パソコン使用、あり?なし?ディスレクシアっ子の高校入試4
さあ、ここから、ようやく
多くの方に関心を持っていただいている
「高校受験でのパソコン(キーボード)使用」のお話です!
(長い前置きにお付き合いいただきすみません、ありがとうございます)
「合理的配慮」と出会う
「思春期外来」でWISC検査を受け
「視線の移動を伴う書字に著しい困難がある」とわかったものの、
じゃあどうすれば??
が、さっぱりわかりません。
「学校での板書が難しいので、写メで撮らせてもらえるといいですね」とアドバイスいただいたけど、
そもそもが、激しい不眠で、生きていることだけでありがとう、なきびしい毎日なので、「学校に行き、板書を写メで」と言われても
そこまでの距離が、遠い・・・・
次は、どうすれば・・・・・??
せっかくひとつ、大きなナゾがとけたけど
現実がなにも変わらないのはもったいないような・・・
もう少し詳しいことがわかればいいのに。
どこに相談すればいいのか?
そこで、つてをたどり、地元 金沢大学の教育学部の先生を紹介していただき、メールでやりとり開始。
ものすごく暖かい先生で、お会いしたこともない私に
「いままで大変でしたね」
と心のこもったメールを返してくださり
さらに「私の師匠が、一番詳しいので」と
星稜大学(今は北陸大学に移られました)の河野俊寛先生につないでくださいました。
自分の地域に、著名な「読み書き障害の専門家」である河野先生がいらっしゃる幸運。しばらく待って、直接検査していただけることに。
いま振り返っても、めちゃくちゃありがたい巡り合わせ。
*
河野先生の研究室で受けた検査は
・小中学生の読み書きスクリーニング検査」(STRAW-R)
・読み書き速度の検査「小中学生の読み書きの理解」(URAWSSII)(黙読)
・視覚認知知能の検査(レイの複雑図形検査)(ROCFT)
など。
ここで初めて「読み書き障害」であると、はっきりわかりました。
「書く練習は、もうやめましょう」
河野先生からは、きっぱりと、そう言われました。
もっと小さいうちなら、訓練もいいかもしれないけど、ここまで来たら、本人の学びへの意欲を取り戻すことがなにより優先。
「文字は、ツールにすぎない。
書くのが苦手なら、キーボードやスマホをつかえばいい。
一番大事なことは、考えることをやめないこと」
毅然とした言葉に、右往左往していた私の頭の中がスッキリとクリアに。
息子も、正面から話してくれた先生の言葉を、しっかりと受け止めた様子でした。
これからはキーボードタッチを練習したらいいよ、と言われた息子は、帰宅してすぐにパソコンをひらいて「ひよこタイピング」から練習開始。
おお、やる気になってる!?
どんどんしおれていく一方だった息子に
「カチっ」とスイッチが入る音が聞こえた気がしたくらい、この日のことが転機になりました。
学校へは行こうとしなかったけど、午前中は知り合いの農家さんの畑にお手伝いに行き
夕方からは部活に参加。
夜はタイピングの練習。
ご近所さんから、「将来ちゃんと仕事したいならこれ」と、「寿司打」というタイピング練習サイトを教えてもらい、それを始めてからは、もう夢中に・・・・
画面に流れてくるお寿司に合わせてタイピングしていくんですが、打ち込めないと「食べ逃す」という設定。
「3000円のお寿司コースだけど650円損しました~~~」と成績が出ます。結果をTwitterに投稿できるようになっていて、これをきっかけにTwitterもデビュー。
面白いもので、Twitterで寿司打仲間と競うのが楽しくて、さらに熱中。あっという間に、1万円コースでも元が取れるくらいに向上!
