それを払うというのがすごく人間的な傲慢だと思う。

俺が習った『業』に対する正しい認識は『業』は結局のところ生きていく上で必ず受けるものなんだ。
生きること自体が、世界に対してすごい借りを作っているみたいなもの。

じゃあ、どうすればいいかというと。
覚悟を持たないといけないんだ。

たとえばごはんをたべるとするじゃん。ごはんは生き物だから、他の生き物殺しているよね?
でも、たとえ他のいいものを殺してもいいから、自分は生きたい。
すごく申し訳ないけど生きたい。そういう気持ちが大切なんだと思う。

だから、どんなことをやるにしたった。自分はこれをやると『業』を背負うことになる。それでも、自分は本当にこのことがやりたいのか?と常に自問しないといけないんだ。

その『業』を背負う覚悟があってやっと、人は行動してもいいことになる。
じゃないと、ただ避けていくと、どんどん道をそれていくんだよ。

親父を殺した相手に復讐したい。
でも、復讐は何も生まないしよくないことだ。
でも、やりたい。どうしてもやりたい。自分が悪いとわかっていてもなおやりたい。
みたいな感じの覚悟を持って、行動しろって感じだね。

643 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/10/23(水) 21:36:53.52 ID:HpvTdX7R0
長らくご無沙汰してすまん。

なんか、先生が色々あって亡くなったので、葬式とか、書類の整理とか、今後の話とか色々忙しかったw

続きだよ。内容忘れてたら申し訳ないな。

地下のところで変な、足を引きづるような音がどんどんと近づいてきたんだが、ちょうど、俺の目が暗闇で見えなくなるくらいの瀬戸際のところでとまった。

そして、そこでひたすら足踏みをする感じの音に変わった。

ワン君は「祝死」の何かしらのことをやっているのはわかっていたが、具体的に何やろうとしているのかは分からなかった。でも、それで、暗闇の向こう側にいるやつが何なのかはわかった。

金牌術の中には「死体運び」という技術があると聞いたことがあった。
一番金牌術の大本になったのは本来葬式屋だった。
しかしもととなった葬式屋は、少し特殊な葬式屋で、昔って死体とかは故郷とかに埋葬するじゃん?
でも交通の便がかなり悪かったから、もしどっか自分の家から遠いところで死んだりするとその死体を故郷まで届けないといけない。
それも腐らせたりせずにね。

その葬儀屋というか死体の運び屋が、最終的に金牌術をうみだした。

なぜそんな術が生まれたかというと、どんな人でも死体となっては罪とかそういうのはないし、それを故郷の土に埋めたりするのは生きる人の義務みたいな考えが昔にあるから。
死体運びの仕事をする必要だったが、それをする人って、あんまり人気がないのはすぐに想像できるよね?まぁ、ばっちいというかなんというか、不吉なイメージあるし。

だから、旅をする割には、宿とか食事とか誰も提供してくれなかったりした。
でも、死体を運ぶのは誰かがやらないといけない。

だから、朝廷から、この人たちに絶対協力しなさいみたいな「金牌」を死体運びの人に配ったんだ。

そして、それで、死体運びの人たちは「自分たちは死体運びだから協力しろ」
みたいな感じで、ただで宿とか提供してもらっていた。
そのうちそれがどんどん変化したのがもとらしい。

そして、その「死体運び」の具体的なやり方が、運ぶというより
死体自身に動かせるというものだった。

これが中国のキョンシーの由来でもある出しいんだけど。
何かしらの処理の後、死体を立たせて、軽くひもでつないで、それを引いて歩くと、ぴょんぴょん後ろをついてくるらしい。

さらにすごい人とかだと、死体を自分自身の故郷に行かせる方法とかもあるらしくて、その後ろをひたすら見守りながらついていくみたいな。

ただ、その死体をじぶんで歩かせる方法にはすこし不便なとこがあった。
それは、その死体が生きた人間の周りを通れない、というものだ。
理由はよくわからないけど、まぁそういうものらしい。
そして、そのとき、俺の目の前にいたのは大方そういう感じの死体だった。

この地下のスペースで狭いドアひとつという場所は、多分だれか人をドアの前に立たせれば、死体が勝手にどっかにいかなくて済むようになるためだったんだ。

大体そんな感じで暗闇で待つこと30分くらい。
ワン君は一段大きくなんか叫ぶと、俺に対して日本語で「正気の歌はうたえるか!?」と聞いてきた。

正気の歌の詳細はたぶんwikiさんのほうがくわしいから割愛するとして。
正気の歌というのはうちの世界でもかなりメジャー系な歌い物だった。

これは読み方に色々工夫があったりするんだけど。作者の文天祥ってのがすごい人で、あまりにもその気迫というかそういうのがすごかったから。
一喝で、どんな汚いものも退散させられたとのことだった。

金牌術をしらないものでも、これを読むことで、文天祥の気持ちをいうか、そういう気迫を借りることができるとかなんとか。

俺も先生に一応叩き込まれたから、歌うことはできた。
そんでワン君は、俺とそれを合唱するようにいってきた。

それを聞いた俺はとりあえずなるべく息が合うように正気の歌というものを彼と一緒に読みはじめた。

そんなに長くないものだったんだけど。
不思議なことに、それを読んでいくと、足をひきずるような音がどんどんと俺のほうから離れて行った。

そして、正気の歌の終盤になると、奥のほうからワン君の声が少しずつ近づいてきて、最終的には彼の姿が見えた。

そんで、歌が終わると、彼は急いで俺を引っ張って階段を上がっていった。

階段の上のほうはだんだんと明るくなるんだけど。
ワン君の顔がはっきりとわかるようになると俺はびっくりした。

ワン君のいけいけな感じの顔は、青あざだらけになっていて、全身が黒いすすのようなもので覆われていた。
そのまま手術室に上がり、彼と俺は精神的にも肉体的にも疲れ果てて、とりあえず、冷たい水でシャワーを浴びてから服を着替えて。
もとの服とかを燃やすとか、そういう後始末に入った。

その間に俺は、ワン君に説明を求めたんだけど。
彼は俺に「とくに説明する必要はない」と言ってきた。

まぁ、他人の流派の話とかを聞くのはよろしくないというか、なんというか、中国系だと、そういうのがもっと顕著で、師匠と弟子でも、全部教えないとかざらだから。
俺は手伝ったのになんなんだそれはみたいな不満はあるけど、その時はとりあえず、それでなっとくした。

そして、ワン君はまだ待っていた病気の子供の親とかと話をしに行って、俺は自分の部屋に戻っては、このリーさんの家は嫌な感じで、出ていきたいとおもって、ベットで悶々とした。

そのまま怖くて一睡もできないまま、朝を迎えて、腹減ったし、下に降りてみると。ワン君はすでに起きていて、庭みたいなところで、国術の朝練をしていた。

国術というのは、いわゆる中国の武術の一種で、朝鮮でいう撃術とか、ロシアのシステマとかそういうのと似たものって想像して、厳密にいえば、八極拳とか八卦掌とかもその一種で、ワン君は筋肉がすこかった。
彼の練習が終わるまで待つと、彼は俺を連れて、街へと繰り出し、そこらヘんの屋台で朝食をとることにした。

さすが人気のイケメンワン君というか、なんというか、朝ごはんは屋台のおっさんがただでいいと言ってくれた。

まぁ、町で唯一の病院もどきだしなぁとかおもって、俺はかなりうらやましかった。

俺も仕事の関係上、人を助けていると押しつけがましく思ったりすることもあるが、ここまで尊敬されることはあまりなかった。
たすけたとしても、たすけなかったにしても、かかわった人的には、二度と会いたくない類の人間だからね。

副業として、医者とかなろうかなとかまじで悩み始めたときに事件は起きた。

突然屋台にかなり厚着で、グラサンをかけた男が近寄ってきて、そして、胸からいきなり拳銃を取り出して、パンパンと、短く二回ほど、ワン君に発砲した。

ワン君はその男が拳銃を取り出したのをみるとすぐさま横に飛ぼうとしたんだけど、間に合わなくて、そのまま脇腹にいっぱつ、太ももあたりに一発あたった。

でも、そこからのワン君がすごかった。
撃たれたにもかかわらず、そのまま相手に突っ込んでいって、俺が腰抜かしてヘタり込んでいて、状況も読めない中、その男をぶん殴って、失神させた。

俺は拳銃とか今までみたこともなかったし、ましてや、人がうたれるのを見たこともなかった。

だから、半分恐怖もあって、男を倒した後の、ワン君をどう処理すればいいかまったくわからなかったし、現地の人たちで人だかり出来たんだけど。
何言っているのかもわからなくて、何をどうすればいいのかわからなかった。
そんで、まだ意識のあるリーさんと現地の人たちがしばらく話し合って、血をだらだらとながすワン君を三輪車の大きいバージョンみたいなやつに乗せて、リーさんの家にとりあえずいくことにしたらしい。
俺はぼんやりとしたまま、現地の人たちについていった。
途中いろいろ話しかけられたんだけど、俺は「ハハン?」的な感じだった。

発砲した男に関しては、そのあとは俺はよく知らない。

リーさんの家に着くと、彼は色々と現地の人に指示飛ばして、包帯とか、とりあえず、止血した。ここらヘんになって、ワン君は気を失った。

しかし、奇妙なことに。
ワン君の指示で、どうやら地元の人が、出血のために色々やってたんだけど。
血は一向に止まる気配がなくて、たえずににじみ出ているようだった。
包帯とか色々使ってたみたいだけど。
それもどんどん真っ赤に染まる感じだった。
医学の心得のあるのはワン君だけだったし、そのワン君も失神していて、みんなが途方に暮れていたちょうどそのころ。
次の朝には変えるとか何とか言っていた、師匠とリーさんが戻ってきた。

そして、リーさんは状況とかを地元の人に聞いて、先生は俺に聞いてきた。

俺はとりあえず、ワン君が屋台でなぜか撃たれた話をして、先生もびっくりしたような感じだった。
そして、ワン君の様子を少し見てきたが、先生は特に医学にくわしいわけでわなかったから。

様子が悪そうだねぇ、みたいな話を俺とした。
すこし先生からお酒と香水臭い感じがした。
あ、これってもしかして、俺を放置して、「いい場所」とか逝ったんじゃないのか!
とかおもったけど、こういう状況だし、何も言わないことにした。

一方、地元の人から、色々と聞いていたリーさんは、俺と先生に、すまない、こんなことが起きてしまって。本当は観光案内くらいはしたかったが、それどころじゃなくなった。
とりあえず、家の中の部屋は自由に使っていいから、ゆっくりしていってくれ。
みたいな話して、治療のためとかだと思うんだけど。
深刻な顔で、ワン君を手術室のほうに運ぶように指示しているみたい。ワン君をつれて上のほうに行った。

俺はぽかんとしたんだけど。
先生はまぁ、しかたないなぁみたいな感じで、俺をつれて、もってきた花札で自分たちの部屋であそんだ。

遊びながら、もちろん雑談はするんだけど。
その間に、先生に昨日の夜の話をした。
すると、先生は顔色を変えた。

それはやばい。早くリーさんに教えないとみたいなことを言って、リーさんを探そうとした。

リーさんは案の定というか、手術室のような部屋にいて、まだ、治療中だったようだ。

そしたら、待っているついでに、先生は俺にいろいろ話をした。
まぁ、詳しい術とかどうなっているのかは、先生も金牌術の専門家じゃないからわからないんだけど。

どうやら、昨日ワン君は俺を手伝わせて、誰かが子供にかけた降頭術を解いたんだと言ってきた。

うちは妖怪専門だし、こういう呪い系は存在は知ってるけど、降頭術というのはまぁ、前のほうで説明したような気があるから。
もう、あまり詳しくいわないけど。

よくある症状としては、けだるいとか、病気になりやすくなるとか、すぐ怪我をするとかで、日にちがたつにつれて、どんどんひどくなって、死に至らせる、という呪い方らしいんだ。

具体的な解き方は実は先生も分からなかったらしいが、でも、降頭術を解いてしまうと、術をかけた人間がすごいしっぺがえしをくらうこと、そのしっぺがえしを食らわないためには、術を解いた人間を殺すこととかだ、と言ってきた。

降頭術は東南アジア一帯で流行っているらしくて、大抵のその手のすごい人は、地元の規模の大きいギャングとかに所属していて、大量の金をもらう代わりに、人をのろったりしている。

だから、降頭術ってのは例え、見つけても、解き方を知っていたとしても、決して関わっては、いけない。
じゃないと、そっちの術師と、どっちか生きるか死ぬかの話になるから。
もうどうしようもなくなる。

まぁ、じゃあ、降頭術師は手の着けようがないのかというとそういうわけでもなく。
その手の人って10年に一度とか、5年に一度とか、そういうペースでしか、人をのろったりしかできないので。
その間は呪いで稼いだ金で、豪遊しながらくらす。

手術室でリーのおっさんを待っていると、そのまま2,3時間たった。

おっさんが出てくると、ものすごい疲れている感じの顔だった。
待っていてくれたのか的なことをいったが、すぐさまそれを遮る形で、先生は俺が言っていたことを彼に教えた。

話を聞くうちにリーのおっさんの顔色はどんどん悪くなった。
そして、話を聞き終わると、彼は今ワン君はなぜかどんな処置を施しても、血が流れ出るのがとまらないらしい。

もちろん、応急処置で、流れるのをかなり遅くしたが、それでもおかしいことに、血がひたすら流れ出てい来るという。かなりヤバい状況とのこと。

俺は、これってやっぱり降頭術が原因ですかって聞いたが、リーさんは少し悩むそぶりを見せて、そうだと、俺に答えた。

少し風呂ってくるがすぐもどる。

リーのおっさんが住んで着る街というかスラムは実はとあるマフィア?みたいな組織が仕切っているみたいで。
そんでリーのおっさんはそのお抱えで、風水とか占いとかそういうのをしながら生計を立てている。

まぁ、そういう裏社会云々はまた長くなりそうだから、省略するとして、とりあえず、そのマフィアはほかのマフィアと争って、敵側のボスみたいなのを殺してしまったらしい。

そんで、新しくボスになったやつが、下に威厳を見せつけるためもあってかな?
大金はたいて、降頭師に頼んで、地元のマフィアのボスの子供さんをのろわせた。

前に書いているように、降頭師ってのは5年や10年くらいでしか、一回働かない。
なぜかというと、ひとつに罰あたりすぎるから、やりすぎると寿命がちじむから。

もうひとつが、
「俺、10年に一回しか働かないんだから、そんぐらい他の術者は放っておけ」という意味合いもある。

術を邪魔されると、邪魔した人間とはどっちかが生きるか死ぬかの争いになるから。
そういうのを避けるためもあるのかな?
だから、暗黙の了解として、他の術者は、降頭術がかかった人間をみたら、放置するって決まりがあるらしい。

その呪われたギャングのボスの子供が前の日に連れてこられたあの子

三日前ほどの一度ボスはその子を連れてリーのおっさんに助けてほしいとお願いに来たらしいが、もちろん、その時は自分にはどうしようもないと、おっさんは断った。

暗黙のルールをまもったんだよ。例えどんなに親しい人でも、こればかりはできないってやつ。しかし、ワン君はそれをやぶった。

まぁ、俺が言うのもあれだけど、彼は若すぎたんだよ。
そんで、俺なんかよりはるかに優秀なのも、少し祟った。

彼はそのマフィアの子供とかなり仲良かったらしくて。
生まれた時に出産に立ち会い、世話や遊び相手もたまにしていたらしく、情が移っちまったらしい。

だから、やばいのは分かっていたが、自分は優秀だし、もし、相手側の降頭師が何か仕返しをしかけてきても、自分ならなんとかできて、自分の先生には迷惑かけないと思って、リーのおっさんが留守になったのを見るや否や、ボスに連絡して、降頭術を破ったのだ。
何も知らない俺とかもついでに使ってね。

これがいわゆる『業』かな?
分かっていても、情に流されてしまう感じ。
一度仲良くなってしまった人間とのつながり、
一度仲違いになってしまった人間のつながり、
そういう複雑に絡み合った思いというかそういうのというか、こういうのが後あと、自分の不利益につながってくる。
でも、だからと言って、それを避けたり、払ったりはできない。

ワン君の場合はその例だね。自分が弟同然と思っている子供が呪われた。
それを助けるためには、『業』を背負うことになる。

でも、自分のみに危機が迫ったとしても、どうしても助けたい。
そういう時のことを、先生は俺にこれを「劫」と教えた。

俺は今でも覚えてる。手術室に入った時の、ワン君のあの真白の顔。

リーのおっさんと先生は深刻な顔をして色々話し合った。どうやら、相手側のギャングはてっぽうだまの下っ端で、ワン君を重症にしたうえで、呪いをかけているみたいだと合意した。

まぁ、確実にワン君を仕留めたかったんだろうね。

これは謝りに行っても、無理だし。
助けるとなっても、降頭師側にさらに喧嘩を売ることになる。

先生はリーのおっさんに、出来ることをしたいのは山々だが、さすがにこれは事情も事情だし、関わりたくないと伝えた。

俺はワン君が少しかわいそうだと思って、どうにかできないか先生に聞いたが、先生はそんな情は捨てろ、といった。
そんなことより、お前は自分の身を心配しろ。お前だって降頭術をやぶる手伝いをしたんだろと、さらに続けた。

ワン君は、いい手をつかったと言わざるをえない。
俺を使うことで、先生まで巻き込もうとしたんだからね。

まぁ、ただ、先生はそこまでお人よしじゃないので、まんがいち、俺もしかいしの対象だったら、容赦なく切り捨てただろうなぁと、今でも思う。

でも、リーのおっさんは先生と違って、弟子思いだった。
やっぱりワン君をなんとか助けたいとのことだった。

そこで、先生はどうするつもりなんだときいたら、リーのおっさんはただ頭をふり、部屋のどっかに消えていった。

そんで、しばらくすると、またもどってきてこれをどうぞと、爪切りを渡してきた。

俺はあ、これってもしやエンギではないかと思った。これは昔教わった、この人の行動は、もう自分とは関係ありませんよとの儀式らしい。

そして思った通り、先生はその爪切りをとると、かなりの深く爪を切った。
目安としては、少し血がにじむくらい。
俺も、それをやった。痛すぎて涙目になった。

その爪と爪切りをリーのおっさんに渡すと、おっさんは爪切りを割って、その爪を赤い布袋に入れた。

これで、その爪の入った袋を燃やすまで、俺と先生は、リーのおっさんと、一言もしゃべったり、筆談したり、とかそういう交流を一切持っちゃいけないんだけど。

彼のその間の行動は、俺と先生とは関係ないよってことになるらしい。

そんで、その日は飛行機のチケットの都合上、まだその家に残ることにしたんだけど。
俺と先生はリーのおっさんが準備してくれた客部屋で、中国将棋とかやりながら時間つぶした。

まぁ、俺は降頭術の仕返しが飛んでこないか、一日中、ガクブルしてた。

俺の場合、助けてくれる師匠なんかいないからねww

その間。リーのおっさんは何やら準備しているらしく、かなり玄関のほうとかは騒がしかった。

そして、夜中。先生はもう寝ると言って、自分の部屋でグースカし始めて、俺も、色々あって眠れなくて、うとうとしていて、でも、やっぱり疲れもたくさんあって、結局眠りに落ちようとしたそれくらいの時に、俺の部屋のドアをトントン叩く音がした。そんでぼんやりとワン君の声が聞こえてきた。

なにをしゃべっているのかは、多分中国語だったのかな?
よく理解できなかった。寝ぼけてたしね。

なんだよ、こんな時間に、とか思いながら。
めんどくさいから放っておこうとかそんな風に無視してたら、急にッバと足を強く引っ張られた気がする。
そんで、急に眼が覚めて、身を起こしたんだけど、真っ暗で何も周りが見えないのに、くすくすくすっとなんか誰かが笑っているような気がした。

気味が悪かった。
なにかすごく嫌な予感がしたから、ベットから飛び降りて、ドアのほうに行って耳を澄ませてみた。
今度は何も聞こえなかった。

でもなんか変なにおいがした。嗅ぎ覚えのある匂いだった。
半分寝ぼけた頭はその匂いを認識するのには時間がかかった。
俺はとりあえず、部屋の外の様子をうかがってみようとドアの鍵を回すと、扉はピクリともしなかった。

なんかものすごい重いものが、ドアをふさいでいるようだった。

そんでやっと、その時点で頭の中が明瞭になってきて。
臭いの正体がわかった。
物がやけて炭になっていく匂いだった。

何で、またこんなことにとか、ぼんやりおもってしばらく、ドアを押したり声をあげたりしていると、扉の隙間から煙がむくりとでてきた。

俺はなぜか確信した、これは火事だ。
いや、なんというか俺は火事を経験したことないし、その現場に行ったことがないけど、俺以外の何かが、俺自身の頭に、これは間違いなく火の手が迫っていると、俺に伝えてきた。

そんで、俺はこれはマジでやばいぞ。何が起きたのか知らんが、俺このまま蒸し焼きにされて死ぬかもしれない、と思った。

どうしよう、どうしようと部屋中をまさぐりまくった。
部屋には窓がなく、脱出のルートはないし、使えそうなものはなかった。
ポケットの中には●ンドームがあった。
ああ、俺童貞のままで死ぬのかなぁとか思った。

その時だった。

バンバンと何かがまた強くドアをたたいた。
俺はもうモクモクと煙が入ってくる扉に咳しながら近寄ってだれかーとか叫んだ。
返事はなかった。俺は無駄だと思ったが、ドアを開けようとしてタックルをかました。

すると、扉はバンと、結構すんなりあいた。予想以上に力入れた俺は何かに頭をぶつけて、痛みで少し悶えた。
痛みが治まり、あたりを見ると、結構火がこっちに迫っていた。
そんで、俺のドアの前なんだけど、ドアをふさいでいたものなのか、本棚とか、重そうなタンスとか、そういうものだった。

そういうものは当たりに散らばっていて、もちろん、おれのタックルでどいたものじゃないだろうって感じだった。

もしそうだとしたら、俺は相当な火事場の馬鹿力を発揮していて、多分その時なら、キン肉バスターとかできるぐらいだったんだと思う。

一体誰がどかしてくれたんだろうとか、それを考える暇もなく。
俺は逃げ道を探した。階段に行くほうはもう火が広がっていて、とてもじゃないが行けそうになかった。

そんで、そういうえば、先生の部屋に窓が!と思いま出した。
そして、急いで隣の先生の部屋に行った。

部屋に先生は、いなかった。窓のほうにかけよると。俺はぞっとした。二重の意味でね。
まず窓の中、ぼんやりとガラスの反射で窓が鏡になっていて、俺の姿の後ろに、黒い影のようなものがたくさんいた。
そして、窓の外、家が燃えているからだろうか。当たりが赤く光って見えているんだけど。

そこにはたくさんの無表情の人が立っていた。
現地の人たちだろうか、何もいわず、ただ整然とそこに立っていて、じっと、燃えている家をただ見つめていた。

煙の量がどんどんと増える中、俺には何かを考える暇がなかった。
窓をものすごい勢いで開けて。

俺は、そのまま飛び降りた。

もちろん、一階じゃないし、それなりの高さがあったけど。
それ以上に、パニックになっていたし。その時はそれ以外方法はないと思った。

地面に最初についたのは足だったが、グキッといった。
次にからがを強く打った。頭を守るための手も、ぐぎっといった。
でも、なんとか受け身はとれた。

ふしぎに痛みはなかった。
そして、あたりを見渡すと。現地の人が、俺を見つけたのか、かけよってきて、そんで、俺の顔を見ると。
さっきまで静かだったのがウソだったかのように、みんな、声をあげたり、何か叫び始めた。中には泣きはじめる人もいた。

そっからは、意識を失ったので。覚えていない。
目が覚めると、もう朝で、狭い車の中にいた。
後ろのほうに横たわっている感じだ。

手と足はものすごく痛くて、みると添え木なのか木の板があった。
車の運転席を覗き込むと先生がいた。
助手席は誰もいない。

先生は、もうすぐ病院のある町につくと言ってきた。

俺は、記憶の混乱のせいで状況がまったく理解できなかったし、痛みでそれどころじゃなかったから、道中は静かにうめき声を上げるだけだった。
大きないかにも観光名地みたいな町の病院につくと、医者に色々処置された。まぁ、どうやら手と足の骨折と、その他もろもろの打撲らしい。
初めて骨折したんだが、骨つなげるあれ、めっちゃ痛いねwww
そして、ひと段落して、とりあえず一日入院するようにと、日本語の分かるその医者に言われて、病室にうつされて、そこでやっと、先生とゆっくり話ができた。

簡潔に言うと、先生は俺を売った。
リーのおっさんは俺をワン君のかわりに殺すつもりだったらしい。

先生によると、リーのおっさんは先生にエンギをする直前に、うちの業界特有の手を使った合図みたいなので、30万でどうだ?(ここでいうのはドルかな?)と聞いてきたから。

先生も、あ、これ多分弟子のことだな、と思って「いいよ」と返事した。
(その時の俺はまだこれを習っていなかったが、この件の後にすぐに習得した)

それから、先生は暗黙の了解的に、とりあえず俺を家に残すために、色々と俺の暇つぶしとかに付き合って。
そんで、夜中になったら、こっそり家を抜けだした。

詳しくはリーのおっさんが何をしたかは先生も知らないらしいが。
でも、たぶん俺を殺して、リーのおっさんとワン君が助かるか、俺が生き残って、リーのおっさんとワン君両方死ぬか、どっちかだったらしい。

現在は、ワン君は失踪していて、そんでリーのおっさんはまだ生きているが、もう長くないだろう。
リーのおっさんはこんなことに巻き込んでしまって悪かった。
しかし、これしかなかったんだ。許してくれとは、いわないとかなんとか、俺に伝えてほしいと先生に依頼していた。

まぁ、これから会うこともないだろうな。
それにしてもよくあれで生き残ったな。運がよかった。と先生は締めくくった。

俺はやっぱり何がなんだかよくわからなかったけど、無事なほうの手で、先生の顔をグーでなぐった。

リーのおっさんはその夜に、どういう儀式をしたのかはわからない。
もしかしたら、あの地下室の断龍釘とかとも関係あったのかもしれない。

あの時聞こえてきたワン君の声は一体何だったのかも謎だ。
ワン君は失踪したらしいけど、一体どこに消えたというのだ。
何で、家は火事になったんだろうか。そんで、その時外にいたたくさんの現地の人たちは何がしたかったんだろうか。

俺を引っ張ったりしたり、笑い声が聞こえたのは幻なのか、俺の部屋のドアをふさいでいたもの。あれをどかしたのは一体誰だったのか。

考えても分からないことが多すぎた。

でも、窓に映ったたくさんの影。あれはだけはわかる。
間違いなく火で、焼けて炭になった。イタチたちだ。

まぁ、それ以降の教訓としては、二度と先生と一緒に外国に行かないってことかな。

俺の初めての一人での仕事の話。そんなに怖いもんじゃなかった。

940 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/05(木) 23:06:15.10 ID:J6Vxv/Ul0

