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「“自分軸”を創るコーチング──AI時代にブレない私になる方法」
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はじめに
「このままでいいのか」
「自分には何ができるのか」
そうした問いを胸に抱える人が今、とても増えています。
なぜなら、現代は社会環境や仕事のあり方が目まぐるしく変化している時代だからです。以前なら「一社に勤めあげて定年を迎える」というモデルが一般的でしたが、今ではキャリアの多様化が急速に進み、「数年おきに転職をする」「副業や小さなビジネスを掛け持ちする」といったスタイルが当たり前になりつつあります。
さらに、AI時代の到来によって、私たちの仕事観や価値観は一段と揺さぶられています。「自分の仕事がAIに取って代わられるかもしれない」という不安を抱えながら、同時に「AIをうまく活用して新しい挑戦をしてみたい」というワクワク感もある。
この両面を同時に感じている方が、実はとても多いのではないでしょうか。
一方で「自分を取り巻く環境が変わるスピードに心がついていかない」という声をよく耳にします。やりたいことや興味はあっても、いざ行動に移そうとすると躊躇してしまったり、「実際どうしたらいいのかわからない」と悩んでしまったり。
そこで大切になるのが、「自分はどう生きたいか」という軸を明確化し、それをガイドとして行動していく姿勢です。
本書では、この「自分軸」を確立するための具体的なステップや、「どうすれば“自分らしく”動き出せるのか」という問いへのヒントを数多くご用意しています。
しかし、その前に一つだけ覚えておいていただきたいのは、本書が「こうすれば絶対に成功する」という即効性のあるテクニック集ではないということです。むしろ、自分自身と向き合い、少しずつ行動を重ねながら「腑に落とす」というプロセスこそ、本当の変化をもたらすのだと伝えたいのです。
なぜ私たちは、ここまでモヤモヤしてしまうのか?
その答えの一つとして、「情報過多」が挙げられます。スマホやSNSを開けば、成功事例や最新技術の話題が洪水のように押し寄せます。「あの人はこんな副業で稼いでいるらしい」とか「このノウハウを使えば業務効率が二倍になる」といった情報を見ると、どれも魅力的で、どれも挑戦しなきゃ損だと感じてしまいます。
しかし、実際に手をつけてみると中途半端に終わり、「やっぱり自分には無理だった」「何をやっても続かない」という結論に至ってしまう……。そんな経験が積み重なると、「どうせ上手くいかない」と諦めに近い気持ちが生まれ、行動が停滞してしまうのです。
ここでカギとなるのが、「自分に本当に合った行動」をどう選び取るかという視点です。やり方やツールは山ほどあっても、すべてが自分に適しているわけではありません。だからこそ、「自分は何を大事にしているのか」をはっきりさせることが先決です。そして、それを軸にして、「この情報は自分に必要か?」と見極める力が求められます。
もう一つ大切なのが、感情との向き合い方です。
特に、「ムカつき」や「悔しさ」といった負の感情は、私たちの行動を加速させる強力なエネルギーにもなりますが、扱い方を誤ると大きなストレス源にもなり得ます。
例えば、「あの人に馬鹿にされたから見返してやる」というモチベーションで頑張るのは短期的にはアリだとしても、長期的には苦しさを伴いがちです。
一方で、上手に感情をコントロールできれば、それらの“負の感情”をプラスの活力に変え、行動へ転換していくことができるのです。
そこで本書では、「六秒ルール」のような感情コントロール技術や、「一呼吸おく」ことで衝動的な怒りを抑え、冷静に対処する方法なども取り上げます。こうしたポイントを抑えておくと、感情に振り回されるのではなく、感情を“味方”にできるようになっていきます。
また、「やってみたい」と思ったことを実際に形にしていくためのステップとして、「スモールスタート」の考え方を紹介します。たとえば、「アサイーボウルを自分でつくってみて、それを小さく販売する」など、リスクの少ない取り組みから始めてみるのです。
