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<読書>奇妙な死刑囚 〜冤罪からの生還

検察が控訴を断念して袴田巌さんの無罪が確定しました。

人生のほとんどを、死刑の恐怖と共に過ごされたことを思うと
私たちの日常にある苦難など、取るに足らないことに見えてきます。

世間の耳目は、袴田さんの冤罪に向けられていますが
真犯人を逃してしまったことへの責任も大きいと思います。

袴田さんの辛く苦しい日々に、真犯人は素知らぬ顔で
この世を生きていたのですよね。

先日、寺田真理子さんの読書会でご紹介いただいた
「奇妙な死刑囚」を読みました。

30年間、無実の罪で死刑囚として収監された本人が書いた作品です。
確固たるアリバイがあり、ポリグラフでも無罪が示されていたにもかかわらず
被害者が彼が犯人だと証言したことで、それらの証拠は全て無視され
有罪判決を受けてしまいます。

序文で彼の弁護士はこのように書いています。

ヒントン氏の回想を綴ったこの本は、読むと何度もつらくなる。
だが、逃げてはならない。
これほどの辛酸をなめる境遇は、大方の人にとって想像もつかないだろうが
本当はだれの身にも起こりうる。司法制度や人種偏見について学び
偏見が人々を公平かつ公平に扱う妨げになっている現実を
あなたも知っておくべきだ。

収監中は、死刑執行の電気椅子から漂う匂いや、泣き叫ぶ声などを
聴きながら、それでも精神を保ち続けられたのは
読書の力であったと振り返っています。

自由の身になって出てきたこの世界は
30年前に知っていた世界とは全く異なっていました。

彼はまた、同じことがまた自分の身に降りかかるのではないかという
恐怖の中で生き、日常生活の日々の記録をしっかりと残しています。
必ずレシートをもらい、防犯カメラの前を歩く。
自宅で長時間1人で過ごす時には数人に電話をかけ
今自分が何をしているか告げる。
夜も必ず誰かに電話をかけておやすみなさいと挨拶をする。
そうして1日も欠かさず自分のアルバイを作り続けています。

彼のこの習慣は、私たちの日常にも大いに参考になると思います。
そして、これからの人生をより良く生きるために
自分を冤罪に貶めた人を許す彼の言葉も

悪いことが起こったら、そこから立ち直るすべを見つけなければならない。
すべての終わりをハッピーエンドにしなければならない。
私たちのだれもが自分を尊重したいと思っている。
自分の人生を生き、自分の物語を紡ぎ、自分で選択したいと思っている。
それができなければ自分を尊重することなどできない。
大切なのはそこなのだと死刑収監房で私は学んだ。
どう生きるか、それが肝心なのだ。
愛することを選ぶのか、憎むことを選ぶのか、助けるのか、傷つけるのか、


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