You and You/ Micheal Mayo
Michael Mayo の You and You について調べてみた結果,考えたことなどをメモ的にまとめようと思います。メモですので乱文になります
個人の解釈ですので,ここはこうなんじゃないかとか色々意見もいただけると嬉しいです。
対象となる曲。めちゃめちゃいい曲なのに再生数少なすぎません?
あとJohn Patitucciがコメントしているのに反応があんまりない。
根底にある観念
歌詞やMVを見る前に,彼自身の解説から,この曲全体を包括するメッセージを考えます。
解説らしい解説がなかったのですが,以下のような本人による解説が出てきました。
序文にある,”自分の心に響くものを作った”,”自分の本心からくるものに惹かれてほしい”という部分とてもすきです。
http://media.mackavenue.com/files/albums/249/art7074_michael_mayo_-_bones_long_bio_final_8-3.pdf
これによると,この曲は基本的に,
”自分自身ですら自分を認めていないのに,どうして他者と一緒にいられるのか?”ということを問いかけているそうです。
同時に,理想とする自分から,現在の自分への手紙でもあるそうです。
その内容とは,”成長のための目標を,手の届かないような場所(台座の上)に置くのはやめよう”,というもの。
ブリッジの部分(イントロや間奏のところ)は”人と一緒にいなければならない”という社会から押し付けられている思想を嘆いている。
明言されてはいませんが,Michael Mayo自身が黒人や,ゲイなどのパーソナリティであることから,被差別,マイノリティにおける心的葛藤を反映しているように思います。
・上述のファイル原文
You and You: “On its surface, the song basically asks the question ‘How can you be with someone when you are not even feeling okay with yourself?’ But it’s also kind of a letter from my ideal self to my current self about not putting your goals for growth and development on such a high pedestal that they seem out of reach. Each section of the song brings out a different part of that idea. The bridge is basically lamenting an idea that society shoves down our throats ––that we must be with a person. But the last line of the bridge says that a solo journey is another way you can be.”
歌詞解釈
根底のメッセージを理解すると歌詞もわかりやすくなりますね。
雑な英訳も載せます。
Intro
Da-doo-deh-doom, da-doo-deh-doom
×6
イントロ,社会からの抑圧を嘆く部分。
譜割が変わるところがとてもすき。
Verse 1
In time, maybe I can find a life alive
いつかは生き生きした人生を見つけられるだろう
And open doors engrossed in chords
そしてコードに夢中になってドアを開ける
The known is more misleading
知られている方がより誤解を招きやすい
I've grown with the unknown in me
自分の知らない部分と一緒に成長してきた
The tale is quick to tell itself, given the chance
機会があれば物語はすぐに語られる
Your health is in my hands
あなたの(心の)健康は私の手の中に
You've put my words on a pedestal (Oh, oh)
あなたは私の言葉を台座に置いている
理想の自分と現在の自分の対話部分。
ここは理想の自分からのメッセージです。
And open doors engrossed in chords
そしてコードに夢中になってドアを開ける
doors,engrossedと韻を踏むためにchordsにしているが,音楽全般と捉えられそう,音楽に夢中になって次に進めるとかそういう感じ。
The known is more misleading
知られている方がより誤解を招きやすい
”誰”に”何を”知られているのでしょうか。
自分自身のことについて,自分で知っているということが,現在の閉塞感を生み出すような誤解に繋がっていると私は考えています。
I've grown with the unknown in me
自分の知らない部分と一緒に成長してきた
知っている部分について,自己否定をしているが,もっと知らない部分(ポジティブなもの)もあるということを強調しているのか?
