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現代版「罪と罰」/東野圭吾「白鳥とコウモリ」

このまま二人でどこかへ消え去れたなら、どんなにいいだろう、と思った。


「白鳥とコウモリ」は、大人気作家・東野圭吾さんの作家40周年を記念して幻冬舎から出版された長編小説です。

とある弁護士が殺害された事件から、物語は幕を開けます。捜査が進む中、ひとりの男が犯行を自供。殺害の動機は、かつて自身が犯し、既に時効を迎えた過去の殺人を、隠蔽するためでした。しかも、その事件は被疑者が自殺をしたことで幕を下ろした、警察の汚点とも言える案件。世間に衝撃が走る中、弁護士殺害の事件は解決したかに思われます。しかし、その陰で戸惑い、悩み、真実を知りたいと願う人物がいました。それは、加害者の息子と、被害者の娘で……。冤罪、裁判、時効、罪、罰、加害者、被害者。作者自身が「今後の目標はこの作品を超えること」と語る、長編小説です。

この本はこんな人におすすめ

①冤罪、加害者家族について考えたい
②じっくり読む小説が好き
③東野圭吾作品が好き、あるいは読みたい

それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*圧倒的な重厚感

本作は、過去と現在、ふたつの殺人事件を扱った長編小説です。文庫化するときは上下巻に分かれるのでは……? というほどの分厚さに、最初は尻込みしていました。でも、一度ページを開いたら、たちまち読み進めてしまう小説です。次はどうなるんだろう、とページをめくる手が止まらない徹夜本です。また、冤罪、時効、加害者家族など、様々なテーマを含んだストーリーとなっているので、司法について、犯罪について、色々と考えさせられるような1冊となっています。人気作家・東野圭吾さんの作家生活40年の集大成に相応しい作品です。

*現代版「罪と罰」

本作品のいちばんのテーマは、殺人という「罪」の重さと、それに対する「罰」。また、加害者家族の男性と被害者家族の女性が出会うことから、「ロミオとジュリエット」のような印象も受けました。様々な人物が登場し、語り手の目線も変わるため、小説を読み慣れていないと難しく感じてしまうかもしれません。私は、新たな展開をする度に頭の中で相関図を作りながら読み進めていました。いたるところに名言続出なので、メモを取ったりして、色々な考察を巡らせながら読むのもおすすめです。ひとつの作品について深く考えたい人に、ぴったりな作品だと思います。

タイトルの「白鳥とコウモリ」が何を表すのか。過去の殺人から、現在の殺人にまたがる「罪」とは。それに与えられた「罰」とは。本作品を読んで、ぜひ確かめてみてください、ぴょん!


(2022年2月27日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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