「日本の物流問題」読み始めた。「人や物の輸送」という営為について、我々はどれだけのことを知っているか。/駅の時刻表とスマホ

3月20日(水)雪

今日は春分の日なのだが、朝から軽く雪が降っている。今の気温は0.5度なので路面が凍結するとかはないと思うが、今日は松本から帰ってきてから墓参りに行こうと思っていたのでちょっとその辺りをどうするかなという感じ。うちのお墓は山のほうにあるので道が斜面で滑りやすく、以前転んで筋を伸ばしてしばらく足を引きずっていたことがあり、足元の状態が問題である。無理そうなら無理はしないようにしようと思うが、「暑さ寒さも彼岸まで」という気候に関する格言もまた、どうにもへんな感じになってきている。地球が本当に温暖化しているのかと言うこともあるが、変になってきていることは確かだと思う。

昨日はいろいろごたごたしていたが、水曜が休みなのでマガジンなどが火曜日に出ることを忘れていて昼前に出かけて職場で仕事の話をしたり駅に改正されたJRの時刻表を取りに行ったり。なんと今回の改正からは時刻表が駅でも配られなくなり、スマホで調べろと言うことになっていた。スマホとそう言うものの便利さは別だし、スマホを忘れたら何もできないと言うのがどんどん加速することはちょっとまずいのではないかと思う。だいたいスマホ自体そんなに安いものではないのだから。またそれならばそれとして駅のWiFiなどももっと充実させるとか、やることはあるのではないかという気もした。

銀行で記帳して資金の状況を掴み、書店に行ってマガジンとチャンピオンREDを買った。スーパーでお昼の買い物をして帰宅。


月曜日に買った野口智雄「日本の物流問題」(ちくま新書、2024)読み始めた。まだ序章の途中と内容をパラパラ読んだ程度だが、日本の経済問題と労働問題、社会問題の矛盾が集中したような状態になっているのだなというのがとりあえずの感想。

物流業界というのはもともと道路運送法により免許制だったために新規参入が難しい規制に守られた業界だったのが規制緩和が進んだために参入が激しくなり、そのために運賃のダンピングが起こって賃金もカットされたために業界がブラック化した、ということが元凶のようだ。要は規制緩和のネオリベ路線が招いた落とし穴だったということなんだろう。

「物流の24年問題」というのは、残業規制でドライバーは稼げなくなるし会社はドライバー不足で経営が厳しくなるしどちらも困るのだが、夜行高速バスの転落事故の発生など運転手の過重労働による事故多発に業を煮やした国、厚生労働省がいわば強権的に推進している(というか他の業界はもっと早くに実現している)ことらしく、ドライバーの待遇改善と適正運賃を実現できない会社はつぶれろという方針になっているのかなと思う。さまざまな問題があることはわかっているが、そこを敢えてやるしかないということになっているように思われる。確かにAmazonの運賃0円とかを考えると、慣れてしまっているから不思議に思わないけれども、考えてみたらかなりおかしいわけで、究極の運賃ダンピングがなされているわけだ。

現状、物流業界の労災による死傷者数は2022年を2012年と比べると20%近く増えているのだという。同じ時期に同じような3Kのイメージがある建設業界では15%近く減っているのだというから、物流業界の問題は大きいだろう。

これには荷主からの無償の荷役などの付帯業務の要求も多く、それも事故を誘発しているとのこと。規制緩和による過当競争が元凶ということになるのだろう。

私が感じた運輸業界の規制緩和がもたらした弊害と言えば、これは貨物ではないけれども「地元の地理を知らずカーナビも使えないタクシードライバー」がめちゃ増えた、ということが1990年代後半にあったことはよく覚えている。蒲田の駅でタクシー拾って池上本門寺まで、と言ったらどうやって行くんですかと聞かれたときにはずっこけた。以前は道がよくわからないところに行くときにとりあえずタクシーに乗って行き先を告げたら連れて行ってくれるという安心感があったが、それ以来そういう理由でタクシーに乗ることはあまりなくなったように思う。

