舌小帯短縮症と構音の関係…実際はこうなんです
舌小帯短縮症とは
歯医者さんで聞いたことがある方もいるかもしれません。
舌小帯とは、口を大きく開けた状態で舌先を力いっぱい上に上げた時に、舌の付け根の中央に見える筋のことです。力いっぱい上げると引っ張られる感覚がありますね。
これが生まれつき短いと舌小帯短縮症となります。短いとどうなるか。舌が十分上がりませんし、舌をベーっと前に出したときに、舌先が引きつってハート形となります。
必要があれば、医師や歯科医師が舌小帯伸展術という手術を施行します。
構音への影響は?
舌の動きが妨害されるなら、構音へ影響があるのではないかと心配になりますよね。
舌小帯の影響を受ける音は、ラリルレロの音が主になると言われています。それはなぜか。ラリルレロは舌先を挙上させて、歯茎部(上の前歯裏の歯茎のあたり)に接触させ、下に戻すことで作られる音です。舌先を上げる必要があるため、舌小帯が極端に短いと影響が出てきます。
影響が出た結果どんな音になるかと言うと、ラとアの中間の曖昧な音になったり、ダに近い音になります。
実際のところどうか
今まで多くの舌小帯短縮症の方にお会いしてきましたが、構音に深刻な影響が出たケースは、ほとんど経験したことがありません。
しかし、歯医者さんから「舌小帯短縮症による構音障がいです」と紹介を受けることがよくあります。矛盾していますよね。
蓋を開けてみると、実際はカ行が言えなかったり、側音化構音であったり…。実は舌小帯とほとんど関連していない構音障害であることが多くありました。
歯医者さんによっては、舌小帯短縮症=構音障がいと考える方も少なくないようです。
治療は必要ないの?
歯科検診に行き、「舌小帯短縮症があるので、手術が必要かもしれません」と言われたら、驚きますよね。
あまりに重度の短縮であれば、手術の予約を取りましょう、となるかもしれません。しかし構音の改善だけを目的に手術を行うことは稀です。ベストは方法は、まず構音への影響の有無を、言語聴覚士に判断してもらう機会を設けることだと思います。
ただし、ここで重要なことがあります。構音への影響が無くても、食事への影響が生じる可能性があることを忘れてはいけません。
食べ物をもぐもぐと咀嚼する際、舌は忙しなく動いています。咀嚼だけでなく、時に、頬と歯の間に挟まった食べ物を舌によって掻き出すこともしますよね。また、ソフトクリームを舌を出してペロッと舐める、唇についたソースを舌で舐め取ることもあります。舌は、特に食事の時には、大小様々な動きをしています。そこに影響が生じているのであれば、治療を検討する必要が出てくるでしょう。
舌小帯短縮症に関する治療は、構音や食事など、生活に関わる事象を考慮し、総合的に判断する必要があります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
参考図書
・道健一:言語聴覚士のための臨床歯科医学・口腔外科学,医歯薬出版,2000.
・阿部雅子:構音障害の臨床ー基礎知識と実践マニュアルー改定第2版,金原出版,2008.