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活き活きと働いている?いや、ちょっと違う…? 〜伊那食品工業を訪問して #4〜

今回は、伊那食品工業の社員の方たちの働きぶりについて書いてみたいと思います。

私がまだ結婚前の若い頃、当時所属していた組織は閉塞感満載でした。
若手社員が次々と辞めていく…。
そんな環境で働いしてるうちに、人が活き活きと働くにはどうしたら良いんだろう?という問いが生まれ、そこから20年近くこの問いと向き合い、自分なりに探求を続けて来ました。

しかし、実際に社員の方と会話を交わす中で、こう言ってしまったら誤解を招くかもしれませんが、この会社においては「活き活きと働く」という表現が相応しいのだろうか…と感じたのが正直なところでした。

もしかすると、私の中での「活き活きと働く」のイメージが偏り過ぎていたのかもしれません。

私がこれまでの会社人生の中で、一番活き活きと働いたのは、まだ20代後半のある時期。
その頃は土日が勿体ないと感じるほど仕事が楽しく、毎日テンション高く仕事に向かっていました。
営業だった私は成績も順調に上げ、目標数値は軽々クリア、みたいな状態でした。

しかし、実際に伊那食品工業の社員の方々にお会いすると、どう表現したらよいでしょうか…まず、少なくともそんなにテンションは高くない(笑)。

自分自身の経験もあり、恐らく私の中で、「活き活きと働く」=テンション高く勢いよく仕事に向かっている状態、というイメージがいつのまにか出来上がってしまったようです。

伊那食品工業の場合、どういう言葉で表現するのが相応しいのかちょっと悩みますが、まず前提として皆さん落ち着いていますし、仕事に対して実直に向かっている印象を受けました。

仕事の楽しさをじっくり味わっている。そんな感じです。

恐らく、数値目標(会社から言い渡された目標)がこの会社には無い、という点がそんな働き方を生む理由ではないかと思いました。

多くの日本企業では、自分の意志とは関係なく数値目標を一方的に言い渡され、その達成に向かって邁進する(邁進させられる)ケースが多いでしょう。

自分の経験(逆に活き活きと働いていないときの経験)と照らし合わせて考えると、何かに追いかけられていない状態(つまり目標を押し付けられていない状態)というのは極めて健全な状態だなと感じます(端的に言えば、やらされ感が全くない状態)。

また、年功序列と終身雇用という雇用制度も、伊那食品工業の社員の方たちの働き方に大きな影響を与えていると考えられます。

出世競争する必要がないし、目標未達が続いて自分の立場が危うくなる、のような心配をする必要もない。

安心感を持って働けることが、テンション上げてまで働く必要性を生まないのだろうなと思いました。(たまたまお会いしなかっただけで、伊那食品工業にもテンション高く働いていらっしゃる方も当然いると思います。)

どちらかというと伊那食品工業の社員の方たちの働きぶりは、「活き活きと」というよりは「のびのびと」という表現の方が相応しいかもしれないなと感じました。

少し話が変わりますが、先日、以下の記事にたまたま触れる機会がありました。

この記事によると、『国内2万人に対するアンケート調査の結果、所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていることを明らかにしました。』とあります。

これは、伊那食品工業の社員の方々がが「のびのびと」働くことができているひとつの理由になっているのでは、と感じました。

伊那食品工業では、会社から与えられる目標は無いけれども、社員ひとりひとりが自分で自分の目標を設定しています。

また、毎朝の清掃活動につても、自分がどこで何をやるかは自分で決めていますし、毎年行われる社員旅行も、チームで話し合って自分たちで行き先や旅程を決めていると言っていました。

あらゆる場面で自己決定を行っている様子が伺えますし、会社は意図的にそういう場面を作り出しているのです。

その結果、社員に幸福感をもたらすと同時に、社員の成長をも促し、そして最終的には会社全体の成長にもつながる。正に好循環をもたらしています。

単に、「活き活きと働こう」と掛け声だけをかけている会社とは大きな違いです。

伊那食品工業においては、すべての施策が非常に練られており、有機的に結びついています。

そして塚越最高顧問が社長の時代から、それら施策は脈々と徹底的に行われ続けているのです。

つまるところ、「活き活き」であろうが「のびのび」であろうが、働きぶりの表現なんでどうでもよいのです。

やはり肝心なのは「社員が幸せに働いているかどうか」を掛け声だけでなく、経営の根幹に据え、それを実践しているかどうか。これに尽きると思います。

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