護り刀
順心庵にて。
現代を代表する名刀工・吉原義人師の弟子、玄承社・黒本知輝刀匠と研磨師の奥様に、我が家の伝来刀二振りを観て頂きました。
日月流最後の伝技者だった祖父・禎三の護り刀の備州住長船(佑定?)と、無銘の直刀。
硬い外装から解かれ、初めて見た中心(なかご)には、御館・信玄公をはじめ戦国の群雄が割拠した永禄の年号が刻まれておりました。
二葉葵の透かし鐔は、越前住記内の作。
幾多の命のやり取りを越え、曾祖父、祖父、先祖達を護ってきた刃には、その一つ一つを物語る、沢山の刀傷が印されています。
刃の下の風の音を識る、最後の武士たる我が師も、この二振りとの邂逅は感慨深かったようでした。
沈黙の光陰の裡に、我らの来し方を語るものざね。
これからも末永く、一族を護る寳として伝えて参ります。