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【連載】第4次本州紀行~苫小牧→仙台→上野→大洗→苫小牧~ 第5話「安堵」(上野駅~大洗港) ※ホテル禁止

(3)上野駅~大洗港「安堵」

土浦駅到着。思ったより都会だった。しかし探索の時間はない。きっぷを買い直し、急いで勝田行列車に乗る。これで水戸まで行く。ちなみに「水戸方面」の表示はない。初見だと少しわかりづらそうだ。
ここまで来ると多少田園風景も見えるようになる。ただ、太陽光パネルが目障りだった。乗客の数も減り、ローカルムードが少し出てくる。やはり、普通列車一本で首都圏とつながっているか否かの違いもあるのだろう。

水戸線分岐の友部駅での乗降もさほど多くなく、ローカル感を漂わせながら水戸駅到着。
茨城県の県庁所在地なので人は多いが、あの人混みの後ではこれくらいが丁度よく見えてしまう。感覚が麻痺している。
バスターミナルを確認したかったが、ごちゃごちゃしていてよくわからない。水戸の名物である納豆も買いたかったが、疲れていたのと、目ぼしいものが見つからなかったので断念。今回は残念な度になってしまうのだろうか…?
観光パンフレットをもらう。偕楽園が名所のようだ。聞いたことはある。券売機で鹿島臨海鉄道のきっぷを購入し、大洗鹿島線に乗る。大洗港も近くなってきた。いよいよこの旅も終わりに近い。
ワンマン運転で、乗客はぽつぽつ。急にローカル色が強くなった。関東はどこも人でごった返していると思っていたが、ここは程好い感じだ。もしかすると、ここから流れが変わるかもしれない…。
サッカーの試合がある日は鹿島サッカースタジアム駅まで延長運転するらしい。その日はサッカーの試合があった。きっと混雑するのだろうなあ。

すぐに大洗駅に到着する。無機質な自動改札はなく、駅員にきっぷを渡す。
どうやらここ大洗は『ガールズパンツァー』というアニメの聖地らしく、至る所にキャラがいる。
ようやくのんびりした駅にたどり着けた。まるで『ぼくのなつやすみ2』のようなのどかな雰囲気に包まれている。期待できそうだ。私の直感が教えている。「ここはいい町だ」と。

そういえば、昼ごはんを食べていない。
無理もない。あの冷徹な要塞を脱出するので精一杯だったのだ。余裕がなかった。しかし、ここではのんびり食事ができそうだ。とりあえず町に出よう。
パン屋を見つけたので補給することに。ついでにフェリーターミナルへの道を尋ねると、親切に教えてくれた。同じ関東でもエラい違いである。別の国にきたみたいだ。風土は人々の性格に大きな影響を与える。人混みの都会とのんびりした港町とでは、人の優しさにも雲泥の差が出るようだ。
古墳や美術館もあるようで、探索も楽しそうな街である。正直、今回は船に乗ることしか考えていなかったが、この大洗、良い町だと感じた。昔ながらの商店街、風が運ぶ潮の香り、町から漂う優しさ…。まさに『ぼくなつ2』のような世界だ。

ここに来れてよかった。どうやら今回の旅は失敗ではなかったようだ。たったひとつの良い出会いがあれば、すべての不愉快は全て消え去る。それを感じた。
フェリーターミナルは街から徒歩20分ほどの距離にあるので、アクセスしやすい。青森、函館、苫小牧、仙台と違い、港が近いのは魅力だ。

大洗港フェリーターミナル

フェリーターミナル前でアジア系の外国人に道を尋ねられたが、何を言っているかよくわからない。中国語か、それとも韓国語か。
これは困った。私は英語しか話せない。いや、英語も対して話せないけど…。
スマホを使って翻訳?というか私に何とかして伝えようとしている。
私も初見の土地ではあるが、目の前にフェリーターミナルがあるので、ジェスチャーで何とか伝えようとする。伝わったかどうか不明だが、その人はターミナルの方へ歩いていった。多分大丈夫だろう。
異国の土地を旅するのはきっと大変なことで、誰かに助けを乞いたくなるだろう。そういう人を見かけたら、なるべく親切に対応したいものだ。

そうだ。私も先程、パン屋の奥さんに道を尋ねたばかりではないか。ここで言葉がわからないから、という理由で彼を見捨てることはできない。
現代は世知辛く、冷たい。その現代に抵抗するには、助け合いという「優しさ」がなければならない。前回の八戸・仙台編の帰り、爆睡する男性を起こしたときもそうだった。
私は「旅は道連れ世は情け」の精神を大切にしたい。
私もフェリーターミナルに到着。端末で乗船手続きを済ませ、アイスを買って食べる。ターミナルはそこそこ人がいるけれど、静かな港町の風景、という感じで心地よい。苫小牧の喧騒とは違う。優しい港町を感じる。

乗船開始。部屋は雑魚寝の和室で、そこそこ乗っている。
さあ、船出だ。帰ろう、北の大地に。

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