「お探し物は、本?それとも人生?」/青山美智子「お探し物は図書室まで」
一歩前進する勇気をくれる、ほっこりあったかな連作短編集。
「お探し物は図書室まで」は、青山美智子さんの本屋大賞ノミネート作です。
人生に迷う人々が訪れる図書室。そこでは、狭いカウンターの中でちまちまと羊毛フェルトを作っている司書さんが、ぴったりの本をレファレンスをしてくれます。利用者からの話を聞いた司書さんは、少し変わった本をおすすめしてくれるうえ、さらに「本の付録」と言って羊毛フェルトを渡してくれるのです。そのモチーフが、人生の迷い人たちにとって何を意味するのか。明日への元気をくれる連作短編集です。
この本はこんな人におすすめ
①そっと背中を押してくれる小説が読みたい
②明日への活力を充電したい
③図書室が好き、もしくは好きだった
それでは、この作品の魅力をご紹介していこうと思います、ぴょん!
*優しい司書さんの物語
図書室でレファレンスをしてくれる司書さんは、大きな体を狭いカウンターに押し込めるようにして座り、せっせと羊毛フェルトを作っています。
羊毛フェルトとは、綿のようなふわふわのフェルトを、針で刺して固めていき、様々なモチーフを作る手芸のひとつです。
司書さんは、絵本や図鑑、詩集など、自分の選んだ本の「付録」として羊毛フェルトを渡してくれます。それらが、図書室の利用者の背中を押すきっかけになることも。
読み進めていくうちに、私にもレファレンスしてほしい、と思ってしまいました。
*はっとさせられる言葉の数々
いつも、「こうさぎの読書日記」では、冒頭で本の中の一節を引用するのですが、今回はキャッチコピーにさせていただきました。
その理由は、「引用したい言葉が多すぎたから」です……!
登場人物どうしのちょっとした会話や、主人公の何気ない心理描写の中にも、共感したり思わずはっとさせられるような言葉が散りばめられています。ストーリーだけでなく、そんなあたたかい言葉の数々にも元気づけられます。
是非、宝探しをするように、自分の心にぴったりはまる一節を探してみてください。
自分の迷いや悩み、葛藤をそっと肯定してくれて、迷路を抜けるヒントをくれる本作。優しいハートウォーミング小説となっていますので、是非読んでみてください、ぴょん!
(2021年8月14日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)
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