見出し画像

世界をひっくり返す連作短編/伊坂幸太郎「逆ソクラテス」

踏み出さなければリスクは少ない。けれど、得たいものも得られない。
一歩、前に!

「逆ソクラテス」は、伊坂幸太郎さんの作家生活20年を記念する作品であり、本屋大賞ノミネート作です。伊坂幸太郎さんといえば、「砂漠」や「重力ピエロ」、「ゴールデンスランバー」など数々の人気作を出版している作家さんであり、特に連作短編集はどれも魅力的です。

本作は、伊坂幸太郎さんにしては珍しい、「全ての短編の主人公が小学生」という連作短編集です。
「逆ソクラテス」
「スロウではない」
「非オプティマス」
「アンスポーツマンライク」
「逆ワシントン」
以上五編が収録さており、どれも等身大の小学生の姿と、非日常な出来事が描かれています。

この本はこんな人におすすめ

①子供が好き
②「良い大人」について問い直したい
③読後感の良い小説を読みたい

それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*小学生が主人公の小説

本作の短編は、全て小学生が主人公になっています。小学生にとっての世界は、どうしても学校という閉じた空間だけになってしまいがちです。教師という立場の人が言うことは絶対的で、そう簡単には覆すことが出来ない。その中で感じる理不尽や、自分の小ささ、臆病さが、小学生の目線から等身大に綴られています。そして、登場人物たちが自分なりの一歩を踏み出し、「世界をひっくり返す」瞬間は、痛快です。

登場人物もそれぞれ魅力的で、台詞の応酬も軽快で面白く、必要以上に背伸びをした表現がないところも、とてもリアルでした。
また、登場人物が所々リンクしているのも見所です。

*小学生の目線から語られる「大人」

小学生の頃は、ひとつふたつ年が上な人であっても、遥かに大人に見えた気がします。話す言葉、立ち居振る舞いの何もかもが自分と違って、憧れの念すら抱きました。そして、テレビの中のタレントさんや、身の回りの大人を見て、「自分もあんなふうになりたい」と思ったもの。

では、今現在、実際の自分はどうでしょうか。かつて憧れた人の姿に近付いているのかどうか。本作を読むと、改めて「大人とは何か」を考えることができます。

個人的に、「こんな先生いるよね。」「こういうクラスメイトって絶対に一人はいるよな。」など、共感する部分がいくつもありました。かつて小学生だった全ての人に薦めたい作品です。
また、私は伊坂さんの書くスポーツの場面が好きなのですが、今回もバスケのシーンの臨場感にわくわくしました。まるで映像を見ているかのような、生き生きとした躍動感のある描写なので、是非そこにも注目して読んでみて下さい、ぴょん!

あなたも、本作を読んで、小学生たちの生き生きとした日常をのぞいてみませんか?


(2021年6月6日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?