堀栄三の『敵軍戦法早わかり』
『マッカーサー参謀』
あまりに米軍の上陸日程を当てるため、日本軍内でそう呼ばれていました。
また、戦史に残る戦いの立役者でもありました。
ペリリューの戦いと硫黄島の戦いは、堀の分析から今までの戦い方を変えたといいます。
「鉄量戦略」という指標(鉄量を破るものは、鉄量以外にない。)を立て、その相手の鉄量が及ばない戦法をレクチヤーしました。
三つの柱があり、
1 海からの鑑砲射撃が効果を発揮しない、島の中央部等に防御陣地をつくる。
2 米軍への水際攻撃を避ける。
3 基地防護壁は、敵戦艦の主砲に耐えるコンクリート厚2.5メートル。
というようなものでした。
このレクチヤーの結果、1994年9月以降のペリリュー島での戦闘以降、日本軍は、内陸部に堅陣を設けることになり、米国を悩ますことになったのです。
中川州男大佐や栗林忠道中将という名将が生まれたのも、このレクチヤーのおかげだといえます。
このレクチヤーが書かれた冊子を「敵軍戦法早わかり」(なんていいネーミング(°∀°)b )といい、堀は、この冊子を印刷し、配布していったといいます。
ここで、Wikipediaから転載します。
『1943年(昭和18年)4月から陸軍士官学校戦術教官。
同年10月1日から大本営陸軍部第2部参謀として、アメリカ軍戦法の研究に取り組み、その上陸作戦行動を科学的に分析して
1944年(昭和19年)6月に
『敵軍戦法早わかり』
を完成させ、米軍への水際での突撃や夜間の銃剣突撃は自滅するので行わないようにという内容を伝達した。
(内容自体の伝達は、同年3月16日から始めている。)
この内容を最初に伝達した師団に、ペリリューの戦いで有名な中川州男がいた。
なお、この『敵軍戦法早わかり』が伝達されるまでは、中国戦線での戦訓に基づいて米軍との戦いを行っており、士気が非常に低く突撃によって逃げ出す相手に対する戦い方をとる事で日本軍の損害が非常に増えていた側面もある。
この資料の完成後は、硫黄島の戦い及び沖縄戦に代表されるように米軍の被害は増加することになる。
なお、サイパンの戦いには内容の教授に間に合わなかったと記録に残している。
なお、『敵軍戦法早わかり』以降、大本営内部で意見の調整が行われ、各師団に戦略を説明するときに同時に現地情勢及び相手の戦闘方法の情報についても伝達するように切り替わった。』
堀は、台湾沖航空戦の大本営の大誤報発表も、見抜いて、適格な判断しています。
『同月19日には、憲兵隊から、撃墜した米軍艦載機のパイロットを尋問した結果、ルソン島を空襲中の米軍正規空母が12隻であること、その艦名が全て判明したことが報じられた。
大本営海軍部(陸軍部にあらず)の発表した台湾沖航空戦の戦果は全くの誤りで、堀が大本営陸軍部第二部長に打電し、山下大将に説明した通りであったことが明らかになった。
次に述べる第14方面軍時代もそうだったが、結果として堀の予想は正確であることが多かった。
しかし、世の中には堀がどうしてそのような正確な予想が出来たのか、著述物だけでは納得しない研究者がいる。
戦史叢書の編纂経験がある近藤新治は奈良県の堀宅を訪ね、この点について突っ込んだ質問を行い、次のような答えを得た。
堀さんがなぜ当てたんだろうという疑問を持ちまして、ところが 『回想録』 なんかには全然そういうものは載ってないんですね。
(中略)それでインタビューでずばりいったんです。
どうしてあれだけの的確性というか、正確性が出たんですかといったら、堀さんは、そんなことはわけないことなんだというんです。
十四方面軍の情報部に下士官だけで十名ぐらいいて、将校が三名かな、毎日毎日、ともかく基礎的な情報をざーっと書かして、積み上げていった。
例えば、台湾沖航空戦の戦果判定についても、すぐに堀さんは疑問を出すんです。
山下奉文と武藤章に対して、危ないですよという。
そんなことをおっしゃったのは、何を根拠にといったら、こういうことをいっていました。
直後の空襲で捕まえた各米軍のパイロットの尋問をして、発艦した母艦名を尋問をして並べてみたら、全部そろったというわけですね。
これはおかしいじゃないか。
ピンピンしているじゃないかということで(中略)果たして、マッカーサーの回し者ではなかったんで、まさに正攻法でやった方でございましたね。』
正攻法の発表されている情報だけで、マッカーサーの上陸予想日や敵の戦力や戦略や仲間内の誤報を見抜いて、すべて適格な判断をしたという有名な人です。
ラジオ放送から、タラワの戦いの米軍の投入した火力の物量を正確に計算したといいます。
これらのことから、得られる教訓は、既にある情報を活用して、分析するだけで、かなり効率な適格な判断や予測ができるということです。
この人は、戦争前半は、学生だったので、戦争後半に情報将校として、いきなり活躍したとのことです。
それが実に惜しまれますね。