CHAMPION 1st REVERSE WEAVE
今回は初期のリバースウィーブのお話です。
1938年に製法特許を取得した一枚生地の両Vリバースウィーブ。
数年前までは知る人ぞ知るリバースウィーブだったと思いますが、以前に比べると知名度は飛躍的に上がっているのではないでしょうか。
私自身、初めてその存在を知ったのはスウェットを集め始めた約10年前の2014年頃。
その頃は私の回りではこの存在を知っている人も少なく、
それがどういった物なのか、そしてそれを手に入れたいと思っても情報も少なく苦戦したのをよく覚えています。
しかしここ数年では以前に比べ見かける機会も増えてきています。
Lightning別冊『ヴィンテージスウェットシャツ』
Lightning別冊『VINTAGE CHAMPION』
この二冊に掲載されたこと、
また近年に本家チャンピオンから復刻されたことでその存在が多くの方に認知されたのではないかと思います。
リバースウィーブは1938年、1952年、と二度製法特許を取得しています。
1938年の一度目は生地を横に使うこと、1952年の二度目はサイドのパネル(リブ)使いです。
1938年のモデルは近年復刻が出てからは巷では『1stパテントモデル』と呼ばれるようになりました。
でも、以前からスウェットを好きな人達の間ではこんな呼び方があります。
『ドルマンスリーブのリバース』
縫い目を極力減らし一枚生地で作られた独特のシルエットから、
袖付けがドルマンスリーブのように見えることからドルマンリバースと呼ばれています。
やはり慣れ親しんだその名前がしっくりきます。
肩に縫い目はなく、袖リブから脇下を通り裾リブまで走るこの縫い目により組み立てられています。
そしてこの個体。
タグから見てもこのスウェットの年代はその頃に作られた物だと思っています。
これはUNIVERSITY OF IOWAのバックステンシルです。
このドルマンリバース、日本では昔から『1934年に開発された』と言われています。
今までドルマンリバースを十数着と確認してきました。
その中の半数程はタグ付きでしたが全てこれと同年代のデカランでした。
1934年というとオリンピックタグの直後のオリンピック表記無し白タグです。しかしそこまで古いタグが付いている個体は見たことがありません。
確認できているのは全て1930年代後半~1940年前後のタグです。それこそ特許取得前後の年代のタグです。
1934年に開発されたと言われていますが、その根拠となる資料は一切見たことがありません。
何を根拠にその情報が出回ったのかはわかりませんが、私は自分の目で資料を実際に見ないことには100%信じきることができない性分です・・・
『特許申請以前は生産していなかった』
そうは思っていません。
チャンピオン社のによる1938年のフロッキープリントの製法特許も1952年の二度目のパテント時も、チャンピオンは特許取得以前から生産していたという記録が残っています。
この広告をご覧ください。
いくら探してみても1938年以前の広告や資料を見つけることはできませんでした。
こちらは1938年10月の広告です。
特許取得は8月ですので、取得後の広告です。
競合他社に類似品を作られてしまう恐れがあるため、特許取得前は積極的な広告活動はしていなかったはずです。
しかし、この広告を出した時点で既にいくつかの大学に卸していることがわかります。
チャンピオンは当時、積極的に小売り店に卸すことはせずに大学や高校に直接出向き、アスリート達に直接売り込んでいたようです。
と、言うことはやはり1938年以前から販売、営業活動自体は行われていたことは確実です。
ちなみに、
展開色はシルバーグレーのみ。
サイズ展開はSMALL、MEDIUM、LARGE
の3サイズ。
謳い文句があまり響かず縮むことを懸念されていたのか、見付かる個体のほとんどがLARGEなのは面白いですね。
生産されたスタート時期が気になるなら、
このドルマンリバースがいつまで作られていたのかも気になりますよね。
サイドリブが付く2度目の特許取得直前まで作られていたのか?
私はその可能性は低いと思っています。
まず、現存数があまりに少ないこと。
そして1938年の特許取得後、間もなく第二次世界大戦に突入してしまいます。
チャンピオンは戦時中、原材料と物資の不足に悩まされていましたが、その生産力を戦争活動に移し、軍の為に特注の衣料を供給していたことが記録されています。
軍からは大規模なオーダーがあったようで、それらを生産することで手一杯だったことも想像できます。
そういったことから1942~1947年の間、チャンピオンは学校向けの商品に力は注いでいなかった、注ぐ余裕はなかったのではないかと考えています。
ここまで書きましたが、スタート時期も終わりも推測です。
これからも調べていきたいと思います。
ただ、1934年から販売していたとしても生産量は非常に少なかったことは予想できます。
以前に投稿した『RUNNINGMAN TAG』で書きましたが、デカラン以前のタグを付けたスウェットは本当に出てきません。
見つけること自体が非常に困難です。
特許取得前の売り込み中だったリバースウィーブ、生産数も少ないでしょう。
出てこないはずです。
もし所有されているコレクターさんがいましたら是非見せてください。
デカラン以前の時代のドルマンリバース。
存在している可能性は十分ありますのでいつか見てみたいものです。