見出し画像

バイバイ☆尿カテ

手術をしてから、一週間位は尿カテーテルを膀胱に留置したままだったと思う。

 尿を貯めたバックは、看護師さんが処分してくれた後はとても軽くて動きやすい。
しかし、私が一生懸命に水分を取るとあっという間に一杯になり、重い点滴台となり共に移動しなければならない。

 トイレに行くときも、一緒に移動しなければならないので、尿が溜まっている時は、個室に入るのも一苦労。

泌尿器科なので、尿カテーテルを留置させる期間が他の科より長いのか、点滴台に尿バッグをぶら下げた同士が沢山いた。
(婦人科病棟ではぶら下げて歩いている人の割合は、泌尿器科よりかなり少なかった)

すごい色の血尿が出ているせいで、視線が気になる。
私も
「いいな。血尿じゃなくて」
普通の尿バッグを羨望の眼差しで見ていた。
人の物と比べるなんてしてどうするんだ。
と今書いてて思う。
 退院してからもしばらく、尿に注目しなければならない生活だったので、初めて血尿が出てから3ヶ月血尿の事で頭がいっぱいだった。

検査やら手術でカテーテルに慣れたのか、検査入院の時の様な違和感もなかった。尿道が適応したのかもしれない。もうカテーテルは体の一部。じゃまだけど。
でも、沢山水分を取ってもトイレに行かなくてすむのは、とても楽で看護師さんに
「慣れすぎて楽だし、暫くこのままでいいかもって思ってます」
と私が言うと、
「でも感染症怖いですよー」
と苦笑いしていた。

3日目位からは、重い尿バックをぶら下げながらも、移動の際のターンもかなりいい感じになっていた。

ターンを決めていい気になり、呑気なことをしていると、カテーテルが入っているのに、急に膀胱に尿が溜まっていく感じが出てきた。どんどんトイレに行きたい感覚になっていく。
このままでは、切った膀胱がまた開いてしまう。
私は慌て、ナースコールも押さずに直談判に行った。
いきなり「膀胱に溜まっていってる感じがするんです」と看護師さんに助けを求めた。
看護師さんは慌て「え?どうして?」とカテーテルを持ち上から下まで異常が無いか見ていた。
私も一緒にカテーテルを掴んで一緒に見ていたら
赤い塊がカテーテルの中をスポーンと流れて行き、尿バックに入っていった。

どうやら、詰まりの原因は血栓だったらしい。
看護師さんは
「こういう時はいつでもナースコール使ってくれてもいいからね。ちゃんと洗浄出来る様になってるから、安心してね。良かったねー取れて」
と少し混乱していた私に、大丈夫よーと声をかけてくれた。周りの人も見ていたので、急に恥ずかしくなった。
本当に冷や汗が出た、破れたらまた再手術しなきゃいけないかも、と本気で焦っていた。

入院も後半になると、身体の左側に血尿があるのが違和感なくなってきた。
そして傷も治ってきてるのか色も薄くなったきた。

確か7日目に看護師さんから
「とりのさーん。今日カテーテル取るらしいので後で放射線科受付まで行って下さいねー」
はーい。わかりました。と返事をする。
 そういえば、先生が回診の時
「造影剤入れながらレントゲン撮って異常が無かったらカテーテル抜きます」と言ったので
「あの…異常があれば…?」
「縫わなければならないので再手術です」
絶対イヤだ。頑張れ私の修復力。

しばらくすると、看護師さんが
「とりのさんー放射線科から連絡あったので行ってきてくださいね」と声をかけてくれた。
重い点滴台と共に、私は放射線科へ向かった。
このカテーテル生活ともお別れか。
トイレ行かなくていいから楽だったのに。
バイバイカテーテル。

レントゲン室に入ると、とても笑顔が素敵で物腰柔らかな看護師さんが2人
「とりのさんですか?あれ?1人で来たんですか?」
「?はい大丈夫なので1人で来ました」と私が言うと、2人の看護師さんは、そうなんですかーと私の肩掛けを受け取ってくれた。
なんか羽衣を受けとる天女に見えてきた。
よく白衣の天使と例えられる看護師さん、
私は丁寧な動作で肩掛けを受けとる看護師さんが、天女に見えた。
今書いててなんでやねん。と思っているけど、当時本当に思った。

私のお気に入りの肩掛けを、天女さん達は、かわいいと褒めてくれる。
 カテーテルを抜かないといけないので、下着を脱ぎ、タオルを上からかけてもらった。
天女さんがカテーテル抜いてくれるんだ。
と安心していたら、担当医B先生登場。
思わず、え!?とちょっと苦い顔をしてしまった。
B先生ごめんなさい。

「それでは、とりのさん造影剤注入しますからね」
まだ留置されてるカテーテルの横の穴から造影剤を入れ、レントゲンに私の膀胱が映る。
「ハート型になってる…」
膀胱の上の方を切って、そこを縫い合わせているので、ハートに見えた。

ハート型の膀胱なんて珍しいものを見れた。ジーと見てると
「大丈夫そうですね。はいカテーテル抜きますよー」と、いきなりスポーンとカテーテルは抜かれた。

いっだい!(痛い)

思わず声が出たけど、先生は毎日誰かしらのカテーテルを抜いていると思われるので、そのまま颯爽と出ていった。
天女さん達が慌てて、私の所に来てくれた。すごく心配してくれている。
「病棟連絡して車椅子手配しましょうか?迎えに来てもらったほうが…」
私は強がって
「大丈夫です」と立ち上がろうとしたけども、痛すぎて立ち上がれない。
天女さんは、連絡しますからね。と連絡をしてくれて、私の肩掛け(羽衣)を、はいどうぞ。と渡してくれた。
(病棟の看護師さんも、とても優しいです。環境的にアグレッシブな動きなので、天女とはちょっと違う)

 病棟の看護師さんが、車椅子を持ってきて一緒に病室まで 、移動する事になった。
病棟の看護師さんが
「楽になりました?でも痛かったでしょう?」
「はい。痛かったです。」と答えると、看護師さんは
「私も一度入院した時体験したんですけど、引っこ抜いたろか!って思いました」と笑っていた。
私も看護師さんの尿カテ面白エピソードで笑った。
病棟の看護師さんは、明るくて面白い方が多い。

 廊下を車椅子で移動するなんて初めてだ。
ドラマとかで見るような光景。
結構スピードも出る。膀胱の痛みも忘れ、初めて体験する車椅子にテンションがあがった。

退院前日、看護師さんから、
「しばらくオムツとかも用意した方がいいかも。
皆用意してるから。とりのさんまだ若いから大丈夫だと思うけど、夜中トイレ行く回数多くなるかもしれない」
と、膀胱を切り取り小さくなった事で、尿漏れする事もある、と教えてくれた。

それなら、尿カテーテルの方がいい。
感染さえしなければ。
そんなことは言えない。
何言ってるんだ?とりのさんと思われる。

不安を抱えて退院したけど、家で特に困ったこともなく、オムツを使う事は無かった。
私の膀胱は、元の機能に戻ってきたらしい。
良かった。

こうして記事を書いていて思った。
尿カテーテルには、思い出が沢山あった。

あと、ヘッダーにあるイラストの色が黄色なのは、たまたまです。狙って無いです。
公開前に気づきました。



いいなと思ったら応援しよう!