死者の言葉を聴く最後の手段/知念実希人「傷痕のメッセージ」
「傷痕のメッセージ」は、知念実希人さんの病理学がテーマの小説です。
知念実希人さんといえば、医療小説を数多く出版する作家さんであり、現役のお医者さんでもあります。「ムゲンのi」や「ひとつむぎの手」は、本屋大賞にもノミネートされました。
本作の主人公は、外科から病理診断科に出向している千早という女医です。彼女の指導医は、同級生だった病理医の紫織。外科と比べると遥かにのんびりした雰囲気の病理診断科に、千早はやや退屈な日々を送っていました。そんなある日、千早の父親が癌で亡くなり