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梨木香歩『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)

 西の魔女、まいは祖母のことをそう呼んでいた。その祖母が死んだという知らせが入る。まいはママの運転する車に乗って、祖母の家に向かう。車中で回想するのは、二年前に祖母と二人で暮らした一か月余りの日々だった。

 すごくミニマムな小説。舞台もほぼ西の魔女の家とその周辺だし、登場人物も、語り手のまい、まいの祖母、母、父、それに家の近所の老人しか出てこない。

 長篇というより中篇のページ数なのだが、不思議に小説内の時間がゆっくり流れている印象。確かにこれは小学生のときに読んでほしい一冊ではあると思う。

 ちなみに、併録されている「渡りの一日」も、読後感のすこぶるいい短篇小説でした。こんなふうにくっきり引き締まった短篇が書けるのならば、やはり「西の魔女が死んだ」のすべてをどこか曖昧に描いている文章はわざとなのだろうな。


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