そんときは先生はまだ生きていて、3年くらい前かな。
うちに、20後半近くの男が訪ねてきて、住んでいる家がなんかおかしいから。
みてほしいといってきた。

そんで、その男の話を聞くと、どうやら男の家はかなり古いアパートらしく。
男は夜勤の仕事も多くて、夜はあまり家にいないのだが、よく近所から、夜中家がうるさいと苦情が来ると、大家に言われた。
でも、言われた時間帯は、明らかに男の家にいない時間帯で、その旨を大家に伝えたら、それはおかしいと言われた。

そして、さらにしばらく経って。やっぱり周りから大家まで苦情がきて、大家が文句が言うのだけれど、男は仕事だから、あり得ないといった。

そして、その夜も仕事があるから、男は普段通り家を出た。

大家も男の話を聞いて、まさか泥棒とか?とか思って、少し心配して、その日はアパートの部屋に泊まった。

すると夜中、確かに男の部屋はなんか騒がしかった。
そんで、その部屋に行って、中に誰かいますか―というと急に静かになった。

でも、大家は部屋の中からこちらの様子をうかがう気配を感じたらしい。
大家は、部屋の合鍵を使って、部屋のドアを開けてなかの様子を見てみた。

すると、ふしぎなことに、部屋の中には誰もいなかった。

大家は怖くなって、この話を男にした。
男と大家はよくある陳腐な話だけど、部屋にカメラを置いた。

そんでいつもうるさくなる時間帯にタイマーを設置して、1時間録画することにした。

そして、やっぱり、そのひも家は少しうるさくなって、次の日、カメラを見ると、誰もいない部屋の中で、ただひたすら物音がするのが聞こえるだけだった。
もちろん、ものも何も動かない。

大家は、いくつかのアパートを経営していたので、結構こういう住宅のトラブルというかなんというか風水とかそういうのに少しつてがあって。
大家は用事があってこれなかったから、その日は男一人でうちに相談にきたとのこと。

まぁ、まずはそのビデオを見せてもらったんだけど。
俺は霊感がないから黙ってて、先生はうーんとか、なるほどーとかなんかヤバそうな貫禄をだしてて、でも、この人も多分何も分かってないなーと俺は培った長年経験で察した。

そんでどうでしょうか?と男が聞いてくると。先生はとりあえず、うちのものを行かせて、様子を見させます。といった。

この段階で、先生はぼろアパートの住人とその大家という組み合わせで関わる気力を無くしたんだと思う。
あんまりお金にならないだろうしね。

そんで、初めて、俺に一人で行って来い。今のお前なら一人でも充分だろと言ってきた。
俺は初めての一人仕事だったから少し緊張した。
こういうのはよくある系の多分実害のすくない軽い仕事だから特に怖くはなかった。

相手はもし妖怪だとしたら、たぶん「イルス」とかそういう系統のものだとおもった。
イルスってのはまぁ、感じにすれば居留守で、有名どころだと、アズキ洗いとかもこれの一種だ。
まぁ、とりあえず、もしかしたら、幽霊とかのうせいもあるから。
少し慎重にことを運ぶことにした。

そのアパートにつくと、部屋の中は狭い7畳くらいで、フローリングだった。
なのでとりあえず、その部屋に小麦粉と塩あと、古いお米類を混ぜたものを地面にバーと薄く、まんべんなく広げた。

かなり前に書いたと思うけど。幽霊と妖怪の違いって何かというと。
幽霊はあくまで精神的な作用をもたらせるけど、妖怪は物理的にも作用をもたらせる。

なんでこの小麦+いろいろとか(詳しく配合は企業秘密)を地面に撒くと、もし妖怪なら、足跡が残るんだよ。幽霊は残さないけどね。

だから、幽霊は足がないとか、いう話がよくある。

そんで、また夜、男は友人の家に泊めてもらって。
部屋ではビデオカメラをまわした。
床には例の粉をばらまいてね。
そして、後で確認すると、カメラには特に何も映ってなくて、でも、床のほうには何か紐を引きずったような薄い跡があった。

イルスは、部屋に人がいないときに物音を出すやつに対する総称で、それ自体色々あるんだけど。
追い出すこと自体そこまで難しいことではないというか、昔なら、みんなやっていることなんだけど。

俺はそこで深刻な顔をして、とりあえず、お祓いをしておきます。
とか言いながら、お札やらなんやら取り出して、それっぽいことをした後に、今日、一晩ここに泊って様子を見ると男と大家にいった。

夜中、俺は電気を消して、部屋の窓をあけた。

そんで、玄関の入口のほうに蝋燭を一本だけ立てて、玄関のほうから、部屋の奥に向かって豆をまいた。

福はうちー、鬼はそとー的なアレ。
ただ、もちろん一般的に撒くあの豆ではなく、あの豆をさらに自分のおしっこに一晩漬けて、そんで乾燥させたやつ。

そして、「出て行きなされ、出て行きなされ、ここよりもっと住み心地のいい家はたくさんあるぞ、こんなより、もっといいオウチに行きなさい。そして、そこでいたずらしなさい。そうすれば、また豆を上げに行くよ」と。詩を歌う。

そして、最後に窓を閉めて、蝋燭を吹き消す。これでおわり。

まぁ、なぜもっといい家に行ってもらうかというと。
そっちのほうが、駆除しに行ったときにたくさんお金がもらえるからである。
そして、また追い払っては豆をやって、っていう相手側にとっても自分側にとっても美味しいビジネスなんだ。

先生の話にも関係する妖怪の話しようかな

191 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/07(土) 22:15:17.90 ID:VUR2uxpM0

すこしだけ時間あるので、あんまり有名じゃないけど、「?」っていうやつ。
これについてのくわしい記載とかどこの本に乗ってるとかようわからなんが、確か、昔話で、虎に食われた人間が「?」になって、他の人間を嵌めて虎に食わせる。
そうしてやっと、最初に食われた人間は虎から解放されて、成仏できるとかなんとか。

つまり「?」ってのは、よくある系の話で、例えば、自殺した人間が、次に来る人間を殺そうとするとかそういうのよくあるじゃん。

まぁ、多分、それができるのはそうとう道行を得た妖怪みたいなやつらなんだろうけど、有名のやつだと、金太郎とかの話でもクマの手下として出てなかったっけ?
ここら辺はよく覚えてないや。

「?」はそういう風に殺されてもなおとらわれている人間のことを指すし、とらえている側のこともさしている部分がある。
昔だと、そういう風に道行の高い動物または入道がこういう風に呼ばれたりしてたんだけど。

最近だともっぱら、とらえているのが「場所」だったりして、そういう「場所」もこの「?」って妖怪なのかもね。

自殺の名所とかw

251 :名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 09:42:11.81 ID:/nFfGu+Fi

こういう所に書き込んだりするのは初めてなんですが、あなたのお話しに興味と反論があるので書かせてもらいます。

私は密教僧ですが以前お坊さんが道を目指すばかりの対処法も知らぬバカ。とも取れる発言を目にしましたが、よくも知らないのにそういった発言はやめていただきたいです。

顕教に至っていえばそうかもしれませんが密教は法や修法(術)も学びます。
宗派や流派によって使う術や作法も変わってきますが……
簡潔に書きますが私達の使う修法は古代ヒンドゥー教(バラモン)やヒンドゥー教、道教や陰陽道、古神道や修験道など様々なモノもブレンドされております。
(顕教の方、又密教の方でも認めない僧侶もいるかもしれませんが事実ですので……)

何が言いたいかと言いますと、僧侶だって道だけではなくつまづいた時の対処法などもキチンと知ってるんだよてことが言いたかっただけです。

ただ勉強不足な僧侶や慢心で自惚れる僧侶も居ますので、道だけを追い求め何も法や術を知らない方も少なくないのは事実です。
空気を濁してすみませんでした。

あなたのお話しはとても楽しいのでこれからもおひまであれば書き込んで下さい。
まぁ資金面で困ってるみたいなので、ここで書き込むことによって依頼が来るかもという期待もあなたにはあるのかもしれませんが……

254 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 09:55:44.19 ID:IyViFD5j0

少し思い出しのたのが昔、先生が言っていた「死」という漢字

もともと「死」は「一」つまり地面かな?その下に死体が埋まっている状態を指しているんだって。

つまり土の中に「タ」と「ヒ」の形で死体がね。

むかしでは死体を埋葬する際に二種類の方法があって。
どっちか忘れたんだけどひとつは親族とかを普通に埋葬するときで、人を座った形にして、樽の中に入れて埋めるんだって。

もうひとつはすごくむごくて、なぜか埋葬する人の背骨をま逆にへしおって、そのまま地面に埋めるとか何とか。

これからわかるもののひとつが「怨」という漢字。
ぱっと見た感じで分かると思うんだけど。
これは誰かの「死体」になることを、「心」から望むという意味になるらしい。
それも、普通の死に方じゃなくて、なんかよくわからない感じに背骨をへし折って死ぬのを望んでいる。

で、この怨と同じ読みができるのが「恨」

これは「心」から変化した、えっと、何ヘんかわすれたけど、あの左側の部分と、「良」という漢字から点をとったものからなっているんだよね。

つまり、良いという状態から、何かかけてしまった。
もっとはっきり言うと「恨」っていう漢字は、心が良くない状態にある。ということなんだよ。

だれかをねたんだりうらんだりするのは仕方ないことかもしれないけど。
それは相手側にとっても嫌なことだけど。

一番は自分の心にとって良くないことなんだよ。

まぁ、他人事だから言えるかもしれないのだが、そんなにいやなら、離婚したら?

子供が嫌いで、でも母親のほうを愛しているとかいうなら。
それ惚れたほうの負けだからとしかいいようがww

童貞だけど生意気なこと言ってすまん。

ちなみに、俺はあんま、本よまねぇんだけど。

いままで、先生に無理やりやまされた中で一番おもしろかったのは「荘子」で、妖怪の話もしているけど、一番は妖怪の話で人が生きるための知恵というか、そういうのもたくさんあって面白いよ。

俺の先生の死因は溺死

310 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 18:29:45.02 ID:93/u28YU0

今思えば、先生は水場というのが嫌いであった。
海は絶対に近づかないし、川にさえめったのことない限り近づかない。

水道とかでさえ、あまり使わずに、水分補給は、いつもペットボトルで、風呂は、浴槽にためたやつを使う。
昔、夏に先生を海に行かないかと誘ったことがあるのだが、もちろん断られた。

何でそんなに水が嫌いなんだとか聞くと、先生は、いつも自分には霊感があるから。
水辺とかそういう妖怪とか幽霊とかたまりやすい場所にいくと気分が悪くなる。と説明していた。

でも、一度酒を一緒に飲んでた時、先生はうっかりなのかわからないが口を滑らせて、自分は小さい頃港町で住んでいて、小さいころは、いつも海で遊んでいた。
潮干狩りしたり、釣りしたり、もちろん泳いだりもした。
しかし、あるとき、先生が海で泳いでいるたら、何かに掴まれた感触がして、それで溺れそうになった。
そして、ひとつ上の兄が溺れ死にそうだった自分を助けるため色々頑張って、結果自分は助かったけど、兄はかわりになくなってしまった。

とか言っていた。

先生はお酒が結構好きだった。
しかもどっちかというと強いほうで、居酒屋めぐりとかが趣味だったりした。

あんなふうにべろんべろんに酔うの俺が知っているなかではあの時だけだった気がする。

俺もまぁまぁ飲むほうなんだけど。
強いほうじゃないし、特にビールとかの美味しさがまだわからなくて、いつも果肉入りのなんとかサワーとかを頼むタイプだった。

ちなみに先生によれば、脱童貞できればビールのおいしさが分かるらしい。
本当かどうかわからんが。

酔ったその日の飲みは、ちょうどとある仕事を終えた後で、詳しくは先生の話だからあまり語らないけど、ある家の妖怪を追い出した。でも、その家の子供は多分だけど虐待を受けていて、その妖怪は子供のことをかばおうとしていたのかもしれないとか、少なくとも、俺と先生は推測していた。

そして、俺がサワー2杯くらい、先生がアツカン3合くらい飲んだ時に、お前は、俺のやっていることがあくどいと思うか?と聞かれたんだ。

俺はすぐさま頷いた。

すると先生は笑って。
実は自分でも、たまに自分のやっていることがすこし残酷じゃないのかとか思うことがある。でも、例えそうだとしても、後悔はしていない。
なぜなら、それは間違いなく自分のその時にやりたいと思ったことだからだ。

人間はセイチョクにいきるのが一番だ。とかなんとか。

俺はセイチョクって何ですかと聞いた。
すると先生はお酒が入ってか、すこし饒舌になって語り始めた。

セイチョクってのは「正直」ってかいて「セイチョク」って読むんだよ。
でも勘違いするな、セイチョクは「ショウジキ」じゃない。
「ショウジキ」はお坊さん用語で、嘘をつかないことを指している。
お坊さんたちの世界ではウソをつくと地獄に落ちる。たとえそれが人のためのウソでもだめだ。
まぁ、お前も酒が飲める年になったから、世の中には「良いウソ」ってものがあるくらいしっているだろうけど、でも、そんなことお構いなしに、ついたら地獄。

だからウソをつかずに「ショウジキ」にいないとだめだ。

でも、セイチョクは違う。セイチョク正直、文字通りまっすぐであるという意味だ。
何にまっすぐか、そりゃあ、自分の心にだよ。
そして、先生は、昔のすごい人で孔子ってひとの話をしてくれた。

ある日、孔子がある国の王様と話をしていたら、その王様が、
「うちの国のものはみんな正直だ!例えばAの家の父親がBの家のヤギをぬすんだ。
すると、Aの家の息子さんが、自分の父親が盗んだと証言したんだ」

すると、孔子はこう答えた。
「私が思う正直はそうではありません。もし親が盗みを働いたら、子供はそれを隠し、子供が盗みを働いたら、親はそれを隠ぺいする。これが本当の意味での正直だ」と。

自分の心に素直に従って行動する。
これがとても大切だ。妖怪と接する際も、人間と接する際もこれだけは変わらない。

自分の本当の心に従うんなら、うそついても、ごまかしても、なんか悪いことをしても、それはしかたないことだ。自分の本心なんだから。

セイチョクに生きるとどうなるかというと「満足」する。
「満足」している状態こそが一番心にとっていい状態で、それこそ、幽霊や妖怪なんて目じゃない。

「破ァ」でそういうのを追っ払うとか言う話があるけど、あれこそ真の意味で「満足」している人間だからこそできることが。
とかなんとか、確かそういう話をされた。

でも、そこで俺はふっと疑問を抱いた。
そして先生に、なら自分の心の欲するままに行動すればいいなら、●ックスしたいなら●イプすればいいし、ものがほしいなら盗んだり奪ったりすればいいけど、そういうのも仕方ないの?

すると先生は、それは、いい質問だ。といった。

自分の心の欲望を満たすために好き放題やる。

しかし、これも心にとっては良くないことだ。
なぜかというと、心が「満足」を忘れてしまう。

いつの間にか心の中では、いつも「もっと、もっと、次は、次は」とひたすらそれだけになってしまう。これが、「魔」だ。
お前は霊感ないし、術とかそういうものとも無縁だろうが、この魔というのが、この業界の人間を滅ぼす一番の理由だよ。

いつの間にか心が欲望だけになった、満足することも、自分の心の目指すべき本当の道も見失って、最後は妖怪よりもみじめなものになってしまう。
魔が差す。とはよくいったもんだね。

その頃にはもう先生から道とかの話しをされていたんだが、それについても、先生は触れた。

魔は、道をくもらす。

昔の修業するやつらはよく厳しい訓練とかしたりするんだけど。
なぜかというと、この魔を産まないためだ。
しかし。まがさす、という言葉のように。魔は駆除できるものではない。

ならどうすればいいのか。中国では無為自然という言葉がある。
なにもしない、何ともかかわらない。
そうすれば、魔はうまれない。

でも、これも無理だ。当たり前だが、なにもしないとか、死んじゃうwwww

じゃあ、どうするべきか。
まずは自分の心の中の魔を見つけて、それと向き合うこと。
自分の醜いこと、ダメなとこ、そういうのをちゃんと受け止めること。

それで卑屈にならないこと、なんか妙に自信かになったりしないこと。
あるべき現実をあるべきように受け止めて。

そして、それに振り回されて一喜一憂しないこと。
それができて初めて、人間としては一人前。
で、そこからも大切だ。
あ、ドヤ顔でまがさすとか言おうとしたら、先に言われてた。はずかしい。

魔を駆除ぜず、手を引いて、自分の心の敷いたレールの上をゆく。
これが本来の意味のセイチョクだ。

しかし、自分ひとりだけで生きていく場合ならこれでいいかもしれないが、世の中にはたくさんの人間がいて、その人たちと関わり合いを持ちながら、我々は生きていかねばならない。

この時、他人がわれわれの心をぶらしてくる。
例えば、どっかの会社のサラリーマン。自分の本心を保っているとしても、例えば嫌な上司がいて、その前で嫌なのにぺこぺこしたりする。

すると、自分がどんどんと自分の本心が嫌になってしまう。
そして、いつの間にか本心を拒絶してしまい。
セイチョクどころか、魔でさえも直視しない。

これが今はやりの「鬱」だ。

じゃあ、どうすればいいか?
そんなのわからん。わかっていたら私もとっくに「聖人」だ。
方法は自分で探すしかない。

先生には、いくつかのポリシーみたいなのがあった。

例えば、こういう清らかなことを言ったとすると、同じくらい卑猥なことをいうとか、誰かに親切をしたら、その直後に同じくらいの意地悪をするとか。

そういうところのある先生は、さらにこういうことを言った。

私は自分の魔を手なずけるのがへただ。
だからこうしていつも、行動で自分に言い聞かせないといけない。

自分は善人でも悪人でもない。
自分のやっていることに、自分の本心以外、別の理由をつけては、いけない。
善悪ではなく、自分が何を選ぶのかが大切だということ。

そして、自分の選んだことなら、決して後悔はしない。
こういうやり方を、中庸の道という。

私は、これが自分にあった道だとおもっている。
だが、多分、お前にこれは向かない。

じゃあ、お前はどうする?
お前にとっての本心とはなんで、どういう道をとるか?
その年だ。そろそろ決めなさい。

俺はそんな先生の話を聞いて悩んだ。

思うところはたくさんあったんだが、自分の道とかそういうのを言葉にして言えるほど、多分まだ俺はおとなじゃなかった。

先生が俺にこの話をしたのも偶然とかじゃなかった気もした。

かなり最初のほうで、うちの流派の話をしたが。「搬山」というもので、これの由来は愚公移山だ。

昔々、あるところにある村があった。その村は交通の便がかなり悪かった。
というのも、その村の目の前に大きな山があったからだ。

その村で一番頭の悪いじいさんは、これをなんとかしようとして、その山まで行って、土を掘って、その土を持って遠くの海までいき、その土を海に捨てた。

彼は毎日それをやった。そして、彼の息子と孫も、それを手伝った。
それでも、毎日海に捨てられる土の量は、微々たる量だった。

すると、村の最も頭のいいじいさんはその頭の悪いジンさんに言った。
「あんたがどんなにがんばったところで、それくらいのことで山が本当になくなることはないだろう」

それを聞いた頭の悪い爺さんはこう答えた。
「確かにそうだ。少なくとも私の生きている間に、この山は動かないだろう。だって、毎日これくらいしか捨てられないんだから。
しかし、私が死んでも、私の息子は毎日土を掘っては捨てに行く。
息子が死んでも、孫が毎日土を掘っては捨てに行く。
孫が死んでも、その子供が。その子供が死んでもその子供の子供が、毎日土を掘っては捨てに行く。そして、それを積み重ねば、いつかは山はなくなる」

村で一番頭のいい爺さんは、それを聞いて絶句した。

一方、その村の前の山の神さまがその頭の悪い爺さんの話を聞くと、やばい、この爺さん本気だし、多分マジでこれを実行される。
なら、山を無くされるくらいなら、どっか別なところに移ろう、と、自分で山を移動させた。

搬山流で最も大切なのがこの頭がわるい爺さんのような意志だ。

詩を歌う際とかも、この意志を持って歌う。
つまり、自分は決してあきらめない。どんなことがあってもあきらめない。だから、そっちのほうから折れろ。というようなことを妖怪に伝えるのが大切だ。

でも、それをやるには、自分の心の道をまずは見つけないといけない。
道しるべもなく、それほど強い心を持てる人間などありえないからだ。

ちなみに魔道も、道のひとつだよ。
自分の本心を完全にすてて、ひたすら、自分の欲のみに忠実に行動する。もちろん欲求はどんどん膨れ上がるんだけど。

もし、どんなにふくれあがっても、それを叶える手段をもっているとしたら、最終的に、この世のすべてを自分の思い通りにできるようになり、魔道にて、聖人に至るというわけだ。

先生の話を聞いて、少し俺は考え込んだんだが、やっぱり自分の道なんてまだよくわからなかった。
そして、ふと疑問がうかんだ。
そういえば、先生はどうやって自分の道をみつけたんだろう。

まぁ、人間なにも経験せずして、自分の道を見つけられるなんてめったにないことだから。もちろん先生にだって、きっかけとか、そういうのがあるはずだ。

俺が素直にその疑問を口に出すと先生はそこから、自分の出生を語り始めた。

まず最初にびっくりしたのが、なんと先生はある港町の小さなお寺の次男坊だった。ということだ。

やっぱり寺生まれはすごい。
焼きそばを書きこみながら、俺はそう思った。

先生は三人兄弟だった。
長男と、次男である先生、そして三男。
両親は厳しい人たちだったらしく。かなり躾とかにうるさかったとか。

そして、まぁ、お寺の生まれってこともあって、結構仏教とかに触れる機会が多かった。
先生は小さい頃、自分の両親が嫌いだった。というより、怖かったらしい。

兄である長男は、かなり優秀で、両親のほこりだった。
そして、三男は末っ子ということもあり、大人たちから可愛がられた。

そんな中で、先生は自分が一番親に愛されていないのではないかと考えていた。
なぜなら、兄は優秀さもあってか、あまり叱られることがなかった。
弟は可愛がられていたから、何かやんちゃしても、仕方ないなー、という風に流されていた。

でも先生だけは、何かをやらかすごとに、いつもこっぴどく言われていた。
失敗するときに叱られる言葉といえば、
「兄さんの小さい頃はこんなことはしなかった」とか、「お前は本当にダメな子だな」とかそういうやつ。

その割には、あまりほめられることもなかった。
学校で、自分としてはかなりいい成績をとっても、家では「もっと頑張りなさい、お前の兄さんのこのころはもっと高い点を取っていた」
とかであった。

先生の兄はやさしい人だったらしい。

先生が叱られて、一人部屋の中に閉じこもって泣いているときでも、いつも慰めてくれるのは兄だけだった。

でも、先生は家族の中で一番兄のことが嫌いだった。
兄は、いい人だと分かっていたんだけど。

それでも、嫉妬というか、兄のその優しさがかえって自分をみじめにしているような気がして、なまいきだった弟以上に、兄とは顔を見たくなかった。

そんな先生だったけど、ひとつだけ、自信があることがあった。泳ぐことだ。

先生の兄は、運動神経はかなりのものらしかったが、泳ぐことに関してだけはからっきしだった。

一方、先生は泳ぐことが大好きだった。
学校が終わると、いつも友達と海に潜っていた。
泳いでいるときだけは、兄より自分が優れている感じがしたらしい。

ことの起こりは先生が10歳の時のこと。

初夏の頃の話。普通の年なら、そこまで暑くないはずの時期だったんだけど、その時はかなりの猛暑だったらしい。

学校のプール開きはまだだったし、仮に開いていたとして、海のほうがたのしいから、そっちに行っていたんだろうけど、先生は友人たち何人かと一緒に泳ぎに行く約束をした。
しかし、それを親に伝えると、父親から反対された。
普段はそんなことないはずだったんだけど。なぜかダメだと言われた。

なんで?と父親に聞くと。これはお前の書いたものか?と先生に一枚の絵を見せてきた。
そこにはうねうねとしたミミズのようなものが書いてあった。
しかし、そのミミズからは足のようなものが3本伸びていて、全体的に真黒に塗りつぶされていた。

確かに、それは先生の書いたものだった。
以前海辺に遊びに行った時、岩場でみた変な生き物だった。
学校の美術の時間に書いたものだ。

先生が確かに自分が書いたものだと答えると、父親はさらに聞いた。お前が見たものなのかと?
先生がさらに頷くと、父親は、ならお前は今年、海にいっちゃいけない。と、そういった。
そんなことでもちろん先生は納得しなかった。
なんでいっちゃだめなの?と父親に聞いたが、父親は駄目なものは駄目だと一点張りだった。

さらにやっぱり行きたいと言い出すと、父親は怒り始めて、こっぴどく先生を叱った。そして、今日は一日中家を出るな。といった。

先生はあまりの理不尽さに、悲しくなって、また自分の部屋にもどると、また隠れて泣きはじめた。

すると、父親が叱っているのを聞いたのか、兄が部屋にやってきた。そして、何があったと、先生に聞いた。

兄は話を聞き終わると、少し笑って、なんだそんなことかといった。
そして、兄は先生にある提案をした。

先生の兄は親からかなり信頼されていた。
だから、今日は友達とドッジボールをするとウソをついて、弟の先生も連れて行きたいと親に言う。

先生は今日の間、家を出るなと言われているが、さすがに、いつもしっかりしている兄が世話をやくといいだすなら、外出は許可してくれるだろう。

まぁ、泳げない兄が先生を連れて海に行くなんて思わないだろうしね。

そんで、兄は先生と一緒に海に行く。水着とかは隠して持っていけばいいしね。
子供が考えるようなザルな作戦だったけど。

海に行きたかった先生はこの話にすぐに乗った。

兄はさっそく、その話の許可を父親からもとめた。
父親は、いいが、絶対に弟を海に連れていくなよ。と念を押したが、結局、許しを出した。

多分父親のほうも、次男を家に一日中閉じ込めておくのはすこし申し訳なかったのかもしれないね。兄も同行するし、とかで安心した部分もあったのかも。

しかし、兄と先生は家を出ると、すぐさま海に向かい始めた。

海についた先生は早速海に入って遊び始めた。

兄は泳げなかったけど、やっぱり猛暑に堪えたのか、すごく浅いところで水につかっていることにした。

ちなみにだけど、そこは砂浜とかそういう立派に整備された海水浴場のような場所ではなく。むしろごろごろとたくさんの岩が転がっているような場所だった。

先生と、その時待ち合わせしていたメンバーは、よくそこで泳いでいた。
岩が結構多かったためか、潮の流れがあまり急じゃなかったし。
溺れそうになっても、すぐにそこらヘんのでこぼこした岩に掴まれるから。
地元で泳ぐというと、そこだったらしい。

先生は待ち合わせていた友人たちと泳いでは、はしゃぎまくっていたんだけど。
そのうち、友人たちは疲れて一人また一人と、兄のいる水の浅い場所に移動して、兄とおしゃべりするようになった。

しばらくたって、気がつくと、先生は一人で泳いでいて、自分の友人たちは全員、兄と何やら楽しげに遊んでいた。

すると、先生はなんだか自分の友人をとられた気分になって。
なんだかいたたまれない気分になった。

先生は少しむきになって、自分は泳げるから、一人でも楽しいしとか強情を張って、正直少し疲れていたんだけど、浅瀬にもどらずにもっと水が深い場所に向かった。

そして、そのかなり水深があったところに着くと(実際は2メートルくらいらしいけど、子供からしたらかなり深いだろうね)

