2024年度以降の国立大学入試科目に「情報Ⅰ」決定〜6教科8科目を原則に〜
2022(令和4)年1月28日に国立大学協会が、2022年度の高校1年生(現中学3年生)が受験生となる2024年度(2025年実施)の入試科目に関する基本方針を公表しました。
一般選抜の受験生に対し、教科「情報」(科目名は情報Ⅰ)を加えた6教科8科目を課すのを原則とするとの方針を正式決定したとのことです。
情報はまだまだ少ないですが、今ある情報だけまとめて、過去の入試科目変更で起こった事態からどのようなことが起こるのかを考えて見ました。
1.国立大学協会資料、「情報」に関する記述全文
今回、国立大学協会が公表した資料には、「情報」以外の入試の方針についても記載されています。その中から情報に関する記述だけを抜粋しました。
ちなみに、共通テストの教科「情報」のサンプル問題はすでに大学入試センターから公表されています。
2.入試科目が変更になると起こること
国立大学が揃って科目を増やすのは、2004年1月の大学入試センター試験以来となります。
実は、筆者はこの年の大学受験生で国立大学志望でしたので、当時のことはよく覚えています。次の年には英語にリスニングが追加されるということも決定しておりましたが、私の母校ではほとんどリスニング対策の授業は行っていませんでした。同じような事態は全国で起こっていたのではないかと思います。こうなると受験生側は、「国立大学は勉強の負担が増える」「浪人するとリスニングの対策が大変」という気持ちがどの受験生にも働きます。結果として、国立大学の志望者がかなり減少し、当時の倍率はかなり下がりました。(おかげで筆者はかなり助かりました!)
最近の出来事として、科目が増えたことで入試に大きな変動がでたのは2012年入試の「倫理・政経」問題です。
東京大学や京都大学が「『日本史B』『世界史B』『地理B』『倫理・政経』という4単位科目から2科目を入試科目とする」と決定した際も大きな話題となりました。「日本史A」「世界史A」「地理A」「倫理」「政治経済」「現代社会」という2単位科目は入試科目として認められなくなったという問題です。
当時、文系の5教科7科目といえば、「世界史B」「現代社会」のような4単位科目と2単位科目を組み合わせて受験していた学生も多く、学校のカリキュラムもそれらを見越して授業が組まれていました。しかし、これが許されなくなったわけです。
東大・京大を受験するような生徒が多く在籍していた進学校では、授業時間を再編するという対応にを迫られていました。「高校公民免許を持っている先生の数が足りない」という問題を抱えていた県もありました。
今回の6教科8科目は4単位科目問題と同じように「どの国立大学で『情報Ⅰ』が入試科目として課されるのか?」ということが大きな焦点になってきます。
過去の動きを見れば、筑波大学、広島大学、東北大学、大阪大学あたりの決定と公表が先行しそうだなと予想しています。
それらの様子をみて、東京大学や京都大学がその対応を発表することでしょう。そして、この2大学が対応を公表したタイミングで情勢が大きく動くこととなるでしょう。また、東京工業大学などの理系に強い国立大学の動きにも注目したいところです。
筆者は、学習参考書などを制作する出版社に所属しています。
我々も、大学側の情勢を見ながら問題集などの発刊計画を立てていきますが、英・数・国・理・地歴・公民と違って、編集者側も新しい教科への対応を迫られていくことになります。また、制作体力という問題もあります。
共通テスト1年目の際に各予備校の共通テスト対策問題集は、「予想問題」と「センター試験の過去問題」という問題構成が大半でした。
つまり、今後、各予備校や出版社がどこまで問題集や参考書などを発刊できるのかについても不透明なところが多いのです。これも受験生にとって影響を与える要素なのだと考えています。
3.どのくらいの大学が入学者選抜で活用するのか?会長談話より
上記したように、各大学が「情報Ⅰ」を入試科目にどのように設定するかで影響度合いが変わってきます。その温度感を知る参考と資料として、国立大学協会会長の談話が参考になるように思います。
あまり談話を資料として出すことはないので、筆者の個人的な見解としては「文系も理系も覚悟せよ」ということなのではないかと感じています。こちらも全文を掲載いたします。
また、進展がありましたらまとめていこうと思っています。