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コットンスウェットの始まり
コットン100%のスウェット。
今では当たり前ですが、誕生したのはいつから?
この疑問、集め始めた当初からずっと頭の片隅にありました。
インターネットで調べても、これまた微妙な情報ばかり。
1902年、アメリカ、アラバマ州アレキサンダー・シティで、ベンジャミン・ラッセルによってスタートしたラッセル。
1920年代初頭に世界で始めてスウェットシャツの原型を作り~
この一文はよく見かけます。
でも現物のヴィンテージやラッセルのカタログ等、信憑性のある情報は得ることができません・・・
今回も私なりに調べた情報を書いていきます。
推測も含まれていますので、それも踏まえてご覧いただければと思います。
○コットンスウェットの始まり
Spaldingの1918年のカタログには既に原型となるスウェットシャツが掲載されています。
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SPALDING FLEECE LINED"COMFORT"SHIRTS
Heavy weight cotton, wool back, fleece lined,
in either Gray or Brown.
説明文を見るとコットン×ウール。
裏面にウールを使い保温性を持たせた、
いわゆるウールバックスウェットです。
袖リブはV字の切れ込みのある変形。
カラーはグレーとブラウン。
この頃はまだコットン100%のスウェットシャツはラインナップされていません。
※後日、1916年のカタログにも同型が掲載されているのを発見しました。
そしてSpaldingの1922年のカタログ。
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No.TC. Cotton shirt, fleece lined. Gray or Brown.
同タイプのスウェットにコットン100%が追加されています。
カラーは変わらずグレーとブラウン。
1919年、1920年、1921年、この年代のカタログを見たことがありません。eBayでもなかなか売りに出ないんです。
1922年より早くコットンスウェットがラインナップされている可能性は高いです。
もし知っている方がいたら教えてください。
カタログ上で見ると1922年には既にコットンスウェットが誕生していたはずです。
それを証明する現物や資料はありません。
でもこちらをご覧ください。
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これはNORTHEASTERN UNIVERSITYを1927年に卒業したオーナーの親族から出た個体です。
卒業年度から、1923~1927年に作られた物だと考えられます。
卒業間近に作ることは考え難いので、1923~1927年の間でも前半の早い頃に作られたと考えても良いのではないでしょうか。
コットンを売り出したと同時にこういったカラー物のオーダーを受けるか?
という疑問もあります。
ただ、これが1923~1925年あたりに作られていると仮定し、
それよりも少し前の1922年以前からコットンを作り始めていると考えると辻褄が合います。
余談ですが、
この個体に付くタグ、WRIGHT&DITSONという会社は1897年にSpaldingに買収されています。
買収後もWRIGHT&DITSONの名前でスポーツ用品(主にテニス、ゴルフ、野球)を中心に製造していたようです。
そういった会社は専門外の分野に関しては他社に製造依頼する事が多く、スウェットに関してはそのケースが多々見られます。WRIGHT&DITSONもスウェットは専門ではなかったようで親会社になっているSpaldingが製造したと考えられます。
○コットンスウェットはウールスウェットが原型?
