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カラースウェットはいつから?

今回はちょっと変わったダブルフェイスのお話です。


一般的に『ダブルフェイス』と言うと、
殆どの人があの分厚くてモチモチとしたスウェット生地×スウェット生地の保温性を上げる事を目的として作られた後付けパーカーを思い浮かべると思います。


今回はそれではなく、古い年代にしか見られない変わったダブルフェイスをご紹介します。


こちらです。



表が天竺素材(Tシャツ生地)、裏はスウェット生地です。

ただ表の素材が違うだけではなく、一般的なダブルフェイスとの違いはスウェット生地です。

裏面のスウェット生地は肌に触れる側に起毛面を使っています。

そしてどの個体も裏面のスウェット生地は白が使われています。


この造りは1920年代半ば~1930年代前半にしか見られません。


カラー物のスウェットの創成期に作られた工夫の産物でしょう。




このダブルフェイスが生まれた理由は二つ考えられます。


推測①
染色技術の未発達なせいで肌やインナーにスウェットの色が移ってしまうことへの対策で生まれた仕様。


推測②
反染めされたカラースウェットが誕生する以前に生まれたダブルフェイス。


その推測に至った理由を書いていきます。



まずは紹介したいスウェットがあります。

このダブルフェイスと同年代にまた変わったスウェットがあります。


まず肩リブに目がいきますが、生地に特徴があります。

これはダブルフェイスではなく一枚生地です。

表糸が色糸、裏糸に白を使い表裏で違う色にしています。


そしてこれが掲載されたカタログ。

ELLIOTT 1926カタログ

Training shirts in colors with soft white cotton fleeced lining. No chance of the color coming in contact with skin.

こう謳い文句が書かれています。

『柔らかい白いコットンフリースの裏地が付いたカラーのトレーニングシャツです。色が肌に触れることはありません』

ELLIOTTはスポーツ用品店なので、
自社ではスウェットは生産していなかったはずです。

ELLIOTTはこの頃、LOWE&CAMPBELLのスウェットを扱っていた可能性が非常に高いと考えていますので、十中八九LOWE&CAMPBELLではないかと思っています。


そして、この生地と表天竺のダブルフェイスの用途は同じだと推測しています。

年代も一致しています。



何故二通りも生まれてしまったのか?


これは、カラー物のスウェットの誕生に大きく関係してると考えられます。




その前にスウェット生地の染めについて軽く触れておきたいと思います。


まず、一枚生地でそれを生産するには効率が非常に悪いです。

表糸を色糸、裏糸を白糸にして生地を編まなければなりません。表糸を糸の段階で染める必要があるのです。

通常、ヴィンテージスウェットと呼ばれる年代のスウェットは (現代のスウェットもほとんどが当てはまります) グレー以外は全て白で編まれた生地を染めています。
それを反染めと呼びます。
(反染めは表も裏も、どこから見ても同じ色です)

その後、染め上がった生地を裁断、縫製をして組み立てていきます。

この裏白のスウェットは染めた糸を先に用意しなければなりません。

※裏白のスウェット、良い呼称があれば良いのですが・・・私には思い浮かびません!



こういった染色行程があることを考慮して考えていきます。

まず、反染めされたカラー物のスウェットの誕生は1920年代後半。

恐らく1926~1928年の間には生まれています。

1925年の時点ではSPALDINGやELLIOTT等のカタログには掲載されていません。

1926年に初めて先程の先染めの肩リブスウェットが掲載されます。


そして1928年SPALDING

カーディナル、ロイヤルブルー、マルーン、ネイビー
既に両Vスウェットのカラー物が掲載されています。

(SPALDING1926~1927年カタログが未確認です)


そして、以前に掲載したマルーンのCHAMPIONのスウェットパンツには1928年のジッパーが付けられています。


そのため、1928年には既にカラー物は量産されていると考えられます。


こちらは推測ですが、
先染めの裏白のスウェットが生まれた理由はカラー物を作るにあたり、
当時の染色技術では色落ちを防ぐことが難しいと判断したこと。

この時代、既にTシャツの反染めは量産されているのでスウェット生地を反染めすることは技術的に難しいことではないはずです。

そのため、手間はかかりますが裏を白にすることにより色移りを防ぐことを優先したと考えられます。



そして表天竺ダブルフェイス。

こちらは先程の先染めの裏白スウェット生地を作るコストの削減、そしてその応用を試みたのではないかと考えています。


既に反染めで量産しているTシャツ生地とホワイトのスウェット生地を使い、
先染め裏白のスウェット生地を再現したのではないでしょうか。


どちらが先に生まれたのか?

そこは突き止められませんでしたが、どちらも1924~1926年頃から作られています。


そこまで古い反染めのカラースウェットは見たことがありません。


これらが初めて作られたカラースウェットだと考えています。


その後、1930年代に入り反染めのカラー物が主流になっていき、この二種類のスウェットは姿を消していきます。



先染めの色物スウェットも天竺ダブルフェイスのスウェットも、どちらも現存数は非常に少なく市場で見かけることは皆無です。

今まで確認できた個体はどちらも両手で数えられる程度です。



もし今後皆さんが市場で見かけることがあれば是非手に取ってみてください。


なかなか巡り合えるこのとない珍しいスウェットです。


それでは今回はこの辺りで。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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