そういえば、あのヘンテコなミミズを見たのも、ここらヘんだなぁと、思い出した。
でも、なんで急に父親は海にいっちゃいけないとか言い出したんだろうとか、ぼんやり考えていた次の瞬間。

先生は右足のほうに何かひんやりとしたものが触れたような気がして、そんで、全身が急に動かなくなった。

あ、やばいとか、思う暇もなく。

何かに足をひっぱられたような感覚で、先生の体はぐっと、水面下に沈んだ。

あまりにもいきなりのことだったから、先生は何口も水をのみこんでしまった。
それでも、みずに慣れていた先生はなんとかして態勢を立て直そうともがいたが、やっぱり体は思うようにうまく動けなかったし、ぐいぐいとひっぱられる力のせいもあって、逆にどんどんと沈んだ。

息ができなくなって、半分パニックになって、水の中では上下左右もわからなくなって、先生の頭はどんどん真っ白になった。

そんで、ふとした拍子だったんだけど、先生は水中で目をあけた。

塩とか水中のゴミとかそういうのでかなり目は痛いし、みずの屈折とかもあるし、落ち着ける状況ならともかく。パニックな頭で一瞬で状況を把握できるわけなんかなかったんだけど。

先生はなぜかそれだけは奇妙なほどクリアに見えたと言っていた。

真黒で、毛むくじゃらで、目も口も鼻も耳も顔さえもなかったんだけど。
不気味なニタニタした雰囲気をだしていて、それからは何か黒いモヤのようなものが自分の足に伸びていて、絡みついていた。

そこからの先生の記憶はあいまいになったらしい。

深い水の中で、一体何が起こったのかはもう覚えていなかった。

しばらくして、意識をぼんやりと取り戻すと、まわりでは焦った、大人の声とかが聞こえてきた。

口の中からは激しい異物感がして、頭はガンガン痛く、体はピクリとも動かなかった。
なんとかして無理やり目をあけると、まず見えたのは、自分のすぐ隣に横たわっている誰かだった。

だれだろうとか、自分はどうなったんだろうとか、どこか思考が遠く、まとまらなかった。でも、目線を少しづつずらし、なんとか隣の人物の顔が見えた。

先生の兄だった。

顔は真っ青になっていて、目と口は半開きになっていた。
あれ?どうして兄がとかおもったのは一瞬。次の瞬間、兄の瞳はじろりとこちらを向いた。何かすごい感情がこもった目だった。

もちろん、言葉はなにもなかった。
でも、なぜか先生にはその目だけから、兄の言いたいことがわかった。

「おまえのせいだ。」

そこで、先生は再び、気を失った。

あとから先生が聞いた話。

先生が溺れてからしばらくたってやっとそれに気がついた子供たちは、あせって大声をだしたりして大人を呼んだ。
幸い、その日は暑かったから、近くで他の大人たちも泳いでいて、なんとか駆けつけた。
そしていつの間にか兄が子供たちの間から消えたこと。

たぶん、兄は弟である先生を助けようとしたこと。
兄は先生の近くの場所で溺れて死んでしまい、先生は助かったこと。
とかそんな感じの話。

でも、先生はそんな話を信じられなかった。
兄は泳げなかったのである。そんな兄が自分を助けるために水が深い場所に来るなど、ただの自殺であることなんて明白だった。

葬式やら、何やら色々あって。先生の両親はずっと泣いていて、病院に2,3日いた先生が家の中に帰ると、ひたすら居心地がわるかった。

だれも先生をせめなかったんだけど。
しかし、なんとなく、まわりは自分のせいで兄が死んだのではないかと考えているのではないかと思った。

父親ともまともに話せなかった。
なんせ、海に行くなといわれたのに、それをやぶって、しかもこの始末である。

というか、父親だけでなく、周りとも目もまともに合わせることができなかった。
目を合わせると、お前が悪いといわれている気がした。
誰とも話したくなかった。

学校にもいかず、ずっと一人部屋に閉じこもっていた。
食事は、いつもいつの間にか部屋の外に用意されていた。

そして、ひさしぶりに口を開いたのは、兄の四十九日だった。
夜になって、父親に無理やり部屋から引っ張り出されて、こういわれた。

「兄に会いに行こう」

先生と父親は月明かりの中、先生が溺れた場所の近くの岩場まで向かった。
そして、しばらく二人とも無言でじっと水面を見つめていた。

先生は兄さんはなんで死んでしまったのだろうかとか、あの水の中でみたものは本物だったのだろうかとか色々と考えた。

すると、暗い少し離れた水面のほうに、何かが見えた。
靴だった。

たしか、あの日、兄が履いていた靴だった。
なぜかその時は先生は、あれを拾わないと!とか思って、そんで、ニ、三歩海のほうに近づくと、ガシッと後ろの襟を父親に掴まれ、どうしたんだ?と聞かれた。
兄さんの靴があそこにある、と先生が答えると。
父親はどこにある?よく見てみろと言ってきた。

先生はもう一度、目をこらえて先ほど靴があった場所を見てみると、今度は何もなかった。

あれ?と先生がふしぎに思っていると。
父親は何かに納得したかのようにして、そして先生にこういった。
内地のほうに知り合いがある。お前をその家のほうに送る、と。

そこからの話を、先生はまぁ色々あったと略した。

とりあえず、わけもわからず急にある人のオウチに居候させてもらうことになって、その家はかなり遠い親せきの人で、歳をとった夫婦だったんだけど、子供がいなくて、それなりにかわいがられた。

そして、兄の死からしばらくして、先生は水の流れがある場所がこわくなった。

というのも、死んだはずの兄の声が聞こえてくるらしい。

最初はなにか聞こえないことをひたすらささやくだけだったんだけど。
だんだんと、その声はエスカレートしていった。

兄の声は様々なことを語りかけてきた。

実は兄も自分のことが嫌いだったこと。
確かに兄と三男は親から甘やかされたが、でも、兄弟の仲で、いつも先生が一番親に注目されていたこと。

両親は、いつも次男の先生と一緒にいることが多かったとこ。
自分はどんなミスをしても、親に軽く流されていて、どこかないがしろにされていた感覚があって、先生がうらやましかったこと。

先生が叱られると、良い気味だとおもっていたこと。
泣いている先生を慰めることで、自分はできた人間だと良い気分になれたこと。
そして、自分が死んだのは先生のせいだ、ということ。

先生は、その後実家に戻ることはなかったらしい。
なんだか、あの町の、あの海の近くに行くのがこわかったからだ。

中学に入って、高校に入って、そして大学で京大に入った。
大学に入ると、父親ががんで亡くなったと知らされた。

大学ではとにかくいろんなことを勉強して、いろんな人と出会って、やっと、自分を悩ます兄は「?」という存在になったのではないかと分かった。
兄は、いまでも、あの海のほの暗いそこで、先生をおぼれさせたいとおもっているんだと。

自分には霊感のようなものがあって、自分の両親は自分を守るために、色々ときついことを言っていた。

自分は両親が嫌いなわけではなく、好きだからこそ、愛してほしかった。

自分が兄に対して複雑な感情を抱いているように、兄も自分に対して色々思っていたこと。

そして、先生は後悔した。

父親にも、兄にも、言いたいことはたくさんあった。
でも、周りの状況とか、自分の意地とかとういうのが邪魔して、素直になれず、何も言えずに二人はもうなくなった。

そうして先生は結局のところ自分という人間にとって、一番大切なものが何なのかを見定める力が足りないと、そう感じた。

まぁ、人間ならそういう部分少しくらいあっても仕方ないかもしれないが、先生の父親は頑固おやじで、先生も少しそれに似てしまったせいかもしれないが、素直になれなくて、それで苦しむことが多かった。

だから、先生は中庸の道を選んだ。
中庸はよく中途半端とかそういう意味で勘違いされるけど。
本来の意味はそういうものではない。

どんな時でもその時々に起きたことを判断する場合、どちらにも偏らず、自分の平常心で行動でする、という意味だ。

まぁ気になる人はググってみれば、もっと深い話とかあると思う。

前にも言ったが、先生はポリシーというかそういうのを持っていて、良いことをしたら、同じくらい悪いことをするとか、正直なことを行ったら、次はウソをつくとか、はたから見たらただのおかしい人なんだけど。
これは一種の願かけで、そういう風にして、いつも自分の素直な気持ちを見つめることにしているらしい。

これが先生が自分の道を選んだ経緯だ。

話を聞き終わった俺は、先生にではなぜ、俺にはこの道が向いていないんですか?
と聞いた。

まぁ、話を聞く限りこういう考え方とかも悪くないかなぁと思う部分もあったからだ。

先生は俺の質問にこう答えた。

世の中には霊だの幽霊だのが見える人間と、そういうのが全く見えない人間がいる。

そしてさらに、そういうのを見えると主張する人間には、本当に霊感があるひとと、霊感がないのにあるといっているひとと、二種類存在する。

でも、この二種類の人間、どっちにしても、どこか心がおかしい人間だ。

この世に本当にいるのかいないもかも分からないようなものが見える人間ってのは、どこか心に闇がある。そういう闇を通して、人間は化け物を見つけだす。

そして、見えないくせに見えるとか言い出すような人間も、心は不健康だ。そんなウソをつくやつはつまり、心がどこか満たされていない人間である証拠だ。

まぁ、見えない人間が全員が全員正常とは、いわないが。
でも、先生の見立てでは霊感のない俺は、精神的な部分においてはきわめて健全な人間であるということだ。

そうなれたのは、きっと俺が良い育てられ方をされたからだ。
もちろん先生にではなく。

もうすでにいなくなった。俺の家族のほうだ。
人格を形成する一番大事な時期に、俺は間違いなく幸せだった。

今でもたまに思い出すんだ。

ちょうど昨日金曜日だったけどさ。俺が小さい頃の金曜日は、よく家族全員で金曜ロードショーとか一緒に見てた。

俺は親父の膝の上で、妹は母親の膝の上。
そんでインディ―ジョーンズとか見て、重要なアクションシーンとかになると、俺は少し背伸びをして、わざと父さんの目線を遮って見えなくするといういたずらをした。

そんで父さんは、いつも、ちょ、おまwwwwみたいな感じで、なんとか見ようとして、頭をよこにずらしたりするんだけど、俺もそれに合わせて頭を振って隠したりして、最後は、父さんが顎を俺の頭のてっぺんに乗っけて、こら!つかまえたぞーみたいな感じなこと言って、となりでみてた母さんも、妹も、それで笑って。

少しエッチなシーンとかになると、急に父さんが手で俺の目をふさいだりして、いや、俺はもうこういうのわかるからとか、指の間から覗いたりもした。

そういう家族だった。だから先生がいう、俺が幸せだったというのは多分間違いなかった。俺は良い家庭で育てられた。

先生は自分は自分に素直になれない人間であるが、俺はそういう人間ではないと言った。
何か喧嘩した後でも、すぐに笑って人に謝ったり、許せたりして。
傷ついたりもするが、その分他人のこともおもったりもできて。

よくついついさぼっちゃうが、それでもなんとか自分を律することができて、自分の幸せのよりどころというか、そういうのがはっきりとわからないかもしれないが、ぼんやりとイメージできて、そしてそれを追い求めることを恐れない。

俺のそういうところが、間違いなくただの「普通の人間」であると、先生は評した。

でもだからこそ、そんな俺には、道についてのアドバイスはできないと先生は続けた。

この業界の人間は大抵どこかおかしい境遇があって。
正直、殆どのやつはみんな頭がわいている。

そんなどこか心が欠けている奴なら、それなりに苦労はするだろうが、自分の心に住む「魔」はすぐに見つかるし、自分にあった道もかなり分かりやすい。

自分でわからなかったとしても、少し人生経験があれば、そんなもの簡単に指摘できる。
でも、俺が「普通」であるゆえに、逆にそれが難しい。

俺の心に何が足りないのか?何が俺を不満足にさせているのか、客観的にみても、主観的に見てもそれは非常にわかりずらいものなんだ。

もっと簡単にまとめると、つまり
『お前はこんな仕事には向いていない』ということになるのだがwww
とか、その後先生はちゃかした。

そっかー、俺はまだなんとか「普通」の範疇にいれるのかー
とか、初めて聞いた先生の過去話や自分の道についてもやもやして、そのあとの飲みは普通のとりとめのない話をして、終わった。

先生は自分の霊感によって物の怪を惹きつけてしまい。そのせいで巻き込まれた形で兄の方が物の怪に捕まってしまった。先生は物の怪になってしまった兄の魂?を救える方法を調べて探していくうちに、だんだん妖怪と交渉する仕事をしていくようになった……
こんな感じかね?

んで、先生は一家で優秀な血筋を持っているからプライドが高く意地っ張りな性格。

小学生くらいだった君を引き取ったのは、自分と同じように妖怪に狙われてるからで、その君を救う事で、あの時の幼かった自分と兄を救えるような罪滅ぼしかな?

人って自分の過去にある大きな失敗と後悔の傷を、自身が投影出来るような似た人に対して、それを救済するような行動をする事により、自身の過去のトラウマという傷を少し癒やそうとするよね。
君の一家はイタチの呪いによって亡くなってしまったけど、先生は君を引き取る事が怖くなかったのかな?

きっと先生は、いつ死んでも後悔しないような人生の道を選んだはずで、1人の人間を養子に迎えいれて大人になるまで見守るって凄い事。
歳を重ねるほど人間の成長の難しさを知るから、それなりの覚悟があったのだろう。

どうなんだろうね……
今はもういないひとだし。何考えていたかなんてわからない。

ではまぁ、先生の話の本題のほうを

729 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 19:59:30.08 ID:z3x+HMst0

その日は先生に呼ばれて、先生のところまでいったんだけど。
先生の最初の発言でびっくりした。

「もう一人新しく弟子をとることにした」

俺の顔はΣ(゚д゚;)って感じになって。

え?急にどうしたんですか?と先生に聞いたら、実は弟子にとるつもりのやつは、自分の弟の子供で、ちょっと込み入った事情から、そいつを入門させることになったとかなんとか、いきなりすぎる!相談ぐらいしてくださいよと俺は思ったが、まぁ、先生がいつの間にか勝手に色々決めるのはよくあったことだし、「ちょっと込み入った事情」ってのもなんか人の家庭の問題っぽいあんまり詮索しないことにした。

そんで、先生はその弟の子供に会うために、何日か後に、久しぶりに里帰りをするといった。俺は、え?先生が実家に!とかさらに(゚д゚;)だったが。

でも、そういえばこの時期って先生の父親が亡くなった時期だ。と思いだした。
いつかは忘れたんだけど、先生の父親は9月の終わりごろに亡くなったと、聞いたことを思い出した。

ちょうどその年は先生が大学入試の年で。
先生の気をちらさないために、危篤のこともそして、亡くなったということも、合格の発表までに教えられなかったらしい。

俺は少しびくびくしながら先生にこう聞いてみた。
先生の父親の墓参りとかしたらどうですか?と、

先生は俺のその言葉を聞くと、少し意外だったのか目を見開いた。
そして、4日ほど滞在する予定だから、もし気が向いたらいくかもしれない。と答えた。
俺はそうですかー、と相槌をうちながら、内心でやったー、4日間もフリーじゃ!と、ガッツポーズをとり、自由をどう謳歌しようか考えた。

ちょうど、この時期にだけど、先生に高卒認定試験を受けろと命令されて、夏に受けて、一度おちちまって、もっと勉強しろ的なことを言われて。

11月にある試験に向けて毎日、先生のところでそういう勉強させられた。
俺は勉強がすきってタイプでもないし、短い間でも、先生がブックオフで適当に買ってきた教材とおさらばできるのは感激ものだった。
そんな俺の考えを読みとってか。先生は俺にこういった。
ちなみに、お前の分の旅券も予約した。

どうでもいいが、ちょうど先日、二回目の試験受かったという知らせが。
でも、これがあると中卒じゃなくなるんですかね。
難しいというか俺の場合は圧倒的に時間が足りなかったw

先生の見立てでは、8月で合格、10月にセンター受けて大学に行けとか言ってた。
俺は自分はもう22だし、いまさらーとかいったが、先生は大学に行けば4年間を無駄にしたことを後悔するが、行かなかったら、一生を無駄にしたと後悔するっていってた。
さすがにセンターの申し込みはまにあわないか…
まぁ、できても碌な点数とれないと思うが。
大学はまぁ、まだ考える時間があるしね。

それから何日か後、俺は先生と一緒に先生の故郷に向かった。

特に場所は明言しないけど、海に面した県での小さな港町だった。

俺は、いくならいくで、そこまで反発しなかった。
先生の生まれた土地のことは少し興味あったし、自分のおとうと弟子になるであろう人物も気にならないというと大ウソになる。

しかし、新幹線に乗るとき、先生がまた高認の教科書を押しつけてきた時はさすがにげんなりした。

出発したのは早朝の8時くらいだったのだが、その場所に到着したのは午後の6時あたりだった。昼飯はおにぎり二つだけで、かなり腹が減った。

俺としては、先生が帰ることはもう家のほうには伝わっているし、関係が悪いにしろ、港町だし、お寿司とか食えるんじゃないかなぁとか淡い期待を抱いていたが。

もちろん、それは裏切られた。

目的地に着くなり、先生は俺をつれて人気のないところに向かった。

そして、持ってきた荷物をあさり始めて、すごく大きな釘を一本取り出して、アスファルトじゃない地面に打ち付けた。
先生は自分の髪を一本ぬくと、すこし頭を出した釘に結構複雑に撒きつけた。
俺はそれを見ると、少し驚いた。
これは「定山」という、うちの流派のなんというか決まり事で。

もしこういうのを見つけても、だれも抜かないでほしいwww

結構危ないときとかにやるもので、自分の魂というかそういうものを地面にうちつけるという意味を持つ。

だから、妖怪とかで魂持って行かれそうになっても、この釘が刺されってさえいれば、無事でいられるというものだ。

基本的に、釘をうったひとが一人。これを?搬といって。
この人が色々動きまわったりしても大丈夫なようになる。

その打ち付けられた釘を見守る人が一人。これを助搬という。
この人は釘が無事なのかずっと見守る必要がある。

釘で打ち付けれているとは、いえ、魂がそこにあるんだから。
いろんな悪いものが寄ってくる。だから、そういうのから釘を守る役割だ。

釘は市販のやつを溶かしたあとに、自分の薬指の血をいってきたらしたり、他にも色々やったりして、最後に、形にしたものだ。

俺は先生にどうしたんですか、急に?ときいたら、すこし兄が亡くなった場所を見てくる。見張っておいてくれ的なことを言って、日本酒を一本俺に渡すと、すたすたとどこかに行ってしまった。

俺はえ、でも、と言いかけたが。やはりやめることにした。

先生はあまり俺に助搬をまかせたがらない。
理由は簡単で、俺のまわりにいるイタチたちになにかいたずらをされるのが怖いんだろう。

でも、これを俺に任せるということは多分。

俺のイタチなんかより、遥かに怖いものに会いに行くんだろうと。
俺はそう感じた。

時期的に肌寒くなっていたころだったし、それに日も短くなっていて、もうほとんどあたりは真っ暗だった。

前にも書いたが、俺はあまり飲めないタイプではあったが、先生からもらった日本酒を一口だけ飲んで、後は釘のまわりに円を描くように撒いておいた。

すきっぱらだったから、すぐに酒で体がポカポカしてきた。でもさすがに量はそんなに取らなかったから、頭がぼうっとするようなことはなかった。

「定山」が魂を打ち付けていられるのは精々2,3時間だ。
それ以上長いと、魂は自分の体に戻ってしまう。

俺は携帯を取り出して、タイマーを3時間に設定した。
その時間になっても先生が来なければ、釘を引っこ抜いて、先生を探しに行かなくてはならなかった。

正直すこしこわかったのもあってか、いつの間にか俺の頭の中で、夏祭りの曲のサビの部分が延々と無限ループしてた。

うちあげハナビー
うちあげハナビー
うちあげハナビー

多分9回目ぐらいになったときかな。

今までお酒でポカポカしていた体がすっと、謎の寒気を感じた。

俺はドキッとしたが、すぐに釘の周りのお酒の濡れた後を見つめた。

ここからが本番であった。

お酒は水より乾くのが少しだけ早い。
もちろん、科学的にはアルコールが入っているとかそれだけなんだけど。

しかし、昔の人はこれを妖怪がお酒を「飲んだ」とおもっていた。

妖怪というのは大抵お酒が好きで、かなりな有名どころだとヤマタとかもそうだしね。

夜にお酒とかをこぼすと、そこにそういうものが群がっているように感じるとか、霊感ある人から聞いたことはある。

実際どうかは知らないけどね。

だから、まったく霊感のない俺はこういう風にお酒を少し撒いて、その渇きぐあいで、やばさを判断したりする。

そしてこの状況だと、そういうものの注意力を釘からそらす効果も期待できた。

酒のほうを見ると案の定、殆ど乾ききろうとしていた。
俺は急いでお酒をまた同じあたりに撒き散らした。

でも、こんなのはただの時間稼ぎにしかならない。

お酒の量にも限りがあったし、このペースじゃすぐにつかい果たすのは目に見えていた。
だから俺は持ち物のカバンをあさって、短いしめ縄を取り出した。

お酒を好む妖怪は大抵まだ話せる相手だ。
人間にとって害があるか、ないかはともかく、少なくとも交渉しようと思えばなんとかなる奴が多い。

だから、俺は一種の囲いを作ろうと思った。
中二的に表現すると、結界だけど、そんなすごいもんじゃない。

ここでいう囲いは言葉にすると意味合い的には「なわばり」という表現のほうがいい。漢字にすると「縄張り」だ。

つまり酒のあるほうの土地をお前らにやるから、代わりにこの釘の打ってある場所は俺のもんだから。入ってくんなよ的な暗黙のルールを結ぼうとした。

これにまつわる昔話もひとつあって。

昔々あるところに猿好きの爺さんがいた。
その爺さんは猿が好きすぎて、家族さえ捨ててしまい、何十匹の猿を飼った。
しかし、猿を飼いすぎてしまったせいか、餌代がたりなくなった。

だから、ある日の朝、爺さんは猿にこう言った。
「前までの餌は、朝に栗4つ、夜に栗4つだったが、今日からは朝に栗3つ。夜に4つで我慢してもらえないか?」

それを聞いた猿どもは激怒して、猛反対した。だって、朝の栗が一個減ったんだから!

怒り狂った猿たちを見たじいさんは、しょうがないなぁというような顔をして、
「わかった、わかった。もう怒らないでくれ!こうしよう。さっきは朝に栗3つ、夜に栗4つ。といったが、仕方ない。特別に朝に栗4つ、夜に栗3つにしてやろう。これで満足か?」といった。

それを聞いた猿たちは、朝に4つくれるのか?ならいいやと納得し、その案に賛成した。

夜のこと?そんなの夜にまた考えればいいじゃん。もし3つだけだったら、また泣き叫べばいいし。と猿たちは思った。

でも、実際に夜になって、猿たちがどんなに泣き叫んでも、爺さんは約束だからと言って、栗を3つしか渡さなかった。まぁ、あげたくてもカネがないからね。

猿たちはそれで納得するしかなかった。

人間もこの猿たちのことをバカにすることはできないかもしれないが、でも、妖怪はこの猿たちよりもっとゲンキンな奴らで、しかも、一度した約束は絶対に守る。

俺はしめ縄に「ハァ」と自分の息を吹きかけた。

あと3分の1くらい日本酒の入った瓶をもっとすこしだけ遠くの場所で、瓶でこんこんこんと地面を3回軽く叩いた。

そして、瓶をそのまま地面に置いて、いわゆる神社に行く時の二拝二拍一拝のようなことをして、最後に酒瓶を軽く蹴って、酒をこぼさせた。

これで、妖怪の気はこっちのほうに向くはずだ。

あとは急いで、釘のところに行って、しめ縄で釘と自分を囲えば良かった。俺は少しだけ安心して、釘のうちつけてある場所にもどろうとニ、三歩あるいたが、その時だった。

ピシャリと、何か濡れているものが、俺の肩をつかんだ。
その瞬間、足がまるで鉛のように重くなって、全身から嫌な冷や汗がどばっとふきだした。

耳のあたりから、なにか人の息遣いを感じた。
でも、もちろん生きた人間のような温かいものじゃなくて、すごく冷たくて、ねっとりとした嫌なものだった。
まるで掴まれた場所から吸い取られているかのように、俺の体の温かみが消えていった。

やばい。

俺もこの仕事をもう何年やってきたが、さすがに関わっちゃいけないものと、なんとかなるやつの区別とか付く。

その時俺の後ろにいた何かは、間違いなくやばいやつだ。

俺は自分の中の激しい振り返りたい欲求をなんとか我慢して、それでも釘のほうに行こうと必死に歩いたが、奇妙なことに、どれだけ歩いても釘に近づくことはなかった。

その頃になると、俺の心の中でも焦りが生まれはじめた。
そして焦りはどんどん恐怖へと変わっていって。恐怖は俺の理性を食いつぶしながら、どんどんと成長した。

俺はパニックになる寸前の状態だったが、最後の気合いをなんとかふり絞り、寒気でカチカチな足を曲げて、地面に左膝をつけた。
そして、頭をあげ、はるか空のほうを見上げた。

流石は田舎。あたりは真っ暗だったし、いい感じに星空が見えた。
北極星を見つけると、俺は手で銃の形を作り、そこに向かって「バン」と口で言った。

なにか由来のある術とか、由緒ただしい技とかじゃない。
強いて言うなら、もう名前さえ忘れたんだけど。昔みたアニメの主人公のかっこいいライバルが死ぬ前にやった行動で、自分で決めた、自分を落ち着かせるための一種の儀式だ。
退治の時に一番怖いのは相手の妖怪じゃない。
自分自身の心の中に眠る恐怖だ。

人間でも同じだ。
交渉するときに、弱気になると、相手は強気になるし、こっちが強気になれば、相手は弱気になる。

怖がれば怖がるほど、対峙しているものは勝てないものになっていく。
でも、逆に、落ち着いて、自分の友人といるような心持になれば、相手側も心を開いてくれる。
俺は怖くなった時、この行動をして。あのとき見たアニメを思い出す。
そんで星空を見上げると、なんというか自分とか妖怪とか全部がちっぽけな感じがして、
心の何もかもが穏やかになっていく。

ハタから見たらかなり痛い行動だったかもだが、そんなことは気にしていられなかった。
そこから俺は、2,3回深呼吸をしたが、もっと気分がよくなった。
海潮の香りが微かにしていた。

