続・堡塁岩再生
今日は梅雨の合間をぬって、いろんな終了点の偵察に行ってきた。
前回、書いたように堡塁岩の終了点の位置は独特だ。
中でも一番評判が悪いのは、「コズミックライン」である。テラスのど真ん中の足元にあり、1800mmのスリングを数本持っていないとトップロープの支点を作るのも難しい。登り終わって両手を離して立てる位置というマルチピッチの標準的な条件は満たしているがリード&フォローでも座り込んでビレイしないといけないし、そこからさらに立ち木のある安全なテラス迄あと5Mほど岩を登らないといけないので、経験の浅いクライマーでは登るのも下降も大変である。
とりあえず、中央陵に絞ってここにも終了点があればいいなあと感じた場所をリストアップしてみた。
☆スリーパーホールド
あまり登られていないが隠れた名ルート、このルートは終了点がなくて最後
大きく右にトラバースしてジグザグクラックの終了点を利用する。
トラバース前の最後の支点がリングボルトなのも、このルートの醍醐味なんだろうか?
☆ハチの巣コーナー
このルートも終了点がなく、コズミックラインと共用している。テラスの左側上部に設定してみた。コズミックラインから、上部に抜ける登攀路のビレイポイントとしても有用だ。
☆スカイフレーク
スカイフレークはあまいホールドのテラスを乗越して右に抜けるが、ぐるっと回ってコズミックラインのテラスに合流する。
最後、カムでプロテクションが取れるがロープの流れが悪くなり、独立した終了点が欲しいところだ。
☆枯れ木のカンテ、大ハングルート
大ハングは堡塁岩が全国的に有名になった歴史あるルートなのに終了点がない。継続して枯れ木のカンテを登る人が多い。ボルトは打たれているが芯は腐蝕している。他のボルトの写真は撮れなかったが全部リボルト対象だと思う。
☆2段ハング
登っている人をあまり見たことがない名クラシック~クラックルートだけど終了点を整備すればもっとトライする人が増えるはず・・・
ルート核心部はSLCDでプロテクションが取れるが、中間部にはもう少しボルトを設置したほうがいいと思う。
☆桧のフェース (写真なし)
桧のフェースはしっかりしたケミカルアンカーが3本設置されているためグレードに関わらずよくトライされている。
フェースを登り終わった後、中央クラックルートを継続しているクライマーが多い。しかし、トポには8mと書いてあるのに、中間部に終了点どころか支点が全然ないのも不思議な話だ。
最後に今まで見てきたいろんなクライマーの行動からお話をつくってみた。
『クライミングを始めて1年、パートナーも出来たので最近は近郊の岩場にも行きはじめた。今日は日本でも、最も古い岩場の一つと言われる堡塁岩だ。
トポを見ればよくわからないアラビア数字もあるが、5.9や5.10aもあるし最近始めたばかりのあいつでも大丈夫だろう。
何本か登ってみて、スカイフレークといって、かっこいいカンテラインをトライしてみることにした。下部は錆びたボルトで不安だったけど中間のテラスからは信頼できそうなボルトがあり、快適でダイナミックなカンテに不安を忘れてしまった。錆びたハーケンでも今まで何十年も抜けなかったのだからきっと大丈夫なんだろう。
最後、なんとか這い上がると3畳ぐらいの快適なテラスのど真ん中にケミカルアンカーが2本打ってある。
いくら探しても、偵察でみたとおり(西稜の頭より)これしか支点はないようだ。スリングを持っていないのでロワーダウンも出来ず、何とかセルフビレイをとり、システム作ってパートナーを上からビレイする。
パートナーは慣れない前傾壁に悪戦苦闘、ぶら下がる度に大きく壁から離れてしまって疲労困憊し、諦めてしまった。
パートナーを下までおろして、さあこれからどうしよう。
今日は平日のため助けを呼ぼうにも誰もいないし、雪まで降り出してすっかり身体も冷えてしまった。
夕暮れも迫ってきて、彼は途方に暮れた。』
このお話は創作であり、終了点として提案したボルトも、撮影用にボルトを粘着テープで仮設置したものです。もちろん、現在は撤去しています。
設置する場所についてももっと議論が必要だと考えています。