FBSは転倒リスクの指標にならない
こんにちは。理学療法士のこうやうです。
今回は Functional Balance Scale について話していきたいと思います。
タイトルにもある通り、
正直この検査では転倒リスクを推測できません。
なぜそのように考えているのか
私の見解を述べていきたいと思います。
よろしくお願いします。
では始めます。
FBSとは
まずFBS(ファンクショナルバランススケール)とはなんでしょうか。
この検査はバランス能力を推定のが目的であり
内容は
①立ち上がり ②立位保持 ③座位保持 ④着座 ⑤移乗 ⑥閉脚立位保持
⑦閉眼立位保持 ➇前方リーチ ➈拾い上げ ⑩振り返り ⑪360°回転
⑫踏み台昇降 ⑬タンデム立位 ⑭片脚立位
の14項目となっています。
それぞれ4点が最高点で
満点は56点、カットオフ値は46点以上となっております。
退院前の指標としてよくされる検査であり
バランス評価で最も使われているといっても
過言ではないと思います。
ではこの検査の問題点とは何なのでしょうか。
FBSの問題点
この検査の問題点はまさしく実施する運動の内容と考えられます。
何が問題なのかというと
それは検査項目のほとんどが静的バランスの運動ということです。
転倒をするときは歩行中というような
動いているときに起こります。
静的バランスではなく動的バランスが重要なんです。
しかしこの検査において動的バランスを評価できるのは
踏み台昇降や立ち上がり・着座ぐらいです。
それ以外がほとんど静止するための運動となります。
こういうと、
「動的バランスを作るには静的バランス能力が必要だ」
という人がいます。
この考え方も間違ってはいないかもしれませんが
私は全く別のものと考えております。
その理由を片脚立位と歩行での立脚初期と比較して例をあげましょう。
動的バランスと静的バランス
上図 片脚立位 歩行
赤線:床反力 緑線:重力 オレンジ線:慣性力 青線:合成ベクトル
まず静的バランスの特徴は何でしょうか。
まず床反力ですが重力と同等のため勝手に打ち消されます。
そのためこの運動で重要なのは
支持基底面内の重心の制御です。
重心で支持基底面のなかにあることで安定させることが可能であり
片脚立位となると支持基底面が狭くなり
難易度が高くなります。
では動的バランスの特徴はなんでしょうか。
立脚初期に例えると
接地した瞬間に床反力が発生するわけですが
まずこの床反力を打ち消さなければなりません。
歩行しているため、前進することによって起こる慣性力と
重力によるベクトルがそれぞれあり
これらのベクトルを合成したベクトルで床反力を打ち消します。
これがないと回転トルクが働き、転倒につながります。
そのため接地する位置が重要となりますが
この位置を zero moment position といいます。
厳密にいうとこの位置に毎回正しく接地することは不可能なため
実は歩くたびにつまづいているのですが詳細は省きます。
これらの過程からわかる通り
動的バランスは
床反力の制御 が重要なんです。
静的バランス=支持基底面内の重心の制御
動的バランス=床反力の制御
となり、まったく別の目的の運動となるんです。
このことから
静的バランス能力を評価したところで
転倒リスクへの直結的な評価にはつながりませんし
静的バランス運動を完ぺきにこなしても
転倒しないわけではないことがわかったのではないでしょうか。
まとめ
・FBSで転倒リスクの評価はできない
・静的バランス能力と動的バランス能力はまったくべつのもの
今回はこれで以上です。
あくまで私の意見ですのでご参考までにしていただければと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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