「ふつうの軽音部」の「リアルさ」とは:「本当は結構凄いのになかなか認められないもどかしさ」への共感
9月21日(土)曇り
今朝は朝から曇っているのだが、朝日が出る時にはすごい朝焼けになっていて、Twitterでもトレンドに上がっていたが、全国的にそういう感じの天気なのかなと思う。朝の気温は低くはないのだけどひんやりしていて、最高気温も低めだから、秋の気配はかなり色濃い。とは言え明日がもう彼岸の中日なので、流石にそういう季節だよなあと思ったりはする。
昨日は午前中に母を病院に連れて行き、疲れたので家に帰って昼食を摂った。というのは昨日の朝はブログを書いた後時間がなくなって朝ごはんを抜いたからなのだが、病院で母の点滴を待っている間にサンドイッチを買って食べたけど、どうも足りなかったようだった。
少し休んでから出かけて書店で「モブ子の恋」20巻を買う。この話もこんなに続くとは思わなかったが、逆に言えば自分が連載が長くなった作品の整理に困っているのもとりあえずは見る目があったからだよな、とは思ったりする。もちろんジャンプ作品はこちらが面白いと思っていても3巻で終了したりすることはザラで、私もそういう夢の跡みたいな作品はいくつも持っているが、それでも昔の「次にくるマンガ大賞」を調べていたら「背筋をピン!と」が1位になっている年があったりして、ジャンプというのは面白くても続くとは限らない過酷な環境なんだよなあと思う。
「ふつうの軽音部」のクワハリさんのポッドキャストのインタビューが面白かったので今検索して探していたら、ジャンププラスに移籍して連載開始当初のジャンプルーキーによるインタビューが出てきた。
https://rookie.shonenjump.com/info/entry/202404_blog
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このインタビューは読んだことがあるが、初めて読んだ時にはあまり印象に残らなかったけど今読むと色々と思うところがある、みたいな話が結構あって、連載が続く中でその魅力というか奥深さみたいな物が見えてくる感じがあり、そういう物だからこそ名作になりつつあるんだよなあと思う。
もう一つ出てきたのはananのインタビュー。
これも読んだことはあったが、「しょぼい戦い」という言葉が印象に残った。高校新入生女子がいきなり10万円のフェンダー・テレキャスターを買うところから物語が始まり、強キャラっぽい男子と最初から遭遇するのでもっと野心があるのかと思ったら全然そんなことはなくて、大人数の軽音部でどうやってバンドを組むのかさえ困ってしまう陰なキャラだが、ひょんなことから一人で爆唱(?)しているところを同じバンドの女子に聞かれ、そこから物語が展開していく。
エピソードのごとに「この子凄いな!」と感心させられるのだが周りの評価は少しずつしか上がっていかない、というか「凄いことに気がつかれていくペース」がまあ超ゆっくりしている。その辺がすぐに「シンデレラ・ガール」を取り上げがちな多くのマンガの中でとても異色で、「こいつが凄いということは俺だけが知っている」みたいなキャラがどんどん増えていくところがまたさらに面白い。そしてそう思われてることを主人公自身は全然気が付いていないので、そのギャップも常にとても面白い。
だから「しょぼい戦い」と言っても主人公自身は読者的には凄いのだが、争うのが「文化祭への出場権」だったり「後夜祭のトリに出演する権利」だったりするのがまあしょぼいということであって、スターダムに駆け上がるキラキラな賞ではないところがなんというかリアルだ、ということなんだろうと思う。
これはつまり、多くの人たちは自分は認められたい、うまくやりたいと思っているけどなかなかそうはうまくいかない、という思いを抱えているわけで、それが共通認識であるからこそ、「本当は結構凄いのになかなか認められないもどかしさ」みたいなものに共感し、「リアルだ」とか「ふつうだ」という高評価に結びつく、という非凡な作品なんだと思う。
というわけでようやく探していた「週刊マンガ獣」#103と#104がクワハリさんへのポッドキャストインタビューが見つかった。
103回がクワハリさんの生い立ちから連載が決まるまでの経緯、104回がどうやって「ふつうの軽音部」が生まれたのか、という内容なのだが、両方ともとても面白かった。
特にまず「大人数の軽音部」という舞台を決め、陰キャで自意識は強いけどあまりうまくない少女(鳩野ちひろ)を主人公に据えると決め、その対照として陽キャのメンバー(内田桃)を決め、そうなると最初から同じバンドでは不自然なので二人をむすぎつけるキャラ(幸山厘)を決め、というプロセスを踏んで概要が決まっていった、という話がとてもリアルで、なるほどなあととても感心させられた。
自分はエンタメ作品を書いたことがないからこのストーリー作法はかなり参考になったのだが、何か面白いネタを思いついたら書いてみたいなと思う。
またこのホストである吉川きっちょむさんも「漫画が語れる芸人」として仕事を作っているようで、なるほどこういうアプローチもあるのか、と思った。ちなみにこのかたは慶應高校・慶応法学部という学歴で、そういうところが鼻につかないように抑えて仕事をしている感じが割と納得できる感じがあるなあと思う。マンガ文化の発展のためにはこういう「紹介者」が必要だし、私たちが若い頃に洋楽を聴いていた頃、中村とうようさんや湯川れい子さん、渋谷陽一さんなどがそういう紹介者として活躍していたから、マンガにもそう言う存在があるといいなと思っていた。
もちろんそう言う人は今でもたくさんいるのだろうけど、自分と好きな物が一致する人はやはり貴重なわけで、吉川さんが紹介するものにもまた注目していきたいと思う。
イスラエルのベイルート攻撃とか外務副大臣の中国への派遣とか論じたいことはあるのだが、今日は時間がないのでここまでで。午前0時の「ふつうの軽音部」の更新が今から楽しみです。
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