祖母の信仰と変貌【怪談・怖い話】
俺のばあちゃんは仏教に傾倒していて、毎日仏様の話をしてくれたり、お経の話をしてくれたりする。ばあちゃんはとても熱心で、いろんなことを知っていて、確固たる宗教観があるらしい。
小さいころから世話になっている大好きなばあちゃんなんだが、ひとつだけ問題がある。それは、ばあちゃんが妙に排他的だということだ。
キリスト教も新興宗教もひっくるめて馬鹿にしている。そんなばあちゃんが俺の人生に大きな影響を及ぼす出来事が起こるなんて、その時は思いもよらなかった。
ある日、大学の学園祭に遊びに行った時のことだ。
面白そうな政治関連のディスカッションがあるというので見に行ってみた。だが、それは『○福の○学』という新興宗教の勧誘だった。延々と教祖のビデオを見せられ、イライラした挙句、ロハで何冊も本を押し付けられた。家に帰ってから捨てるわけにもいかず、新興宗教の類を馬鹿にしているばあちゃんなら一笑に付して捨てるだろうと思い、軽い気持ちでその本をあげた。
ところが、ばあちゃんがその本に見事にハマってしまった。その本を読みふけり、いちいち「ご尤もだ」と言いながら、毎日のように「教祖先生はね……」と説教してくる。母ちゃんに言わせると、「弟子にでもなったつもりなんじゃない?」とのこと。教祖がいかに偉大で正しく、選ばれた存在かを語るばあちゃんに、遠まわしに興味がないと言っても駄目。直接的に「教祖は俺が信用してないから嫌だ」と言っても駄目。ばあちゃん最近変だよと言っても聞いてくれない。むしろ俺のことを罰当たり呼ばわりしてくる。
それ以来、ばあちゃんは少しずつ変わり始めた。じいちゃんがいかに愚鈍かという文句ばかり言い、自分が正しいと信じて疑わない様子がひどくなった。俺はその変化に戸惑いと後悔を感じた。自分があの本をばあちゃんに渡したことが原因で、ばあちゃんが変わってしまったのだ。
後日談
つい先日、弟がいつのまにか行動を起こしていた。
「ムラカミリュウコウの本知らない?」とばあちゃんが言い始めた時、ついにボケがひどくなったかと思っていた。しかし、実際には弟が影でこっそり「あの本なら僕が処分した」と告白してくれた。
弟の勇気ある行動により、ばあちゃんの電波具合は少しずつ収まり、宗教の話は減少していった。最近では、ばあちゃんは再び般若心経に戻ってきた。家の中には、あの新興宗教の影は薄れ、平穏な日常が戻りつつある。
誰にも言えなかったことを文字にすることで、俺自身も少しすっきりした。ばあちゃんを守るために、これからも家族一丸となって支えていくことを誓った。
[出典:590 :本当にあった怖い名無し:2005/12/22(木) 02:03:21 ID:snKNBXq10]
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