これが終わったら、絶対先生にうまい寿司を奢らせてやる。
そんなことも考えた。

すると不思議なことが起きた。

さっきまでがっしりと俺の肩を掴んでいた「何か」の存在が急に消え、体が自由に動くようになった。

俺はすぐに立ち上がりながら、手のひらに唾をかけて、ぽんぽんと額を4回たたいた。
そして、今度こそ、釘のほうに向かい。しめ縄で俺と釘を囲った。

周りに撒いた酒は殆ど乾ききろうとしていた。

急いで俺は「そっちの酒と、この円以外の場所はお前らのもん、でもこの円の内側は俺のもん」といった感じに詩を読み上げた。

それからどれくらい時間がたったか。
俺は囲いの中でひたすら、じっとしていた。

普通ならこういう風に時間を潰す時、携帯いじったりするだろうけど、今の状態だとそれができなかった。

携帯の液晶が鏡になって、なんか変なものが見えるのを避けるためだ。

だから、かなり手持ち豚になってたんだけど。

さっきよりはだいぶ落ち着いていたのか。
また心ん中で夏祭りのメロディーがループし始めた。

そんな中、急に「ぴぴぴぴ」と携帯のタイマーがなったときは結構びっくりした。
俺は「あ、まじかよ。先生3時間たったのに帰ってこないのかよ」と思った。

これはつまり先生の身に何かが起きたかもしれないということだ。

俺はまた焦って、地面に突き刺さった釘を抜こうとした。
今すぐ先生を探しに行かないと。

「定山」をやり終わった後の釘とかは使いようによっちゃ、「定山」をやった人間を呪う道具にもなるから、回収して、ちゃんとした処理をしないといけない決まりがあった。

でも、手が釘に触れたところで、俺はぴたりと動きを止めた。

うちあげーハーナビー

これで78回目だ。

仕事をしているとき、時間を気にすることは多い。術や儀式によっては、やり始める時間とかもちゃんときまってたりする。

でも、時計や携帯の時間というのはあくまで目安で、完全に信用できない。
なぜなら、妖怪に「目隠し」されて、変な時間が見えてしまうのだ。

大抵は蝋燭とか線香とかの短さとかで時間を大まかに判断する。

次点として、こういう風に音で判断できるものを使う。
そして、それもできない場合は心の中で図る。

俺の場合、それが「うちあげーハーナービー」のサビの部分だ。

心の中で図る場合、焦って早く回数を数えてしまうこともあるが、遅くなるという場合はめったにない。

さすがにタイマの音が鳴るのは早すぎないか?と数えた回数を思い出して、心の中で引っ掛かった。

そういえば、今の携帯の音、聞こえたのは俺のポケットからじゃない。

俺の後ろのほうからだ。

俺の動きはそこでピタリと止まった。
ポケットから携帯を出して、なるべく液晶をのぞきこまないように、時間だけを見た。まだ2時間にもなっていなかった。

確かにそれまではなんか大人しいなぁとか疑問に思ったりしたけど、俺の携帯の音をまねするとかこういうパターンはやっぱり奴らだ、と思った。
特に証拠はなかったが、長い付き合いだし、これはイタチたちのいたずらであるとなんとなく確信した。

わりと危ないところだった。
もし本当に釘を抜いちまって、先生になんかあったら、結構心に来てたはずだ。

まぁ、イタチたちの狙いはそれなんだろうけど。

俺がそのまま、釘に触れていた手を離すと、どこからともなく「ち」というような舌打ちする声が聞こえた。

先生が戻ってきたのは、それから約30分後だった。

かなり疲れた顔をしていて。

俺はどうでした?と聞いたが。何もなかったよ。と首を振って、それ以上何もいわずに釘を回収すると。

先生は本来の目的地にもくもくと、向かい始めた。
まぁ、なんというか複雑そうなので俺も何も聞かなかった。

しばらくすると先生の実家のほうに着いたんだけど。
それなりに大きなお寺で、あまり表現しすぎるとすぐ流派とか分かっちゃうから。
具体的な部分は省く。

出迎えてくれたのは先生の弟とその嫁さんと先生の母で。
どうやら、弟のほうが寺を継いでいるみたいだった。

母は先生に大きくなったねぇとか言ってて涙ぐんでて、俺は晩御飯を期待したのだが、なんというかそういう雰囲気じゃなかったというか、さすがに初対面の人たちにご飯は?とか聞く勇気もなかった。

俺は弟さんの嫁さんにとまる客室に案内してもらうと、そのまま放置プレイをくらった。

先生はさすがにつもる話しでもあるのか、弟さんと母親さんと家のどっかに消えていった。

携帯で2ちゃんのスレみながら、空腹を紛らわすこと2,3時間。
先生が部屋に来て、ちょっと来いと言われた。

先生は弟さんと一緒にいて、弟さんはメガネをかけていて一人称が僕で、かなり丁寧な印象な人だったんだけど。どこか不安げだった。

その二人について、家の中を進んでゆき、とある部屋でとまった。
弟さんが部屋をノックして、入っていいか?と聞くと、部屋の中から、どうぞ。と女性の声がした。

中に入ると、そこは13歳くらいだろうか?中学生っぽい感じの女の子がいた。部屋は年相応というか、これが女子なんだなーって感じの部屋で。

目立つ所に書道のなんかの賞状が貼ってあった。
女の子はベットから体を半分起こしている感じで、見知らぬ人がいることにびっくりしていて、少しいぶかしげにこちらの様子をうかがっていた。

弟さんは、こちらが前に言っていた人だよ。という風な感じに先生を紹介すると、先生とその子はお互い軽く会釈をした。

そんで、その次にちょうど俺も紹介されそうになった時、俺はその女の子と目を合わせた。

すると、なぜか女の子は急に手で口を押さえた。
顔色も見る見るうちにものすごい勢いで真っ青になって。

そのまま、吐いた。

弟さんはそれを見ると急いで嫁さんを呼んた。
嫁さんは先生の母親さんと一緒にやってきて、女の子の周りの惨状を急いで片づけ始めたり、大丈夫?とか女の子に聞いたりした。

俺は状況がわからず、ウヘエ~って感じだったんだけど。
先生は弟さんと2,3、小声でしゃべると、ついてこいと俺に言って、すこし離れた部屋に移動した。
その部屋は和室で、先生のが泊る部屋みたいだった。

そんで、三人で座布団に腰をおろすと、俺は、あの子は?と先生に聞いた。
先生はお前の妹弟子になる人だ。と答えた。
俺はびっくりした。

さすがに女だとは思わなかった。
なんせ、うちの流派は女を入れない決まりはないが、やっぱり女性を忌避する部分がある。

なぜなら、女性は男より変なものに入り込まれやすい。
それはイタコとかそういう意味合いでは役に立つが、うちのやり方だと、正直ただの足手まといにしかならない。

どうしてまた女性を?と俺は聞いたが、あの子は少し危なくてね。と先生は答えた。そして、弟さんに、それにしても、またひどくなったのか?というような言葉を投げかけた。

弟さんはすこし言いにくそうになったが、どんどんひどくなる一方だ、と答えた。

先生はそれを聞くと、俺のほうを見て、なら仕方ないなぁとつぶやいた。

俺は良く状況がつかめなかったんだけど、さっきの女の子の様子とか、このやり取りとかを見て。少しピンと来て、もしかして、あの子って霊感あるんですか?と先生に聞いた。

先生は、ああ、そうだ。それも随分とはっきり見えるようだ、と頷いた。

俺も仕事柄上たまに霊感があるというひと(自称だから本当かどうか知らんが…)と、たまに関わり合うことがあるんだけど。

みんな結構俺のことを嫌な目で見る。なんか後ろのほうでたくさんの真黒な何かがニタニタとしているらしい。
まぁ、もうそれが何かは分かり切ったことなんだけど。

でも、目を合わせただけで吐かれたのは初めてだった。

弟さんは、あの子は小さいころから、少しは見えていたらしいけど、本当にひどくなったのは二か月前のある出来事からだ、とその時のことを話し始めた。

女の子は小さい頃はわりと変なものが見えるとか言ったりしていたが、その頃にはもうそんなこともなくて、普通な子って感じだった。

その日は土日だったんだけど、女の子は学校に部活しにいってて。
帰りがすこし遅くなると家に伝えていた。

でも、いくらたっても女の子は戻ってこなくて、夜の10時くらいになると、さすがに弟さん家族は心配になり、女の子の友達に電話したり、学校のほうに聞いてみたりしたが、なんと、女の子は部活にも行っていないという答えを得た。

とりあえず、弟さんたちは12時まで自分たちで女の子をさがして、それでも見つからなかった場合、警察に通報しよう。と話し合い。

近所の人とかに女の子の行方を聞いたりして回った。
近所の人たちも女の子が消えたことを聞くと、捜すのに協力してくれて、町を結構くまなく探した。

でも、女の子はどこにも見つからなかった。

捜している人たちがまじでやばいんじゃないか?とか焦り始めたころ。
町の近くの草むらに、女の子の名札のついた制服が見つかった。

捜していた人たちが急いでそのあたりをさらに探してみると、少し離れたところに女の子のカバンがあって、さらに離れたところにスカートとか、靴とか、どんどんと町の離れの海の崖のほうに続いていた。

大人たちはそっちのほうに向かった。

これはもしかしたら事件かもしれないと、誰かが警察にも連絡した。

場所に着くと、あたりはもちろん真っ暗なので、懐中電灯の光をたよりに、何か手掛かりがないか探した。

すると、崖の近くの大きな岩の上に人影があった。

近づいて、光を当てると。そこには女の子の姿があった。
ほとんど裸で、両手に何か持っていて、何か楽しそうにぶつぶつ言っていた。

それを見た弟さんは急いで女の子のほうにいったんだけど。
女の子が持っているものを見ると唖然とした。

女の子は小さな木の枝を箸のように片手で持っていて、そして、もう片方の手には石を持っていて、その石の上には大量のミミズがいた。

女の子はさもおいしそうに、ミミズを木の枝で挟むと、口に放り込み、ひとかみ、ふたかみ、ごくり。

彼女は生きたミミズを啜っていた。

異様な光景に弟さんは凍りついたんだけど。
他の大人たちが来るのを手で静止した。なんせ女の子は裸だ。

その間もずっと、女の子は目の前に誰かがいるかのように、その何かに、ひたすら話しかけていた。

何を話しているのかは良く聞こえなかったらしい。

弟さんも少しも知識があったみたいで、ごくりと唾を飲み込むと、懐中電灯を一度消して、光を出すガラスの部分にはぁーと息を吹きかけて、女の子が話しかけている場所に向かって、一瞬だけ電灯をつけて、またすぐに消した。

その一瞬に、弟さんは見た。

何もなかったはずの場所には、なにか動物のようなものがいた。
弟さんはかなり怖かったんだけど。
それでも、自分の娘を助けたい一心で、覚悟をきめた。

数珠を握り締めると、大声でお経を叫びながら女の子のほうに走って行って、手に持ったミミズを払い落した。

すると、女の子はたちまち無表情になって、弟さんをじっと見つめた。

弟さんはそんな女の子に服をはおらせる、なんとか彼女を大人たちのいるほうに引っ張って行った。

ちょうどそのころには警察も来ていて、全員急いで彼女を病院のほうに運んだ。

いつの間にか女の子は気を失っていて。意識を取り戻したのはそれから2日後らしく、失踪している間のことは全く覚えがないらしい。

そして、弟さんは彼女を無暗に刺激したくなかったし、どんなふうに見つかったのかは、女の子に黙っていて、彼女は自分に何があったのかまだ知らない。とのこと。

俺はこの話を聞き終わると、ふと、これってもしかして「天命漏らし」じゃないのか!?と思った。

もしそうだとしたら、女の子は確かにかなりヤバい状況だ。

「天命漏らし」というのは、占いの業界で気をつけないといけないことなんだけど。
未来をはっきりと、誰かに伝えることで起こる。
まぁ、占いとかで本当に占ったのか嘘八百なのはともかく。
みんな曖昧にしか言わない理由がこれだ。

はっきりと誰かに未来を伝えてしまうと、その未来までの時間分の寿命が、聞いた相手も、教えるほうも、ちじむというものだ。

だって、未来に起こるはずのことを今知るというのはおかしいから、そのぶん歳をとる。と理解すればいいのかな?
というものだ。

これは漢字からもわかることなんだけど。

天命というのはまぁ、運命とかそういう意味なんだけど。
「寿」という漢字の意味も、確か本来は「天命」からきたはずで、「天命漏らし」がそのまま「寿漏らし」につながるわけだね。

だから、普段の生活でも、もし予知夢とかみたら、あんまり他人に伝えないほうがいいね。寿命ちじむんだ。

あとすごい予言者とかが預言書書いたりするけど、それが全部意味不明な言葉だったりするのもこれを恐れてだ。

そして、妖怪は占いとかを通して未来をしることはできないんだけど。
人をだまして、人を通して無理やり聞き出すことができる。

こういう風に妖怪が人間に何かをおもてなしして、さらに話しこむ場合は大抵、人間をコントロールして占いとかさせて、天命を聞きだしている。

妖怪はあんまり寿命とか気にしないけど、人間側からしたらたまったもんじゃない。
そのまま漏らし過ぎて死んでしまう例もある。

俺は先生に自分の思ったことを伝えると、先生は自分も同意だと答えた。

もうすぐ元旦だし、ひとつだけ短いお話を。

277 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/31(火) 20:56:23.80 ID:IhiEfY/f0

前に確か、「色々別の流派もあるみたいだけど、そういうのと交流があるかどうか」
って質問あったはずだけど。

普段はあまり接触したりはしない。

たた、5年に一度くらいに何流派かで集まって『鬼隠し』というゲームをやる。

由来はたしか、大昔に、まだ術とかそういうのとかが普通に使えるような時代に、何流派かが合同で、どうしようもなく強くて、人間を食べるのが大好きな大妖怪『ののしろ』ってやつを封印したらしいんだよ。

そこで、5年に一回『鬼隠し』という当時の封印方法に似たゲームをひそかにやって、鎮魂?するんだ。

鬼隠しのルールとしてはまず9人で始めないといけない。
九人がそろわないと絶対に開始いしない。
そして、九人は全員黒い布で体を全部覆って、少し重い特徴的な仮面を被って、手袋をはめて、一切の皮膚を出さないようにする。

なまはげのまっくろくろすけばんかな?

そんで、始める場所までその姿で向かって、最初にゲーム場所にたどり着いた人から、あらかじめ用意してある。鬼、馬、蝉、山、臼、船、鹿、火、人のお札を左から順に取っていく。

そして、枯れ葉の書かれたお札もあるので、それも一枚ずつ取っていく。

9人そろった段階でゲーム開始

お互いがだれなのか、もちろん分からない状態で、もちろん、ゲーム中お互いは一切自分の皮膚を見せたりしては、いけない。
しゃべったり、筆談してもいけない。

参加者は全員、ばらばらに森の中に入っていく。

そんで、一定の範囲内で自由にうろうろするんだけど。

そこで持っている二枚のお札に何書いてあるのか、相手側に見えないように取り出して、同時にお互いの持っているお札を一枚引っこ抜く。

つまりお札の交換をするわけだ。

この時に、もしのこっているお札が「枯れ葉」二枚になるとそこでゲーム失格となる。

なにも言わずに、そのまま森からさることになる。

最終的にゲームが終わる条件は誰かが「鬼」と「人」の札をそろえた時なんだけど。

もし「鬼」を持っている人が「鬼」を取られずに、「人」を引き当てられれば鬼の一人勝ちになる。

もし「人」を持っている人が「人」を取られずに、「鬼」を引き当てられれば「鬼」以外の全員の勝ちになる。

人が勝った場合、そこで仮面を外して、ゲームに残った人間をかき集めてそこで解散。
まぁ、普通は残った人で初詣とか、飲みに行ったりする。

鬼が勝った場合、これは今までなかったことらしいんだけど。
ののしろが出てきて、参加した人全員食べちゃう。

ちなみに、だけど。

失格者は静かに森をされというルールもあるよね。
でも、この失格者が本当に森からされるのかはわからない。

一説によると、ののしろさまに食われた可能性もあるらしい。

まぁそんな感じのこの「鬼隠し」だけど。
5年おきの元旦の夜中にやるわけだ。

まぁ、ルール上、参加者たちは一切交流することはできないし、見えないように交換するから、結構運げにみえるのに、今まで鬼が勝ったことがないの?って疑問に思うだろうけど、実はこのゲームには必勝法があって。

マーキング、という行為が禁止されていないのだ。

つまり、お札のはじっこを少しおったりとかして、それで誰が鬼を持っているのかわかってしまう。

だから、最終的には人が勝つように調整はされているんだ。

しかしだけど、混乱しないためにマーキングをしていいのは「鬼」だけって暗黙のルールがある。

だから、失格は普通に出る。

俺が参加したのは一度だけだったんだけど。

その時も普通に人間側が勝った。

でも、最後に集まったときに7人の人間しか森に残っていなかった。
俺はそこで初めて、他の流派の人とあっったんだけど。

みんなとそのまま飲み屋に行った。
ただ、どうしても心残りなのがあと二人の参加者。
その二人は無事に帰れたのかなぁーと、集まった時点だと、お互いが誰なのか全くわからないから。

確認のしようがないからねw

大昔にののしろを封印した時にも、もしかしたら、こういう風に騙したのかもねw

では今日はここまでにしておく。

少し早いけど、あけおめー

最終的に天命を漏らしつくしてしまった人間はどうなっちまうかというと。

552 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/10(金) 21:56:27.70 ID:dzEbhBxC0

「無くなる」

人間でいう意味合いの寿命は、人間が生きていて脳みそが動いている間のことを言うけど、天命の意味合いでは、寿命というのは、その生まれる前から、死んだあと、死体も完全きれいさっぱり無くなっちまうまでの時間のことを指す。

つまり、完全に寿命をなくしちまったものは「無くなる」

世間一般でいう物理的な失踪以外で、神隠しとかなると、この理由がとても多いんだよ。

まぁ、だから一度神隠しにあうと、よく次なりやすいとかいわれるけど、そりゃあ、寿命大部分なくしてるんだからね。
いつ天命がつきて消えちまってもおかしくないんだよ。

だから、天命漏らしで生存した場合、別に歳を異常に取って帰ってきたりしたない。

取られた量にもよるけど、普通に歳とって死んでから、死体が消えるのが普通より早いとか、そういうこともあったりする。

節分そろそろだけど、みんな豆まきするのかな?

やるんならちゃんと作法をとか見てからやったほうがいいと思う。
一人暮らしとかでやるとなかなか恥ずかしいけどねwww

明日の夜から少し暇になるので、また来るよ。

豆まきの作法は大体ググるといいよ。

人間どうしが礼儀があるように、そう言った目に見えない類との間も、礼儀は必要だな。
例えば、挨拶すること自体はすごくいいことなんだけど。

ある人の挨拶の仕方がビンタだとしたら、その人のことをどうおもう?みたいな感じかな。

今さら感はあるんだけど、初詣とかで神社におまえりに行くときって、みんなお願いごととかするよね?
でも本来は、お願いをするために行くんじゃなくて、感謝をするために行くものだった。
去年一年間いつも通り幸せに暮らせてありがとうございました。来年もよろしくお願いします。見たいな感じに、神さまとか実際にいるかどうかはともかく。
日常に感謝を持つことが大切なのかもな。

続き

そんでもって、天命漏らしした人間自体は漏らした天命を覚えていない。

これは妖怪が忘れさせるのか、それとも知らないはずのことを知ったとしても、知ったままでいるのはおかしいから、天罰みたいな感じで強制的に忘れ去られるのか、分からないんだけど。

言ったかわからないけど、まず人間がなぜ天命を知ることができるのかというと。

どういった宗教や地域の神話でも、人間は神さまが作った残されている。
その神さまって言うのは、もちろん妖怪が祭られてできたような茶ちゃっちいやつじゃなくて、天地を創造するクラスの神さまだ。

日本神話的だと人間は神さまの子孫と呼ばれてるしね。

他の国だと、神さまの息からできたり、神さまの乳首からできたり色々だけど。

でも、人間というのは神さまの一部だったんだよ。

つまり、量は少ないけど。質的には人間と神さまはほぼ同じらしい。

これも人間が動物とかと比べたら、かなり修業しやすい理由のひとつだね。

よくある昔話で、たかが数十年修業したお坊さんが、何千年も頑張った妖怪を封印できたりする理由がここにあるのかもな。

まぁ、話がそれたんだけど、そのため人間は天命漏らしができる。
しかも、した後はしばらくはそういう神であった部分が刺激されて、目に見えないようなものたちに対して敏感になってしまう。

先生の姪さんは、まさにこの状態だね。

まぁ、天命漏らしについては、あくまで昔俺の教わった話で、先生と弟さんがいたその場ではしなかった。

先生は霊感のほうは大したことにならないと弟さんに言った。

今は色々見えすぎていてひどいらしいけど、そのうち落ち着く。もちろん、少しは後遺症として残ってしまうらしいけど、それを聞いた弟さんは少し安心したみたいだけど。

ただ、問題は、寿命がかなり縮んでいる可能性がある。と、先生は続けた。

弟さんは驚いて、なんとかできないのか?と先生に聞いた。

先生はしばらく悩むと。難しそうな顔をして、こう言った。

「方法は3つある」

出たよ。俺は複雑な気持ちになった。

妖怪関係で、天命漏らしでちじんだ寿命を回復させる方法は、まぁ、色々あるんだけど。
その大体は妖怪を呼びだして、聞き出した予知を忘れてもらう。という手法だ。

人間の知識欲の話があったけど、人間は忘れたいと思えば思うほど忘れたいと思う知識は頭にこびりついていって、自分から忘れられない。
でも、妖怪はそれと違う。
忘れたいと思ったことをすぐに忘れられるらしい。
そんで、おぼえていたいと思ったことはずっとおぼえてる。

だから、妖怪の恨みは妖怪自身が納得しなければずっとづづくし、納得すれば、すぐに忘れちまって、それで終わる。

昔のことでも重要なこと以外は全部忘れちまうらしい。

その忘れてくれるようお願いするのが第一歩。

その次なんだけど、妖怪が忘れたとしても、失った寿命が戻ってくるわけじゃない。
何かしらの方法でそれもなんとか元通りにしないといけない。

そんで最後なんだけど。

寿命を奪われないようにする。

これも結構大変で。一度とれたシールを貼り付けても、取れやすくなるのと同じように、寿命も勝手に多めに流れてしまうらしい。

これをなんとかしないといけなかった。

人間と神様はほぼ同等ということは、人間とは、その他の生体の中では1番ということ?
傲慢だなぁ

人間が一番偉いって意味じゃないよ。

修業のしやすさと、偉さは違うんじゃないかな。

人間は道行を積みやすい分、魔が育ちやすいんだよ。

先生のいう三つの方法のひとつ目。

それは「宏願」を発するというものだ。

天命漏らしの結果、寿命がなくなるんだけど、誰が寿命をとっていくかというと。
閻魔大王とかそう言うのじゃなくて、天道というか、この世界そのものが取っていくんだよね。
じゃあ、その寿命を天道に返してもらえばいい。

まぁ、もちろん、返して言えば、返してくれたら苦労しない。

そこで取るのが「宏願」だ。

本来の「宏願」というのは、いわば天に対する借金をするようなものだ。
言葉で説明するとなかなか分かりずらいと思うから。

今回も有名な一例で説明すると、みんなは地蔵菩薩ってしってる?

地蔵菩薩というのはまぁ、本当かどうかわからないけど、もともとは普通のお坊さんだった。

もちろんそれなりに徳は積んでいたけど、でも菩薩に至れるほどのものじゃないし、力もそこまでじゃなかった。

でも、心やさしいそのお坊さんは「宏願」を発した。

曰く「地獄を空にしなければ、地獄から出でることなし」と、まぁ、つまり地獄にはたくさんの悪い人がいて、心残りがあって成仏できない霊とか、もたくさんいる。

しかも、毎日現世ではそういう人がたくさん死んでいるから、その数は絶えない。

お坊さんは地獄にいるすべての人間を救ったり、改心させるまで、地獄から決して出ないと誓った。

これにより、お坊さんはそこまで道行を持っていなかったにもかかわらず、天道より、「菩薩」の位と力を前借して、地蔵菩薩になった。
もちろん、そのかわり、地獄を空にしなければ、永遠に地獄にいることになる。

というか、多分永遠にいるw

とてつもない願いをして、それを果たすための力とかそういうのを、世界から前借する。
このやり方を「宏願」というんだ。

もろちん、誓えばすぐ力が手に入るとかそんなことではないww
じゃないと、多分みんなやっている。

それなりに儀式とか準備して、修業も積んで、そして何より、その誓い事が天の意志というかなんというか、そう言うものの流れに沿っていて、しかも、それをやり遂げるという本物の決心が必要だ。

地蔵菩薩はもともと力がそれなりにあったし、何より願い事がすごく立派で、しかも、それを本当にやり遂げるというかたい心があった。
だから成功したんだね。
「宏願」自体はかなり前話した気がするけど、神道における神さまのなり方に少し近い部分はある。

ただ、もっと俗世的な例とかもあって。

たしか三国志で諸葛孔明もなんかの儀式をして、寿命を延ばそうとして、失敗したとか何とかあったけど、あれも一種の「宏願」だ。

漢という国を復興させるから、寿命もっとクレーてきなw

まぁ、そこまででかい願いじゃなくとも、もっち色々考えられる。

例えば、親孝行したいとか。何か重要なものを発明したいとか、地蔵菩薩ほどじゃないにしても、そういうのでも「宏願」を発することはできる。
そして、それ以降は、そのことを人生のすべてとして生きていく。

もしかしたら、世の中のすごいプロとかの人たちの中にも、無意識のうちに、この「宏願」というのを発している人がいるかもね。

そんで先生の姪の話に戻そう。

姪は天によって、寿命を取られてしまった。
ここで、「宏願」という手法を取る理由は、
「何々するから、寿命かしてー」の場合、「宏願」はかなり難しいが、
「何々するから、寿命返してー」だと、まだぎりいける感があるよな?

どうやら先生の中では姪を弟子にするのはすでに確定事項のようで、うちの流派「搬山」というのは前にも言った通り、なによりも、堅い意志が重要になる。

そのためのまぁ、身構えというかそういうものについての方法とかも少しはある。

それを踏まえて、姪にしばらく道行を積んでもらい。
それになりになったときに、何かしら「宏願」を発し、寿命を取り戻すという。割と長期的な方法だ。

まぁ、ただ、この方法の場合にもデメリットはある。

まずひとつに、長期的なものというと、つまりそれは少なくとも10年はかかる。ということだ。もちろん「器」の個人差はあるけどね。

でも、姪の天命は、いつ尽きるかわからない。
そんな悠長に構えていたら、すぐにでも神隠しにあっちまうかもしれないw

しかも、その過程で姪が自分の「道」と人生をかけるほどの願いを見つけられるかどうか、も実際のところわからない。

人生で結局なにしたいのかわからないまま終わる人間のほうが世の中大半だ。

搬山流で、見つけ方を学んだとしても、見つけられるかどうかは結局個人次第。

適当な目標で「宏願」に臨んでも、失敗するだけだしね。

二つ目の方法は

ひとつ目の方法のように時間のかかるものじゃなく短期決戦をねらうものだ。
その代わり、少し危険度もあがる。

これは姪さんに天命を漏らさせた妖怪を呼びだして、そいつと交渉して、漏らした内容を忘れてもらうというものだ。

前にも書いたが、人間というのは知識欲のせいで、何かを忘れようとしても、逆に印象が深まっちゃう。
そんでずっとおぼえようと思ったことは時にふらっと忘れちまう。

でも、妖怪の場合はそんなことなくて、おぼえたいと思ったことは永遠におぼえているし、思い出したくないと思ったことはすぐに記憶から消すこともできる。

もしその妖怪が、漏らされた内容に何かの執着がなければ
それを忘れてもらう。

その上で少し儀式をして、天命を漏らさなかったことにして、寿命を戻す。

ただ、この方法にも不確定要素がいくつかある。

まず、本当に妖怪が忘れてくれるか。
ここら辺は他力本願になる。

また、天命を漏らした場合、聞いていたのは妖怪だけじゃない可能性もある。
妖怪が何かしらの方法で自分だけ聞こえるような細工をしなければ

その時、周りにいた風、土、草、木とかそうものも広くカウントされる。

そうなった場合、もう手の着けようがなくなる。

そして三つ目の方法。

この方法はもっと確実性がある。
でも前の二つと比べてぐーんと危険度も跳ね上がる。

みんなはピンと来るかどうかわからないけど「件」って妖怪がいるよな?