いきなり大きく動くのが不安でも、小さな成功体験を積んでいくことで自分のやりたいことが明確になり、自信もついてくるはずです。「動画編集やSNS運用の勉強を始めてみる」といった例も、本書で詳しくお伝えします。
そして、AI時代に欠かせないのが「問いを立てる力」です。
どれほどAIが発達しても、「自分が本当に求めているものは何か?」を問うのは人間の役割です。AIに答えを与えてもらうのではなく、「なぜそうしたいのか」「その目的は何か」という問いを設定できる人こそが、AIと上手に共存しながら新たな価値を生み出していくでしょう。
「AIに使われるのではなく、AIを使いこなす」ために必要なのは、まさしく「自分軸」を軸にした問いの立て方と、そこに行動を結びつける思考プロセスです。
さらに、心と体を結ぶ「記号設置問題」にも言及します。
「頭でわかっているのに、なぜか行動できない」と感じるとき、実は「身体感覚が納得していない」ことがよくあります。
頭では「副業を始めたほうがいい」「勉強が必要」と理解していても、気持ちが動かない場合、体感覚がついてきていないのかもしれません。
そこで、「理屈と感覚をどう結びつけるか」という視点が非常に重要になります。自分の思考や行動を“身体がどう受け止めるか”を見つめ直すことで、より本質的な納得感を得て、スムーズに行動へ移すことができるようになるのです。
さらに、「コミュニティ」との向き合い方も、本書の大きなテーマの一つです。
「みんなと一緒に頑張ろう」という掛け声は力強い反面、流されすぎてしまうと「自分の意思がわからなくなる」というリスクもあります。
「コミュニティに属すること」と「自分軸を持つこと」は決して矛盾しません。むしろ、自分軸をしっかり持ってこそ、より健全なコミュニティとの関わり方が可能になります。
本書では、「一対一の関係から学ぶメリット」や、「依存しすぎない関係を築くポイント」についても具体的な事例を交えながらお伝えします。
ここまで述べてきたように、本書は五つの大きなテーマを軸に構成されています。
一つ目は「思考の停滞を解きほぐす方法」
二つ目は「ムカつきや悔しさを行動エネルギーに変えるヒント」
三つ目は「スモールスタートでビジネスや副業に挑む具体例」
四つ目は「AI時代に必要な問いの立て方」
そして五つ目が「身体感覚やコミュニティと上手に付き合う」ための実践知です。
これらのトピックを通じて、最終的には「自分が大切にしたい価値観を明らかにし、納得感のある行動を重ねる」ためのプロセスを手に入れていただきたいと思っています。
何かを始めるとき、「絶対に失敗したくない」と思う人は多いでしょう。しかし、小さな失敗を恐れずに行動し、それを学習の材料にしていくことこそが真の成功への近道です。本書が、その一歩を踏み出す後押しとなれば幸いです。
最後に、この「はじめに」の章で強調したいのは、「まずは自分と向き合う時間を確保しよう」ということです。
忙しい毎日に追われていると、「考えるより先に目の前のタスクをこなす」ことに必死になりがちです。でも、そこをぐっと踏みとどまり、「自分は何を大事にしたいのか」「この行動は自分軸に沿っているのか」と問いかける習慣を持つかどうかで、数年後の人生の方向性は大きく変わってきます。
この書籍を読み進めるあいだだけでも、週に一度のセルフコーチングタイムをつくってみるなど、無理のない範囲で取り組んでみてください。
「自分軸」は、誰にとっても一生モノの宝物です。
時代がどれほど大きく変わろうとも、「自分が何を選ぶのか」を自分で決めていける力があれば、どんな困難にも柔軟に対応できるでしょう。
それでは、次章から始まる具体的なステップを通じて、「自分にとって大事なもの」を一つ一つ見つめ直しながら、行動につなげるプロセスを一緒に構築していきましょう。
本書が、あなたの人生をより充実させるための大きなヒントとなることを願っています。
第一章:なぜ「思考が停滞」してしまうのか
ここから始まる第一章では、現代社会に生きる多くの人が抱える「思考が止まってしまう」「決断できない」という悩みの背景を探っていきます。
「やりたいことが思いつかない」、あるいは「やらなきゃいけないことは山ほどあるのに、なぜか動けない」。そんなジレンマに陥った経験はないでしょうか。
この章では、そうした「思考の停滞」に至る要因を多角的に見ていきます。もちろん、何か特別な病気や能力の問題ではありません。むしろ、現代社会特有の構造や、私たちの無意識的な思考のクセが原因であるケースが多いのです。
