【小説】目が覚めたら夢の中 第47話 救い1
救い1
もうここにきてから何日たったのか。
私は自室だと与えられた部屋の寝台の上に横たわって、宙を見つめていた。
部屋の設備は館の物とそれほど変わりない。そして窓はない。扉は鍵がかけられており、鍵を開けたとしても、外には護衛がいる。
また、この部屋には結界が張られている。侵入検知と防音と魔法無効の結界。
残念ながら、私はこの部屋から逃げ出すことができない。
そして、連日の魔王からの虐げにより、身体を動かすことが億劫なほどに傷つけられている。
正確には身体はどこも傷ついていない。傷ついているのは精神だ。
連日行われる虐げに、精神を回復しようと、大量の魔力を消費している。おかげで、身体を動かすのがつらくなっている。魔力の回復も正直追いついていない。最後にテラスティーネに会った時に、彼女から魔力を奪っておいたのに、その分も消費してしまった。
奴は私と魔力の色が似通っているために、状態異常の術をかけても効かないことが分かっているためか、いろいろな症状を作り出す薬を私に盛る。
毒薬しかり、痺れ薬しかり、一部石化するとか、まるで人体実験かと思うほどに。それも致死量には満たないよう加減してくる。
一番不快なのは媚薬だ。薬で引き起こされる衝動を無理やり抑え込むのに、魔力を消耗する。奴が身体に触れると、薬のせいで身体が反応してしまう。結構、屈辱的だ。奴はその反応をいつも楽しそうに眺めている。それも、テラスティーネにそっくりのアメリアがその様子を見ているのだ。辛すぎる。
私は大きく息を吐いた。
テラスティーネは・・泣いているかもしれない。あのような形で別れる方法をとるしかなかった。早めに魔王を倒し、彼女の元に帰りたい。まぁ、魔人と知られてしまった今となっては、彼女の元にあれるか分からないのだが。
なんとか、魔王の注意を私にひきつけ、彼女に手が伸びないように行動しているが、思った以上に精神的苦痛が大きい。魔王の隙をつく前に、私がもつだろうか?
だが私が何とかしなくては、彼女に手が及んでしまうのだ。
どうすればいい。
その時、ノック音が響いて、プラチナブロンドの髪をなびかせた少女が部屋に入ってきた。
「アメリア・・ここに来るのは珍しいな。すまないが、身体が動かせないので、このままの体勢でいいか?」
「かまいません。用事を済ませたら、帰りますから。」
寝台に横たわったまま話した私の言葉に、アメリアが返答を返す。
「用事とは?」
私の問いかけには答えず、彼女は寝台に横たわった私の身体の上に、乗りあげた。
「アメリア?何をするつもりだ?」
腕も動かせないので、彼女の身体を押しのけることもできない。このまま心臓に刃物を突き立てられたら、私は死ぬこともできるだろう。
「重いですか?」
下腹あたりにぺたんと腰を下ろし、表情も変えずにアメリアが問いかける。
「重くはないが。。何をするつもりかと聞いている。」
「今日、媚薬は施されていませんよね?私にお呼びはかかりませんでしたので。」
先ほどから彼女は私の質問には答えず、こちらに質問してきてばかりだ。何の目的があって、私の上に乗っているのかまるで分からない。
「今日は痺れ薬だった。もう効果は切れているが。」
「そうですか。それは良かったです。」
彼女はそう言って口の端を上げると、私の頬、唇の横辺りに口づけてきた。
「アメリア!」
「全く抵抗されないのですね。つまらないです。」
彼女は私の頬から唇を離すと、そう言って小首を傾げる。手は私の首筋から鎖骨にかけてをなぞっている。
「もう、おしまいですか?このままだと、私はエンダーン様の寵愛を得られずに終わってしまいますが。実際、このところエンダーン様は貴方と遊んでばかり。私は全くお呼びがかかりません。」
「・・・。」
実際、彼女の言う通りだったので、私は何も反論できなかった。
「なので、彼女に協力することにしました。」