まぁ、知らん人はググってみておくれ。あれも、重大な予言を残して天命が尽きて、死ぬんってのは有名だけど。

名前の由来は多分、人+牛で漢字で件になったんだろうね。

ただ、こいつには元々の名前があって。
仏教由来だった気がするんだけど「如是」という名前らしい。

「如是」は世の中にものすごい悪いことが起きようとした時に生まれてそれを予言する。
予言する。そんでその予言はほぼ回避できないらしい。

でもあまり知られていないけど、実はこの「如是」って妖怪の予言は、半分でしかないらしい。

残り半分はどうなるかというと。

「我聞」という妖怪が生まれて、それを残すはずらしい。

「如是」という妖怪は牛の体で、人間の頭を持っているらしいけど、「我聞」は、その逆で、牛の頭と人間の体を持つ。

「我聞」は「如是」が死んだあと、すぐにその10里以内に必ず生まれてくる。
そして、そこで「我聞」も予言のもう半分を残して死ぬ。

これでこの予言は完全に避けられないものになるんだけど。
もし、「我聞」が生まれた直後にこの妖怪を殺すことができれば予言は回避することができる。

それを踏まえてだけど。

実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に、「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。
第三の方法とは俺の時に言われた三つ目の方法と似たもので。

「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて、生まれてきてもらう。

そして、それを殺し、予言自体を不発にする。

不発になれば、予言はしていないことになるから。そこからまた寿命を呼び戻す。

まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介のは「我聞」を探して殺すという点だ。

まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。

さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。

それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。

なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは、どこか道を踏み外している行為だからね

3つの方法を話し終えると、先生の弟さんは難しい顔をした。

まぁ、どの方法を取るにしても、結局危ないのは変わりないからね。
弟さんは先生に、どの方法を取ったらいい?と聞いたが、先生は黙って首を振った。

そんで、最後どの方法を取るかは弟の娘自身に決めてもらおう、と言った。

ここで方法とか勝手に決めても、本人が納得しなければ、それをやることはできないのだ。

弟さんはそれもそうか……と切なそうな顔をすると、とりあえず、今日はもう遅いですし、詳しい話はまた明日にでもと言った。

彼も色々考える時間ほしいんだろうね。

先生と俺は自分にあてがわれた客室にもどり、そのまま寝ることにした。
部屋に分かれる直前、先生はお前ならどうする?とさりげなく俺に聞いてきた。

俺は分かりませんと答えた。

先生はめずらしく疲れたような口調で、やっぱり半人前だな。と言った。

その日の晩は腹がかなり減っていたせいもあって、なかなか寝付けなかった。

そんで、長い間目がぱっちりしていると、ついトイレに行きたくなってきたんだ。
トイレの場所はあらかじめ紹介されていたので、そこに向かった。

するとトイレの前には弟さんの奥さんがいた。トイレのドアは閉まっていて、中から「オエェ」と嘔吐する声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声で、どうやら先生の姪が入っているらしい。

俺はちょっと気まずくなった。
まぁ、こうなったのは自分の責任が大きかったので、正直あまり合いたくない相手だった。

ここから新しいやつ。

そのまま踵を返して、隠れて庭に行ってどっかの草むらにでも用を足そうと思ったが、トイレの扉の前にいた弟の奥さんはその前に俺に気がついた。

どうも、といった感じに頭を下げ、どうなされましたか?と聞いてきた。

俺は仕方なく、トイレをお借りしたかったけど、どうやら今は使えないようですね。と答えた。

奥さんはすみません、でも、今すぐ出させるので……
と申し訳なさそうな顔でそう言った。

いや、もとはといえば、俺が原因のようなもんだし、謝られても困るし、でも、実際尿意はやばかったから、ごゆっくりーとも言えなかったし、そう言うのもなんか違う気がしたから、俺はそのまま言葉に甘えることにした。

奥さんはトイレのドアをトントンと叩くと、ミサト、大丈夫?一度出てもらえる?的なことを言った。

そこで初めて、先生の姪の名前を聞いた。

すると、トイレの中から水を流す音がした。
そして、なにやらドタドタと体が壁に当たったする音とかして、トイレのドアが開いた。

中から出てきた先生の姪は赤い布のようなもので目隠しした状態だった。

この布のついてなんだけど。霊感ある人とかも試してみてもいいけど、赤い絹の布を2重にして目に被せておくと、幽霊はともかく。
大抵の妖怪は見えなくなるはず。

視界もかなりわるくなるんだけど、でもうっすらぼんやり物の大体の輪郭はわかるはず

先生の姪、まぁミサトさんはそれをしていた。
弟の奥さんは手に湯気が出ているお茶の入ったコップを持っていたんだけど。
それを彼女に渡して、2,3口飲ませた。

失礼します、というと、ミサトさんの手を引いて、俺のそばから通ろうとしたんだけど。
ミサトさんは急に「っひ」って小さな悲鳴をあげると、何かにつまずいたように、転んでしまった。

もちろん、何もないところだった。

奥さんはあわてて彼女を支えたんだけど、そのかわり手に持っていたコップのお茶が、俺の手にかかった。

結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げた。

そして、そこで目が覚めた。
あれ?っと、ぼんやりしながら思った。
あたりを見渡すと、泊っている客室だった。

しばらくして、目が完全にさめると。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていて、トイレに行ったのは夢だったと理解した。
妙に鮮明な夢だったけどね。

みんなはどうか知らんけど、俺はトイレに行く夢をよく見たいりする。

子供の時はそういう夢を見ると大抵そのままトイレで用を足して、そんで目が覚めると、おもらしをしてたりするんだけど。

大人になってからは、トイレに入って、用をたす直前とかに目が覚める。そんでそういう時は、いつもものすごくトイレに行きたい時だ。

もちろん、この時もそうで、俺はしょんベンしたくなった。
だから、夢の通りに、布団から這い出て、トイレに向かった。

トイレが見えたあたりになると、そこには人影があった。
弟さんの奥さんだった。

あれ?と、俺は激しいデジャブに襲われた。

そんでさらに近寄ると「オエェ」っと夢の中と同じ嘔吐するような声が聞こえてきた。

奥さんは俺が来るのを見ると全く夢の中と同じ口調でどうなされましたか?と聞いてきた。
不思議に思った俺はとまどいながらトイレを借りたいのですが…と答えた。

そこからの展開は全く夢と同じだった。

奥さんはミサトさんに大丈夫?と聞いて、彼女がトイレから出ると、お茶を飲ませて、そんで、2人は去ろうとするはずなんだけど。

そこで2人の動きは止まった。

そして、視線だけをゆっくりと俺のほうを向けると。
何とも言えないいやらしい笑みに顔がゆがむ。

俺はかなり驚いて絶句して、そして次の瞬間、急に奥さんがカップのお茶を俺にかけてきた。

結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げ、そんで、目が覚めた。

客室だった。

なんなんだよ。俺はそう思った。
夢の中で夢を見ていて、そんでそれがループした。

いや、ループしたとは違った。最後あたり、奥さんは明らかに悪意を持って俺に、お茶をかけてきた。

夢の中なんだけど、不思議にあのお茶の暑さには痛みを感じた。

俺はためしに頬をつねってみたんだけど、その時は痛みはなかった。
俺は察した。自分はどうやらまだ夢を見ているみたいだった。

俺は何かに導かれるように、また布団から這い出して、そのままトイレに向かった。

廊下がさっきと比べて大分暗かったような気がした。

ドアの前には奥さんがいた。
そして、やはりトイレの中からは「オエェ」とミサトさんの嘔吐する音がした。
いや、もはや本当に先生の姪のその人がミサトって名前なのかどうかはわからなかったけどね。
ただ、様子が少し変だった。奥さんはコップをドアにごん、ごんとぶつけていた。

コップはガラス製のものだったんだけど、少しずつ粉々になって言って、そんで奥さんの手はどんどんと血だらけになっていった。

その時はなぜかあんまり怖いとは思わなかった。

そのまま奥さんに近づいた。すると奥さんは「どうしたんですか?」と聞いてきて、俺は素直に「トイレを借りに」と答えた。

奥さんはそれを聞くと、突然いやらしい妙にねっとりした笑みを浮かべると、もう少し待ってくださいと言って、ミサトさんをトイレから呼び出した。

そして、ミサトさんの口の中に結構砕け散ったガラス片を入れた。
ミサトさんはそれを、やはりいやらしい笑みでひと噛み、ふたかみ、口から見る見るうちに血があふれ出てきた。

奥さんはそれをみると、俺にあなたもお腹が減っているならいかが?
と聞いてきた。

俺は断ったが、奥さんは遠慮しないでといってがっちりと俺の腕をつかんだ。
ものすごい力だった。
それを振りほどこうと頑張ってみたが、無理だった。
そして、ガラス片を無理やり、口の中にねじ込まれて、そこでまた、俺は目を覚ました。
口の中ですこしだけ血の味がした。

頬をつねってみたら、痛かった。
どうやら、やっと本当に夢から目覚めたようだった。

ほっと溜息をついた。
怖い夢はよく見るが、いつもは目が覚めると内容はよく覚えてない。でも、今回は夢の内容が鮮明の分、後味が悪かった。

しばらく、そのまま布団の中で、夢を思え返しながら、ぼんやりしたんだけど。

怖い夢だったし、トイレの夢だったせいもあってなのかわからんけど。
俺はまた激しい尿意に襲われた。

その時だ、俺はなんとなくわかった。
多分だけど、俺は今トイレに行くべきではないんだと。

でもおしっこは我慢できないほどだった。
だから、俺はトイレには、いかずに、最初の夢で画策したように、こっそりと庭に行って、草むらで立ちしょんすることにした。

布団から抜け出すと、忍び足で庭に通じる窓まで行って、その窓を開け、そこから庭に出た。

誰もいないことを確認して、俺はそこらヘんの草むらで、ズボンを下ろした。

用を足し終えると、俺は幾分か心が楽になった。

23 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:16:41.29 ID:ifSOO5Rt0.net

そのまま部屋に戻ろうとしたんだけど、その時だった。

結構近いところから、リズミカルに水が流れる音がするのに気がついた。
トイレの水を流す音だ。

しかし、なんだか様子が少しおかしかった。なんというか、トイレのレバーを小のほうにひねると、水がそのひねっている間だけ、少し流れるじゃん?多分それの音なんだけど。

それを一定の間隔で、まるで楽器を演奏するように、水を流してるんだよ。
俺は不思議に思った、何なんだろうか?

正直、トイレは夢のこともあるけど、あんまり関わりたくなかった。

先生の実家の庭は割と広かった。その水がリズミカルに流れるトイレは庭側に面して窓があった。
俺はひと眼だけその窓を眺めたが、電気はついていなくて中は真っ暗だった。

俺は少しだけ悩んだが、知らないふりをしようと思い、また部屋に戻ろうかと思った。

好奇心は猫を殺すからね。
でも、次の瞬間その考えは全部ふっとんだ。

トイレの中から水の音以外の声が聞こえた。
控えめの声がったけど、聞きなれた声だった。

もちろん、耳を疑った。だからさらに音に集中してみた。

そしたら、確信した。その声は先生のものだった。

先生は真夜中の今、トイレで何をしようとしていたのか気になった。

どうしてこんな変なことを?と一度疑問に思うと,好奇心がどんどんと膨れ上がった。

ちょっとだけ様子を見てみよう。そう決めた。
俺は背を低くして、こっそりとトイレの窓のほうに近寄った。さすがに窓をのぞく勇気はなかったけど、せめて先生の音が何を言っているのか、聞きとってやろうと思った。

そして、聞こえた。

じゃー、じゃー、と先生は水を流しながらこう言っていた。
出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで、出ておいで……

俺の心臓はどくんと、飛び上がった。
なんだか聞いては、いけないものを聞いた気がした。

急いで、その場から離れて、こっそり来た道を引き返し、自分の部屋に戻っていった。

急いで自分の部屋に戻った俺は、ぶるぶる震えながら布団の中にもぐりこんだ。

先生がなにをしていたにしても、というか、先生じゃない何かだったにしても、多分あのトイレで起きていたことは、俺が知るべきじゃないことだったんだ。
ひどく、トイレの様子をうかがったことを後悔した。

その日はそのままモンモンとしながら、いつの間にかぐっすりとねむった。
今度はさすがに疲れがたまっていたのか、ぐっすりねむれた。

朝になると、先生に起こされた。

時間は8時くらいだった。
俺は夜中の出来ごとが気になって、先生の様子とか観察したけど、普段通りだった。

先生は「朝食ができたらしいから、食べに行こう」といった。
俺は、やっとなんか食える!と喜んだ。

先生についていき、台所のほうに向かった。
そして、台所に入るドアをくぐったその瞬間、突然体がなんだか軽くなった感じがした。
その感覚には少し身に覚えがあった。
でも、なんでこんなところで?と俺は思って、台所を見渡した。

すると、台所の壁になんだけど、ちょっとだけ色あせた感じの墨画が一枚飾ってあった
まぁ、台所には場違いなものであった感じはした。

ほかのめぼしいものは特にないみたいだったので、体が軽くなった原因はそれではないのかと、あたりをつけた。

俺は霊感がないから全く分からないんだけど。
まぁ先生とか霊感があると言っている人によると、いつも俺の体には焼き焦げた。気持ち悪いイタチが張り付いているらしい。

でも、たまにそれが離れることもある。

理由としては、イタチたちが怖がったり、嫌がったりするものがある。というわけではない。

まぁ、一般的な妖怪たちと違って、イタチたちはもう死んでるから。
そう言うのはもうどうでもいいんだろうね。

いなくなってくれる時は大抵、彼らが「顔向けできない」と思う物の前だ。
死さえ怖くないのに、恥じらいを感じるのも、なんだか変な話だけどね。
俺は先生の視界に入るように、合図を出して、このことを伝えた。

あの絵。高いかも。ほしい。だます。持ち帰らない?

先生は俺の合図に気がつくと、絵のほうに目を向けた。

そんで、昼飯がならんだ机につきながら、「あきらめろ」と返事の合図をした。

まぁ、先生もそういうなら、多分無理なんだろうな、と俺は思った。

俺も先生に続いて席につくと、絵のことをじっくりと見つめた。
その墨画は、なんか湖みたいなとこに鶴?かなんかが書かれていたもので。

絵の左下に、よく読めなかったが、
『葬』……なんとかと 『居士』……という名前が残されていた。

居士ってのは、出家者の法名とか、戒名みたいな意味や、なんかすごい修業を積んだ人のことが、居士号を取って、居士をなのる、の2種類がある。

特に有名な居士といえば果心居士とかあるんだけど、織田信長の部下で幻術使いの話とかみんな知ってんのかな?
そんで、聞き覚えのあるなかで「葬」って文字がつく居士なんてただ一人。

葬死居士だ。

葬死居士については、詳しいことについては長くなるから省くことになるけど、とりあえず、葬書という書物を日本語に訳した人ってざっくり考えてくれ。
葬書は風水について書いてあるんだけど、最初の風水ってのは祖先を敬うためにあった。

だから郭璞っていう葬書を書いた人間は中国だといわゆる親孝行の神様とかにあたったりするんだけど。

葬書を日本語に訳した葬死居士ってひとは日本でもほぼ同じ立場にあったりする。
ちなみにだけど、妖怪退治の流派に葬死流というのがあって、それもこの人発祥にあたる。

まぁ、風水という概念を日本に広めた的な意味でも、流派を開いた的な意味でも、人間でありながら妖怪たちからもひとめ置かれているみたいなんだよね。

なんでイタチたちはこの人に顔向けできないのか、俺もよく知らない。
そこまでこの人に関する知識はないしね。

葬死流の人間なら何かわかるかもだけど。

しばらくぼんやりと俺が絵を眺めていると、台所のほうに先生の弟さんとその母親さんがやってきた。朝飯は米と焼き魚とみそ汁とか、結構ちゃんとしたものだった。

そんで、飯が食卓に並び終わると先生の嫁さんはおかゆとかをもって、それを娘さんのところに持っていく雰囲気を出していた。

そしたら、先生がミサトちゃんもこっちに呼んで、一緒にたべよう。といった。

ですが…と嫁さんはすこし迷うそぶりを見せたが、先生は俺のほうをちらりと見ると、ずっとあの部屋にこもっていても、よくない。
いまなら大丈夫ですよ。と言い聞かせた。
すると弟さんも、そうだね。呼んできてくれないか?と先生に同意した。

俺はミサトちゃん?と夢の中で聞いたその名前が本当に出てきたことにびっくりした。

嫁さんは、わかりましたと答えると。娘さんを連れてくることになった。

ミサトさんはしばらくして、嫁さんに連れられてやってきた。

着替えもしたみたいで、寝巻じゃなく、長袖のシャツにジーンズ的な私服だった。

ミサトさんは俺のことをみると、一瞬ぎょっとした顔になったけど、どうやら、以前みたいに具合を悪くする様子はなかった。

そして全員そろうと、一緒に朝食を食べ始めた。

そしてら、先生は昨日はばたばたして、自己紹介もできなかったね的なことを言って、自分が何者なのか、ミサトさんに説明した。

まぁ、おじさんはともかく、妖怪退治とかの話もすると、あからさまに彼女は不審がってたけどねww
そんで、俺も先生に便乗する形で自己紹介をした。

俺はミサトさんの様子を見て、彼女はどこまで自分の状況を分かっているのか、気になったけど。

彼女は人見知りもあるのか、あまりしゃべらなかった。

そして、すこし気まずい朝食が済むと、先生がではちょっとこの子を話をするから。
他の人間は席をはずしてくれないか的なことをいった。

弟の嫁さんは心配そうだったけど、弟さんと母親さんに手をひかれて、どっかに行った。

俺も彼らについていこうと思って、席を立ったんだけど。

先生は「お前は残れ」と言ってきた。

ミサトさんは、先生がおじさんだってことはわかってたんだけど。
そのおじさんの仕事がこういう関係というのは分からなかったから、それについて、先生が説明して、俺も便乗した。

みたいな形だね。

他の人たちがさると、先生はミサトさんに彼女の状況とか色々かいつまんで説明し始めた。

ミサトさんは結構散々みたいだし、わりと呑みこみというか、簡単に警戒は解いてくれた。

まぁ、先生が家族がいる状況で自分がそっち系の仕事をしていると暴露するのも、うまかったのもあるね。

そんで、今は逆にひとりだけにして、色々ゆさぶりやすくしてる感じだった。

先生の説明をミサトさんはただ頷きながら聞いていた。
そして、先生の話を大体聞き終わると、彼女はこう先生に聞いた。
両親のほうからは弟子入りの話は聞いているが、先生のことは書道関係の人だと聞いていた。

それはまったく違うのか?と、
俺は彼女の部屋でみた、いくつかの書道の賞状をおもいだした。

なるほど、つまり彼女は最初、俺と先生のことを書道の師弟コンビだと思っていたわけだった。それがいきなり妖怪退治になったんだから、おかしく思うわけだ。

でも、先生は確かにどっかの流派の師範は持っていた気がする。

弟子入りというのは書道のほうだったのかと、俺は思ったが、先生の話的には完全に妖怪退治を教えるつもりのはずだ。

まぁ、書道も教えることもできるから、完全に騙したわけではないのか?

そこからは先生の弁解タイムに入った。

たしかに最初は書道だけ教えるつもりだったが、こっちのほうに来たら、君がこんな状況になっているので、しかたなく裏稼業のほうも……っていうようなことだった。

なんだかんだ言って先生のしゃべりかたはうまいから。
ミサトさんはそれで納得したようだった。

そして、ついに話は本題に入り、「例の三つの方法があるが、どうしたいか?」と先生は切りだした。

先生的な説明だと、最初の方法だと、妖怪退治関係の勉強をこれから教えるつもりで、それ以外の二つは、もし成功すればまだその気があるなら、書道のみの弟子にするという話だ。

まぁ、書道だけの弟子にするってのもちょっと俺的にはあやしかったけどねw
とりあえず弟子にすれば、あとはどうとでも!とか思っていそうな顔だった。

ミサトさんはしばらく悩んだが、正直妖怪退治うんぬんを習う気はしないから。
なるべく他の二つの方法で短期決戦でいきたいと、そういった。

そこからは俺と先生が少し話し合い。

第二の方法、「妖怪に忘れてもらおう」という方法をとることにした。
理由はまぁ、そっちのほうがまだ交渉の余地があって、俺や先生が慣れているから、というものだ。

方針が決まると早速準備をはじめた。

まずは妖怪を呼び出す場所の下見だ。
場所はミサトさんが失踪して見つかった、例の場所にすることにした。
先生は別の準備をするから、お前が見て来いと言った。

まぁ、あんまり先生は海とかに近寄りたくなかったんだろうし、俺はその指示にしたがった。

先生の弟さんに案内され、ミサトさんが見つかった崖に向かった。
場所的には弟さんの家から歩いて40分くらいかな?

割りと遠かった。最初は来るまで行きましょうか?と弟さんは言っていたが、俺は周りの風景とか建物の位置とかも、ちゃんと確認したいので徒歩でお願いした。
着いたころには割りと疲れた。

その場所は聞いた通りかなり辺鄙な場所だった。

道路のすぐわきってわけでもなく、アスファルトの舗装された道を外れて、4,5分岩だらけの地面を歩かないとつけない場所だ。

もちろん、あたりに街灯なんかない。

今の時間帯は昼ごろだから、全然大丈夫だけど。
夜になったら真っ暗で、何も見えなくなってしまうのは目に見えていた。

そんなところだから、ひととおりもすくない。
まぁ、妖怪を呼び出すにはうってつけな場所だな。

そんで弟さんに、ミサトさんがみみず食べてた大岩につれてってもらうと。
その岩の一部を削り取った。

削り取ったと言っても、あらかじめ持ってきたトンカチで叩いて、大きめで平な岩を手に入れた。

その後、あたりでわりと広い場所はないのかみつくろい。
その場所に酒を撒いておいた。
台所からくすめた料理酒だ。

この場合なぜか普通のお酒より、料理酒のほうがいいんだよなぁ
なんか違うのかもねw

大体の準備を終わらせると、俺は弟さんと一緒に、家に戻った。
もちろん削り取った岩とかも持って帰った。

帰ると、どうやら先生も他の準備のため家を出たみたいで、まだ戻ってない。

なので、俺は弟さんやその嫁さんに手伝ってもらいながら、庭の土を掘り起こしながら、生きのいいミミズを出来る限り捜した。

例の妖怪はミサトさんをおもてなすためにミミズを使ったのだが、妖怪は大抵、自分の好きなものを客人に出すらしい。

好物がわかったんなら、交渉に向けて、それを準備しない手はない。

ミミズを用意したら、俺は弟さんと一緒にが家へ戻った。

帰るとどうやら先生も他の準備を終えたみたいで、戻っていた。

先生から妖怪との交渉は次の手段で行くと言われた。

前にも書いたが、実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に、「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。

「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて、生まれてきてもらう。
そして、それを殺し、予言自体を不発にする。

不発になれば、予言はしていないことになるから。
そこからまた寿命を呼び戻す。

まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介なのは「我聞」を探して殺すという点だ。

まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。

さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。

それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。

なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは、どこか道を踏み外している行為だからね。

先生が戻ってきたのは午後の5時くらい。

もうあたりは結構暗かった。

戻ってきた先生は大きなバッグを持っていて、体からはすこし生臭い匂いがしていた。

俺は先生に自分が今まで準備したこととかをかいつまんで説明した。

先生は何やら疲れた感じの顔で、分かったと答えると、そして、いまからすこし風呂に入り時間になるまで休むから、バッグの中身を頼む。と言ってきた。

俺が了承すると、先生はそのまま風呂場に向かった。

嫌なにおいがする先生のバッグを開くと、俺は驚いた。

中には死んだ犬の死体が入っていた。

犬の死体は今からやるはずの儀式とかに特に必要なものなどではなかった。

どうして先生はこんなものを用意したのだろうか?

