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衣装箱【怪談・怖い話】

これは、中学時代の同級生から聞いた話だ。

彼の実家は代々神主の家系であり、本家の屋敷も旧館と新館に分かれており、非常に広かった。旧館の二階には、大広間があり、そこには古い本や祭具、家具などが乱雑に置かれており、まるで物置のようだった。

彼が小学生の頃、二つ年下の弟と共にこの広い屋敷で探検ごっこを楽しんでいた。特に、物置部屋は彼らの「宝探し」の遊び場だった。

ある日、いつものように弟と一緒にガラクタ漁りをしていたとき、突然、異様な気配を感じたという。物置の奥の部屋の隅に目を向けると、白い着物を着た女がじっとこちらを見つめ、何かを呟いていた。

その光景を見た瞬間、普通なら恐怖を感じるはずだが、彼は何故か恐怖心よりも先に深い悲しみを感じた。そして、その女に声をかけようとした瞬間、突然後ろから激しく頭を殴られたのだ。

気がつくと、弟が彼の体を引っ張って部屋から引きずり出していた。後から弟に聞いたところ、彼はガラクタ漁りをしている最中、急に部屋の角を凝視し始め、「逃げるな」とうわごとのように呟いていたという。

不審に思った弟が「兄ちゃん?」と声をかけた瞬間、彼は突然金切声を上げ、床に落ちていた雑誌を狂ったように破り、口の中に詰め込み始めたという。弟は止めるために頭を棚の引き出しで殴ったのだそうだ。

この出来事の後、彼らはしばらく旧館の二階には近寄らなかった。しかし、彼が中学生になったとき、二階の大掃除をすることになり、彼もそれを手伝うことになった。物置部屋のガラクタを全て処分している最中、両親と祖母が浮かない顔をして一つの衣装箱を開けているのを見かけた。

気になって何が入っているのか尋ねると、昔この部屋で結婚式が行われ、その際に使われた衣装が入っているとのことだった。

通常は花嫁が持ち帰るはずだが、特殊な理由で結婚式が行われなかった場合、その衣装は神社側が保管していることがあったらしい。その衣装箱を開けてみると、彼が小学生の時に見た女が着ていた着物にそっくりだった。

さらに詳しく聞くと、その衣装は結婚式の前に婿が失踪した女性のものだったという。思い入れのあるものには業が宿ると言われるが、この出来事は彼にとって非常に衝撃的な体験となったのだ。

[出典:344 :本当にあった怖い名無し:2022/03/22(火) 00:01:25.19 ID:BIBAvKTa0.net]


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