【一気読み・ひとり旅】第4次本州紀行~苫小牧→仙台→上野→大洗→苫小牧~ ※ホテル禁止
0.はじめに
※この記事は連載「第4次本州紀行」の一気読み版です。
ホテル禁止の本州旅第2弾です。今回は苫小牧~仙台~上野~大洗を経由し、再び苫小牧に戻ってきます。
それではスタート!
1.北海道脱出編「辛苦」
スタートは前回と同じく新札幌駅。ただし、苫小牧方面の列車に千歳から乗ることにした。だが、すでに乗客が多い。そりゃ、運転系統分断されればそうなるか…。まあ前回の仙石線に比べればはるかにましなので、終点まで耐えよう。
苫小牧駅到着。前回と違い、今回は出航時間が早いため、やや駆け足で港へ向かう。
港に着くと、ちょうどバスの到着時刻と重なったようだ。人がぞろぞろ降りてくる。
前回もそうだったが、人が多い。無人駅で独り列車を待つのは耐えられるが、人混みで待つのは苦行なので、食堂へ逃げ込み、ラーメンを注文する。
乗船開始の放送とともに、人が乗り込んでいく。
ああいう混雑に便乗するのはひとり旅にふさわしくない。人がいなくなるまで待とう。待つのは嫌いではない。人混みでなければ。
人が去ってから私も乗船開始。今回の船は「きそ」号。かなり上質な雰囲気で、ピアノ演奏も行っているようだ。
乗船早々頭痛がする。もしかして、辛口ラーメンが原因か?辛い食べ物は酔いやすくなる、とかつて読んだ記憶がある。しまった…。失敗したか?
まあいい、酔止めでも飲んで安静にしよう。直に治まるはずだ。
外に出て大洗行の船が出港する様子を眺める。船は一度後退し、その後進路を変えて太平洋へ乗り出していく。
こちらもまもなく出航だ。今回の船旅は前回より長い。
さあ、どんな旅になるか…楽しみだ。
2.洋上編~「きそ」にて~「優雅」
汽笛が鳴り、出航。南からやってきた船が東港方面へ向かっていく。西港と東港は人工的に区切られている。乗り入れ路線も雰囲気も全く違う。不思議なものだ。
街を出ると濃霧が発生し、何も見えない漆黒の闇をただひたすら進んでいく。風も強く、寒い。
本来、夜とはこうあるべきなのかもしれない。灯りがなかった時代、夜とは何も見えない闇の世界で、人々はそれに畏敬の念を抱いていたはずだ。何もできず、どこへも行けないから、おとなしく眠っていたのではないか。
それが今はどうだ。電灯の発明で、夜も昼のように明るい。まるで夜など存在しないかのように。
エネルギーを浪費し、地球を破壊する。人類もどんどん堕落している。引き返す道はないものか。
まあいい。夜風に当たり、静かに瞑想に入る。何もしない、という贅沢な時間。現代では失われた貴重な時間だ。
もっとも、眠気には勝てず、寝室へと戻る。
今回泊まるのは2等和室という雑魚寝部屋だが、ほかに客がいなかったので、雑魚寝貸し切りとなった。謎の贅沢感を味わいながら眠りにつく。
3.本州上陸編
(1)仙台港~仙台駅「行列」
朝食を済ませ、出発準備を整える。定刻通り仙台港に着岸する。例によって出口が混むため、しばらく待ってから降りる。
バス停へ向かう。行列になっていた。
しまった。バスに並ぶために早く降りたのか…。てっきり殆どクルマだと思っていたのに、誤算だった。
仙台観光をするだけならバスなど待たず、中野栄駅まで歩けばいいだけの話だが、今回は大洗を目指し、フェリーで帰還しなければならない。つまり、このバスは避けて通れない。かといってタクシーもいない。他の選択肢が閉ざされ、消沈した気持ちでバスを待つ。
行列ではあったが、やってきたバスに座ることはできた。
問題は終点の仙台駅まで行くか、途中の中野栄駅で降りるか、である。
外国人観光客も乗っており、下車に手間取る可能性もあるから、早めに降りるのも手だ。なにしろ、接続列車にはさほど余裕はなく、スムーズな移動が求められるからだ。
選んだのは、中野栄駅下車ルート。しかし、外国人観光客もぞろぞろと降りてくる。どういうことだ?と疑問に思ったが、松島観光に行くのかもしれない。私の読みは外れた。
足早に仙石線ホームを目指す。わかってはいたが混雑がひどい。
乗客に対して車両数が足りない。車窓もつまらない。正直もう二度と乗りたくない路線、というのが本音だが、今回ばかりは仕方ない。
仙台駅に到着し、新幹線に乗り換える。
新幹線嫌いの私が今回、なぜ乗ったかというと、これも前回同様スケジュールミスである。
本来なら大洗の深夜便で帰ってくる予定だったが、休みを追加で取っていなかったため、夕方便で帰らなければならず、そうすると在来線で帰ってくるのに無理が生じるのだ。
