無限に脱げる男【怪談・怖い話】
これは、専門学校時代の知り合いから聞いた話だ。
当時、彼は同じクラスにいたAという友人と昼休みを共にすることが多かった。ある日、昼食を取りながらAが不意に言い出した。「俺の地元に、ちょっと変わった奴がいるんや」。変わった奴?と疑問に思いながら話を聞くと、「そいつ、脱げるんや」と、意味不明なことを言う。もちろん彼も最初は理解できなかったが、Aは「言葉じゃうまく説明できんから、今度実際に会わしてやるわ」と、不敵な笑みを浮かべた。
数日後、学校近くの公園で、その「脱げる男」と会うことになった。Aが連れてきたBという男は、一見普通の青年だった。しかし、Aは「こいつが例の脱げる奴や」と言って、何かを期待するように促した。Bは少し照れたように「話聞いてると思うけど、見てもらったほうが早いわ」と言い、何の前触れもなくこう続けた。「じゃあ、ちょっと脱ぐわ」。
BがAの手を出させ、シャツを脱ぐ動作を見せたが、彼が手にしているのは何も見えない「何か」だった。パントマイムか?と疑いながらも、Aは大興奮して「すげぇ!お前も手を出してみろ!」と彼に勧める。最初はバカにされていると感じたが、Aに押し切られる形でBの前に手を出した。
そして――。
彼の手のひらに、見えない何かが乗せられた瞬間、ゾワッとした感覚が全身を駆け巡った。重みのある、ブヨブヨとした物体が確かにそこにあったのだ。それは見えないのに確かに「脱がれた」何かであり、ただの悪ふざけではないことが一瞬で理解できた。「なんなんこれ!」と驚き、恐怖とも混乱ともつかない感情に襲われた。
後にBは、霊感も特別な能力もないと言いながら、この「脱げる」という奇妙な現象について語った。無限に脱ぐことができるらしいが、何度も繰り返すと体力が奪われ、前に調子に乗りすぎて倒れたこともあると言う。彼自身も、その理由や原理は全く分からないままだという。
一体、Bは何を「脱いで」いるのか?その正体が何であるにせよ、それを手にした瞬間、普通の感覚からはかけ離れた異様なものを感じたのは確かだ。あの感触は、今でも彼の手のひらに残っているように思えてならない。
[出典:原著作者「怖い話投稿:ホラーテラー」「匿名さん」 2008/08/26 13:41
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