娘の様子がおかしい【怪談・怖い話】
これは、職場の同僚から聞いた話だ。
Rさんには、Mちゃんという幼稚園に通う一人娘がいる。いつもは元気いっぱいで活発なMちゃんだったが、ある時期から彼女の様子が奇妙に変わり始めた。夕方になると急に体調を崩し、熱を出して食事を吐き戻すことが増えてきたのだ。それだけではなく、具合が悪そうなはずのMちゃんが、虚ろな目でひたすらおもちゃを弄り続けるという異常な光景が毎日のように繰り返された。
Rさんは心配になり、病院に連れて行ったが、検査ではどこも異常は見つからない。医者も首をかしげるばかりで、原因は不明だ。だが、母親のRさんの胸中には、何か目に見えない不吉な影が迫っているような気がしてならなかった。日ごとにMちゃんの状態は悪化していくばかりだったため、ついにRさんは霊感の強い友人Aさんに相談することにした。
Aさんは、Mちゃんの部屋に一歩入るなり顔を強ばらせ、すぐに何か異常な存在を感じ取った。そして、彼女は自分の知り合いであるKさんを紹介した。Kさんは霊的な問題に詳しい人物で、これまで数々の怪異を解決してきた人物だという。戸惑いながらも、Rさんはすがるような気持ちでKさんに助けを求めた。
KさんがRさんの家を訪れた日、彼は一人Mちゃんと向き合った。小さな部屋の中で、無言でおもちゃを動かし続けるMちゃん。その背後に、Kさんは確かに「それ」を見た。Mちゃんにしがみつくように、小さな白い影が彼女に寄り添っていたのだ。その影は、Mちゃんよりも少し年上の女の子の姿をしていた。
Kさんがその霊に向かって話しかけようとした瞬間、少女の霊は怯え、Mちゃんの体の中に逃げ込んでしまった。すると、Mちゃんの体はぐったりと力を失い、目がさらに虚ろになった。Kさんは無理に霊を引き剥がそうとしたが、Mちゃんに対する悪影響が強まるだけだった。しかも、相手は子供の霊だ。無理に対処するわけにもいかない。Kさんは困り果てた。
その後、KさんはMちゃんの部屋にあるぬいぐるみを手に取り、それを使って霊と話をしようと試みた。優しくぬいぐるみを動かしながら、少女の霊に話しかける。しばらくして、霊はMちゃんの口を借りて口を開いた。自分の名を「Hちゃん」と名乗り、Mちゃんの家が「楽しい」「おもちゃがいっぱいあって羨ましい」と語り始めた。しかし、Kさんが家に帰るよう説得を試みると、Hちゃんは激しく抵抗し、再びMちゃんの中に閉じこもってしまった。
その後、KさんはRさんにこの事実を伝えた。Rさんは青ざめ、愕然とした表情を浮かべた。というのも、Mちゃんが通う幼稚園の年長さんに「Hちゃん」という名前の女の子がいて、つい先日、交通事故で亡くなっていたのだ。その事故は、RさんとMちゃんがよく通うスーパーの近くで起こり、Hちゃんはその場で即死してしまったという。Rさんも葬式に参列していた。
Kさんは、HちゃんがMちゃんに憑いていることが、Hちゃんが自宅に帰れないまま成仏できずに迷っているためだと確信した。しかし、どうやって彼女を家に戻すか。Kさんは再度説得を試み、次の日、もう一度Mちゃんに向き合った。
次の日の夕方、再びおもちゃを持ってKさんが現れ、優しくHちゃんに語りかけた。「Hちゃん、遊ぼう」「お家に帰ろう」と何度も繰り返した。最初は反応がなかったが、Kさんの優しさに少しずつ心を開いたのか、Hちゃんは「ママが帰って来ちゃダメって言ったから」「妹が寝てるの」と話し始めた。
Kさんは必死にHちゃんを説得し続けた。最終的に、Hちゃんは家に帰ることに同意したが、なおもMちゃんにしがみついて離れない。Kさんは最終的に、Mちゃんを連れてHちゃんの家に行くことを決意した。
Hちゃんの家に着いた時、Kさんはその家の母親に向かい、「Hちゃんが帰れないのは、あなたが帰って来ちゃダメと言ったからだ」と伝えた。母親は号泣し、父親もその言葉に打ちひしがれるように頭を垂れた。母親が言った「帰ってきてもいいのよ」という言葉を聞いた瞬間、Mちゃんの体からHちゃんの霊はすっと離れ、ようやく自宅へと帰っていったのだ。
その瞬間、Mちゃんは穏やかな顔で目を開け、全てが静かに戻った。Kさんは、Hちゃんが無事に帰れたことを確認し、胸を撫で下ろしたのだという。
[出典:308 :227:2005/03/22(火) 21:40:54 ID:NX8fGAkqO]
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