一応、計算上不可能ではないのだが、前回のように列車が遅れれば計画は水泡に帰す。そのため、今回は新幹線で上野へ向かい、常磐線で水戸へ戻ってくるようにした。
ちなみに当初のルートはいわき経由の常磐線各停で水戸を目指すルートだった。深夜便ならこれでも充分間に合うが、夕方便だと厳しい。
他に水郡線ルートなども考えたが、乗換駅の小山にはやぶさが停車しないため時間がかかり、結局断念。
まあ新幹線は本意でないとはいえ、収穫も得られよう。
東京単身初上陸を達成できるからだ。修学旅行以外で東京へ行ったことはないため、貴重な経験となるだろう。ちなみに東京ではなく上野を選択したのは、かつて上野駅が北の玄関口として栄えたからである。今でこそ東京駅に何でも乗り入れているが、かつては夜行も新幹線も上野が始発だった。そんな時代の息吹を、今更ながら少し味わってみたいと思ったのだ。
新幹線の待合室はごちゃごちゃしており、旅情は1ミリも感じられない。やまびこ号が先着するが、これには乗らない。後続のはやぶさ号の方が目的地に先着できるからだ。
私が乗るのは、はやぶさ号に併結されたこまち号である。行き先は同じなのでどちらに乗っても構わないのだが、はやぶさ号は北海道新幹線から直通で乗れるので、せっかくなのでこまちを選択した。
こまち号はミニ新幹線として運行されているためか、座席数は少なめのようだ。
(2)仙台駅~上野駅「冷淡」
車窓は期待できないが、一応窓の外を眺めて終点まで過ごす。
桜が綺麗に咲いている。北海道ではまだ咲いていないので、一足早く桜を見させていただこう。といいつつ、私は「花より団子」派なのでそこまで興味関心が高いわけではないが…。
福島、郡山、宇都宮。沿線の大きな都市に一瞥もくれず、新幹線は走り抜けていく。ただでさえつまらない新幹線の車窓を、敷き詰められたパネルがさらに悪化させる。人は利権から逃れられないのだろう。
辛気くさい話はこのへんにして、大宮到着。自治体人口としては札幌市より少ないが、人口密度が高いため、札幌よりも都会に感じる。北陸・上越新幹線停車駅でもあるため、降車客は多い。
大宮から先は高層ビルのオンパレードだ。カルチャーショックを受ける。
特に、人口密度の高さを象徴するマンションと鉄路の近さには驚きだ。
露骨に洗濯物が見える。札幌ですら、ここまで露骨には見えなかったはず。おそらく、土地の広さと人口密度が関係しているのだろう。
東京一極集中の闇を垣間見た気がする。人が多すぎだろう。いくらなんでも。
上野駅到着。降車客は思ったより少ない。殆ど東京に向かうようだ。
地下ホームなので、階段を登って在来線ホームへ向かう。
果たして無事にたどり着けるのか…。
かつて賑わった北の玄関口もその力を失ったようだ。改札前は活気があるようだが、ホームは暗い。「生きている」感じがしない。
まあいい。改札を通り、水戸行きのきっぷを買おう。
ところが、きっぷを改札機に入れて取り忘れてしまったようで、乗車券がないときっぷが買えないとのこと。
改札口に向かって事情を説明し、出札券?をもらってから再び窓口へ。
しかし今度は、
「改札を出るって言ってしまいましたか?それだときっぷを作り変えられません」
とのこと。
たらい回しが面倒になってきた。
改札で事情を説明すると、とりあえず一回改札を出てきっぷを買い直してください、とのこと。
そのほうが良さそうだ。
なぜこんなことになるのか説明すると、常磐線の分岐は日暮里駅なのだが、上野まで来てしまうと重複してしまうからだ。
新幹線慣れしていない私ならではのトラブルであった。
水戸駅までのきっぷを買おうとしたが、近距離きっぷ表にはなく、長距離きっぷが買える端末は混雑している。仕方がないので土浦駅までのきっぷを買うことにした。とにかく早くここを出たい。人も多いし。
今回で4回目となるJR東日本の利用だが、冷たい駅員が多い気がする。北海道にも無愛想な人はいるし、一概に比較できないが、冷たい。
きっぷを取り忘れたのはたしかに私だが、裏を返せばそれに気づく駅員もいなかったということ。つまり、目が行き届いていないのだ。
第1回の本州紀行において秋田駅に到着したとき、私の前にいたおばあさんが改札機にきっぷを入れるのに手間取っていたため、手助けし、おばあさんは改札を抜けたのだが、きっぷを取り忘れてしまい、後ろの私が改札を通れなくなったことがあった。その時はすぐ駅員が来てくれて、