しかも、その犬は見た感じ、もちろん、あくまで憶測だけど。
野良犬とかの類じゃなかった。

結構毛並みのいい、柴犬で、首輪もあったんだ。

そんで、その犬の腹辺りが真っ二つに割れていた。

黒い犬の血は妖怪退治とか幽霊退治とかで童貞のおしっこと並んで、よくつかわれてる。これは割と有名な話だよね。

ただ、その犬の血をどう取るかというと、実は結構残酷だ。

まず、犬を大人しくさせるために、口の中に石を詰め、手足を縛る。
そのあと、大きな鉈で、ゆっくりと犬の胴体の部分を真っ二つに切る。

しばらく、犬は死なずに苦しそうにもがく。
そして、完全に死に切った後に、犬の臓器を取り出して、それを水につける。

そして、水が赤くなるんだけど、その水のことを、「犬の血」として使う。
まぁ、もちろん、そのあとにいろんなものを混ぜたりするんだけど。

大体こんな感じ。普段はあんまり使ったりしないものかな?
残酷だし、手に入れるのもしんどい。

ただ、黒い犬の血は大抵「汚いもの」とされていて、妖怪とか幽霊から嫌われていて、そういうものを避けるのには有効なんだ。

そんで、黒以外の犬にも色々な使い方がある。
今回の場合、割と色が白い柴犬だったので、多分白い犬の血を使うことになる。

でも、白い犬の血というのは、めったに使わないものだ。

なぜなら、白い犬の血は、人を「殺す」ために使うものだ。
白い犬の血ってのは霊力が含まれているらしくて。
不吉なものを取り除けるとか、魔の病気とかを治すとか、そういう力があるらしいんだよ。
あとは、洗心術とかでも使うんだけど。

まぁ、それを聞くとなんだかいいものように思えるけど、でも、そう言うのは基本的に何かしらすごい術の媒体としての話であって、今だとほとんどそういうのについての使い方は伝わってきてないらしい。

なら、今は何に使うかというと。

「火消し」という術に使われる。
この火消しって言う術が、以前に言っていた「霊的な意味で死なせる方法」がこれだ。

人間は両肩と頭のてっぺんとで3つの炎がついているって話って前したっけ?
してなかったら、またあとで解説するとして、この3つの炎がある限り、人間の魂は肉体につなぎとめられている。

この火を消すためには白い犬の血を浴びないといけないらしい。

なので、間違っても、白い犬の血を肩とか頭のてっぺんとかにつけちゃいけない。
ころっと魂がどっかいっちまうらしい。

でも、逆にだれかの魂を四散させたいなら、白い犬の血をぶっかければ、その人は十中八九、霊的に「死ぬ」

火についての解説をすこしだけ

夜道をで歩いているとき、ふりかえっちゃいけないというジンクスがあるんだけど。
これも、両肩と頭のてっぺんにある火から来ているらしい。
ちょっと、うっさんくさいかもだが、その火はなんか神さまが人間をつくったときに、くれたものらしくて、3つそろうと一種の結界の力を持っていて、魑魅魍魎から人間を守るためにくれたものだとか、その火はめったなことがない限り、消えないんだけど。
いくつかの弱点がある。

まぁ、もちろん白い犬の血もそうなんだけど。

人間自身の息でも火は消えちまうらしい。
だから、人が振り返る時とかに無自覚に鼻の息で肩の火をひとつ消しちまうらしい。

だから、夜の時に、もし後ろのほうから気になる物音があったとしても、決して振り返っては、いけない。

なぜならそれは、人間に何かしら害をもたらしたいと思っている妖怪とかが、振り返らせて、その鼻息で肩にある火をひとつ消させたいがために、だましてるんだ。

白い犬の血とかの場合は割と消えた状態が長続きするんだけど。
まぁ、鼻息の場合は、いったん火を消したとしても、次の朝くらいにはまた元に戻るんだけど。

そんで人間が死んでも、その火そのまま消滅したりしない。
人から離れて、しばらくはそのまま燃えているらしい。

もしかしたら、これが鬼火の由来だったりとかなんとか。

まぁ、この火についてはもっといろいろ話があるんだけど。
今回のことに関してはそこまで関係がないから、ここまでにしておくね。

話を本筋に戻す。

俺は先生から渡された犬の死骸をどうするべきか少し迷ったけど、とりあえず先生に言われた通り「処理」しておくことにし、幸い、先生の弟さん一家の人はその場にいなかった。
俺は生臭いバッグを一回庭の隅に隠して、先生の弟さんとかから必要な道具を借りた。

まぁ、そんときにだけど。俺の体にも生臭い匂いがついたのか、不審に思われ、色々聞かれた。

俺は今晩に必要なものの準備とって、とりあえず弟さんをいいくるめた。

そんで庭から人払いしておいてほしいとお願いすると、死骸の「処理」に入った。

まずはバケツに、水を半分くらい入れる。

その後、水の中に唾を吐いて、もう二、三工程あるんだが、さすがに詳しく書きすぎるのはあれなので、省くとして、犬の臓器を取り出して水につける。そして、赤く染まった水をペットボトルにいれた。

もちろん途中に、水が肩や頭あたりに飛び散らないように注意しながら。

そして残ったものは、バケツも含めて、全部庭に埋めた。

最後の締めとして、その埋めた場所に桃の種をひとつ植える。

何かよくないものを埋めた場合、植物を植えるようなことをするのは有名だけど。
桜や柳とかはやめたほうがいいらしく、こういう時は大抵桃の種を選ぶ。もちろん相性の問題もあるけど。

俺が犬の血の処理をし終わると、あたりはうす暗くなってきた。
そのまま俺も風呂に入ることにした。

途中、弟さんの嫁さんにあったんだけど、あからさまに目をそむけられた。やっぱり匂いがひどかったのかと少し心配した。

そして、風呂ついでに仕事用の「衣装」に着替えた。

前にも行ったと思うけど、神さま相手の神主さんとかは小奇麗なかっこをしないといけないんだけど。
うちのような妖怪相手の商売は、むしろ逆で汚らしい格好じゃないといけない。

まぁ、でも汚さといっても色々あって、血なまぐささは妖怪的にだめらしい。
どっちかというと妖怪の好みの汚さってのは、泥とか、ほこりっぽさとか、そういうものだ。

なんというか、そういうものの方が、自然に近いのかもね。

だから、あらかじめ着古していて、あまり洗ってない服とかを用意してる。

しばらくすると、弟さんが晩御飯に誘ってくれた。

ミミズやら、犬やらで結構食欲なかったんだけど、一応夜に向けて、何か食べておこうと思って、彼について行った。

台所につくと、もうすでにミサトさんやら、奥さんやら弟さん一家はそろっていたが、先生は、いなかった。

先生はどうしたんですか?と聞くと、どうやらまだ寝ていて、起きる様子がない、と弟さんに言われた。

まぁ、こういう時は寝かせておくのがいいんだろうけど、ただ、俺的には今回の妖怪はミミズとかを出して食わせてきたりするし、なるべく空腹の状態とかで対峙するのはよくないのでは?とおもった。

食欲とかに付け込まれる可能性も微粒子レベルで存在していると思うんで、俺は起こしてきます。といって先生の部屋に行った。

先生の部屋のドアを開けると、中は真っ暗だった。

俺は先生、先生と2,3呼んだが。返事はなかった。
仕方なかったので、部屋の電気を手探りでつけた。

すると、すこしぎょっとした。

先生は目を開けていて、天井のほうをじっとみつめていた。

俺はおそるおそる彼に近づき、どうしましたか?ご飯の時間らしいっすよ?と聞くと。
見えるか?と、急に聞かれた。

俺は( ゚д゚)ポカーンってなったが、先生の目線のほうを見てみても何もなかった。

いえ、と俺が返事すると、先生はそうかと答えて、布団から出てきた。
そんで、俺はさらにが愕然とした。

先生の来ていた服が、寝汗でびしょぬれだった。
絞れば出るとか、そんな感じだった。

俺が初めて師匠と仕事した時の話だ。

56 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2014/06/16(月) 16:45:05.12 ID:JdRLGct40.net

俺が初めて先生と仕事したのは、先生のところに転がりこんで3ヶ月くらいたった時だ。

それまでに一度仕事はあったんだけど、まだ早いと判断されたのか、連れて行かれなかった。

そんでその頃になると、最低限の仕事のタブーというか、そういうのを習い終わったので、連れて行かれることになった。

まぁ、あのままだったらただのただまし食らいだったしね。
早く働けるようになってほしかったんだろう。

そして、肝心の仕事の内容なんだけど。
トンネルに住みついた妖怪の退治だった。

先生によるとその仕事じたいは5年に一度やっているものらしくて、トンネルといってもそんなに大きなものではなくて。
ぎりぎり車が一台通れるかどうかの物で、長さも20メートルくらいとそんなに長くないやつだ。

そんで具体的な場所は伏せるけど、山に囲まれているような田舎にあるやつ。
小さいけど、わりと地元の人とかにとっては大切な通り道だ。

今までは事故があったとか、人が死んだりとかそういう噂は一切ない。

しかし、小さな問題がひとつあって、「最後」って妖怪がよくすみついたりするらしい。これは漢字で最後と書くんだけど「サイゴ」と読むんじゃなくて、「もじり」って読む。
みんなはもじり術とか分かるかな?
わからないひとは多分ぐぐったりすると分かると思うんだけど。
とりあえず昔の武器で、人を捕まえたりするための武器だ。

多分この妖怪もそっから来てるのかなぁ?と思うんだけど。
こいつはどんな奴か、具体的にいうと耳を引っ張る妖怪らしい。

夜にトンネルと通ったりすると、耳を引っ張るんだ。

まぁ、ただそれだけの妖怪だから、ぱっと聞いた感じあんま実害はない見たいだし、放っておいてもいいと思うだろうけど、この「最後」に耳を引っ張られた人間がどうなるかというと風邪をひくらしい。

なんで、昔は夜の間にトンネルを通らないほうがいいとかそういうのもあったりするらしい。

まぁ、その田舎なんだけど、やっぱり爺さん婆さんが多いらしく。
しかも、トンネルを通らないと病院に行けないので、たまに夜に通らないといけないときとかあったりするらしい。

そんときに、耳を引っ張られるんだよ。

じいさんばあさんだから、風邪になるともう大変だし、なんで地元の人たちがお金出しあって、何年かいっぺん追い払うことになってる。

まだ中学生だった俺は、まだなんというか世間知らずの部分があったので、とりあえずすべて先生の言うとおりにしていた。

先生に言われるままついて行った。

新幹線で1時間、ローカル線で1時間、地元の人が車で迎えに来てくれて、そこから約30分くらい?例のトンネルが見えた。

なんというか、決して心霊スポットとかそういう風貌はしてなかった。
田舎なのに結構綺麗だった。
というか、田舎だからこそ、たまに掃除とかも町内の当番でやるらしい。

そのまま、車でトンネルを通り過ぎて、地元の割と金持の人の家に行き、挨拶をすることになった。

結構大きな屋敷だった。
なんというか、サマーウォーズとかあるじゃん?
ぱっと見た感じ、あんな屋敷の印象があった。

出迎えてくれたのは、60歳ぐらいの男の人で、髪の毛がバーコードだった。

とりあえず、先生は丁寧に色々話してたんだけど、俺は最初に頭を下げた後は、ただ黙ってそれを見ているだけだった。
おっさんのバーコードがすごい気になった。

そんで、夜に仕事をして、その後その家を宿にするらしい。
帰りは次の日の午後になった。

わりと強行軍で、バーコードのおっさんはもっと泊って行ってもいいぞといったけど、先生は割と強めな口調でそれを断った。

そして、夜中の12時になると、先生は俺をつれてトンネルに向かい始めた。歩きでね。

トンネルから屋敷まで車で30分はあった。それだけの道のりを歩きでだ。

俺は正気を疑った。
しかも、割と荷物があって、それは全部おれが運ぶことになっていた。
まぁ、他にやれることないんだけど…

俺は先生に「車とか出してもらえばいいじゃないか」と聞いたが、先生はただ黙って、首を振った。

そんで、歩いて屋敷からかなり離れたところでやっと口をひらいた。
田舎の田んぼ道で2人でただたんたんと歩くだけだったので、俺はすごくこわかった。

でも、先生から教わった仕事のタブーのひとつが、仕事の時にもし怖い感情がまだある時は、決して口を開いていけないというものがあった。

なんか、口から逃げていくらしい。陽の気というかそういうのが。
普段なら構わないが、仕事前ならなるべく逃がさないほうがいいとか何とか……

なんで、俺のほうからは黙っているしかなかった。

先生が口を開いてくれて一安心だった。

俺はしゃべらなかったんだけど、先生は歩きながら、あのトンネルのこっち側に住む人とはあまりかかわらないほうがいい……というようななことを言ってきた。

俺はなぜそうしないといけないのかよくわからなかったんだけど。
とりあえず頭を縦に振った。

そんで、先生はそのあとも延々と細かい注意点を言い聞かせてくれた。
おかげてトンネルについたころは怖い感情は大分ぬけた。

というより疲れ過ぎてもうどうでもよくなってた。
帰りもこれかよ…と思うと地面にヘタりこみたくなった。

ちなみに、口を開かないのはあくまで準備の段階。
仕事中になったら、どんなに怖くても口を開かないと話に何ない時もあるしね。
トンネルについた先生は、俺の運んだ荷物から、蝋燭を2,3取り出した。

トンネルの前は割と風が強くて、なかなか蝋燭がうまくつかなかった。

俺は先生に呼ばれて、蝋燭の前に立った。まぁ、風よけになれよ的な感じだった。
それでやっと、それで蝋燭の火はうまくついた。

先生はそのろうそくをトンネルの前に立てた。

割と太いタイプの蝋燭だから、普段ならたぶんそうそう消えないんだけど。
その時はやはり風が大きいので俺が風よけとしてトンネルの外に残って、蝋燭の火を見守ることにした。

先生は荷物の中から長いしめ縄と、お香の灰と米と塩を混ぜたものと、耳あて、あと大量の卵を出して、それを持ったままトンネルに入って行った。

しばらくするとトンネルのほうから先生が何やら歌う声が聞こえてきた。

トンネルの中はとても暗かった。先生は暗いままでも大丈夫なのか?と思ったが、そんなことよりもひとりになったのもあるし、トンネルのその暗さが無性に怖くなって、トンネルのほうに背を向けたまま、蝋燭を護るような形で立っていた。

しばらく、俺はぼんやり蝋燭の火や自分の影を見つめながら、気を紛らわすために『鋼の錬金術』の内容とか思い出していた。
ちょうどそのころそれの一期?がアニメでやってた。

妖怪退治なら、あんなふうに、スパーと手から光出してかっこよくやりたいなぁとか、その頃の俺はまだ夢見てた。

そんで、かなりたってからやっと、俺はとあるおかしいことに気がついた。

俺は蝋燭に向かって立っている。

蝋燭の影はもちろん俺側に向かって伸びていて、俺の影もそうなるはずだ。

でも、俺の影は蝋燭の真横を通る感じに、伸びていた。

俺はそれに気がつくと、びっくりしちまって、すぐに振り返りたい欲求にとらわれた。
でも、いつも言っているように、夜道で振り返るのもタブーのひとつ。
なので、俺は必死に我慢した。

よく見てみると、その影は俺自身の物にしてはシルエットが少しだけおかしかった。
なにがおかしいのかうまく表現できないんだけど。
なんというかやけに頭が大きかった。

最初は光と影の加減でそうなったのかと思ったんだけど。
影がおかしいことに気がつくと、その違和感がどんどんと膨らんだ。

俺はその場で目を閉じた。怖くなったんだ。

それからどれくらい時間がたったのか

かなりたったのは確かだと思うが、先生が戻ってきた。
先生は目を閉じてじっと立っていた俺に目を開けさせるとなにが起きたのか聞いてきた。

俺は目を開けるとすぐにもう一度影を確認したが、蝋燭の横に伸びていた影はなくなっていた。

ほっと安心して、先生に影の話をした。

先生は荷物をまとめて、俺に持たせると、俺を連れて屋敷に戻り始めた。

そんで戻り道で、「最後」って妖怪はよくトンネルとか屋根裏とかにでるらしいけど、彼らがわく場所にはもっと条件が必要だ。

「最」って文字の由来は、大昔の中国で兵士が敵を倒したあと、恩賞をもらうために、敵の耳を集めるところからきたらしい。

そんで「後」って文字は道を歩いているときに、糸が足に絡みついたところからきた。ってらしい。

そんで「最後」ってのはどういう意味かというと。

「耳」を集めた兵士を闇うちして、その「耳」を自分の物にして恩賞をもらう。って感じの状態を表している。

そして、もじりは罪人を捕まえるために使われる。

昔ではこの妖怪が住みつく場所には、そういう風に闇うちされて手柄を持ってかれる人とかが死んで、その怨念にひかれて来るらしい。

俺はその話を聞いて、じゃあ、「最後」はその怨念を晴らすために罪人の耳を引っ張るんですか?と聞いたんだけど。先生はそこまではしらんといった。

だた、このトンネルのこっち側の地域は多分昔部落だったといった。
地理的にはぴったりだしなといった。

そんときの俺は部落とかよくわかんなかったから、部落の意味を先生に聞いて、昔の罪とかで未だに妖怪が住み着くのか?とかおもった。

そんな俺の気持ちを察したのか、先生は「最後」はそこまでしつこい妖怪じゃないし、普通一回追っ払うと、もう戻ってこない。
でも、戻ってくるということは、また何かしら新しく「怨念」が出来たからだ。といった。

俺は、新しい怨念?とぽかーんとした。

先生はさらに、だからこの場所の人とはあんまり接触しないほうがいい。なにがあるかわからんからな。とそう、付け加えた。

俺はおそるおそる先生に「じゃあ、俺が見たあの影はなんですか?」と聞いた。

先生は、さぁ?「最後」かもしれんし「怨念」かもしれん。
または全然関係ないものかもしれんし、光と影の関係で出来た偶然かもしれん。
と答えた。

次の日、先生はお金を受け取ると、俺を連れてさっさと屋敷をさった。

俺は先生に晩御飯の用意ができたという旨を伝えた。

112 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2014/06/17(火) 22:09:41.85 ID:CxT6tyx50.net

先生は分かった、着替えたら行くと答えた。

俺は先生が少し心配になったので、先生の部屋の外で先生のことを待つことにした。
しばらくして、先生は夜の仕事の時に着る予定の服を着て、出てきた。

俺は先生にさっきは何をしていたのか聞きたかったんだけど。
なんだか口がうまく動かなくて聞けなかった。

あんな先生を見たのは初めてだった。

先日のトイレのこともあったし、ここにきてから先生の様子がどうにもおかしかった。

俺が何か言いたげなのを察したのか、俺と一緒に台所に向かいう間、先生は、いつからこっちの心配をし始めた。自分のことでも考えておけ見たいな感じに茶化してきた。
正直俺としては、先生の身に何かがあるのが怖いというか、また俺の知らないとこで、先生が何かを企んでいるほうが怖かった。

俺がそういう風な言葉を先生に返すと、先生は鼻で笑い返した。

そして、俺と先生は他の人たちと飯を食った。
なにを食ったか忘れたが、割とうまかった。

晩飯から2,3時間たった後。
儀式の時間になった。

先生と俺は準備するものを全部リュックに詰めて背負った。

現地までは弟さんに車で送ってもらい、一旦帰ってもらう。

つまり実際に儀式中は俺と先生とミサトさんの3人だけになるってことだ。
そんで、ことがうまく運んだら、また弟さんに迎えに来てもらうって感じだ。

そんで例の場所にたどり着いたのは夜の11時半あたりだった。

周りは真っ黒で、潮風が肌にまとわりついてやけに気持ち悪かった。

弟さんを帰すと俺と先生は早速準備を始めた。

まず朝に削り取った石を皿のように使って、その上にミミズを乗っけた。

それをミサトさんが見つかった大きな岩の上に置いて、さらに周りに軽くお香の灰を撒いた。
そして、北と西のほうに一本ずつ蝋燭を立てた。

油紙で作った風よけの中に入れてつけると割と簡単に火はつく。

その後に、妖怪を呼ぶために色々と地面に仕込みを入れた後、塩水で濡らしたしめ縄でミサトさんを囲いこんだ。

主にこういう準備をするのは俺だったんだけど、先生はその間近くの湿った枝や葉っぱとかを集めて、中にミサトさんの髪の毛を2,3本入れて、炭や着火剤とかを駆使して、それを燃やした。かなりもくもくと煙はあがった。

夜であるおかげで目立ちはしなかったけどね。

これで大体の準備は整った。時間にして2時間くらい使った。

そして、ここで先生が変な行動に出た。

俺が用意した、白い犬の血を取り出して、それで炭を溶かし、ミサトさんの来ていた額に筆で文字を描こうとした。

あ、ちなみにミサトさんのこの時の服装は割と厚着で、一番外には学校のジャージを着てた。こういう時は、なるべく使いなれたものを使うのがよかった。

俺はびっくりした。
これはかなり危険な儀式をするときにやることで、たまに魔よけとかにも使うんだけど。
うちでは開天頂っていうやり方だ。

魂と肉体のつながりを弱くすることができるらしい。

ただし、今回の儀式でまったく必要のないことだった。

先生の行動に気がついた俺は、急いで例の合図でなに、してる?と聞いた。

しかし、先生は夜が暗くてよく見てなかったのか、それともわざと無視したのか、返事はしなかった。

俺は少し困った。
声を出して聞いてみるわけにもいかないのだ。

ミサトさんには儀式が具体的にどうなるのかはあんまり説明していない。
これはもちろん、現場でいざってときに小細工が出来るようにするためだ。

なので、何かおかしなことが起きていることをミサトさんにあんまり知られないほうがよかった。
だが、先生の目的も分からないまま放っておいたら、何かしら自分に害が飛んでくる可能性もあった。

俺はそっと、用意した「奥の手」を荷物から取り出して、袖の下に隠した。

先生は俺を無視したまま、ミサトさんの額に「下」と文字を書いた。

開天頂はすることによって描く文字が違う。基本的に「上」「中」「下」の三種類の文字を使う。といっても、大分形が崩れた感じにしてる。
主な作用は人間の額にある「火」を弱くして、体と魂のつながりを弱くするんだけど。
「上」は男に使う時、
「下」は女に使う時、
「中」は老人に使う時って感じだ。

それが終わると、先生は俺に儀式を開始する合図を送ってきた。
俺はなに してる?ってもう一度合図送ったけど、またまた無視された。

しかたないので、俺は自分に与えられた役割の、儀式を開始する詩を歌った。
主な意味は、先日ここにいる子がおもてなしをうけたので、今回はお返しのために宴会を開いたので、あの時お世話していただいた妖怪さんぜひ来てください。的なものだ。

海の潮の音で俺の声は全然響かずにかき消されていく。

開天頂にかんしては、もうここまで来たら、先生は教えたくないってことだろうと俺は判断した。

他の仕事の時もたまに、こういうことがあったりする。
なんというか、師匠のほうが弟子にわざと教えない知識とかあるじゃん?
弟子に超えられないように。

今回のこれもそういうものなんじゃないか?って俺は思うことにした。

割と長い時間、俺は詩を呼んだ。

これは目当ての妖怪が来るまで続く。
つまり、来なかったらずっとやっていないといけない。

普通家とかでやれば割と10分、20分できてくれるんだけど。
そんときはかなりかかった。

そんで俺の喉が殆どかれきったときになって、突然岩に置いてあった石の皿がひっくり返った。

もちろん、風でひっくり返った可能性もあるけど。
こういう妖怪に対するお供えの皿がひっくり返ると、妖怪が来た証拠になるらしい。

遂に本番だ。

「皿」がひっくり返ったことを確認した俺は、すばやくつけていた蝋燭の火を消した。
相手側から訪ねてくるよう仕掛けた場合は火が彼らによって消されるんだけど。

こっちが宴会を開いて招待した場合。こっち側から消すのが礼儀だった。

そして、その間、詩を歌う仕事は先生にシフトする。

先生は妖怪に対して、ようこそいらっしゃいました。とりあえずそこにある。準備した食いものでもお食べください。的なことを歌う。
蝋燭を消し終わった俺は次に銀の針を軽く生姜にさし、それでミサトさんの親指を刺した。

彼女の親指から赤い血が間違いなく出ているのを確認すると、その周りかこった縄を回収した。

回収した縄はそのまま枝とか燃やしていた焚火のところにほおりこんでおく。

しばらくすると、不思議なことに、黙々と上がっていた煙は減って行った。
大体殆どの煙がなくなると、それは妖怪がちゃんと宴会の席ににつき、しかも、こっちの話を聞いてくれる体制になったということだ。

それを見た俺は、先生に合図を送る。

すると、先生は今まで歌っていた歓迎の詩から一転、話し合いの形式の詩を歌い始める。

相手が宴会の食べ物を食ったあとに機嫌がいいときにこっちに都合のいいように話をすすめる。人間でもつうようする方法だよね。

俺は先生の詩が変わると、今度はすばやく枝や葉っぱで焚いていた火を消した。

ずっとつけたままだと、余計な奴が気になってやってくる可能性がある。
そして、火が完全に消えると、あたり一面は一層真っ暗になった。

月の明かりで完全に周りが見えないわけではなかったが。
もともと街灯ひとつもない場所なので、先生やミサトさんの顔すらまともに見えない状態だった。

ただ、立っている場所にぼんやりと人がいるのが分かるくらいだ。

俺はミサトさんだとおもわれる人影に近づいて、肩に手を載せて座らせた。
手が彼女の湿ったような髪の毛に触れると、童貞特有かもだが、一瞬ドキッとした。

そして、そのまま、その場所で先生の詩が終わるのを待った。

あらかじめ決めた段取りであると、そこで先生はこの中で座っている人間がいるが、その人間に関する記憶をお忘れになってほしいという内容の詩をいうはずだった。

妖怪からしたら、人間なんてみんな同じようなものだから分かりやすくするためにね。

しかし、そこでまた先生が奇妙なことをし始めた。

先生は妖怪にお願いを言う前に、突然詩をやめたのだ。

俺は何かアクシデントでも起きたのか?と一瞬焦った。
でも次の瞬間、何かガラスが割れるような音がした。

そこで俺は悟った、先生は殺陣をするつもりなんだと。

いつも言っているように、うちは妖怪を倒す、というより妖怪と交渉するのが主な仕事だが、ごく稀に、どうしようもない時に妖怪を「殺す」ことになったりもする。

なんか妖怪退治っぽいことだが、これはかなり難しく、危険なことだ。
これをうちでは「殺陣」と呼ぶが、殺陣はめったにしない。

よく昔話でも、人を食ったりする妖怪が封印されたりとかするだろ?
あれは倒せないから封印するってのは確かにあるが、例え倒せたとしても、殺しちゃいけないから生きたまま封印するってことも多い。

前にも妖怪をなぜ無暗に殺さないかって話をした気がするけど。

妖怪が人間に害を及ぼすのは大抵悪意があるわけじゃない。
ものすごい悪とかするやつは、殆どそう言う風にできているからそうするだけだ。

例えが悪いかもだが、台風が家とかをなぎ払ったりして、人を死なせたりするけど、台風自体はそれに悪意があるわけじゃない。ただ、そうなってしまうだけだ。

なので、その行為には罪が存在しない。罪が存在しないのに勝手に殺すのは不公平だろ?
もちろん、いたずらをして喜ぶ奴らもいるが、そう言う奴らの場合、自覚がある分、殺されるほど悪いことをしたりしない。

もし、人間にとって「悪い」ことをやつで、しかもそういうことをする必要がないのに、それを悪いことだと自覚したうえで、その悪さをする妖怪がいても、そういうやつほど強い力持っているから。
単純に力不足的な問題で殺せない。

なので、殺陣というのは滅多にしないことだ。

俺は真っ暗な中、かなり混乱した。

流派ごとに、殺陣の初め方は違う。

大抵の場合殺陣を開始するにしても、そのふりをして妖怪を驚かして、逃げさせるやつ。しかし、今度の先生の準備をみると、完全に「殺す」つもりだ。

この場合のやり方は「鴻門集」と呼んでいる。
多分「鴻門の会」とかなんとかから来てるんだろうね。

始め方はまず、妖怪を呼びつける。そのあと一通り宴会が終わったところで、儀式で使う光をすべて消す。

そのあと、お酒が入っていない酒瓶をたたき割る。
それが合図だ。

これが「殺せ」の合図になる。

準備するものは全部で2つ。まずはその殺そうとしている妖怪を倒すのに適した形の物

妖怪は物理的に物を動かせたりすると前にいった気がする。
これはつまり、同じように物理的なものの影響も受けるということだ。

もちろんすべてではないので、各妖怪に合わせて物を選ぶ必要がある。

もうひとつは確実に妖怪の位置がわかるようにできるもの。
例え霊感があっても妖怪がはっきり見えるわけじゃないらしいので、その妖怪を一定の位置におびき寄せたり、誘導したりする必要がある。
それをするためのものだ。

まぁ、正直準備自体はそんなに問題じゃない。ただ、本番がむずかしいのだ。

それに妖怪を呼びつけて、話し合うかと思わせながら、闇うちをするという形式のものなので、背信にも当たるような行為だ。

やってしまうと、それ以降妖怪に信用されなくなってしまうかもしれない。という大きな職業上のリスクも被うことになる。

つまり、それくらいの覚悟がないと、この殺陣をやっては、いけないんだ。

その昔、先生に恐怖とは何か聞いたことがある

5 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2014/09/12(金) 01:51:45.39 ID:UMV+k39u0.net

その時に先生はお前の後ろにいるもの、だとこたえた。

もちろん、俺には意味がわからなかった。
すると先生は人間にはなぜ後ろには目がないのか?
という意味のわからない質問をしてきた。

俺は分からないと答えた。

次に先生は、頭の後ろに目が欲しいと感じたことはあるか?
と聞いてきた。

確かに、あったほうが便利だなぁと俺は思った。
でも、そんなことはあんまり考えたことないなぁと答えた。
先生はそれをきくと、自然ではきっと、目が後ろにもあったほうが生き残りやすい。
でも、ならなぜ、この世の大抵の生き物には、それがないんだろうね。
進化論に従うなら、後ろに目があった生き物のほうが進化しているはずだ。
でも、例えば、昆虫の複眼でも、それは自分の後ろを見ることはできないらしい。

なら、なぜ?

