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あらいぐまのハリー第2回

前回あらすじ(第1回 https://note.com/kourin1970/n/na067c985bcd7
も是非読んでね)
プラシノスの森に住むあらいぐまのハリーは釣りが大好きですが、長い冬の間は釣りができませんでした。春になりやっと楽しみにしていた釣りに出かけることになったハリー、心ウキウキ釣りを始めたら後ろに大きな熊が立っていました。
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ハリーはビックリして釣り竿を落としそうになりましたが、どうにか落ち着いて返事をしました。
「なにかご用ですか?」
熊はニッコリ微笑みながら
「ありがとう、お願いがあるんだ。君はいろいろ洗うのが得意だって話を聞いたんだけど?」
「はぁ、洗ってきれいにするのは好きだよ」
ハリーは目をパチクリさせながら答えました。
「そこでお願いなんだけど、頭の毛を洗ってくれないかなぁ。はちみつでベトベトでうまく取れないんだ」
熊はハリーに顔を近づけて恥ずかしそうに言いました。
よく見ると熊の髪の毛は、はちみつでベトベトなうえにグチャグチャにこんがらがって、落ち葉やら、木の実やら、虫がいっぱい付いていました。
「洗ってくれたら、これあげるよ」
と熊は持っていたカゴから大きなヤマメを差し出しました。
ハリーはちょっとおどおどしながら「いいよ。洗ってあげる」
「僕はハリー、君の名は?」
「おいらはボブ、よろしくね」
ハリーは釣り竿を片付け、道具をカゴに入れるとボブにこっちだよと森を指差しました。ハリーとボブは朝日の差し込む森の中をおしゃべりしながら歩いていました。
「ボブ、今年の冬は雪がとても多かったけど何してたの?」
「ず~と寝てたよ。熊は冬寝ているんだ」
「そうか寝てたのか。食事は?」
「寝る前にいっぱい食べておくんだよ。木の実、お魚そしてはちみつ・・・慌てていっぱい食べたんでこの始末さ」とボブはベトベトぐちゃぐちゃの髪の毛を指さしました。
ハリーはくすっと笑い「それで雪が溶けて起きてから、また食べまくったのかい」
「あ~お腹減っているからね~ははは」とボブは照れくさそうに笑いました。
森の中は柔らかな朝日がレースのカーテンのようにゆれ、シダの葉のしずくを弾かせています。
頭の上では鳥たちが朝のあいさつとえさ場の情報交換で騒がしく飛び交っています。
森を歩いている間に二人はすっかり仲良くなっていました。


ハリーは森のはずれの大きなブナの木の下に住んでいます。
仲間からは「森のボートハウス」と呼ばれているその家は、オレンジ色の小舟をうら返して屋根にしたちょっと変わった家です。小さいけれど住みやすく、船が屋根なんで雨漏りの心配もありません。
「あー君の身体は僕の家には大きすぎるので外でシャンプーしてもいいかな」
「そうだね」とボブはハリーの家を見て苦笑いしました。ボブの大きな身体では玄関のドアは通れません。
「そこの椅子に座って新聞でも読んで待っていて」と言って、読まずにドア横に置いておいたみみずく新聞をボブにぽ~んと投げると家の中に入っていきました。
ボブは切り株で作ったいすに座ってのんびり新聞を広げました。
みみずく新聞は、みみずくのワトソンが取材をして作っている森の情報誌です。週刊で月曜日の朝に配達されます。美味しい木の実の場所や、季節の花の開花時期、週間天気予報、春先はなだれ注意の記事なども書かれています。

つづく・・イラストも入れます

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