そしてその構造を正しく認識することが、「なぜ自分は動けないのか」という疑問の答えを見つける第一歩となります。ここで深く理解しておくことで、以降の章で紹介する具体的なステップやコーチング的アプローチが、より効果的に活きてくるはずです。
それでは、以下の五つの小見出しを通じて、「思考が停滞するメカニズム」を紐解いていきましょう。
一. 「情報が多すぎる時代」の罠
私たちが暮らす現代は、「情報があふれすぎている時代」といっても過言ではありません。
スマートフォンを開けば、SNS上には友人や知人の近況報告、ビジネスや副業の成功事例、AIやテクノロジーの最新トレンドなど、さまざまな情報が絶えず流れてきます。
こうした情報洪水の中で、「あれも良さそう」「これも試してみたい」と感じる機会は増えましたが、同時に「どれから手をつければいいのか分からない」という悩みも増大しているのではないでしょうか。
情報量の多さは本来、私たちの選択肢を広げてくれるはずでした。しかし、その膨大な選択肢は時に、「もっと他にいい方法があるかもしれない」という不安を招きます。
その結果、「どの情報が自分に合っているのか見極められない」というジレンマに陥り、思考や行動がストップしてしまうのです。
さらに厄介なのは、「情報が多い時代」ほど、「周囲の人たちと自分を比較しやすくなる」点です。例えばSNSで、同年代の人が新しい副業で成功している情報を目にすると、「自分も何か始めなきゃ」と焦りを感じるかもしれません。あるいは他の誰かが「転職に成功して高収入を得た」という話を聞いて、「今のままではダメだ」と落ち込むこともあるでしょう。
こうした過度の比較と焦りは、「自分が本当にやりたいこと」とは別の方向に私たちを駆り立てがちです。結果として、あれこれ手を出しては続かない、というパターンを何度も繰り返すことになります。
そうなると、「結局自分には何もできない」と自己否定的になり、次第に思考が停滞していく……。これが、情報が多すぎる時代ならではの罠といえるでしょう。
だからこそ重要になるのが、「自分軸」の存在です。情報を整理し、行動を選択する際に、「自分は何を大事にしたいのか」という指針があれば、迷いは格段に減っていきます。多くの情報に惑わされても、「私には合わないな」とスパッと判断することができるでしょう。
逆に、指針が曖昧だと、どんなにすばらしいノウハウやアイデアに触れても、「どこかで立ち止まってしまう」という現象は繰り返されます。つまり、いくら情報を集めても、思考が進まないのです。
「やりたいことを見つけるための情報探し」から離れ、「やりたいことを選び取るための自己理解」に目を向ける──このシフトが、情報過多時代のブレを減らすための重要なポイントとなります。
二. 他人の正義と自分の正義
次に、思考が停滞する理由として見過ごせないのが、「他人の正義」と「自分の正義」のギャップです。
ここでいう「正義」とは、大袈裟に言えば「価値観やルールのようなもの」です。たとえば、ある人は「お金を稼ぐことが最優先」と考えているかもしれません。一方、別の人は「家族との時間が最優先」と思っているかもしれません。
このように、私たちはそれぞれ異なる価値観や優先順位を持っています。それにもかかわらず、他人の発する「これが正しい」「これが最良の方法だ」という声に飲み込まれると、自分の正義(価値観)を見失ってしまうのです。
例えば、職場で上司から「もっと結果にコミットしろ」といわれ、猛烈に残業を要求されたとしましょう。上司にとってはそれが正義でも、あなた自身は「健康を犠牲にしてまで仕事をするのは違うのではないか」と感じるかもしれません。ところが、周囲に合わせようと頑張りすぎると、自分の中にあるモヤモヤを見て見ぬふりをしてしまいます。
その状態が続くと、どこかで思考がフリーズしてしまうのです。なぜなら、「自分が本来大事にしたいものを無視する」という行為は、精神的に大きな負荷を伴うからです。
また、SNSなどで流れてくる「自己啓発系」「成功者の体験談」なども同じです。それぞれが自分の成功体験を語る中で、「こうすればうまくいく」「あなたもやらなきゃ損」と主張することがよくあります。もちろん、彼らに悪意はありません。しかし、そこには「自分の価値観」を明確にしていない人にとっては負担となるメッセージが含まれている場合もあるのです。
