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桜庭一樹『少女には向かない職業』(創元推理文庫)

 中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。

 このショッキングな書き出しから始まる物語は、ミステリでありながら青春小説でもある。そしてジャンルは、ガール・ミーツ・ガールだ。
 主人公であり、小説の語り手でもある「大西葵」は学校では友だちにひょうきんにふるまっているが、家庭では義父の暴力と実母の無関心に心を痛めている。そんな葵は、中学二年生の夏休み、学校では眼鏡をかけたおとなしいクラスメイトの「宮乃下静香」が学校以外ではゴシックロリータに身を包んだミステリ好きの少女だと知る。

 舞台は山口県下関市の沖合の島。少女二人を包んでいる閉塞感。とても残念なことに、ストーリーは書き出しのまま進む。読んでいてとても苦しい気持ちになる。ただ、二人の少女はどこか明るく、そしてどこか愚かだ。それが魅力的にまぶしく感じられるがゆえに、不幸になってほしくない、と念じつつもやはり悲劇に陥ってくる。

 この本も中学生や高校生のときに読んでいたら、ある人によっては人生の宝物のような一冊になっていたと思う。「リアリティがない」と断じるのは簡単だけど、「中学生のリアリティってこんなもんじゃない」という問いかけでもあるだろう。
 こういう「少女の語り口」で描かれる小説は「ちょっとすべってるなあ」と感じてしまうことがあるけど、桜庭一樹の「少女口調」にはすばらしいものがあった。


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