なぜ経済成長が必要なのか/経済成長理論のシンプルな数式

2月3日(木)晴れ

今日は節分。ここのところ朝はそんなに冷え込んでいないが、乾燥している感じがする。そう言えばしばらく雨も雪もまとまっては降っていない。暖かくしても返って乾燥して気持ち悪い時があり、暖房の調整が難しいなと思うことが多い。

「資本主義の新しい形」

2-2経済学における非物質的展開 読み始めた。経済の実態の中での資本主義の変化についてこれまで読んできたけれども、ここからは経済の実態を記述する経済学がこの変化に対応してどのように変化しているのか、という話になるようだ。

今まで見てきたように資本主義経済の変化ということがテーマになっている原因の一つは「長期停滞」、つまりは「経済成長」が鈍化している、ないしは停滞しているという問題がある。資本主義経済は「成長」によって多くの利福を人々にもたらしているところがあるから、「成長」ができなくなるというのはかなり大きな問題ということになる。

左翼リベラル系の人々は「脱成長社会」「清貧の時代」「みんなで貧しくなろう」などと簡単にいうが、資本主義社会において成長が停滞するということは格差の拡大がさらに進み、貧しい人たちにとっては生死に関わる問題になる。昔ならそういう人たちの不満が爆発して革命が起こる、みたいな展開が予想できたわけだが、社会主義という壮大な実験が失敗に終わった後の世界では、単なる世界への呪詛のようなものになってしまう。実際のところ、社会主義がうまくいっていた時代というのは計画経済の名の下に経済成長がなされていた(実態は怪しいが)わけで、経済成長そのものを否定する思想はエコロジーの急進派でもなければなかなか唱えることはないのが現状だろう。

経済成長が止まったらどうなるか、それで社会を成り立たせるためにはどのようなことが考えられるか、ということはそれはそれで考察すればいいとは思うけれども、少なくとも現状は成長を止めることの弊害は相当大きいと思われ、(文化大革命やポルポト政権がやった「実験」はそういうことだろう)とりあえずは「経済成長は必要なものである」という前提で考えた方がいいと思う。この辺のところは例えば「そろそろ左派は経済を語ろう」「経済学という教養」などで啓発されたところは大きかった。

2-2-1ソローの新古典派成長モデルとその限界 では、新古典派の代表的な経済モデルであるロバート・ソロー(1924-)の「ソローモデル」が検討されている。私はこれは知らなかったので経済学というのはなんでも理論化するんだなと小学生並みの感想を持ったが、これはかなりシンプルなモデルで、「こういうのでいいんだ」みたいに思った。

Y=AF(K,L)

Yは生産水準、K、Lは投下された「資本」と「労働」の量、Aは技術進歩などを含む「全要素生産性」である。つまり、生産水準は資本と労働の投入量の関数F()であり、それに技術進歩を掛ければ生産水準が割り出せるという考え方だ。

もちろんこれには様々な変数が投入されてこのシンプルなモデルを発展させてきたということなのだけど、その基本になる式はこんなにシンプルなものなんだなと思った。

そして、限界効用の考え方から資本も労働も追加投入されるとやがて収穫は逓減し、成長は止まってしまう、ということになる。あとは技術進歩(イノベーション)頼み、ということになるのだろう。

しかしそれでは実際に起きている経済成長が説明しきれない、ということで「知識産業化」「非物質化」の側面からそのモデルを修正しようという考えが出てきたわけだ。

そうした人間の知的活動の側面を経済成長論に導入する(人的資本概念)という課題に答えて出てきたのが「新しい経済成長理論new growth theory」であるといい、それについてはこの先で語られていくことになるようだ。

またもう一つの課題として書かれている「無形資産」の理論への組み込みについてはどこで説明されているのか今のところわからない。

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経済成長のシンプルな数式について考えていたが、これは学力向上について私が考えている、「やり方さえ間違えなかったら学力はかけた時間に比例して伸びる」ということ(理論?)と結局は同じだなと思った。人間の考えることはそんなには違わないなと思う。しかし勉強していく中であれこれ迷ったり寄り道したりすることで学力が停滞したり逆に急速に伸びたりすることはあるように、経済成長も色々な理由で止まったり伸びたりするものだろうと思う。

その「いろいろな理由」が経営側の問題だったり労働者側の問題だったり制度上の問題だったりコロナのようなアクシデントであったりいろいろあるわけだけど、基本的に「問題を取り除けば経済は成長するはず」という考え方が新古典派的であるなあとは思った。リストラクチャリングもイノベーション重視の考えを前提にしないで進めるとただの人員削減になるわけだけど、経済政策担当者の背景にある成長理論はどういうものなのかということはちゃんと見ていかないといけないと思った。


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