Kou

土木技術者。 コンクリート診断士、技術士(建設部門)、防災士。 スキーも好き。

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最近の記事

構造力学メモ(その9)2次元極座標の重調和方程式の一般解

 前回は、コンクリートの割裂引張試験の計算式の理論の裏に、エアリーの応力関数や2次元の極座標、重調和方程式などがあることを紹介した。その中で、重調和方程式の解は天下り的に与える形でしか紹介しなかった。今回は、重調和方程式の一般解を紹介する。  Wikipediaによれば、このような2次元極座標の重調和方程式の一般解はミッシェル解と呼ばれるらしい。  単純に見えるコンクリートの割裂引張試験の裏にこれほどの理論的な話があるのは驚くべきことだと思う。 1.2次元の極座標の重調和方

    • 構造力学メモ(その8) コンクリートの割裂引張試験の理論と導出

       コンクリートは、圧縮に強く、引張に弱い材料である。その引張の強度を測定するための試験に割裂引張試験というものがある。  コンクリートの円柱供試体を側面から押すことで、コンクリート内部に引張応力を発生させ、引張破壊し引張の強度を測定するものである。  この試験法では、以下の式によってコンクリートの引張強度を求めることができる。 $$ \sigma_t=\frac{2P}{\pi D L} $$  この式の導出は、あまり教科書に載っていない。というのも、それなりに弾性体力

      • 構造力学メモ(その7)せん断ひずみエネルギー説とミーゼスの降伏条件

         前回は、最大せん断応力とトレスカの降伏条件について紹介した。トレスカの降伏条件は、材料内の最大せん断応力がある値になると材料が破壊(降伏)するという分かりやすいものであった。  しかし、ミーゼスの降伏条件は、八面せん断応力やミーゼス応力がある値に達すると材料が破壊(降伏)するというもので、イメージがわきづらい気がする。  八面せん断応力がある値に達すると破壊するというのは分かりやすい気もするが、八面せん断応力は最大せん断応力よりも小さいので、先に最大せん断応力が限界に達し

        • 構造力学メモ(その6) 最大せん断応力

           前回は、八面せん断応力とミーゼス応力に深い関係があることについて紹介した。八面せん断応力と合わせて、もう一つ重要なせん断応力である最大せん断応力についても確認していきたいと思う。 1.任意の面のせん断応力ベクトルを主応力で表す。  前回と同じく、主応力の方向を$${x,y,z}$$軸とした座標軸を考える。  主方向を$${x,y,z}$$軸とするとき法線ベクトル$${\bm n=(n_1,n_2,n_3)}$$に垂直な面の応力ベクトルは、以下のように応力テンソルと法線

        構造力学メモ(その9)2次元極座標の重調和方程式の一般解

        • 構造力学メモ(その8) コンクリートの割裂引張試験の理論と導出

        • 構造力学メモ(その7)せん断ひずみエネルギー説とミーゼスの降伏条件

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          構造力学メモ(その5) 八面せん断応力とミーゼス応力

           主応力や、合成応力などとの関連から、ミーゼス応力について慣れ親しんできたと思うが、いまいち、ミーゼス応力とは何なのか、まだイメージしづらいかもしれない。  そこで、八面せん断応力というものを考えて、その量とミーゼス応力の関連が深いことを見ていこう。 1.主応力の方向で考える  まず、ある応力状態について、これまでやったように主応力とその方向(主方向)を求めたあとを考える。主応力は、以前紹介したように、偏差応力の第二不変量と第三不変量、平均応力から求めることができる。主応

          構造力学メモ(その5) 八面せん断応力とミーゼス応力

          構造力学メモ(その4) 高校数学と偏差応力の第二不変量とミーゼス応力

           今回の話題は、構造力学とはあまり関係ない。  偏差応力の第二不変量の式から、よく見かける形式に変形する際に1度すべて展開して頑張って計算していたが、もう少し楽に式変形してみる。  3変数の展開式をふんだんに使うので、高校数学の式変形の演習として良さそうではある。 1.偏差応力の第二不変量 偏差応力の第二不変量は、以前紹介したとおりである。 偏差応力の第二不変量$${J_2}$$は、以下のように計算される。 $$  J_2 =\dfrac{1}{2}\sum_i\su

          構造力学メモ(その4) 高校数学と偏差応力の第二不変量とミーゼス応力

          構造力学メモ(その3) 道路橋示方書の合成応力の照査とミーゼス応力

           道路橋示方書(H24)の鋼橋編では、垂直応力だけでなく、せん断応力とその両者を合成した応力についても照査することになっている。  例えば、横桁などのついていない主桁の場合は、曲げによる垂直応力とせん断力によるせん断応力によって、以下の式で照査を行う。 $${\sigma_b}$$:作用する垂直応力(曲げによって発生する垂直応力) $${\sigma_a}$$:垂直応力の許容値 $${\tau_b}$$:作用するせん断応力(せん断力によって発生するせん断応力) $${\ta

          構造力学メモ(その3) 道路橋示方書の合成応力の照査とミーゼス応力

          構造力学メモ(その2) 3次方程式をちゃんと解いて主応力を求める

          前回の記事では、3次元の主応力を求めるために3次の固有値方程式をコサインの3倍角の公式を使って解いたが、ちゃんとした方法?であるカルダノ・タルタリアの方法で解いてみる。 1.解くべき3次方程式前回と同様に、偏差応力の固有値を求める。 $$ [s_{ij}]=[\sigma_{ij}-\sigma_m\delta_{ij}]= \begin{bmatrix} s_{xx} & s_{xy} & s_{xz} \\ s_{yx} & s_{yy} & s_{yz}\\ s_{

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          構造力学メモ(その1) 3次元の主応力とミーゼス応力

          1.はじめに2次元の主応力は2次方程式を解けばいいので、だいたいどの弾性体力学や材料力学の教科書にも載っているが、3次元の主応力は3次方程式を解かないといけないので、教科書には載っていないことが多い。 しかし、3次元の主応力を求めると、実は3次元の主応力は平均応力と偏差応力の第二不変量(≒ミーゼス応力≒八面せん断応力)で表されることが分かり、3次元の主応力とミーゼス応力に関係が深いことが分かる。 そもそも、単純に3次元の主応力がどうなるのか、教科書やネット上にあまり出てこ

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          TMT(Time is Money Theory)の提唱(その2)~無人島生活モデル〜

          1.はじめに前回提唱したTime is Money Theoryを説明するために無人島生活モデルを考えてみる。 この無人島生活モデルによって、次の4つのことの説明を試みてみる。 ①人々は、生存するために衣食住の確保を必要とする=人々の生存のために衣食住の需要が発生する。 ②人々は労働時間を交換すること=役割分担をすることで、より多くのものを得ることができる=生産性が向上する。 ③貨幣=労働時間を導入することで、労働時間の量に応じて生産物を分配することができる。さらに労

          TMT(Time is Money Theory)の提唱(その2)~無人島生活モデル〜

          TMT(Time is Money Theory)の提唱(その1)~労働時間交換仮説〜

          0. TMT(Time is Money Theory)とは何か。この記事の内容は、一言で表すと「Time is money = 時は金なり」である。貨幣の価値は、何に基づくのか、その答えは古くからあることわざにすでにヒントがあったのではないか。つまり貨幣というのは、時間を買えるから価値がある。それが私が提唱する珍説…もとい仮説の労働時間交換仮説である。今話題のMMTを意識して、またことわざをヒントにしたことを忘れないように「Time is Money Theory」と呼ぶこ

          TMT(Time is Money Theory)の提唱(その1)~労働時間交換仮説〜