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『午後三時にビールを』中央公論新社編(中公文庫)

 完全にタイトルに惹かれて購入した「酒場作品集」。「作品」と銘打っているようにほぼ小説は載っておらず、エッセイ、随筆、短文が大部分を占めている。
 とにかく執筆メンバーがすごく、自分が知っているだけでも、萩原朔太郎、井伏鱒二、大岡昇平、太宰治、坂口安吾、檀一雄、久世光彦、小沼丹、内田百閒、池波正太郎、吉村昭、開高健、向田邦子、安西水丸、田中小実昌、中上健次、島田雅彦、吉田健一、野坂昭如、倉橋由美子、と、名だたる文豪、文士、作家、エッセイストがずらずら。一つ前のエッセイに登場人物として現れた作家が、次の随筆では執筆者になっているときがあり、一瞬、「なんだこれメタ構造か?」と変な気分に襲われた。
 内容はいい意味で「ない」と言っていい。ただただ、酒にまつわる話がいつまでも続き、話が終わるたびにうたかたに消えていく、そんな、梯子酒を無限にくりかえすような酩酊感が心地よかった。心に残った一文は島田雅彦の、

「グラスに注いだビールの泡が消えて行けば、
 それは死者が飲んだ証拠である」

 不思議と酒を飲みながら読む気にならなかった。ひょっとすると、お酒をたしなまない人が読むと、ちょっとしたほろ酔い気分になれるかもしれない。


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