「前にいた方がきっぷを忘れてしまったようです」
と話すとすぐに改札を通れるようにしてくれた。
つまり、同じ会社の駅でも、きちんと目が行き届いているか、そうでないかという違いがあったのだ。
上野は治安が良くないとも聞く。実際どうか知らないが、これだけ多くの人が利用していれば頭のおかしい輩もたくさん来るだろうし、その応対に疲れて心が荒んでしまっているのだろう。優しさ、朗らかさがない。ただ威圧感を感じるばかりだった。とても私が住める土地じゃないな、と感じた。
氷のように冷たい駅を去るべく常磐線のホームを探すが、全然わからない。しかしまた無愛想な対応をされるのも癪なので、案内表示に従って何とか自力で辿り着く。
土浦行列車がやってきた。乗客は多いわ、周りはビルばかりだわ、とにかくつまらない。観光はもちろん、仕事でも来たくない。そう感じさせる雰囲気が蔓延していた。駅名も旅情を誘うようなものがない。早く港に行きたい…。心が消耗していく…。
(3)上野駅~大洗港「安堵」
土浦駅到着。思ったより都会だった。きっぷを買い直し、急いで勝田行列車に乗る。これで水戸まで行く。
ここまで来ると多少田園風景も見えるようになる。ただ、太陽光パネルが目障りだった。
水戸線分岐の友部駅での乗降もさほど多くなく、ローカル感を漂わせながら水戸駅到着。
県庁所在地なので人は多いが、あの人混みの後ではこれくらいが丁度よく見えてしまう。感覚が麻痺している。
パンフレットをもらい、鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線に乗る。
ワンマン運転で、乗客はぽつぽつ。急にローカル色が強くなった。
サッカーの試合がある日は鹿島サッカースタジアム駅まで延長運転するらしい。
すぐに大洗駅に到着する。無機質な自動改札はなく、きっぷを渡す。
ガールズパンツァーというアニメの聖地らしく、至る所にキャラがいる。
ようやくのんびりした駅にたどり着けた。まるで『ぼくのなつやすみ2』のようなのどかな雰囲気に包まれている。期待できそうだ。
そういえば、昼を食べていない。
無理もない。あの冷徹な要塞を脱出するので精一杯だったのだ。余裕がなかった。しかし、ここではのんびり食事ができそうだ。
パン屋を見つけたので、補給。ついでにフェリーターミナルへの道を尋ねると、親切に教えてくれた。同じ関東でもエラい違いである。別の国にきたみたいだ。
古墳や美術館もあるようで、探索も楽しそうな街だ。
フェリーターミナルは街から徒歩20分ほどの距離にあるので、アクセスしやすい。
フェリーターミナル前でアジア系の外国人に道を尋ねられたが、何を言っているかよくわからない。中国語か、それとも韓国語か。スマホを使って翻訳?というか私に何とかして伝えようとしている。
私も初見の土地ではあるが、目の前にフェリーターミナルがあるので、ジェスチャーで何とか伝えようとする。伝わったかどうか不明だが、その方はターミナルの方へ歩いていった。多分大丈夫だろう。
異国の土地を旅するのはきっと大変なことで、誰かに助けを乞いたくなるだろう。そういう人を見かけたら、なるべく親切に対応したいものだ。
私は上野、あるいは忙しない首都圏の氷のように冷たい世界からは距離を取ったところにいる人間だ。「旅は道連れ世は情け」の精神を大切にしたい。端末で乗船手続きを済ませ、アイスを買って食べる。
乗船開始。部屋は雑魚寝の和室で、そこそこ乗っている。
さあ、船出だ。北の大地に帰ろう。
4.北海道帰還編
出航したので、夜景を観る。太平洋沿岸の工業都市がずっと続き、眠らない太平洋都市の様相を呈している。
風呂場にはサウナがついている。太平洋フェリーは閉鎖されていたので、ありがたい。温度も熱すぎず、丁度よい。
船はそこそこ揺れたのであまり眠れないかなと思ったが、意外と眠ることができ、起床は7:00だった。毎朝3:30には起きている日常からすればかなりぐっすり眠った部類だ。よほど疲れていたのだろう。
朝食をやや多めに食べる。13:30苫小牧着なので昼食も用意されているが、朝これだけの量を食べておけば心配いらない。このエネルギーだけで家路につくのに充分足りるはずだ。
11:00函館の恵山岬付近を通過し、13:30、定刻通り苫小牧西港フェリーターミナルに到着する。
後は岩見沢を経由して江別に帰るだけだ。
その前にドン・キホーテに寄って本でも読んでこようか。
次に旅立つ日に持っていく書物を探すために…
(完)