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想い出の選手たち ~#31山崎晃大朗~

プロ野球は大河ドラマであるとともに群像劇。
ただし、たとえ群像劇であってもその配役につけるのは一部だけだ。
アマチュア野球のエリートだけが入れるプロ野球の世界。
役につくことなく神宮のグラウンドに立てずにユニフォームを脱ぐ選手の方が多い。
入団時の山崎晃大朗はどちらかといえば、その枠に入る選手だった。

プロ野球選手としては小柄な体、足は速いが肩は弱い。
守備に関しても、中継のどこに投げていいか迷うようなプレーを見せたこともあった。
一軍に定着した頃も、チームは弱く「だから出られている」そんな選手だった。

プロ野球はイメージの世界だ。
一度、監督やコーチに印象がついてしまうと、出場機会を得られなくなることがある。
期待を受けて、役を与えてもらえるそんな選手はごく一部だ。
もちろん山崎晃大朗は、その一部に含まれてはいない。

しかし、彼は優先順位の低い立場から一軍のドアをこじ開けた。
そして代走、守備固め、数少ない打席で結果を残した。
気づけば期待の選手をひとりずつかわし神宮のグラウンドに立っているのが彼だった。
自分の気持ちを殺して脇役に徹した。
4番やエースが育てられないように、別の意味でこういう選手を指導者が作ることはできない。
能力を冷静に見極め、納得して生きる道を見つけ、それに合うプレースタイルを作る…これは自身の気づきと努力によってしか生まれない選手だ。

ファイターズとの交流戦、山崎はノーアウト1、2塁で打席に立った。
ストレートを打ちに行くバットの軌道は、上から叩くゴロを狙ったものであり、引っ張って次につなぐ意識が見えたものだった。
しかし振り切ったバットから弾かれた打球は、ライトスタンドへ消えていった。
脇役に徹した選手に贈られたプレゼントのような打球だった。

ただそれでも、次の試合から山崎晃大朗は脇役に収まった。
自分でつかみ、型を作り、外されない選手でい続けようとした。
プロとしては“中途半端”な才能だったかもしれない。
しかしその中途半端な身体能力を使いきるために、考え、技術を磨いたからこそ、プロ野球選手としての華やかな最期が迎えられたのだ。
彼は決して華やかな選手ではなかったが、中途半端ではなかった。
強いチームには必ず必要なピースとなる選手、ときには主役を喰ってしまうほど脇役…客観的に自分を見つめ自覚し努力で作り上げたオンリーワンの姿。
探すのが難しいのは、4番やエースばかりではない。
勝つために必要なピースになる名脇役も、なかなか見つからないものだ。

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公式戦は現地観戦、テレビ観戦すべて試合評として挙げる予定です。FC2「スワローズ観察日記R」では13年連続公式戦、ポストシーズンすべて書いてきました。球団への取材などは行わず、あくまでもプレー、作戦などから感じた私的な試合評になります。

プロ野球東京ヤクルトスワローズの試合評を、オリジナルデータやプレーを観察したしたうえで、1年間現地、テレビ観戦を通して個人的なや評論を書き…

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