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★祠に宿るもの【怪談・怖い話】


知人から聞いた話(伝聞)

彼の家の裏には小さな祠があるらしい。
家族の誰も何を祀っているのか知らず、いつからあるのかも分からない。ただ、毎日の世話の仕方だけは伝わっているらしい。

その世話というのは、朝夕に掃除して、握り飯と茶を供えて手を合わせるだけらしい。ご利益があるのかと思ったけれど、そういう話は伝わっていない。ただ、毎日欠かさず世話をしろと言われているとか。

知人は一度、世話を欠かしたことがあるんだって。子供のころ、母に言われて世話に行ったけれど、面倒で掃除をせずに握り飯と茶を供えて手を合わせるだけで済ませた。すると祠がごとごと揺れて、中から女が睨んできたんだ。血走った目で、ぐしゃぐしゃの髪の女が。

泣きながら家に逃げ帰ったら、母にしこたま怒られた。「ちゃんとお世話せんからよ」って。それで母と一緒に祠まで戻り、きちんと掃除して手を合わせたら、祠は何事もなかったように静かになった。

その祠の正体について聞いてみたけれど、知人も分からないと言っていた。記録も残っておらず、中身を確かめるには祠を開けるしかない。でも開けるのは気が進まないらしい。「だって、開けたら出てくるかもしれないだろ?」って言ってた。

祠の起源について調べてみたら、日本には「御霊信仰(ごりょうしんこう)」というのがあるらしい。怨霊や死者の霊を祀って鎮めるためのもので、特に平安時代には怨霊が恐れられて祠が建てられたとか。

また、江戸時代に流行した「おしろい祭り」というのもあるらしい。病気や災いを祓うために白粉を使って顔を白く塗った人々が祠や神社を巡る祭り。この習慣が祠の世話と結びついて現在の形になったのではないかとも。

知人が祠の世話を怠った日のことは今でも鮮明に覚えているらしい。

祠の中から現れた女性の姿は、ただの幻覚や夢ではなくリアルで恐ろしかったという。実際、世話を怠った後に家の中で不思議な出来事が相次いだらしい。

例えば、夜中に誰もいないはずの部屋から足音が聞こえたり、家族全員が原因不明の高熱に悩まされたりしたとか。母親が「祠の怒りだ」と言ってすぐに祠の世話を再開したら、こうした現象はぴたりと収まった。

祠の中には一体何が祀られているのか、それを知るためには祠を開けてみるしかない。しかし知人はその行為に対して非常に消極的だった。「開けたら出てくるかもしれない」という恐怖が常に付きまとっているみたいだ。

それでも、ある日、私は彼を説得して祠を開けることにした。古い木製の扉を開けると、中には古びた巻物が一つだけ収められていた。巻物を広げると、そこには古代の文字で何かが書かれていた。解読は難しかったけれど、どうやら呪文や祈りの言葉のようだった。

さらに驚くべきことに、巻物の最後には「この祠を開ける者に災いが降りかかる」と書かれていた。私たちはすぐに巻物を元に戻して祠を閉じた。その後、何事もなく日常が戻ってきたけれど、巻物の言葉が頭から離れなかった。

数年後、再び知人の家を訪れる機会があった。

祠は相変わらず静かに佇んでいたけれど、知人の様子が少しおかしかった。最近、妙な夢を見るようになったという。夢の中で祠の中の女性が再び現れ、彼に何かを訴えかけてくるらしい。

夢の内容は日に日に具体的になっていって、巻物の呪文が現実のものとして夢の中で繰り返されるようになった。知人はその夢が何を意味するのか解明するため、再び祠を調査する決意を固めた。

地元の歴史家や学者に相談して巻物の内容を詳しく解読してもらったところ、驚くべき事実が明らかになった。それは古代の呪いの呪文で、祠が建てられた理由もその呪いを封じ込めるためだったらしい。

この発見により、祠の存在理由がはっきりして、知人は祠の世話を今まで以上に丁寧に行うようになった。その結果、不思議な現象や悪夢は次第に収まり、平穏な日常が戻ってきた。

しかし、この祠の謎が完全に解明されたわけではない。知人は今でも時折、夢の中で巻物の呪文を聞くことがあるらしい。それが意味するものは一体何なのか、誰も知ることはできないけれど、少なくとも祠の世話を怠らなければ災いは避けられると信じている。

私たちが巻物を見つけた日のことは、決して忘れることはない。

そして、あの古い祠が持つ不思議な力と、その背後にある歴史的な謎について、いつか完全に解明される日が来ることを願っている。

その後、知人が祠のことを地元の神主に相談したらしい。神主は「このような祠は古くからの御霊信仰に基づくものだ」と言っていたらしい。特に、家族や村の守り神として祀られることが多いとか。

神主はさらに「もし何か不安があるなら、専門の儀式を行って祠を浄化することもできる」と言っていた。知人は一度考えたけれど、結局はそのままにしておくことにしたらしい。やはり祠を動かすことに抵抗があったのだろう。

知人の家では、その後も毎日欠かさず祠の世話を続けているらしい。今のところ大きな問題は起きていないらしいけれど、夢の中で巻物の呪文を聞くことがあるのは変わらないらしい。

でも、知人はその夢に対しても慣れてきたと言っていた。「夢の中で女性が何かを訴えかけてくるけれど、今は恐怖よりも好奇心が勝ってきた」と。何か大きな秘密が隠されていると感じているらしい。

知人は最近、再び歴史家や学者と連絡を取り始めたらしい。

今度はもっと深く祠の秘密を解明するつもりだって。「巻物に書かれていた呪文の全てを解読すれば、もっと多くのことが分かるかもしれない」と言っていた。

ただ、知人は慎重だ。「呪文を解読することが新たな災いを引き起こす可能性もあるから」と。だからこそ、彼は慎重に進めているらしい。

知人は今も毎日祠の世話を欠かさず続けている。祠に対する恐怖心は薄れ、むしろ祠の背後にある謎を解き明かしたいという思いが強くなっているみたいだ。

最近、知人は夢の中で新たな情報を得たらしい。女性が以前よりもはっきりとした形で現れ、何かを伝えようとしているらしい。その内容はまだ完全には理解できていないけれど、確実に進展があるとのこと。

知人は言っていた。「いつか、この祠の謎が全て解明される日が来る。その時、家族の歴史と共に、この祠の本当の意味が明らかになるだろう」と。

祠の秘密とその恐怖の真相について、知人はまだ探求を続けている。その結果がどうなるかは誰にも分からないけれど、少なくとも今は平穏な日常を取り戻しているみたいだ。

この話を聞いて、私も自分の家の歴史についてもっと調べたくなった。みんなも自分の家の裏にある祠や神社について調べてみると、意外な発見があるかもしれない。

(了)


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