保安規程と消防法の関係(LPガスの場合)
都市ガス事業については許認可官庁は経済産業省ですが、LPガス(販売)事業については、許認可権限下部委任されている関係で、自治体(主に都道府県、政令指定都市)が認可する案件となります。
消防法は所管官庁は総務省なので、官庁立場的には、許認可権限に係わる経済産業省の法律が上位となります。
関係部局等に問合せした際、「消防法に合格した設備なので問題ない」という言葉を何度なく聞かされましたが、上位の法律が存在する以上、消防法に合格した設備であっても「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」の規定に合致する必要があります
つまり、「消防法」は設備単体(構造、仕様等)、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」は事業者としての対応全般の在り方を規定しているとみることができます。
「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(いわゆるLPガス事業法)では、保安業務を行う義務、保安業務規程の認可について、それぞれ第二十七条、三十五条にて定めています。
保安に関することなので、一般論として広義な解釈が可能となります。テロ対策上の設備不備、不審者侵入対策設備不備、通学路への配慮不備、住宅地に設置する場合の保安上の配慮不備等(いわゆる特殊事情等)を想定する必要があるということです。
上記保安業務に係わる記述から、消防法は、保安(設備の運営管理全般)について定めた法律ではないことがわかります。
以上から、LPガス設備に関しては「消防法に合格した設備なので問題ない」という解釈は完璧ではなく、消防法の検査に合格しかつ「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」の保安等に関する規定に合致する必要があると言う趣旨で説明とすべきとなります。
ちなみに、電気事業において保安規定は、許認可官庁(経済産業省)との対応において、法律の世界で言うと憲法なみの位置づけとなります。電力会社において、保安規程は、設備関連の最上位の社内規則です。LPガス事業者の場合も当然そうなっているはずです。しかし、LPガス事業者の中には、その趣旨が理解されず徹底されていない企業が存在します。
LPガス事業において、「消防法に合格した設備なので問題ない」などとする解釈は、LPガス事業法の保安規程の要求事項を知らないか見落としによる解釈と考えざるを得ません。
そして、当然のことですが、LPガス事業法にて保安規程条項が存在している関係で、LPガスタンクの所有者が誰なのか、不明確な状態であることは、一般消費者等の立場からみて「LPガス事業における保安上の重大な問題」、「公衆安全維持・確保上の重大問題」として扱われることとなります。
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