周囲の正義や他人の価値観に振り回されると、「自分にとっての最適解は何か」が分からなくなります。結果として、どれだけ素晴らしい方法を提示されても行動できないとか、行動したとしても「本当にこれでいいのか」と疑い続けることになり、最終的にモチベーションが下がってしまうでしょう。
結局のところ、「他人の正義を自分の正義にしなくてもいい」というスタンスをもつことが大事です。周囲がどう言おうと、あなた自身の中で「これは大事だ」と思えるものだけを選び取る。あるいは、意見や情報を取り入れる場合でも、「自分の価値観とどう整合性があるか」を意識するのです。
こうして、「自分の正義」を明確にしておけば、周囲の声に惑わされることなく、自分なりのペースで判断を進められるようになります。
三. 自分にムカつく? その感情の正体
思考停滞の原因として、「自分自身に対してムカついてしまう」というケースも見逃せません。
多くの人が、「あの人にバカにされたからムカつく」「仕事で認められずムカつく」という外部要因の怒りを経験しています。しかし意外と多いのが、「自分の不甲斐なさに対して腹が立つ」というパターンです。
例えば、「あれだけ意気込んで副業を始めたのに、結局継続できずに放置している」とか、「あの資格の勉強をやろうと思ったけど、忙しさを言い訳に一日も机に向かわなかった」など。そうした状況になると、「なんで自分はいつも三日坊主なんだ」と自分を責める気持ちが湧き上がります。
自分に対する苛立ちが大きくなると、やがて思考はこうなります。「どうせまた続かない」「自分なんて何をやってもうまくいかない」。このネガティブな感情は、行動を阻害する最たる要因になり得ます。
そしてもう一つ厄介なのは、「自分にムカついている」という事実をなかなか認めにくいことです。多くの人は、「自分自身に腹が立っている」とは思いたくないものですから、代わりに周囲や環境に対する不満として表現してしまいます。しかし、その根底には「自分への苛立ち」が隠れているのです。
では、こうした「自分にムカつく」感情をどのように扱えばよいのでしょうか。まずは、「一呼吸おく」ことを意識してみてください。イライラしているときは、視野が狭くなり、本来の目的や価値観を見失いがちです。
一度ゆっくりと深呼吸をし、「なぜ自分は怒っているのか」「その怒りは本当に有効なのか」と自問してみるのです。すると、怒りや苛立ちの奥には、「もっと成長したい」「失敗したくない」「やりたいことができない焦り」といったポジティブな動機が潜んでいる場合があります。
むしろ、そのポジティブな動機を見つけ出すことができれば、ムカつきは行動の原動力に変わり得るのです。たとえば、「自分は成長したいんだ」と認識できれば、「次こそは三日坊主にならない方法を探してみよう」という具体的な策を考えられます。
このように、「自分にムカつく」感情をそのまま放置しないことがポイントです。上手に気づきに変えていくと、思考は驚くほどスムーズに動き出します。
四. 「無意識の思考」を意識化するとは
ここまで紹介してきた要因をまとめると、「なぜ思考が停滞するのか」には、現代社会特有の情報過多や周囲との比較、そして自分の内面にある怒りや苛立ちなど、複合的な事情が絡んでいることが分かります。
しかも、それらの事情の多くは、「無意識」の領域で私たちの行動や感情に影響を及ぼすのです。意識的に考えているつもりでも、実は「自分でも気づかないうちに周囲に合わせていた」とか、「実は自分が本当に欲しいのは他人の評価だった」といったケースはよくあります。
つまり、思考の停滞を解消するには、まず「無意識下で起きていることを意識化する」プロセスが不可欠なのです。
たとえば、「どうしてこんなに動けないのだろう」と感じるとき、漠然と「自分のやる気が足りない」と片づけてしまいがちです。しかし実際には、「周囲から評価されないと不安」「成果を出さなくちゃと焦っているが、本当は他にやりたいことがある」など、別の要因が無意識に作用しているかもしれません。
そこでおすすめなのが、セルフコーチングです。具体的には、「なぜこう感じるのか?」「その感情の背景には何があるのか?」という質問を自分自身に投げかけてみるのです。さらに、一連の思考や感情を紙に書き出して整理すると、客観的に自分の内面が見えやすくなります。