そして、もう一つの疑問。
コットンスウェットを遡っていくとあることに疑問を感じます。
巷では定説になっているこちら。
コットンスウェットはウールスウェットが原型。
1930年代にスウェットの素材がウールからコットンに移行した。
『コットンスウェット誕生よりもウールスウェット誕生が早いのか?』
古着業界の常識はウールスウェット誕生の後、その後素材がコットンに切り替わっていくという流れです。
私も始めは疑いもせずにそう信じていました。
ただ、調べていくと辻褄が合わない点がいくつか出てきます。
まず、先ほどのSpaldingの1918年のカタログにはウールバックスウェットは掲載されていますが、
ウールスウェットはまだ掲載されていません。
思い返しても1910年代のヴィンテージのウールスウェットは聞いた覚えがありません。
1910年代の冬用スポーツウェアと言えばウールセーターでしょう。
ちなみに、1918年のカタログにスウェットではありませんがコットン製品が掲載されています。
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コットンジャージー、タンクトップ(ノースリーブシャツ)は既にコットンも作られています。
ウールと比較すると非常に安価です。
そしてSpalding1922年カタログ、
コットンスウェットが掲載されていますがウールスウェットはまだ掲載されていません。
1925年カタログではウールスウェットが確認できます。
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No.SSE.がウールスウェットです。
※Spalding 1924年カタログを以前に見たことがありますが、そこにも同じウールスウェット品番が掲載されていました。
他のメーカーのカタログも確認してみました。
例えばこちら。
『GOLDSMITH』1923年カタログ。
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ウールのタンクトップやジャージーは掲載されていますが、まだウールスウェットは掲載されていません。
しかし、コットンスウェットは掲載されています。
コットンスウェットの原型はウールスウェットではなく、ウールバックスウェットだったのではと考えています。
その後、コットンスウェットが誕生しウールスウェットも作られるようになったのではないでしょうか。
話がそれてしまいますが・・・
こういった調べものをする際はカタログ以外にもYEARBOOKをよく見ています。
あまり聞きなれない単語ですが、
日本でいう卒業アルバムです。
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YEARBOOKを見ていると、
1910年代後半~1920年代前半はやはりウールセーターの着用が多く見られます。
レター付きのローゲージのVネックニットやプルオーバータイプのショールカラーニットですね。
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そして1927年頃からコットンスウェットの着用を確認できます。
フェルトレター付きの両Vツートンや肩リブ切り替えの両Vなども見かけます。
ウールスウェットもその頃から多く見かけるようになります。
1930年代中頃になるとウールスウェットが少なくなり、グレーの無地のスウェット(ステンシルを入れていたり)の着用生徒を見かけるようになります。
もちろん、この頃もコットンのツートンスウェットは見かけます。
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この頃はウールスウェット、コットンのツートン、グレーのスウェットなど、色々なスウェットが混在しています。
見ているだけでも面白いです。
このサイトは画像が非常に鮮明なので、もし興味があればご覧ください。
https://photoarchive.lib.uchicago.edu/browse-sports.html
話を戻していきます。
1920年代後半~1930年代の色々なメーカーのカタログを見ていると分かることがあります。
この年代はスウェットをオーダーするのが主流だったようです。
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フルオーダーというよりは、
(もちろんフルオーダーだと思われる個体も極稀に存在します)
セミオーダーのような発注方法でしょうか。
まずは型を決め、素材、カラーリング、プリントはフェルトorステンシル、追加でジッパーを付けたり・・・
その素材の項目に注目すると、
ウールはもちろんコットンスウェットもあります。
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しかし、1930年代後半~1940年代のカタログを見ているとどのメーカーもこの素材の項目からコットンスウェットがなくなっていきます。
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※項目にはなくとも、規制品の単色スウェットは継続されています。
カタログのオーダー項目からコットンが姿を消していった理由はわかりませんが、
オーダーするユーザーには需要がなくなっていったからと考えるのが自然でしょうか。
ただ、同メーカーのカタログを年代順に見ていくと気付くことがあります。
例えばELLIOTTのカタログで見るグレーの無地のスウェット。
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1930年では$1.50
1938年では$1.45
1942年では$1.95
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そしてオーダーで作るウール両Vスウェット
1930年では$7.50
1938年では$9.65
1942年ではウールスウェットはなくなっています。
ウールスウェットよりも安価だったメルトンスウェットが$11.75に。
既製品のコットンスウェットのプライスの変化さほど見られませんが、1930年代後半からオーダースウェットの金額が異常に高騰していきます。
生産上の都合で手間のかかるオーダー物は価格を上げざるを得なかったのでしょうか。
高価になってしまったオーダー品は次第に需要もなくなっていってしまったのかもしれません。
そして第二次世界大戦に突入し、
どのメーカーも軍へのトレーニングウェア等の納入のため、生産の大部分をそれに回していきます。
戦後、大量生産の時代に切り替わり、。
オーダーシステムはメーカーにより残りますが、主流は無地の既製品のコットンスウェットにプリントを施す流れに。
この流れから見ると、
ウールからコットンに移行したのではなく、ウールとコットンを平行して生産していき、結果コットンが主流になっていったのではないかと思っています。
まだまだ調べたいことも多く、真相には辿り着けていません。
現時点での一コレクターの推測を含めた独り言だと思っていただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。