楽蛇【怪談・怖い話】
これは、群馬県の山奥に住む田中さん(仮名)から聞いた話だ。
半年ほど前、梅雨の頃のことだった。田中さんは友人の山下と共に、彼の所有する山の一部でサバゲーをすることになった。
参加者は田中さんを含めて6人。場所は群馬の田舎で、日が落ちると本当に漆黒の闇に包まれるような山だが、山下が用意してくれた安物の暗視スコープを使い、みんなはそれぞれの役割を果たしながらゲームを楽しんだ。
やがて3時間ほど経ち、田中さんは疲れてきた。足元にちょうど良い大きさの石が転がっていたので、そこに座って少し休むことにした。
10分ほど経ち、戦線に戻ろうと立ち上がったとき、田中さんはその石が倒れたお地蔵様であることに気づいた。胸に広がる不安感を押し殺し、みんなを呼び集めた。
「おい、ちょっとみんな中止! 集合!!」
集まった友人たちに、田中さんは倒れたお地蔵様を元に戻すことを提案した。仲間の一人が手伝い、なんとか元の場所に戻すことができたが、その時、お地蔵様の右手首がポロリと落ちてしまったのだ。
田中さんは焦りながらも、手元にあったタミヤセメントで無理やり修復し、迷彩柄のスカーフで包んでやった。それで何とか形を整えたつもりだったが、心の中の不安は消えなかった。
その夜、解散した田中さんは山下と別れ、一人車で山道を走っていた。暗闇の中、ふと道端に若い女性が立っているのが見えた。細いジーパンにオレンジのジャケットを着たその女性は、涙を浮かべていた。
田中さんは彼女を幽霊だとは思わず、親切心から声をかけ、車に乗せた。彼女は彼氏と喧嘩をして道に迷ったと話し、田中さんに道案内を頼んだ。
しかし、彼女が指示する道を進むうちに、田中さんは次第に奇妙な感覚に囚われていった。
やがてたどり着いたのは、「楽蛇」と書かれた不気味な廃屋だった。彼女が「ここです、一緒にどうですか?」と誘った瞬間、田中さんは全身に寒気を感じ、彼女が幽霊であることを悟った。
「お前、幽霊だろ!降りろ!俺はまだお化けにはならねえよ!」田中さんは叫び、彼女を車から降ろした。その後、何事もなく家に帰ったものの、心には不安が残った。
それから数ヶ月が経ち、11月の七五三の日、田中さんは家族と共に神社を訪れた。そこで神主に車と自身のお祓いを勧められたのだ。神主は何かに憑かれていると告げ、特に車には強い不吉な気配があると言った。驚いた田中さんはその日のうちにお祓いを受け、車も点検したが異常は見つからなかった。
それでも田中さんの心には「楽蛇」の廃屋が引っかかっていた。昼間のうちにもう一度訪れたい気持ちがあったが、恐怖が勝り、結局足を運ぶことはなかった。しかし、心の中で「楽蛇とは何か?」という疑問が、今もなお田中さんを悩ませ続けているという……
[出典:802 :本当にあった怖い名無し:2022/11/19(土) 02:24:14.07 ID:HSesuMCi0.net]
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