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鏡の向こうから来た少年【怪談・怖い話】

これは、中学時代の同級生から聞いた話だ。

小学四年生の頃、彼は家族と共にある団地に住んでいた。その団地は、一戸建てが並ぶ静かな地域で、高齢化が進み、同じ学校の生徒はほとんどいなかった。そのため、彼は二つ上の兄とその友人たちと一緒に遊ぶことが多かった。その友人たちは田中と林という名前だった。

四年生の春、その団地に一人の転校生がやって来た。彼の名前は慶太といい、兄と同じ学年だった。慶太が来たことで、彼らの遊びの輪は一層広がり、五人で毎日、日が暮れるまで遊ぶようになった。

ある日、五人で秘密基地を作ろうという話になった。秘密基地とはいっても、藪の中に段ボールや敷物を置いただけの簡素なものであったが、彼らには特別な場所だった。「ここは俺たちだけの秘密基地だ。絶対誰にも言うな」と兄が言った。皆がそれに同意し、秘密を守るために何かしらの誓いを立てることにした。その時、黙っていた慶太が口を開いた。

「皆で秘密を言い合ったらどうや?」

彼の提案に従い、皆が自分の秘密を話し始めた。彼も自分の秘密を話したが、それは兄の部屋に隠してあったエロ本の場所であり、兄に殴られた。

次に慶太が話し始めた。「これは誰にも言ったことない話やけど、俺は鏡の向こうから来たんや」と。最初は意味がわからなかったが、彼の話を聞くうちに、彼らは次第に理解し始めた。

慶太は春休みのある日、鏡に「いきたい」と書いたところ、鏡の中の戸が開いたという。彼はその戸を半開きにし、鏡の中の世界に入り込んだ。しかし、そこは彼の知っている世界とは鏡写しの異なる世界だった。家族も見た目は同じだが、細かい部分が違っていた。彼は何度も元の世界に戻ろうと試みたが、結局戻れず、そのまま新しい世界での生活を続けることになったという。

その話を聞いた四人は、驚きと恐怖で言葉を失った。次の日、慶太とその家族は忽然と姿を消した。大人たちは「夜逃げだ」と言ったが、四人は慶太が元の世界に帰ったのだと信じた。

数年後、彼は兄と再会し、当時の話を振り返った。「慶太の話、本当だったんだろうか?」と彼が尋ねると、兄は「あんなの作り話だ」と言った。しかし、彼は今でも、慶太が鏡の向こうの世界に帰ったのだと信じている。

それが彼の信じる真実だ。

[出典:682 :本当にあった怖い名無し:2015/09/17(木) 13:45:16.04 ID:7xOVhLxC0.net]


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