※known, grown, unknownで踏んでますね
The tale is quick to tell itself, given the chance
機会があれば物語はすぐに語られる
タイミングがあればそういった部分はすぐわかるよという感じ
Your health is in my hands
あなたの(心の)健康は私の手の中に
You've put my words on a pedestal (Oh, oh)
あなたは私の言葉を台座に置いている
”あなた”は現在の自分,”私”は理想の自分であることがみられる。
本人の解説でも出てきた”台座”は手の届かない場所のメタファー。
理想の自分からの助言を受け止めれば(心の)健康になれる,しかしそれを自ら自分の手の届かない場所に置いているだけとのこと。
Chorus
You want to get closer to me, but you need a remedy
for all of the drama between you and you
×4
あなたは私に近づくことを望むけれど,あなたは解決策を必要としている
あなたとあなたの間にあるすべてのドラマのために
remedyは,療法とか医療という意味ですが,わかりやすさのために解決策としました。
ここでのあなたは現在の自分,私は理想の自分でしょう。
理想に近づきたいけれど,本当に必要なものは解決策である。
dramaの部分はこれからの人生ということでよいと思うのですが,you and youが何を指すのかが曖昧です。
MVの解釈の部分で再度触れますが,登場人物が理想と現在の自分しかいないのでその両者ということにします(つまり私自身)。
まとめると,
自分の人生のために理想に近づこうとしているが本当に必要なのは解決策
というところでしょうか。
Verse 2
Ooh, 'cause now it seems you've placed your dreams
Of we in the palm of my hands, oh
あなたは私の手のひらの上に私たちの夢を置いているようだから
Time and its sands, they pass on hours, second-hand
時間とその砂、彼らは時間を渡す、秒単位で
I don't know how to find your heart when I lost mine
自分を失ったとき,あなたの心をどうやって見つければいいのかわからない
You can't build houses on a flimsy rock
薄っぺらな岩の上に家を建てることはできない
Given the chance, drop all the song and dance
機会があればすべての歌と踊りを落とす
I can't exist on your pedestal (Oh, oh)
あなたの台座の上に存在することはできない
理想を手にしていない自分からのメッセージです。理想の自分に対して,そのようにはなれない。なれたとしてもそれはすぐに脆く崩れ落ちるとのこと。
Given the chance, drop all the song and dance
機会があればすべての歌と踊りを落とす
このフレーズなのですが,もし理想の自分になることができれば,歌や踊りをなくす,つまり現在の自身の創作を失ってしまうと解釈しました。
自身の葛藤がそのまま創作に反映されていることがうかがえる部分かと思います。
Interlude
When I hear you talk of gold,
Talk of riches, talk of woes,
And the inevitable
Holding tight to our souls
Like an ever-present mold
金や富,悩みや避けられないものについて聞くと,永遠に存在する型のように私たちの魂をしっかりとつかむ
We survive latching onto hearts
心に寄り添って生きていく
Comfort unfolds
Like a silent sniper's cold
静かな狙撃手の冷たさのように心地よさが広がる
Unflinching stare down the hole
Like the watchers of the world
世界の観測者のように怯むことなく穴を見下ろす
From afar, we unload all our problems on our partners' hearts
Like papers,
遠くから,我々は紙のように相手の心に自身の問題を降ろす
we unfold telling tales young and old
私たちは老いも若きも物語を繰り広げる
All the riches and the golden wreaths
we lay upon our dead when their minds leave their heads
すべての富や裕福さ
A solo journey is another way
一人での旅ももう一つの道
曲の中でもかなり印象的な部分。(勉強中)
MV解釈
まずタイトルが浮き出ます。オレンジ色で描かれているのですが,終盤でも出てくるように,Michael Mayo 自信を象徴する色のように思えます。
まずVerse 1を黒い服をまとった方(黒Mayo)が歌います。
Verse 1は理想の自分ということでしたので,黒Mayoが理想の部分を担当しているということですね。
サビの部分を終えるとVerse 2になります。この部分は白い服をまとった方(白Mayo)が歌います。
Verse 2 は現在の自分,理想に届くことはできず諦めている状態です。
初見では特に違和感がなかったのですが,意味を理解すると不思議な点があります。
白Mayoのパートは,服装だけでなく,部屋全体が白く照らされ,非常に明るい雰囲気を感じます。理想と現実で言うと理想の方が合いそうなシチュエーションです。
違和感があるところには製作者のメッセージが込められていることが多いという筆者の自論があります。
根拠のない妄想的解釈ですが,黒Mayoの状態は,理想の状態ではあるものの,どこか物悲しい状態。白Mayoは対外的に生きることを要請され,照らされている状態,隠れることのできない状態に置かれているのではないかと思います。
その後対話が進み,白と黒が入り交じり,最終的にオレンジの服をまとった状態でフレームアウトします。
オレンジの状態,黒と白の対話から導き出した新しい色。一人で生きていくということはまた別の,理想でも現実でもない方法であるといことを意味しているのでしょう。
関連すること
最近読んだ本に朝井リョウの「正欲」があります。
”多様性という言葉は,自身が理解できるだけのマイノリティが含まれるのではなく,想像もつかない,背筋が凍るような嗜好を持つ人間がすぐ隣にいるということを認識させる言葉である” という考えなどは,現代に重要な観点であると思います。
自分の認識できる範囲で終わるなよということのように思いました。
You and youも正欲も,どちらもマジョリティに受け入れられたいとは書いていません。
これは現在の社会においてみられる,マイノリティのパーソナリティを過剰に取り出してしまう部分や,多様性を受け入れていこうという態度へのアンチテーゼのように感じます。
そもそも受け入れるという表現自体が,マジョリティの方が上だからという態度からくるわけで・・・。
おわりに
マイノリティを受け入れる必要はないと思います。
マイノリティとしてのパーソナリティを持っているということを,過剰評価せずただ個人として接するだけでよいはずです。
しかし,一部のマイノリティと呼ばれている特性が,現在多くの人の間で当たりまえになった背景として,パーソナリティを過剰に取り出して理解したということがあるのもまた事実であると感じています。
また,理解できる多様性だけが存在しているわけではないということも考える必要があります。
”正欲”では水に興奮を覚える人が例として現れます。小児性愛や死体へ性欲を覚える特性なども含まれると思います。
取り出してしまうこと自体がマイノリティに対する侵害となること,本能的に忌避感を抱くような嗜好が存在することを考えると,苦しむことなく共存するためには,互いに関して無関心になることが近道なのかもしれません。期待をしなければ失望もしませんしね。