【全米女子ツアー2021】2021年6月7日

 コロナ禍で変則開催となった全米女子オープン2020での渋野日向子の敗因をつらつらと書き、その上で笹生優花ら若手の躍進を予想した。それがまさか今回の全米女子オープン2021で実現するとは思わなかった。

 近年の日本ゴルフ界の躍進は素晴らしい。オーガスタでグリーンジャケットを着ることになった松山英樹は別格としても、女子メジャーツアーである全米女子オープンに昨年は19名、今年も11名の日本人が出場。そして2年連続で最終組に日本人が残り、今年はついに優勝。しかも今回は畑岡奈紗と笹生優花による日本人2人によるプレーオフという展開などいったい誰が予想したであろう。

 笹生優花は実質的に2020年の日本女子賞金女王であるが、コロナ禍での変則ランキングにより2020〜2021年は賞金を合算することになった。現在は「天然女」小祝さくらが好調をキープし、ランキングトップを独走。そのあとを連続ツアー優勝で存在感を示した稲見萌寧と2020年に大活躍した古江彩佳という2人が追う展開。笹生優花は個人的に不動裕理2世という意味合いから「ミニラ2世」と名付けているが、今回のメジャー優勝で不動なんかと比べては申し訳ないレベルに達してしまった。ちなみに笹生優花は日本人とフィリピン人のハーフで、どちらかというとフィリピン寄りの立ち位置。中学生時代から活躍し、多くのタイトルを獲得しているため2020年の日本ツアー、今回の全米女子オープンでの活躍も決して意外なことではない。あと1ヶ月で20歳になるため国籍を選ぶ必要が出てくるが、スポンサーは日本企業が多く、メインが日本長州屋という日本刀を扱う専門店であるため(帽子に刀の文字があるのはそのため)日本国籍を選ぶとは思うが、今回の全米女ツアーではフィリピン国籍での参加となっている。

 畑岡奈紗は、米国を中心にツアーを周り、日本女子オープン開催時に帰国し優勝をさらい、国内シード権を維持するというルーチンで毎年活躍する現在実力的には日本人ナンバーワン選手。学生時代から実力者といわれていたが、アマチュア時代は勝みなみに話題をさらわれ、メジャー制覇できる経験値を手に入れた直後には渋野日向子が全英オープン優勝し話題をさらわれるという、かなり不運な選手。今回の全米女子オープンも前評判通り上位に食い込んだが、笹生優花に優勝をさらわれてしまった格好だ。

 実際のところ全米女子ツアーだけを見ると、昨年の渋野日向子同様、笹生優花に不利な点がかなり多かった。

 全米女子ツアーはコースが持ち回りで、毎回まったく違うコースになり、しかも昨年は12月開催で、今回は通常通りの6月と事前対策がまったくできない状態。つまり、生温い日本ツアーから離れ、海外ツアー中心にプレーしている畑岡奈紗に圧倒的なアドバンテージがあり、最後3人の争いになった際には畑岡奈紗の優勝を確信していた。スコアだけを見ても笹生優花は初日69、2日目67、3日目71、最終日73と失速気味。それに対して畑岡奈紗は初日72、2日目69、3日目71、最終日68と最後に追い上げを見せている。

 全米女子ツアーの優勝者はここ10年は韓国勢で占められているが、彼女らの特徴は最終日の追い上げ。4日間をしっかり計算し、天候不順の多いこのツアーでの対応ができているためだ。長く海外ツアーを経験している畑岡奈紗も韓国勢と同様にしっかりとした対策ができており、今回の全米女子オープンでも逆転するのは時間の問題と思われていた。

 結果的に18ホールで勝ちきれず、プレーオフになったのは彼女の運の無さ。9番と18番ホールを交互にまわり、サドンデス方式で決着のつくスタイルは実力で測ることのできるものではない。運がなかったと言うべきものだろう。

 笹生優花の優勝は素晴らしいものだ。それに疑いを挟むものは何もない。だが、畑岡奈紗が最後の追い上げで見せた海外ツアーでの経験値そしてプレースタイルは女子プロゴルファー全員が見習うべきものだ。接待ゴルフのためのコースで才能とジュニア時代に受けたスパルタ授業成果を消費するのではなく、20代前半のうちから米国、そして欧州のツアーに参加し、その実力を開花させるべき。今回全米女子オープンに出場した11人がそれを実践した場合、数年以内に彼女たちが世界ランキングの上位に顔を出すことになるだろう。

 ともあれ、才能あふれる女子ゴルファーたちの海外メジャーでの活躍はこれから10年、約束されたようなものだ。

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