ドライバーの大変さということで言えば、状況が常に流動的な一般道を走るトラックに対し、時間厳守が要求され、場合によっては1秒でも遅れたら遅延として運賃を割り引けという荷主がいるということもあるという。であるのに、先に到着したトラックの荷下ろしが終わらないために積み下ろしを待つ「荷待ち」の時間がかなり長く、平均でも1時間以上、場合によっては10時間もかかることもあるという。

高速を走っていると甲府の手前の境川PAとか松本の手前のみどり湖PAなどに大型トラックが数十台の規模でずっと停車していることがあるのだが、あれはおそらくは時間調整をしていると思うのだけど、JITで入れる時間を調整する場合もあると思うのだが、荷待ちの場合もあるのだろうか。

そのほか、基本給が以上に安く歩合給の割合が多いので残業しないと人並みの給料にならないという問題とか、ボーナスが出ないなどの問題もこの業界にはあるのだという。確かに残業前提で生活設計を立てている人にとって残業が規制されて一定以上の給料が期待できなくなったら他に転職する、という人は当然出てくるだろうなとは思った。

あと、なるほどと思ったのは日本は卸売業が発達しているために、白ナンバーのトラックで生産者から荷物を引き受け、それを自社の所有にした上で別の事業者まで運ぶことで卸売の利益を得ているから、運賃を得ているわけではないから白ハンバーで運べる、という部分がかなり大きいのだという。白ナンバーは緑ナンバーの営業車より規制が緩いから使いやすいわけで、そう言われれば輸送業者以外が実質的に輸送を担っている部分はかなり大きいのだなと思った。卸売業というのも一度その構造を研究してみたいと思った。

私も小売の店でバイトをしたことはあるので、卸売という存在がありがたいことはよくわかる。食料品など膨大な品種があるし生産者もまちまちだから、生産者に直接注文するなど全ては不可能なわけで、卸売業者に一括で注文すればかなりの品種が揃うというのはありがたいことだと思う。まあ欠品とかも結構あったりはするのだが。

輸送という業務に関しては流通業界と物流・運輸業界がそれぞれ仕事を分担しあっていて、それもトラックだけでなく鉄道や航空、船舶などの会社も関わってくるわけだから、輸送という行為の全体像はなかなか描ききれないことがあるだろうし、担当する省庁も経済産業省だけでなく国土交通省や労働に関しては厚生労働省、地方自治体に関連しては総務省なども関わってくるだろうし、この全体を見通すことはどこがやっているのか、ただそれが見えないと構造的な問題は解決していかないだろうなと思った。

例えばトラックドライバーは歩合制が多いといっても、卸売りの生産者から自社倉庫に運ぶドライバーや小売店を回る営業兼ドライバーは全然賃金体系が違うだろうし、同じように「車を運転して物を運ぶ」という仕事でも待遇もだいぶ変わってくるのだろうと思う。トラックドライバーの転職先はどういう仕事が多いのかとかも、関心はある。


少し先のところをパラパラ読んだのだが、日本で「物流」という言葉できたのは1960年代らしい。やはり道路網の整備が進み、トラック輸送が盛んになってから出てきた言葉なのだろうと思う。

日本でロジスティクスを専門に扱う学科がある大学は日本海洋大学だけだと聞いたことがあるのだが、著者は早稲田の教授のようで、これらを研究する学会というのもどういう構成になっているのか、興味深いところはあるなと思った。いずれにしても現代社会を文字通り「回している」のは人も物も輸送する人たちであるわけなので、この辺りのところにもっと関心を持ち、また健全な運営がなされるように見ていける人が一般にも増えることは大事なことなのだろうと思う。

輸送や物流というと、戦前の軍隊の補給やロジスティクスに対する軽視の話が思い出されるわけで、「輜重輸卒が兵隊ならば、蝶々トンボも鳥のうち」と言われたことなどが思い浮かぶ。車椅子の人を持ち上げて運ぶという話がちょうどネット上で議論を読んでいたが、「運ぶ」ということ自体が社会の本当に基礎になるインフラであるのに、それを無償でやらせるのが当然みたいな風潮がいつまで経っても消えないのは、その行為に対する認識不足があるのだろうなという気はする。

そんなことを考えた。

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