答えは簡単だ。後ろに目がないほうがいきのこれるんだよ。
「それ」は後ろにいるんだよ。
振り返っても、振り返っても、見えない、「それ」は、多分、生きるためには見えては、いけない「それ」は、いまでも我々のすぐ後ろにいるんだよ。
じっといきをひそめて、見つけてもらうのをまっている。それが「きょうふ」だ。

恐怖は、いつだって背後にいる。

先生は最後にそう締めくくった。

俺は先生がかっこつけたことを言っているように感じてむかついたので、その日の先生がスーパーに行くときに背中に、「53歳童貞です」と張り紙をこっそりはっておいた。

殺陣は一回始まったら、中断はできない。

俺も覚悟を決めた。先生がなにをしたいのかはわからないが、今はもう従うしかない。そう考えたんだ。

ならば、まずは妖怪の場所を特定だ。

先生のそれまでミサトさんにやったことの意味がやっとわかった。
彼女を妖怪の「餌」にして釣るつもりなんだ。

皆も知っていると思う話だけど。
ヤマタノオロチを退治する話ってあるよね。

あれも割と殺陣の式用にならったもので、ヤマタノオロチは酒瓶に首を突っ込んで、酒を飲んでいるところに斬首をくらった。

まぁ、あの話だと、酒で酔わせるのが大切みたいな書き方だけど。
本当は酒瓶に首を突っ込んだってところに注目してほしいんだ。

つまり、半分実体がないような妖怪の首をはねるために、酒瓶に首を突っ込ませて、首の場所を特定したんだよ。

あそこでの酒瓶の役割を、この場合はミサトさんに勤めてもうことになる。

まぁ、例えがかなりわるいんだけど、うまい説明の仕方が思いつかないから。
こういう風に言うが、ミサトさんの魂をお酒として、体を酒瓶にする感じだ。

どこまで説明したかわすれてしまったんだけど、とりあえず、体に妖怪が入り込めるけど、途中で詰まっちゃうような状態に、彼女はなっている。

俺はすばやくミサトさんにその場にしゃがませた。
そして、めいんでぃしゅだよー的な詩を大声で叫んだ。

俺は心の中で10秒くらい数えた。

そして、ミサトさんの額に「下」と書かれているだろう位置をごしごしと手でこすった。
これで準備は整った。うまくいっていれば、ミサトさんに興味をもった妖怪が彼女の中に「入ろう」として、挟まって動けなくなっているはずだ。

暗闇の中、ミサトさんは微かに震えているように感じたが、光がなくて、見えなかった。
先生がいた位置から、足音がこちら側に近づいてきた。

俺は先生に位置を伝えるために、手を2回たたいた。

2回たたくのは特に意味はなかった。たた、その昔、手を三回たたくのは、キリスト教で三位一体を侮辱する行為で、悪魔をよぶってきいたことがあって、まぁ、花子さんとかを呼ぶ時も3回たたいたりするしね。

なんで、無意識の時は割かし2回たたく。

それを2回くらい繰り返すと、先生は俺の肩に手をかけた。

俺は先生の手を掴んで、ミサトさんの肩にそれをかけた。

そして、俺はミサトさんから離れようとした。

俺はこの時点、このあとどうするべきなのか知らない。
殺陣の最後の部分は半人前はしっては、いけないってことになっている。
無暗にやったりしないようにね。

しかし、その時だった。

俺の脚首あたりが、何かにつかまれた。

位置的にはミサトさんだろうけど、でも、確信を持てる。彼女じゃなかった。
イタチとかでもなかった。

理由はわからないんだけど、本能というか勘というか、そういうのが違うって、掴んできたといっても、ものすごい力じゃない。軽く触れてきている程度だ。
俺は迷わずそれを振りほどいた。

掴んできた何かは簡単にほどけた。

俺は急いで、そこを離れようと、5,6歩ほどすばやく脚を動かした。
その時、唐突に、ミサトさんがぼそぼそと何かを言う声が聞こえてきた。

「ももの、こざえ、みりたたた、ほしえみ…」だがなんだが、そんな感じだ。
その音が耳に入った瞬間、俺の体はぞわりと嫌な冷や汗がなぜかわいた。

そんで、なにかがすっと体から抜けていくようなそんな感じの感覚にとらわれた。

クスクスクス。遠くから、何かが笑うような声が聞こえた。

俺はやばい!とおもった。

ミサトさんがつぶやいていたのは「天命漏らし」だ。

俺は先生たちがいるほうに体を向けた。

暗闇の中、先生がもぞもぞ動いているのは分かる。
でも、なにが起きているのか把握はできなかった。

一体何が?そう思った時

何かに激しいタックルを食らわされた。

俺は混乱したまま、倒れた。そして、タックルしてきたものはそのまま俺に馬乗りしてきた。
その時ふわりと、いいにおいがした。

ミサトさんの髪の匂いだ。

ミサトさんは俺に馬乗りになったまま動かなかった。
彼女は割かし細いほうだったし、その時期の俺は腹筋とか何とかして、割かし鍛えたんだけど。

彼女をどかそうとじたばたしたのに、彼女はびくともしなかった。

そんで、そのまましばらく沈黙したままの時間が流れた。

先生がやってくるような気配はなかった。

時間に経つにつれ、俺も冷静になった。じたばらするのをやめ、耳をすませた。風の音と、俺の心臓がどくどくいう声しかしなかった。

どれくらいたったか、いつも通り自分の中で数えることができなかったので、激しく不安になった。

体感かなりの時間のあと、ミサトさんの息遣いが俺の顔に近付いてきた。

彼女は俺の耳元でぼそぼそ、しゃべりはじめた。
残念だけど、彼女がなにを言ったのかは、みんなに教えらないんだけど。

ただ、その時になってやっと俺は理解した。

搬山流とは山を運ぶという意味の流派だ。

俺はずっと、それは山を運ぶだけの意志の強さをという意味だろうと思っていた。

でも、それはあくまで半分が正解で、うちの流派がやろうとしていること。
運ぶべき「山」がほんとうにあったこと。

あの時、あの墓地で、俺の妹が出会ったもののこと。

ずっとおかしいと思っていたこと。

俺の一家に深い憎しみを持っているはずなのに、俺をいまだに野放しにしているイタチのこと。

苦しめるためだと、無理やり納得していたが、その本当の理由のこと。

かつて、東南アジアのあの燃えた家で、俺はなぜか助かったこと。

先生がいまやろうとしていること。

まぁ、これなら確かに合点だなと。俺は思った。

ミサトさんの言葉で、俺は自分の経験に色々と合点がいった。
しかし、「天命漏らし」は聞いたほうも、しゃべったほうも、そのどちらのほうも寿命がちじんでしまう。

なので、そのまま聞いていたいという気持ちも大きかったが、何とかしないといけないと、俺はあせった。

先生の本当の目的もやっとわかった。ミサトさんをたすけるためじゃない。先生は彼女の「天命漏らし」の内容を阻止したいいんだ。

そして、殺陣の目標はミサトさんの中に入っている妖怪じゃない。

如是と我聞の話をしたよね?
その我聞のほうを殺すつもりのはずだ。
そのためにはまず、「如是」にあたるミサトさんを死なせたと、「我聞」に勘違いさせることをしないといけない。

その手段として先生がやろうとしていることは、ミサトさんの寿命をほとんど「天命漏らし」させて使いきらせるつもりだ。

先生は妖怪を宴会でいい気分にさせたあと、お願いごとを言わないといけないところで詩をやめた。

妖怪からしたら、突然宴会に呼ばれて、飲み食いして、そんで、あとはどうぞご自由にー
って感じに放っておかれたようなもんだ。

ここで儀式をした俺たちと、妖怪の間に一種の借りのような状態が発生する。

つまり、妖怪が宴会を開いた先生や俺に対して、本来は何かしらお返しすればそれで因果がつりあって、双方気持ちよく宴会を終えるはずだったのに、こちら側はなにもお願いしないから。

妖怪は俺にたちに対して借りができた。

そんで、妖怪ってのは借りを作りたがらない。
因果が生まれちまうからね。

なので、妖怪はこれを返そうとする。

もちろん、人間なら借りを返そうと思ったら、相手が喜びそうなことを一生懸命考えたりするけど、妖怪はそんなまどろっこしいことはしない。

先生はミサトさんをその場に「用意」したんだ。

妖怪はかつてミサトさんに「天命漏らし」させた。

なら、ここに呼んだのはそれをもう一回させるためだ。
妖怪は勝手にそう判断するらしい。

どういう思考の飛躍すれば妖怪がそんな風にこの儀式をとらえるのか知らないが、彼らは割かしとりあえず繰り返すことがすきなようだ。
先生は、妖怪のこの繰り返しを狙った。

先生が詩を止めた時に、先生の目的を察せなかったのからも分かる通り、おれはまだまだ青いようだ。

しかし、俺からしたら、先生のそんな都合は聞かされていないし、意味がわからん。
確かに俺もミサトさんの言葉で色々とわかったけど、でも、まだ遠いことだし、そのためにミサトさんの寿命を使いきるのはおかしい。
大体、先生はミサトさん寿命が尽きたに、そのフォローとか入れるつもりなのだろうか?
先生のことだし、使い終わったら、襤褸雑巾のようにぽいって可能性だってある。
まぁ、混乱していたし、俺は割かし予定がはずれるとてんぱっちまうタイプなので、とりあえず、この場はミサトさんを助けようと、無意識に体が動いた。

あらかじめ、袖の下に隠していた、奥の手だ。

奥の手の名は前のスレとかにも一度出したが「洗心術」

うちの流派には全部で四法三術が伝わっているんだけど。
その中でも、威力は下の下の下。
正直ほとんど役に立たない。

ただ、この術は「術」であるにもかかわらず。
高めると「道」につながる珍しい「術」だ。

しかも、現代でも修業できるお手軽のもので、たぶん、みんなも修業できる。

そんで、まぁ、威力に目をつぶるとしても、習得するためにはひたすら時間がかかる。

皆は君子剣というものを知っているかわからないんだど、それににたものだ。

自分の心を磨き、剣のようにとぎ澄ます。それが「洗心術」

具体的な修業方法はとても簡単。
「一日三自省」だ。
つまり、日常生活の中で朝昼晩に3回、またはそれ以上、時間を設けて、自分の行動を思い返す時間を設ける。短くても10分は必要らしい。
一番重要なのは、自分の行動で自分が後悔するような要素があるかどうか考えることだ。
そんで、後悔があった場合、自省の時間がおわったら、すぐに後悔の原因をなるべく取り除きに行く。

例えば、告白しようとしてうじうじしていたら、タイミング逃した。
そんで自省の時間で、それが自分にとっての後悔だったら、すぐに告白しに行く。といった感じだ。

これをひらすら毎日繰り返す。

そんであるとき、自省をしても何の後悔もないときがある。
この状態が1週間続くと洗心術は小成する。

自分の体と心がまっすぐに一本の芯を通すようになり。
つまり、「正直」に至る。

そうなると、自分の行為や言葉のすべてに自分の心がそのまま表れる。

「寺生まれのT」の話はみんなからわりとばかにされてるけど、でも、俺的にはあれにもわりかし現実味もある。
もちろん道行も必要なんだけど、「洗心術」を極めた人間は、魑魅魍魎にたいしては「破ァ」と一喝するだけで退散させることができるという。
言葉に自分の魂をそのままのせて、相手にぶつけることができるからだ。

この術を小成させるためには個人差が激しい。
短い人で1年、長い人で60年が必要だ。

鬼についてだけど

この漢字はもともと中国のほうでは幽霊って意味合いがでかい。
そんで、日本での鬼って、ヒト型でなんか普通に見ることができるよね。
つまり、鬼というのは本来人間であるということが見て取れる。日本の昔話だと、女の人が鬼になるとかの話が割とごろごろしてるよね。
丑の刻まえりとかも、鬼になるための儀式だし。

夜は幽霊とか妖怪とか信じてないなら出歩いてもいいと思うよ。

一番良くないのは妖怪とか幽霊とかを戦々恐々となりながら出歩くこと。
そういう人は一番狙われやすい。

怖くないのなら、相手側が逆に怖がる。

西洋の恐怖というイメージは自分以外の何かにあると考えられているんだよ。
例えば、映画でも、西洋のパニック系はエイリアンがでたり、プレデタ―がでたり、小説とかなら、クトゥルフがそうだね。
つまり、人間にはどうしようもないもものを怖いと感じる。
でも東洋では、恐怖は自分の内面にあると考えている。
「きょうふ」って妖怪は、いつだった自分の後ろにいるって話をちょうどしたけど、まさにそんな感じかな?

あと、夜に怖い時に歌ったりすることもあるだろうけど、実はこれよくないらしいよ。

理由の詳しいところは覚えてないんだけど、確か風水的に、自分の体の中にある陽の気が逃げて、陰の気が入るから。

なので必要最低限しか口を開かないようにするのがいいらしいけど、まぁ、怖いなら仕方ないだろうけどね。

頭の中で歌う分は、いいと思うよ。
怖さを紛らわすには、心理学だと感情の転換がいいらしいよ。

怖さは怒りや悲しみに転換しやすいらしいから。
あとは、個人的には星でも見てノスタルジックになったりするのがやりやすいかな。

さて続き……「洗心術」についてだっけ?

俺はこの時、洗心術を小成するくらいの領域だった。
いわゆる後悔をしない状態かな?

まぁ、そのかわり、あきらめとかそういう感情が多くなったんだけど。
これを解決できれば大成の域だね。

修業法は前にも変えてある通りの奴と、あと、あれだけじゃあ、実際に、使えものになるかというとならないので、同時に色々やったりもしたんだが、企業秘密ってことで、俺の場合3年でここまで来たんだが、先生には使えるようになったと教えていなかった。
いざって時の物にしたかったからね。

そんで、小成の域だと、さすがにTさんみたいに「破ァ」っていうと何もかも解決には、いたらないので、小道具を用意している。

物理的なもので、アマゾンで買った小さな拡声器だ。

まずは、自分の中で感情を作った。つくる感情は怒り。

感情の作り方は演劇の本とかかって勉強したんだけど。
怒りの場合は、最初、からだから入ると簡単らしい。
つまり怒ったときの体の反応かな?わなわなしたり、歯を食いしばったり、拳を握り締めたり。

そんで今までの怒った出来事とかを思い出したりしてね。
まぁ、体感時間はわりとあったから、余裕は結構あった。

そうしていると、本当に無性に腹が立ってきた。

なにが「天命漏らし」だよ、なにが新しい弟子だよ。
こっちは、可愛い中学生だとわかってわりと嬉しかったんだぞ!

とかなんとか自然と頭に浮かんだ。

拡声器のスイッチを手探りで開けて、俺はそれを口に当てて、「ぬぅんー」とかそんな感じに適当に叫んだ。なるべく言葉に怒りを込めてね。

ミサトさんは急に俺が声を上げたのにびっくりしたように、びくんと飛び上がった。
それと同時に、こっちにっざっざって急いでかけてくる足音が聞こえた。
足音は俺のほうに近づいてくると、何かに胸倉を掴まれ立たされた。

暗闇の中顔はよく見えないけど、息遣いは先生の物だった。
先生はなにも言わずに俺の腹にパンチをいっぱついれた。

このころになると割と鍛えてたので、あんまり痛くなかった。
でも先生の言いたいことはわかった。

「余計なことはするな。」

先生はそう伝えてきたんだ。

そして、ミサトさんのほうから、彼女が声をあげて泣く音が聞こえてきた。

っち、と先生のほうから舌打ちする音が聞こえた。

そんで先生は荷物が置いてあるほうに向かうとがさごそと物を探し、懐中電灯を取り出したのか、明かりをつけて彼女のほうを照らした。

先生が明かりをつけるってことは、妖怪はもういないらしい。
なんだかんだ俺の術が通用した!と少し喜んだが、すぐに、俺はぎょっとなった。

ミサトさんは地べたに座り込み、泣いていた。
体中に泥やら砂やらがついている。確かに、俺に馬乗りやらなんやらしたが、そンなことがあってもいくらなんでもこの量は……って感じについている。

しかも。
彼女は手でぶちぶちぶちとものすごい勢いで自分の髪の毛を引きちぎっていた。

俺は先生のほうに急いでどうしますか?って感じに合図を送ったんだが、先生は首を振って、ストップと返事した。

俺は先生にしたがった。

助けたくないわけではないが、髪をむしるくらいなら命の危険はないだろうし、それに先生の目的も達成できそうだった。

髪の毛というのは昔から命の代わりと考えられていて、それを全部とると、一回生まれ変わることになる。

まぁ、お坊さんになるときとかにも一回全部剃るよね。
あれは煩悩とかをすてるんだけど、つまり、一回しんで生まれ変わって、真白の状態になるので煩悩も全部消えるみたいな意味があるのかな?

昔の話だと、三国志の時代農民を安心させるため、曹操は麦を踏みつけたものは死罪になる軍紀を決めた。

だけど、あるとき曹操自身がそれを間違って踏んだ。
曹操は自分の命を絶たないと、軍紀が護られなくなると考え、曹操は自分の首の代わりに髪を深く切り、髪の毛で自分の命の代わりにした。
という話もあるくらい、髪の毛は大切なんだよ。

まぁ、でも、それは昔の人が髪の毛が命の代わりとなる、と信じてるから。
代わりになるのであった、今だとそうでもないのだが。

今回の状況ではどうやら髪の毛はなんとか命の代わりにできそうだ。

よく幽霊とか妖怪とか悪魔とかそういうのが乗り移ると、自分の髪の毛をむしるとかそういうこと聞くよね?

まぁ、聞いたことなくても、そうなるみたいなんだが…

人間は自分の命がものすごい勢いでなくなると、かわりに髪の毛をむしって、それを代わりにすることがあるらしい。

この時に、ちゃんとした措置を取ると、髪の毛を身代わりにできる。

ミサトさんが髪の毛をがしがしむしっているのを見て、俺は、いい匂いがしたのにもったいないなぁとかおもった。

俺は髪ふぇちなのかも。

そんで、彼女の頭皮の一部も向けてしあったのか、だらだらと、血が流れ始めて、かなり悲惨な様子だった。

しばらく待つと、彼女は髪の毛を全部むしり取った。
それを見た先生はすばやく動いた。

むしられた髪の毛をなるべく集めて、それを蝋燭に巻き始めた。
俺は急いで荷物のほうから塩入生姜水をとりだし、それをむりやり
まだ泣きまくるミサトさんに無理やり飲ませた。

624 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2014/09/22(月) 21:28:44.24 ID:7lpcwXqu0.net

627 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2014/09/22(月) 22:15:31.74 ID:+XJVCl0S0.net

『厚黒学』って本おすすめ~

人が英雄になるためにはどうするべきか考えた抜いた結果、あつかましく、腹黒く生きれば英雄になれるとかなんとか……そんな感じの話。

中国人の人間性がおかしいのはここから来てるのかもね。

またこんなクソスレたててしまって、ごめんって、おひさしゅうございますぅ

2 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2015/03/13(金) 23:50:37.28 ID:c2SPhA8Y0.net

俺が俺なのかっていう哲学的な質問なら俺だよ。

妖怪退治の仕事をしている本物かっていう質問なら、俺は本物だって言うけど、実際どうかの判断は自分でしてくり

5 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/03/13(金) 23:57:35.78 ID:VNZ3DI9n0.net
待ってたよ!
楽しく読ませてもらってた!
だいぶ前にさ。霊は人間に幻覚を見せるだけであって、妖怪は痕跡を残すものだって言ってたよね?
その考え方だとポルターガイストとかってみんな妖怪の仕業になっちゃうけどどうなんでしょ?

6 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2015/03/13(金) 23:59:42.01 ID:c2SPhA8Y0.net

幽霊の専門家じゃないから、幽霊のことはよくわからないけど、モノが動いたら、それは妖怪だと思う。

まぁ、幽霊が幻覚を見させて、実は人間が動かしてのに、幽霊が動かしているように見せかけるとかは、普通にありそうだね。

さて、じゃあ、大分空いてしまったけど、続き書いていきたいと思うよ。

生姜水を飲ませると、ミサトさんは激しく嘔吐し始めた。
吐いたものは確認しなかった。

まぁ、ばっちいのもあるし、暗くて見えなかったのもある。
いい匂いはしなかったね。

そして、先生は髪の毛を蝋燭に巻き終えると、カバンの中から鏡を取り出した。

この鏡だけど、そんなに大きくない、ホームセンターで普通に売ってあるようなものなんだけど。表面をガムテープで全部見えないように張っている。

それを地面に置いて、その上にロウソクを立てて、蝋燭に火をつけた。
もちろん、風から守るようにね。

そこからはしばらく、俺は美里さんを介抱して、先生はロウソクをただただ静かに見守った。

時間にして3,4分くらいたって、ようやくミサトさんの様子は落ち着いた。
胸を上下させながら、しかし、頭がひどい有様なのに、特に痛がる様子はなかった。

儀式を始める前に、彼女にはなるべく儀式中はしゃべらないでほしいと、あらかじめ伝えていたが、正気にもどった彼女は健気にも、それを守っていたのかもしれない。

まぁ、気力がなかったってだけかもしれないなぁ、と俺は思った。

そんでもって、その頃から、あたり一面に髪の毛が燃えた時の嫌な匂いが漂ってきた。

あ、ちなみになぜこんなに期間が空いてしまったかというと。

実は大学を受けることになって、仕事とかもあってなかなかこれなかったんだ。

すまぬ…すまぬ…

大学受かりました。今年の春からピカピカの一年生(23歳)っす

すると先生は鏡をトントン叩いて、ロウソクを倒した。
ロウソクはそれでも、燃えていた。

俺はそれを合図にミサトさんを支えながら、彼女をロウソクの前に誘導した。

そして、小声で、ロウソクをつばで消して。と伝えた。

先生はそれをきくと、なるべくつばを溜めてから、唾をかけなさい。
あと、息で消さないように注意するように、と補足した。

ミサトさんは首を縦に振ると、注意深く、ロウソクの火に唾を垂らして、それを消した。
先生は近くにあった石で鏡を2,3回強く叩いた。
そして鏡が割れると、ロウソクごと、それを土に埋め始めた。

ガムテープを巻いている理由は、この時、鏡の破片が飛び散らないようにするためなんだ。

鏡を完全に埋め終えると、先生はミサトさんに、もう少し頑張れるか?
と聞いた。

彼女はしばらく悩んでいたようだったが、結局最後は頷いた。

俺は結構驚いた。ただの中学生が、こうも精神力あるとは思ってなかった。

先生はそれを見ると、俺の肩をに手をかけながら、立ち上がった。

そして、詩を歌い始めた。

詩の内容は主に宴の終わりを告げるものだ。

来てくれた妖怪にひどいことをしたんだけど、それは無視して、特に触れなかった。

本来では、謝罪したり、言い訳したり、色々やらないといけないんだけど。
先生はそれをしなかった。

まぁ、妖怪退治にとって妖怪からの信頼で食って言っているようなものだから。
結構致命的なことなんだけどね。

妖怪側からしたら、宴だと思って行ったら、なんかわかんないうちにぶん殴られたんだからね。
もし、その妖怪がおしゃべりで、それがほかの妖怪とかに広まったりすると、以降、妖怪を呼んでも来なくなるかもしれない。

うちの看板が潰れかねないんだよね。

それでも、先生はそれをしなかった。

この場合、先生の目的は単純で、もっかい俺が追い払った妖怪を呼ぶつもりなんだ。

宴の終わりを告げ終わると、先生は儀式に使ったほかのものにも土をかぶせて、埋め始めた。

先生は特に何も言わなかったんだけど、俺はミサトさんを地面に座らせると、カバンからお酒を取り出して、地面に撒いた。

これは妖怪が戻ってきた時の時間稼ぎなんだけど、前に一度話したっけ?

長いあいだ仕事をしてきたわけだし、これくらいは言われなくても、自分でやった。

俺はもちろん、少しずつ撒こうと思ったんだけど。そこで、急に寒気がした。

そして次の瞬間、腕が何者かに掴まれ、酒が入った瓶を落としてしまった。

俺は来た!と思った。

もう少し時間が必要かと思ったら、結構すぐやってきたみたいだ。

まぁ、もちろんさっきのやつじゃない可能性もあるけど、8割8分くらいはそいつだろうね。

なんせ、こっちはぶん殴っといて、誤りも言い訳もしないわけだ。
相当穏やかな妖怪じゃないと、怒って仕返しに来るのは当たり前だ。

でも、妖怪は単純だから、仕返しより、お酒のほうが大きいんだよなぁ。

俺が酒瓶を落としたのをみて、先生は土を掘る手を止めた。

そして、座っているミサトさんの方に近寄った。

先生は座っているミサトさんの周りをすばやくしめ縄で囲い。彼女にそのなかでじっとしているようにいった。

そして、俺の方にずかずか近寄ってくると、邪魔、するな、何があっても、「山」と合図をしてきた。

「山」という合図は、うちでは非常につよい命令系となっていて、それを出されたら、絶対に従わないといけない。

違反したら、破門扱いだ。

俺は先生からその合図を教わってから、一度もそれを使われたことはなかった。

俺は内心でごめんなさい、ミサトさんと、彼女に謝っておいた。
先生はまだ、我聞を殺すことを諦めていない。

そんでもって、俺はその先生に従うことにした。

ミサトさんには犠牲になってもらう。

良心の呵責はもちろんあった。さっきは頭がかっと熱くなって、儀式の邪魔さえしたしね。
まぁ、それは妖怪退治として半人前の証拠なんだろうけどね。

先生はそれを見抜いて、わざと俺に隠す形で物事を進めて、既成事実を作ろうとしたが、俺が天命漏らしを聞いて、気がついてしまった。
それでも、中止にするわけには行かないから、「山」の合図

今思うと、ひとりの人間の損得を大切にしては、いけない。
自分のやることをよく考えて、冷静に、情を挟まず行動しろ、っていう意味も込められていたんだろうね。

そして、先生はまた詩を歌い始めた。

今度の詩は、三人歌だ。

三人歌というものは妖怪に大して嘘をつくときに歌う詩だ。
独特の言い回しで、嘘をつきたい事柄を、三回いう。

これで、あまり深刻だったり、明白じゃない自体であれば、妖怪を騙せる。といううちの流派の術のひとつだ。

昔から、三という数字はたくさんという意味らしい。

キリがいいなら5とか10とかでもいいのに、なぜ三がたくさんなのかというと、妖怪や神様にとって三がたくさんの意味らしい。
そこから普及したんだろね。
まぁ、だから妖怪に絡む事柄には三が多い。三尸虫とかもね。

ちなみにだけど、みんなは三人成虎っていう話を知ってるかな?

