閻魔大王の娘は推理ゲームがお好き。/木本哉多「閻魔堂沙羅の推理奇譚」
生き返りを賭けた推理ゲーム、10分間で「自分を殺した」犯人を推理せよ。
「閻魔堂沙羅の推理奇譚」は、木本哉多さんのメフィスト賞受賞作にしてデビュー作です。
突如殺人事件の被害者となって死んでしまった人々がやって来るのは、閻魔大王の娘・沙羅という少女がいる部屋。まだ生きていたい、という被害者たちに、沙羅はとある推理ゲームを持ちかけます。それは、「犯人が分かれば生き返れるが、分からなければ地獄行き」というもの。制限時間は10分。頼れるのは、死ぬ間際の自分の記憶だけ。文字通り命を賭けた推理ゲームを描く、連作短編集です。
この本はこんな人におすすめ
①変わった推理小説が読みたい
②個性的な登場人物が好き
③ダークな小説が好き
それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!
*被害者=探偵役の小説
本作は、一般的なミステリー小説では序盤でお役御免になる「被害者」たちを、「探偵役」として活躍させる一風変わった小説です。
被害者たちは、殺される直前の自分の記憶だけを頼りに犯人を導き出していきます。
どれも殺人事件を扱っていますが、ライトに読める物語ばかりです。また、事件が起こるシーンから沙羅に出会うシーン、そして推理を披露するシーンという展開になっているので、読者も、事件が起こるシーンを読み返しながら推理に参加することができます。
*閻魔堂沙羅
本作のメインキャラクターである沙羅は、閻魔大王の娘です。
彼女は、多忙な閻魔大王に代わって、死んだ人に地獄行きか天国行きかの審判を下します。血のように赤いマントを纏った美少女で、閻魔大王の娘らしく、冷たく気まぐれな一面も。
しかし、なんだかんだ言いつつも殺されてしまった被害者たちに情をかけ、謎解きゲームを持ちかけます。どこか憎めないキャラクターで、私はとても好きでした。
人って死んだらどうなるんだろう、と、誰でも一度は考えたことがあるかと思いますが、審判を下すのが閻魔大王の娘かもしれない、なんて驚きです。シリーズ作品なので、長く楽しむことができる所も魅力となっています。
あの世とこの世の狭間で繰り広げられる、生き返りを賭けた謎解きゲーム。読み終わる頃には、あなたも沙羅のファンになっていること間違いなしです、ぴょん!
(2021年7月11日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)