<読書記録>薄墨桜と風姿花伝
仕舞の稽古を始めたのは30代後半
その時には、風姿花伝は知っていましたが、全く興味がありませんでした。
ところが、最近は上京した時に
時間をみつけて歌舞伎座の地下のカフェでお茶を飲んだりします。
立ち居振る舞いの美しい高齢のご婦人を「鑑賞」しているのです。
これは、こうなりたい、とかああなりたい、というより
絵画や音楽を鑑賞するのと同じような気持ちでした。
ただ、良い物を見て聴いて生きることで、いつかはその良いものに少し近づけるのかもしれません。
そんな日々の中書評YouTuberアバタローさんの動画「風姿花伝」で初めてその魅力を知りました。
それを機会に、風姿花伝を読み、関連した本を読むようになりました。
その中で、最も美しく、最も風姿花伝の真髄を伝えていると感じたのが
この、日本画家 中原信子さんの本でした。
中原信子さんの絵を使って、誰かが風姿花伝について
書かれたものかと思って手に取ったのですが
息をのむほど圧倒的に美しい桜の日本画に負けず劣らずの美しい解説が
中原さんご自身によって書かれたものだとわかり
なるほどと思いました。
日本画家の方は襖絵や能舞台の背景を描かれることもあるので
能の世界に造詣が深いはずです。
中原さんの解説の冒頭部分
という問いかけから、自分の尊敬する年配者の行動や話し方の真似をすることを勧めます。
耳が痛いですが確かに
着物を着た時の自分とジーンズの自分
自分でもおかしいくらい全くの別人
意識しなくても、袖があり、裾捌きに気を付けて、白足袋を汚さないように
と思うと、自分の周りの状況に気を配るようになります。
これは、内田樹さん、三砂ちづるさんの対談「身体知」でも盛んに語られていますね。
いつも行くガソリンスタンドで、灯油を買う時
スウェットやジーンズで買っている時に、手伝ってもらったことはありませんが
スーツにヒールで買っていると、必ずお店の人が駆け寄って、やれ灯油缶で
車内が汚れないよう、ビニール袋をどうぞ、とか
車まで運びましょう、とか。
身なりが違っていたのだろうと思っていたのですが
身なりだけではない、立ち居振る舞いが違っていたのかもしれません。
中原さんは、樹齢1500余年の薄墨桜の
幽玄の姿になぞらえながら風姿花伝を解説していかれます。
「風姿伝」ではなく「風姿花伝」
ただ、風姿を伝えるのではなく、
芸能の「花」人生の「花」を問いてていかれます。
本の一部を写メしました。(問題があれば削除します)
今は中古でしか手に入りませんが、美品も出回っています。
私が仕舞の稽古を始めたのは全くの不可抗力。
息子に習わせようと連れていったのですが
「こんな変な踊り嫌だー」と逃げていったので
先生に申し訳なくて、自分が入門しました。
息子に習わせようと思った動機は
海外のご家庭でお世話になると、必ずと言っていいほど
日本の文化を見せて欲しいと言われているそうだからです。
琴が弾けます、鼓が打てます、といってもモノがなければ披露できません。
その点、仕舞でしたら、扇1本で、なければエアーでも
自分で謳い、舞うことができるので、これからのグローバルな時代に
身につけておいたらいいと思いましたが・・・・
仕舞の先生曰く、日本の若い人が習いにくることはないけれど
海外からの留学生はよく見学に来たり、一曲舞えるようになって帰っていく、とのこと。
尋ねてみると、彼らは自国の文化も身につけた上で日本の文化を学ぼうとしているそうです。
日本の若い人は、自国の文化を学ばず外国を目指す・・・と、残念そうに言われていました。
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