ある日、?恭っていう中国の昔の人が魏の国の王に、もし、ある人があなたに対して街に虎が出たと言ったら、信じますか?と聞いた。

すると王様は信じないだろうと答えた。

?恭は、なら二人の人が、街に虎が出たと言ったら信じますか?と更に聞いた。
王様は少しは疑いはじめるだろうねといった。

じゃあ、三人が街に虎が出たと言ったら、信じますか?と?恭はまた聞いた。
王様はそれなら信じるだろうと答えた。

まぁ、つまり、本当に虎が出ていなくても、たくさんの人間がそれが本当だといえば、それを信じてしまうということだ。

この三人歌という名前はこっから来ている。
同じ事柄を三回繰り返すと、妖怪はそれを信じる。
もちろんバレバレのうそはダメだけどね。

だから、嘘をつくときは慎重に言葉を選ばないとダメだ。

もしバレてしまったら、信用を完全になくしてしまうからね。

できれば、使いたくない詩だけど、まぁ、うまく使えばこれほど効果的なものも、ないよね。

先生がついた嘘は、ミサトさんにはもう触れないで欲しい。
触れられたらいまいちばん困る。

というものだ。

妖怪は怒っているから、俺たちが困ることをしたくてうずうずしているはずだ。
俺たちの目的からしたら、むしろ、もう一回触って欲しいんだけど。
わざと逆なことをいって、妖怪を誘導した。

さらに、先生は妖怪が信じ込むようにミサトさんの周りを大切そうにしめ縄で囲った。

大切に囲ったんだから、そりゃあ、触ったら困るんだろうなって思うじゃん?

そして、詩が終わると、俺と先生はミサトさんから少し距離をとった。

去り際に、お酒の方を確認したら、結構撒いたにも関わらず、結構乾ききろうとしていた。

しばらくそのまま待っていると、風の音や、海からの波の音以外にも、なんか奇妙な音が聞こえてきた。

何かが跳ねているような音だ。

たたん、たたんって感じ?重い球体が低い位置から落ちた感じの音?
そんな音が聞こえてきた。

よく耳を澄ますと、それはミサトさんの周りのほうから聞こえてきた。

たたん、たたんっと、ミサトさんの周りを、音がぐるぐる回る。

ミサトさんのほうを目を凝らしてみると、彼女は居心地が悪そうにもぞもぞ動いていた。

141 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/03/21(土) 23:14:39.21 ID:LnL+im8/0.net
最近の妖怪事情聞きたいな!
直近の仕事は、いつでどんなのだったかとか、まだっかなぁ(((o(゚▽゚)o)))

143 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2015/03/22(日) 01:59:58.07 ID:9uld+nx50.net

例えば今日はとある川で蛍が今年もちゃんと出るように、蛍錦という蛍をなくしてしまう。と言われる妖怪と交渉してきた。

144 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/03/22(日) 02:05:50.92 ID:AWtqHvgP0.net

146 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2015/03/22(日) 02:12:54.15 ID:9uld+nx50.net

例えば、蚊は人間のちを吸うけど、蚊は人間にたいして悪意を持っている。ってわけでもないだろ?

だから交渉する必要が出てくる。

蚊にもっと栄養のあるものあげるから。
人間から血をすわないでくれーみたいなね。
まぁ、蚊は交渉できないけど、そんな感じ。

「蛍錦」の場合は、別に蛍を食べるとか、蛍を殺すとかってわけじゃないんだけど。
いるだけど、蛍が出にくくなるらしいから。

彼には毎年の夏だけ、場所を移してもらってるんだよ。
まぁ、秋頃にまた居心地のいい綺麗な川にもどっておいでー
っていつも商売のために言っているのは内緒な……

続き

近づくタイミングを図っていると、音はしばらく跳ねると、今度はゆっくりとゴロゴロ転がるような音に変化した。

俺は慎重にしめ縄の方に近づいた。なるべくゴロゴロ音とぶつからないようにね。

そんで胸ポケットからインクペンを取り出して、地面としめ縄を横切るようにインクを垂らした。

一応、これでしめ縄は切れたことになる。

ちなみにだけど、俺はミサトさんに申し訳なくて、彼女の顔を見れなかったから。
わざと彼女の背後の方に書いた。

そして、その場を離れて、もう一度しばらく様子を見た。

すると、ゴロゴロする音は線の方で消えた。
さらに、ミサトさんは前後にゆっくりとゆっさゆっさ、しはじめた。

俺はそれを見ると、急いでしめ縄と地面の線をずらした。
これで、再びしめ縄が働く。

今日はあまり時間ないので短い話をひとつ。

3 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/02/04(木) 00:56:56.75 ID:sC5OHh5a.net

ちょうど最近、都市伝説の話を食堂で聞いたんだけど、なんだかそれがどうしても頭から離れないから、話すわ。

※関連話 ⇒ https://kowaiohanasi.net/yamabuno-tooru

たぶんスクエアってぐぐると出てくる都市伝説なんだけど、ウィキのやつをコピペすると、5人の学生達が雪山へでかけたんだけど、猛吹雪となって学生達は遭難してしまった。
そして途中、5人のうち1人死んだ。

残った4人は吹雪の中、山小屋を見つけ、そこで一夜を過ごすことにした。
しかし、山小屋の中に暖房とかないし「寝たら死ぬー」って考えた4人は寝ないための方法を考えた。

4人が部屋の四隅に1人ずつ座り、最初の1人が壁に手を当てつつ2人目の場所まで歩き2人目の肩を叩く。
1人目は2人目が居た場所に座り、2人目は1人目同様、壁に手を当てつつ3人目の場所まで歩き肩を叩く。
2人目は3人目がいた場所に座り、3人目は4人目を、4人目が1人目の肩を叩くことで一周し、それを繰り返すというもの。

四角い部屋を周ることからこれを「スクエア」と名付けた。

自分の番が来たら寝ずに済むし、次の仲間に回すという使命感で頑張れるという理由から考え出されたものだった。
この方法で学生達は何とか吹雪が止むまで持ちこたえ、無事に下山できたのだった。

しかし仲間の1人が、「この方法だと1人目は2人目の場所へと移動しているので、4人目は2人分移動しないと1人目の肩を叩ける事は在り得ないため、4人では出来ない」と気付く。

話の結末としては、死んだ仲間が5人目として密かに加わり、仲間を助けた、というものである。って感じだ。

この話のオチはまぁ、死んだ仲間がいつの間にか混ざってた!
って風に語られてるのが、どうも個人的にしっくりこないんだよね。
なぜなら、何度も話しているように、幽霊ってのは物理的なことはあんまりできない。

もちろん、触れられたと勘違いさせることはできるんだけどね。
じゃあ、俺が何を言いたいかというと、このスクエアに妖怪が混ざってた!
とかそういうわけでもない。

妖怪はあくまで気ままに生きているので、ぽっと人間がやりだしたことを理解して、急に協力しだすなんてのは筋が通らない。

面白いことをしてるわけでもないし、なんかお願いされたわけでもないのでね。

ならば、この話を俺的に筋が通るように整理すると、こうなる。

最初に山に登った時から、6人いたんだよ。

つまり、6人で山を登り始めて、途中で一人死ぬ。
そして、5人で山小屋に入って。5人で「スクエア」をする。

しかし、朝になったら、一人消えてるんだよ。
ほかの四人は消えた一人と一緒に来たこととか、存在とかそういうのを忘れて。

これなら、筋が通る。
なぜなら、この現象にはちゃんとした妖怪界隈の名前がついている。

結構有名な名前で「神隠し」だ。

「神隠し」に関しては俺がとやかくいうより、ウィキペディアでみてもらったほうが早い。まぁ、大体のところはみんながイメージするところとあんま変わんないしね。

人かひゅっと消えたりするのが「神隠し」だってのは有名だからね。

でも、あまり有名じゃないのは「神隠し」にあった場合、周りの人間がその人の存在をしばらく忘れてしまうこともある。

例えばだけど、子供たちが遊んでいて、いつの間にか一人消えて、そんで、帰ってきた後に、大人たちが一人消えていることに気が付く。

この場合、子供たちは大人たちに言われるまで、自分たちの友人の存在を忘れていたことになる。

これがもっとひどい場合、大人たちすら忘れてしまい、そのうちひょっとした拍子。
まぁ、家族写真をみたり、その子の持ち物をみたりして「あれ?いない?」
と気が付く。

だから、とは言わないけど。

たまには自分のアルバムとか、携帯の写真とかを覗いて、確認したほうがいいかもね。
もしかしたら、いつの間にか自分の大切な人のことを忘れてしまっているかもね。

特に、最近はスキーのシーズンだしね。

神隠しと記憶喪失は結構密接な関係があるよ。
まぁ、ふつうは神隠しにあった人が戻ってきたとき、いなくなっていた間の記憶がない。とかいう人がいたりするよね。

じゃあ、逆にされた人の周りの人の記憶が消えていてもおかしくないだろ>

まあ、こじつけって言われたら終わりだけど。

さて、少し時間ができたのでなんかエピソードでも話そうと思う

24 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/02/04(木) 16:15:28.67 ID:aemfn8Bk.net

最近何退治してる?って聞かれたし、ちょうどこの前にやった「定期的な仕事」のひとつを話そうかな。

その仕事は簡単に言うと大体3年くらいを周期に一度山に行って、夜の間に山を登りながら山頂まで、都会の土を少しずつ山に撒いて、さらにいろいろやるってやつ。

そんなに高い山じゃないんだけど、割かし土が重くて肉体労働になる。

なぜそんなことをしないといけないか言うと、そのやまは、いわゆる「禁山」ってやつだ。

まぁ、禁山ってのはあくまでうちではそう呼んでいるだけで、本当の名前は別にあってここでは伏せさせてもらうんだけど。
なぜ、「禁山」って呼ぶかというと、昔立ち入り禁止だった山なんだ。
暗黙のルールでとか、怖い妖怪が住んでいるとか、そういう理由じゃない。

当時の領主様とかが実際に決めた立ち入り禁止エリアなんだよね。

理由としては今だと考えられないけど、当時は山賊がいたんだよね。
食っていけなくなった農民とか、落ち武者とかそういうやつらが山に入って、集まって村とか襲って金銭を奪うわけだ。

討伐しようにも、山賊は山の中を知り尽くしているわけだから、行く人数が少なかったら逆に返り討ちに合うし、人数が多いと山の中に隠れてひっそりやり過ごすわけだ。

そんな山賊が生まれないようにするために、一部の地域では一部の山を立ち入り禁止にしたんだ。

そう言う山をうちでは「禁山」とひとくくりにしてよんでいる。

昔のそういう名残で、道も整備されていないし、森もあるしで、最近でも人の気がまったくない禁山も多いらしいんだけど。

やっぱり人がいないと、そういう場所には妖怪が住み着きやすい。
まぁ、住み着いたところで、めったに人が行かないし。誰も迷惑しないから別にいいんじゃね?ってなるかもだけど。

最近の日本の山って必ず誰かしらの土地になっているみたいで、その土地の持ち主が妖怪とか住み着いたらいやだなぁっておもって俺みたいなやつに頼んで、お祓い的なことをしてもらうわけだ。

昔の中卒半ニートと違って、今は一応学生してるから、こういうちょっと移動に時間がかかる仕事は、長期休みにすることにしてる。

この「禁山」にいったのはちょうど先月の冬休みの間で。お正月返上の仕事となった。

俺は弟子ちゃんをつれてまず東京まで新幹線で行って、河川敷あたりで土をでっかいコーラのペットボトル6本分くらいに、詰めた。

その日の夜はビジネスホテルに泊まって、翌朝東京から四国まではフェリーで移動した。
飛行機が一番理想なんだけど、土がねw
重いし、不審がられるので、フェリーにした。

車とか電車とかはさすがにしんどいしね。

そんで、四国について電車で2,3時間、レンタカーで3,4時間。
例の山の近くまで来た。
車での移動中、休憩でパーキングエリアに寄ったとき、依頼してきた人に電話をして、今から山のほうに入ると連絡する。

この件の依頼人とは実はあったとこがない。
山に入る時もべつに立ち会うわけでもないので、正直いかないで、もうやったよー、とかうそをついてもばれないんだけど。

でも、先生がなくなった際、いろんなところに連絡して、今後も仕事を任せていただけますか?
って聞きまわったところ4割くらいがもう来なくていいって言ってきたので、たとえ会ったことのない人の仕事でも、ちゃんと仕事をして、信頼関係を築いていかないといけない。

そのうち仕事紹介してくれたりするかもだし。

俺と弟子ちゃんは荷物をまとめて、空が完全に暗くなるのをまった。
まぁ、もう着いた頃には夕方だったので、そんなに待たなかったね。

雪は降ってなかったけど、くっそ寒かったから車のエンジンを止めた後は、防寒具をフル装備して晩飯のおにぎりとかをたべた。

6時くらいになると、外はほとんど真っ暗だった。

携帯は圏外だったのでコンパスやらGPSやらそういう迷わないときのための装備とか、山には道がほとんどないので、登山用のブーツをは、いたりとかして、持っていくものを準備して、土を背負って出発した。

山に入り始めると、一気に寒さが2割くらいました。

一応いままでの山を回るための順路に目印として木にしるしをつけていて、それを頼りに山をぐるぐる回るようにして上る。

土は10メートルくらいおきにすこし地面に垂らしておく。

なぜこれをするかというと、人間の気が含まれているらしい。
まぁ、河川敷のものだけど、せれでも都会の土ってものは人間臭さがしみ込んでいるらしい。

山はそんなに高い奴じゃない。具体的にどれくらい高いかは知らんが、それでも1時間半くらいで、山の真ん中くらいまでついた。

ここら辺まで来ると少しだけだけど、雪のあととかあったりもした。

弟子ちゃんはこういう真冬の山の中の野外活動初体験で、かなりしんどそうな顔をしていた。
本当は連れてくる気がなかったんだけど、私もぜひ!みたいな感じでついてきた手前
弱音もはけないんだろうね。

休憩を設けたかったけど、休憩できるような場所はあたりになかった。

山の中では極力しゃべらないほうがいいので、雑談して気を紛らわしてやることもできなかった。
そんな中弟子ちゃんが突然ビックとなってしりもちをついた。
あ、ちなみにだけど、弟子ちゃんが前のほうを歩いていて、俺が後ろのほうからついていく感じだった。
俺はどうしたんだ!って駆け寄ると、彼女は青い顔で前の木のほうを指さしていた。

木の枝にはバービー人形がつるされていた。

彼女はそれに驚いたらしい。

俺はなんだ、そんなことかと思ったけど。
弟子ちゃん的には腰が抜けたらしくて、3,4分くらい立てなかった。

山の中にこういうものは結構あったりする。なんでここにあるんだろうって気にしても、無駄だ。

ただの悪戯かもしれないし、なんかの意味があるかもしれんが、関わるだけ損だ。金にもならないしね。
俺は手で「気にするな」「無視」と合図をした。

そういえば、弟子ちゃんが疲れていることに関しては少し気をまわしてたけど、怖さに関しては完全に忘れてた。

そりゃあ、初めてこんなコンディションの夜の山に入って、怖くないわけがないわな。

俺はカバンから飲み物を取り出した。

この場合の飲み物はよく使っている日本酒ではないw

まぁ、未成年に飲ませるもんじゃないしね。

山の中で儀式をするわけでもないのに、何かをたべたり、飲んだりするのは本当はよくないんだけど。
なぜなら、そういうことをすると、第一に、よくない気がついでに入るかもしれないから。
第二に、もし妖怪とかそういうのがいたら「あれ?なんかうまそうなもん食ってんじゃん?なに?なに?俺の分は?」ってなってあげないと怒る。

だから昔の人が山で狩りとかする時に1個おにぎりを食べると、もう一個を捨てたりするらしいね。

うちの場合、どうしても必要だと感じたときは、もち米を煮詰めて、中にショウガを入れたものを飲む。

おいしくはないけど、保温瓶にいれてるから。まぁ、少しあったかい。

これなら、妖怪は興味持たないから寄ってこないし、悪い気が入ってもすぐに出るらしいから。影響がないらしいね。

飲み物をいっぱい弟子ちゃんに飲ませると、俺は彼女を連れて再び作業を開始した。

そしてさらにそれから1時間くらい。山頂にはつかなかったけど、とってきた土が底をついた。ここからが、本番だ。

俺はとりあえず一番外の防寒具を脱いで、カバンから汚れたジャージをとりだして、それを履いた。

前に言ったかどうか忘れたけど。神様に合うときはきれいな恰好。妖怪に合うときは汚い格好のほうが好まれるらしいからね。
そんで、弟子ちゃんは持ってきた特別な打楽器を一定のリズムで打ってもらって、俺は、いつものように詩を読み上げた。

いつものように具体的な詩はどういうものかは隠すけど、大体の詩の意味はこうだ。

こんばんわ。いきなりお邪魔してすみません。どこどこの流派のなになにでございます。今回も前回のような事情でやってきました。これからも末永くよろしくお願いします。

みたいなものだ。

山ってものは大体妖怪が住んでいる。
むしろ住んでいないほうがおかしいものだ。

妖怪は人間みたいにこの土地の権利はだれだれのものだー!なんてしらない。
判断材料は住んでいるか住んでいないか。それだけだ。

それを人間の都合で追い出したりするのはフェアじゃない。

まぁ、だから追い出さない。追い出したら、その妖怪に恨まれてしまうしね。
誰だって自分が家に住んでいて、急にお前出てイケーって言われたら怒るだろ?

それに追い出したとしても、別の妖怪がすぐにやってきて山に住み始める。

いくら予防策をはっても、そこにずっと張り付いているわけでもないし、やっても無駄だ。

なので、この仕事の場合、山の大部分を妖怪が住みたがらないような土地にして、それでも、新しい妖怪が来たら、もうすんでいる妖怪に「ここは俺の家だから別のところいきなー」と説得してもらうように、昔に交渉していて、3年くらい置きに様子を見に行く。

まぁ、依頼主のお願いして来てることとは若干していることが違うけど、結果的に山の妖怪の密度は減ることになるから、そこは我慢してもらおう。

言わなければばれないしね。

詩を読み終えると俺はカバンからアルミホイルで包んだお香の灰と米と塩を混ぜたものを取り出し、弟子ちゃんにはそのまま楽器を叩いていてもらって、一人で山の上のほうに上った。

大体登って5、6分くらいで体の震えが止まらなくなり始める。
なんというか、寒いのは寒いんだけど、寒さからの震えじゃない。
怖さでもないんだけど、なぜか不思議に震える。

不謹慎だけど、すこしパーキンソン病みたいな感じなのかもしれない。

俺はそこでいったん足を止めて、アルミホイルを開いて中身を地面に盛り塩?みたいな感じに盛った。

そして、それを土ごと力強く蹴り、後ろを見ないように気を付けながら、くるりと後ろを向き、山を下り始めた。

途中弟子ちゃんを回収して、来た時より短い、直線的な下山ルートで帰った。

車についてエンジンをかけると、弟子ちゃんは青い顔をしながら、俺が山を登っていくのを見ていると、すっと、茂みから何かが俺についていったような影を見た気がした。とかなんとか言い始めた。

俺は冗談で、ああ、それならあったよ、バービー人形が動いてたっていってあげた。

先生の話のつづき

55 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/02/06(土) 22:33:28.82 ID:NLa9Bcbm.net

もう結構たってるから、すこし記憶が薄まってる部分もあるからそこは目をつぶってくれ。

ミサトさんの様子がおかしくなってからしばらくすると、彼女は体をゆさゆさしながら、何かをつぶやき始めた。

俺はなるべく意識が彼女のつぶやくことに行かないように注意し、先生のほうに目を向けた。

三人歌を終えた先生は、黙ったままうつむいていた。

何か準備をしないのだろうか?
「我聞」は「如是」が死んだあとにランダムで近くに生まれる。

なので見つけられるかどうかは運によるところが大きい。
先生は「我聞」を探す方法を持っているのだろうか?

なんで先生は何の指示もしてこないんだ?

基本的に儀式は象徴的であいまいな部分が多く、まぁ、知識量や経験があれば、それなりに判断をしたりもできるけど、俺が早とちりして、儀式をぶち壊したさっきみたいに、いまやっているものと、別のものを勘違いしてしまうことがおおい。

なので、?搬と助搬に分かれて、メインのほうが助手のほうに常に合図を送って、意思疎通をするのが大切だ。

手による意思表示もそうだけど、夜は暗闇が多いのでそのほかの簡単な合図も使いつつ、進行しないといけない。

それなのに、先生は「殺陣」を始めてから、俺に指示を送ってこない。

俺は「殺陣」の後半のやり方知らないのにだぞ?

俺は何もできないまま、暗闇の中で突っ立てるしかなかった。

そうしているうちに、ミサトさんの様子にさらに変化が見られた。
彼女は突然つぶやくのをやめて、気分が悪そうにもぞもぞし始めた。

そしてせき込み始めたと思ったら、激しく嘔吐し始めた。

もう一度、ショウガ水のせいで大分吐いたから、何も出すものはないと思ったが、音から判断すると、結構の量の何かがでていた。

でも俺はミサトさんの背中のほうに立っていたし、暗かったので何を吐いているのか、分からなかった。

すると、今まで動かなかった先生が、ミサトさんのほうに近寄った。

そして、なにをすると思ったら先生は口を開いてこういった。

お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。

大きい声ではないけど、はっきりした声で、お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。

なんどもなんども、お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。

そう繰り返した。

さらに、ポケットの中から何かを取り出し、ミサトさんに向けて投げ始める。

暗闇で何を投げているのかはわからない。
でも、ぺしゃ、ぺしゃと湿った何かがミサトさんの体にぶつかるのが分かる。

全部で6個、先生は何かを投げた。いや、6個っていうのはおかしいな。
先生は6回投げたけど、一回に1個投げたわけじゃないかもしれない。

まぁ、それは置いておいて、投げ終わったころにはミサトさんの嘔吐は嘔吐を終え
地面に突っ伏したまま動かなくなった。

かろうじてつらそうな息づかいと上下する背中の様子で、何とか生きていることは判断できた。

その時なんだけど、不思議なことに急に生暖かい風を感じた。
海辺の崖で、しかも寒い季節だから、そんな風が吹くわけないんだけど。

先生もそれを感じたのか、いったん動きを止めた。
そして、ミサトさんをそのまま放置して、俺のほうに歩いてきた。

見えるか?先生は俺にそう合図した。
俺は意味が分からずに、首を振った。

あそこ。間違えるな。あそこ。
あそこ、兄貴、いる。

先生は近くの一角をさして、さらに合図してきた。

俺はびっくりして危うく声をあげそうになった。兄貴ってあの兄貴?
先生は俺の反応を確認した後、邪魔、しろと指示を送ると、俺から離れた。

93 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/10(水) 20:13:41.53 ID:2i84yi+P.net

妖怪は、いると思う、幽霊も存在する ただ、こういう系統のスレでは、自分が今まで見てきた体験の中での事しか肯定として受け入れないと言う形が定着している。それがどうも気になる 占い師や霊能者は断定タイプがほとんどだというけれどまさにだ。

「自分は今までに物理的に何かできる幽霊にはあってません だからいませーん」

と今まで見てきた事以外の事例が書き込まれると全力で否定だ。

現に否定してるでしょう?

いないと断定するな!不愉快だ!出会えてないだけだ。

いつか、出会えるといいな……この話の中心は否定するなという部分なんよ。
他人が体験した自分にない出来事は全部、妄想か?
妖怪は、いない、作り話だの問いに多分、いるかもしれないと答えてただろ?
てめぇの言う事は否定されると気にいらんクセに他人の話は否定だ。
どういう事だよ!

自分の中で像が固定されてるからこういう事になるんだ。

94 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/02/10(水) 20:57:47.95 ID:VKyVM0Id.net

今まで出会ってないだけで、そう先生に「これが妖怪だ」って習って、そういう固定概念を持ってしまって、ついつい自分も偉そうに語っちゃってしまった感じだね。

反省するわ。

正直、個人的には妖怪にすらであったのか怪しいわ。
こういう仕事していて恥ずかしい限りだけど、霊感がないから。
幽霊とか妖怪とか、肉眼ではっきり見たことないからね。

だから、俺は真実ってわけじゃない。

俺が語る妖怪とか幽霊とかはあくまで「俺の仕事の対象」で、仕事の便宜上、俺の業界ではそう分類しているだけ

つまり、何が言いたいかというと。

モノを動かすなんか変なものに関する仕事は引き受ける。
モノを動かせない、けどなんか変なものに関する仕事は引けず、別なところを紹介する。っていう風にうちでは決まってて。

そんで、うちは自称妖怪退治屋だから、まぁ、受け持つ仕事の対象を妖怪として、引き受けれないものは「それは幽霊で、うちは専門外」と断ってきたわけだ。

なので、本当の意味で、俺が見たとか、出会ったとかそういうわけでもないので、詳しい方の目を汚して、不愉快にしてすみません。

続き

邪魔をしろって言われても、相手は先生の兄貴だ。

昔、先生の話から聞いた感じ、たぶん今は「?」という妖怪になってると思うので、しないといけない対処はわかるんだけど。

なんだか気が引けた。

「?」ってのは前に話したと思うけど、おさらいすると、自殺の名所とかがある意味一種の妖怪になっていて、そこで死んじゃうと、人間は魂をとらわれてしまう。

とらわれた人の魂が逃れるためには、ほかの人間を殺して、自分の代わりにしないといけない。

まぁ、このとらわれた人間のことも「?」っていうから。
そこらヘんはあんまりぐらい的に決まってないアバウトな概念だね。

昔は結構「?」は怖い妖怪の代表格で、じじばばとかが対処法を教えたりするけど、こいつに出会った場合は、まず背中を向ける。
そのあと、地面におしっこする。

これで大体の場合、相手は逃げる。

でも、先生の兄貴って思うと、なんだかなぁ

※これからすげえ汚い描写に入るから、苦手な人は飛ばしてくれ。

俺は仕方なしに、言われた場所に向かった。
大体このあたりだろうと思った場所で、後ろを向き、ずぼんとぱんつを下した。

すると、突然俺の物はなんかすごく冷たい何かにつかまれた気がして、「じょろじょろー」っとたまらずおしっこがでた。

しかし、おしっこの様子が少しおかしい。男ならわかってくれると思うけどさ。
立ちションしたときって、おしっこから湯気が出るわけじゃん。

特に寒い日とか、めっちゃもくもくするわけよ。
でも、今回はそれが一切なかった。

そんで、おしっこがおわっても、物をつかむ感触は残っていて、それどころか、そこから冷たい感じがぞわぞわ全身に広がっていく。
モノをしまおうにも、手がかちこち震えて、動かせない。

俺はやばいと、心ン中であせった。

大体の「?」は背中向けておしっこで、あきらめてくれるらしいんだけど。
あくまで大体だ。

年季の入った「?」ってのはしつこいもので、めったにいないんだけど。
そういうやつは簡単には獲物を逃さない。

なんたって、長い間「?」になってしまっているから。
早く楽になりたいんだろうね。

364 :1 ◆cvtbcmEgcY @\(^o^)/:2016/03/13(日) 22:07:09.91 ID:VTA1qXCs.net
しばらくこれなくてすまんな。

休みの間に色々片付けないと、授業始まった後だとしんどいんだ。


※これ以降、本人と思われる書き込みなし。

初出:2013年07月17日(水曜日) 21時49分
絶筆:2016年03月13日(日曜日) 22時07分


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今後とご贔屓のほどお願い申し上げます。