(続)本当!?農家に輸出を勧めていい?農産物輸出の実態が明らかに!【完結編】
こんにちは。アグリビジネスパートナーの高津佐(こうつさ)です。
前回から農産物の輸出実態を紐解いています。
2018年農林水産物・食品輸出額 9,068億円のうち、畜産物・穀物類・野菜・果実等の合計は1,508億円しかなく、全体の16.6%です。
前回の記事では、畜産品の内訳、穀物等の内訳、野菜・果実等の内訳を説明しましたので、今回はその他農産物、加工食品、林産物、水産物、水産調整品等の内訳について、深掘りします。
その前に前回の記事をまだ読んでない方は下のリンクを貼っておきます。
その他農産物の輸出実績の内訳
その他農産品の輸出金額は1,050億円あります。畜産品659億円、穀物等426億円、野菜・果実等423億円ですから、その額は大きいですね。
農水省が出している品目別の内訳を抜粋してみると・・・
たばこ 185億円 34.0%増
緑茶 153億円 6.8%増
花き 128億円 4.8%減
(花きの内訳)植木等 119.0億円 5.3%減
切花 8.8億円 3.0%増
こうなっています。野菜類全体で約100億円の輸出額であることを考えると、緑茶や花きは健闘してますね。結構、輸出されているんだという感想です。
しかし、全体が1,050億円ある中で、農水省が主な品目として記載している分は466億円分しかありません。残りはどんなものが輸出されているのでしょうか?
詳細のエクセルデータから紐解いてみます。
播種用の種、果実及び胞子 127億円 15.9%減 輸出先 中国25% 韓国10%
となっており、播種用の種を輸出している実態があるようです。
その中でも
野菜の種 85億円 22%減 輸出先 中国25% 韓国15%
減少はしているものの野菜の種の輸出額は大きいですね。この種を使って栽培した野菜が日本に逆輸入されるのでしょうか。
その他には
植物の液汁エキス 34億円 15.0%増 輸出先 中国・アメリカ・台湾
ペットフード 37億円 37.9%増 輸出先 韓国・香港・台湾
配合調整飼料 69億円 2.9%増 輸出先 韓国・中国・台湾
メントール 43億円 14.7%増 輸出先 アメリカ・中国・オランダ
が金額の多いものです。メントール(メンソール)とは、ハッカの精油されたもののようです。
気になったのが、植物の液汁エキスの輸出先毎の出荷量と金額です。
中国 重量 120,028kg 金額 632,410千円 kg単価 5,269円/kg
アメリカ 重量 34,817kg 金額 585,493千円 kg単価 16,816円/kg
台湾 重量 104,001kg 金額 458,591千円 kg単価 4,409円/kg
アメリカ向けだけ単価が3倍以上しますね。輸出している品目が異なるのでしょうか?このような違いを見つけていくと新たな発見がありそうです。
林産物の輸出実績の内訳
次は林産物です。輸出額は376億円 6.0%増です。内訳はこうなっています。
丸太 148億円 8.2%増
合板 67億円 14.3%増
製材 60億円 12.3%増
丸太は、78%が中国に輸出。次に韓国、台湾と続きます。
合板の90%以上はフィリピンに輸出されているようです。
製材は、中国に30%程度。フィリピンとアメリカにそれぞれ20%ぐらいの輸出です。
林産物のアジア圏への出荷額、少なくはないですね。
水産物(調整品除く)の輸出実績の内訳
水産物(調整品除く)の輸出額の合計は2,267億円 10.5%増になります。農業分野と比べると桁が違いますね。
内訳をザッと下に記載します。
ホタテ貝 476億円 3.1%増
真珠 346億円 7.0%増
さば 266億円 22.0%増
かつお・まぐろ類 179億円 25.8%増
ぶり 157億円 2.6%増
いわし 83億円 56.8%増
さけ・ます 49億円 12.6%減
たい 46億円 49.6%増
すけとうたら 17億円 4.6%減
さんま 12億円 17.6%増
ほや 7億円 29.8%減
これだけ輸出されてると日本で売るより海外で売った方が高く買ってくれるのかなとも思ってしまいますね。実際のところどうなんでしょう。
野菜や果物と違って輸送が容易なのかもしれません。冷凍もしくはそのまま水揚げとかもあるのかも。
輸出先は香港・アメリカ・中国の順ですが、品目によってアジア各地からエジプトやサウジアラビア、ロシアが上位に入っているものもあります。
水産調製品の輸出実績の内訳
水産調製品は全体で764億円 9.4%増の輸出実績があります。
内訳はこうなっています。
なまこ(調製) 210億円 1.6%増
練り製品(魚肉ソーセージ) 106億円 12.0%増
ホタテ貝(調製) 95億円 1.9%増
貝柱調製品 77億円 23.4%増
水産加工品という感じですが、毎年伸びているようです。
輸出先は香港、アメリカ、中国の順です。
伸びている理由はなんでしょうかね。認知されて広まっているのか、日本で作ったものを輸出先で売っても、採算がとれる値段で買ってくれるようになったのか。
水産物や水産調製品は海外向けでも商売になりそうなマーケットになっていますね。
加工食品の輸出実績の内訳
さて、このシリーズ最後です、加工食品の輸出実績
加工食品 3,101億円 17.7%増
輸出総額9,000億円の内、約30%をこの加工食品が占めています。内訳を見てみましょう。
アルコール飲料 618億円 13.4%増
ソース混合調味料 325億円 10.0%増
清涼飲料水 281億円 15.0%増
菓子(米菓を除く) 203億円 11.8%増
醤油 77億円 8.0%増
米菓(あられ・せんべい) 44億円 5.7%増
味噌 35億円 5.5%増
アルコール飲料のうち日本酒は222億円 19%増です。ビールは128億円で横ばい、焼酎は15億円で0.5%減です。焼酎は苦戦してますね。輸出市場では日本酒に軍杯が上がってますね。
金額の大きいものは、
その他(でん粉・イヌリン等) 1,400億円 28.9%増
があります。マーガリン(2億円)、酵母(17億円)、アイスクリーム等氷菓(35億円)となっていますが、それ以外の内訳は明記されていないですね。
他には
植物性油脂 108億円 6.9%増
があります。そのうち61億円はごま油です。
まとめ
2回に渡って農水産物・食品輸出額を見てきました。
農水省のデータ発表や日本農業新聞の記事を見ていると農産物輸出はうまくいっているように書かれています。
しかし、私たちがイメージする農産物である畜産品や野菜、果実、お米などの穀物などの輸出額は決して大きいものではないことがわかります。特に野菜はたったの100億円です。
もちろん個別品目では健闘しているものもあります。
それでも、農家所得を変えるぐらいのマーケットに、今のままでは成長するイメージが出来ないのが私の感想です。
結論として言いたいのは、農家の皆さんは安易な報道や数字のマジックに惑わされないで欲しいし、JAや県庁、市町村の行政関係者も安易に輸出を勧めないで欲しいということです。
特に青果物を輸出する際には「物流のコスト」「物流中の品質保持」「船便出荷による長期間の品質保持」「価格」「取引の継続性」など課題があります。これらのインフラ整備をしないまま、サンプルを持って行って商談しても徒労に終わることが多いでしょう。税金の投入も同じです。
一方で希望のありそうな輸出品目は
日本酒
牛肉(高級牛肉)
緑茶
りんごなどの果実類
これらは日本より高値で取引がされそうです。
輸出に向く品目、そうでない品目を見極めて対応していくのが正解だと思います。
参考リンク先
最後に今回参考にしたリンク先を貼っておきます。
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