戦前のディテール ①変形袖リブ
今回から数回に分けて1920~1930年代に見られるディテールについて書いていきたいと思います。
巷ではロックフードやツートンは聞き慣れた言葉ですが、
スウェット好きの間ではあまり聞き慣れない単語が使われることもあります。
今回はそんなディテールを書いていきたいと思います。
ネットや雑誌でも詳しく解説されることはないのでスウェット好きな方は是非ご覧ください。
○変形袖リブ
近年、SPALDINGから復刻がされ知名度は上がってきているかもしれません。
1916年には既にSPALDINGのカタログに掲載されていました。
今から108年前です。
ただ、その頃はコットン100のスウェットではなくウールバックのスウェットのみしかリストには掲載されていません。
変形袖リブのコットンスウェットが初めてカタログに掲載されたのは1920年前後です。
このV字に切り込んだ袖リブ、非常に特長的です。
Vと言えば両V。
そうです。役割はネックのVと同じです。
袖通しを良くするために生まれたディテールです。
巷ではリブの伸縮性が乏しかった為に生まれたディテールと言われています。
確かにSPALDING製スウェットの1920年代の袖リブと1930年代後半の袖リブを比べると1920年代のリブの甘さは感じます。
しかし、元々はネックのガゼットも変形袖リブもコットンスウェットやウールスウェットの為に生まれたディテールではありませんでした。
私がカタログで確認した初採用の型は、
ネックのガゼットは1916年ウールバックスウェット。
変形袖リブは1915年サッカーシャツです。
ウールバックのスウェット生地はコットンスウェットに比べると固さがあり、やや伸縮性に劣ります。
リブの伸縮性が乏しかったから、という理由もあると思いますが、ウールバックスウェットの着脱を助け、着心地やフィット感を向上させる目的も強かったのではないでしょうか。
サッカーシャツはコットン製のジャージー生地です。縦ストライプをイラストのメインにしている所から、生地を横使いにする為に袖の横の伸縮性を助けるために変形袖リブを採用したのでは?と考えています。
しかし、同年代の縦生地使いのサッカーシャツも変形袖リブを採用しているのでまだまだ調べる必要があります。
そしてこのサッカーシャツ、1925年には通常のリブに変更します。
スウェットよりも先に変形袖リブを採用しなくなったのは興味深いです。
この変形袖リブ、SPALDINGでは1930年代半ばまでスウェットに採用していたようです。
1920年代から1930年代後半までは他メーカーのカタログでも多数見ることができます。
これらはどれも製造元はSPALDINGと考えていいでしょう。
そして、SPALDINGは1930年代に入りコットンスウェットをカタログで大きく取り上げます。
そして、そのイラストは変形袖リブではありません。
しかし、同ページにウールバックスウェットも掲載はされています。
恐らく、このイラストは新型として登場した型。
変形袖リブと平行してラインナップを増やしていたと考えられます。
カタログに掲載している型番は1910年代も1930年代もずっと変わりません。
それを踏まえて見ていきましょう。
①No. T
変形袖リブのウールバックスウェット。カラー展開はグレーとナチュラルのみ。
②No. TC
変形袖リブのコットンスウェット。
カラー展開はグレー、ホワイト、ナチュラル。
③No. TX(新型)
イラストの変形袖リブではないコットンスウェット。
カラー展開はグレーのみ。
④No. 3C
TXのカラーものです。
カラー展開は赤、ロイヤルブルー、マルーン、ネイビー。
型番Tは1916年からあり、TCは1922年には既にラインナップしています。
そして新しい型としてTXと3Cがラインナップされます。
この頃はコットンのグレーを購入しようとしたらTC(変形袖リブ)とTX(新型)の二択です。
しかし、同じディテールの違いでTCの方がやや割高です。
そうなると次第にTXが主流となり変形袖リブのTC型は需要もなくなり廃盤となったと推測しています。
1910年代~1930年代と20年程も生産していた息の長いディテールですが、現在では滅多に見ることの出来ない変形袖リブスウェットです。
それでは今回はこの辺りで。
最後までご覧いただきありがとうございました。