好きなものに出会うとすごい集中力を見せるのがディスレクシア脳の特徴、と、あとで知るのですが、まあ見事な熱中っぷりと成長でした。
本人にしたら、モンハンもマイクラも寿司打も同じ、どれも「おもしろいからやってる」だけなんだろうけど、親の気持ちは違います(笑)
将来の役に立つことを頑張ってるように見えるのです(笑笑)
うれしかったです。やっと何か道筋が見えた気がしました。
(Twitterで知り合った人に、ディスレクシアのことを話したりして、気持ちの整理をしていた様子もあります。中学生のSNS利用には賛否あるかと思いますが、どんどん居場所を無くしていっていた息子が、改めて社会と繋がっていく様子がありがたかったです)
ほんとうは学校に行きたい。
本人がそう思っていることはわかってました。
友達とワイワイやるのが好きな子なので。
それで、市の教育委員会に連絡してみました。
読み書き障害がある子が中学校に居場所を作るにはどうしたらいいのか?
ここで、またもや、超ラッキーなことが。
市教委に、読み書き障害に詳しい先生がいらしたのです。
担当してくれたM先生は
「今まで気づいてあげられなくてごめん」と
本人にあやまってくれました(びっくり)。
「もう一度学校で勉強したいって思う?」と確認してくれたうえで、
「もしそうなら、全力で、大人たちが支援する」と約束してくれました。
さらに・・・
いまは、「障碍者差別禁止法」という法律が出来て、合理的配慮というものをする義務が学校にはある。
あなたがやりやすい方法をさがして中学校で積み重ねていけば、その実績は、高校入試にも適応される可能性が高いので、しっかり話し合って可能性が開く道を探していきましょう
と語ってくれました。
国語は?
数学は?と
ひとつずつ、具体的に困っているところを聞いてくださり、本人は、たぶん、「自分の気持ちをきいてくれた」「この人は困難さをわかってくれる」と、すごく救われたんじゃないかな。
この日を境に、2学期からは学校に行こうかな・・・と言いだしました。
すぐに学校に行き始めたわけではなかったんですが、ゆっくりゆっくり、体を治しつつ、
タイピングの成績で自己肯定感を取り戻しつつ、畑であたらしい世界に触れつつ、
畑で出会う大人たちに可愛がられて社会への信頼感を取り戻しつつ・・・・
というステップで、9月から、毎日学校に登校開始。
市教委のM先生から連絡を受けた、中学校の担任・教頭先生は、すぐに対策会議を持ってくれ、私たちの話をしっかり聞いて、
・板書の写メ利用
・テストではひらがな回答も誤答としない
・試験は、時間を延長して対応(その後、PC使用に切り替え)
などの体制をつくってくれました。
最初は「クラスのみんなに書字障害と開示するのはぜったい嫌」と言っていた本人だったけど、だんだん軟化。
担任の先生が上手に説明してくださったおかげだと思いますが、クラスメイトもさらりと理解してくれ、たまには板書を写メで撮ったりしていたようです。
ただ・・・・・学校の勉強への情熱は、カンタンには戻らず・・・
せっかく写メOKにしてもらったけれど、それを見返してまで勉強しようという気力がまったく戻ってこず。
コロナのおかげでパソコンは一人一台配布されていましたが、いつでも使える状況にはなってない(鍵がかかった部屋に保管されている)こともあり、けっきょく普段は手で書くことになっていたよう。
だから、授業はしんどいまま。
なんとか、出来る範囲で出席。
宿題は、まったくやらない、出さない。
それを、先生たちは見逃してくださいました。
一方、部活や行事は全力で参加。
結果、陸上部のリレー選手として大会に出るようになり。
運動会では団対抗リレーでアンカーを走ったりして徐々に居場所を確保。
なぜかダンス大会ではベストパフォーマンス賞も!
修学旅行への情熱もすごかった・・・・班のリーダーを引き受けてきて意気揚々と参加。
「楽しんでくるね!」と出かけていった姿、忘れられません。うれしかった・・・・・。
不眠症がなかなか改善せず、相変わらずカラダへの心配は続いてましたが、その後も自分のペースで通い、「高校も行きたい」と言うように。
それはこの子にとってほんとうに大きな変化でした。
テストで、ひらがなでも正解としてもらったのはとても大きかったかな。
長文はPCを使って回答することも、「すごく助かる」といい、圧倒的な勉強への嫌悪感が、少しずつ減って、やれば少しは手ごたえがある、と思い始めた時期。
そうして、だんだんと高校受験へと近づいていきます。
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