転生したらワニの帽子屋だった件[会話版]

登場キャラクター

  • 「」

  • 『』

  • 【】

  • 〈〉

「はあ〜」
『ほらよっと』
「何だい、俺の顔の前で帽子なんか振って」
『ため息をつくと幸せが逃げるって言うじゃないですか。だから捕まえてるんですよ』
「だからって、帽子で捕まえなくたっていいじゃないか」
『"幸せを捕まえた帽子"って表に出したら、目を引くと思いますよ』
「ちょっとちょっと、人の幸せを勝手に売らないでもらえる?」
『まあまあ。溜め息自体は悪いことじゃないんですが、人前では避けましょうってカワニテツさんの本にも書いてありましたよ』
「こう誰もいないとため息もつきたくなるよ。確かに好きで始めた帽子屋だよ。売れなくても生活に支障はないけどさ 俺は気に入った帽子を見つけた人の喜んでいる顔を見るのが何より好きなんだよ」
『素材はいいんですから、それをアピールする何かが必要だと思うんですよね』
「それで人が集まれば苦労はしないよ」
『もっとキラキラさせた方が目立つかな』
「お〜い、人の話聞いてた?」
『隣の宝石屋さんで何か埋め込んでもらうよ』
「あ、ちょっと。行っちゃったよ。暇だから話し相手になってもらおうと思ったのに。一人ならため息ついてもいいってことだよな。はあ〜。少し肩の力が抜けたかな。腕が太いから肩が凝ってしょうがない」

『ただいま戻りました』
「早かったね。ん、そちらの方は?」
『店の前に立ってたからご案内しました』
【こんにちワニ】
「いらっしゃいませ」
【ここは帽子屋さんワニか】
『ええ、いろいろな形、大きさ、色の帽子を揃えています』
【そうワニね、できるだけ丈夫で大きい帽子がいいワニね】
「うちのはどの帽子もとても丈夫ですよ」
『幸せも捕まえられますから』
【幸せ、ワニか?】
「いやいや、こちらの話です」
『これなんかどうですか』
【かぶってみてもいいワニ?】
「どうぞどうぞ」
【大きさはぴったりだワニ】
『とてもよくお似合いですよ』
【そうワニか? 嬉しいワニ】
「ちょっと引っ張ってみてください」
【すごく丈夫ワニね】
『少し値は張りますが……』
【お金ならたくさんあるワニ】
「いやいやいや、こんなにいただけませんよ」
【いい帽子を見つけてもらったお礼だワニ】
『それじゃあ、遠慮なく』
「まいどありがとうございます」
【アリゲーター】

「あの帽子、本当に売れたね」
『店長、毎日その話しますね。今日で5日目ですよ』
〈あの、すみません〉
「いらっしゃいませ」
〈こちらの帽子はすごく丈夫だって聞いたんですが〉
『ええ、こだわりの素材です。いろいろな形、大きさ、色の帽子を取り揃えております』
〈これがいいかしらね〉
「とてもよくお似合いですよ」
〈あら、ありがとう。こちら、いただくわ〉
『ありがとうございます』
「つかぬことを伺いますが、うちの店のことはどちらでお聞きになったのですか」
〈ご存知ないんですか? このお店、今すごく話題になってるんですよ〉
『特に宣伝とかしてないんですけどね』
〈でも踊る広告塔がいるじゃないですか〉
「どういうことです?」
〈これ、ちょっと見てください。wanistagramワニスタグラムの投稿なんですけど、この帽子はこちらの商品ですよね〉
『確かにうちのだ』
「この帽子って、幸せを捕まえた帽子じゃないか⁉︎」
『本当ですね! ということは、踊っているのはあのお客さんか!』
〈お客さんはもっと増えますよ〉
「君の言った通りだ。あれは"幸せの帽子"だったんだ」
『店長、見てください。お客さんたちが気に入った帽子を見つけて喜んでくれています』
「ああ、こんなに嬉しいことはない」

【みんなが幸せなんだワニ】

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