ポイントは、「自分の思考や感情を否定しない」ことです。特にネガティブな感情や無意識下の葛藤が見つかったとしても、「これは良くない、消し去りたい」と直ちに排除しようとすると、かえって思考は行き詰まります。
むしろ、「ああ、こういう気持ちがあるんだな」と受け止め、どんな声なのかを吟味するのです。そうすることで、無意識下にあった思考パターンを浮き彫りにし、具体的な対策を立てやすくなります。
これこそが、「無意識の思考」を意識化する作業です。自分の中にある声に気づけば、「何が本当の問題か」が見えてきます。そこまで分かれば、思考が停滞する原因を“正しく”取り除くためのアクションが自然と選べるようになるでしょう。
また、もし「自分一人ではどうしても整理が難しい」と感じる場合は、コーチングやカウンセリングといった専門家のサポートを受けるのも選択肢の一つです。特にコーチングでは、「質問による気づき」を促すことを得意とするため、無意識の壁を突破しやすくなるかもしれません。
五. 小さな気づきを行動に変えるコツ
最後に、「思考を停滞させず、行動に繋げるためのコツ」として、「小さな気づきを侮らない」という考え方を共有しましょう。
多くの人が、「劇的な変化」「大きな成功」を目指すあまり、小さな前進を軽視しがちです。例えば、「少しだけ勉強する時間が確保できた」「一日一〇分だけ副業に取り組めた」などの些細な成功を「たったそれだけか」と否定してしまうのです。
しかし、そうした「小さな気づき」や「小さな前進」こそが、思考を活性化し、行動を続ける原動力となります。大きな成果は、そうした小さな歩みの集合体でしかありません。
たとえば、「今週は三日坊主では終わらなかった」とか、「いつもなら言われるがままになっていたのを、一度断る勇気を出せた」という小さな一歩は、本人にとって大きな成長です。
このような成功体験が積み重なると、「自分はやればできる」という自己肯定感が育ちます。すると、さらに次の行動に挑戦しようという意欲がわいてくるのです。
一方で、初めから「一〇〇点を取らなければ意味がない」という極端な目標を掲げてしまうと、途中で「やっぱり無理だ」と挫折感を味わいやすくなります。これは、思考を再び停滞させる大きな要因にもなり得ます。
そこで、「あえて小さなゴールを設定する」という方法もおすすめです。例えば、「今日は二ページだけ本を読む」「明日は一〇分だけ副業の情報収集をする」など、本当に無理のない範囲でタスクを決めてみましょう。
それができたら、自分を少しだけ褒めてみる。そうやって、「小さな成功→肯定感→次の行動」という好循環を作り出すのです。こうした習慣が根づくと、思考が長期間停滞することは格段に減っていきます。
また、「一人では達成感が薄い」と感じる人は、周囲に宣言してみるのも効果的です。「一週間のうち三日は勉強するよ」と友人や家族に伝えるだけで、自然と行動を継続しやすくなります。
ただし、大切なのは「自分自身を追い込まない」こと。もし宣言通りにできなかったとしても、そこで自分を責めすぎると逆効果です。むしろ、「うまくいかなかった理由は何か?」を冷静に振り返り、次回に活かそうとする姿勢が大切です。
こうして、小さな気づきを逃さず、それを行動につなげる循環を回す。これこそが、思考の停滞を解消し、着実に前進していくカギといえるでしょう。
ここまで、第一章では、現代における「思考が停滞してしまう」様々な背景を見てきました。
「情報が多すぎる時代」の罠
他人の正義と自分の正義
自分にムカつく感情の正体
「無意識の思考」を意識化するプロセス
小さな気づきを行動につなげるコツ
いずれも、私たちの日常に潜む問題であり、どれか一つだけを意識すれば済むわけではありません。
しかし、こうした背景を正しく理解し、「自分が今どの状態にあるのかを把握する」だけでも、思考は不思議なほど動き出します。それまで抱えていたモヤモヤが、少しずつクリアになってくるのです。
次の章以降では、「負の感情をどうプラスに変えていくか」、あるいは「自分軸をつくるための具体的なプロセス」について、より踏み込んだ方法論や事例を紹介していきます。ぜひ、今回学んだことを踏まえながら、「自分にとってどんなアクションが必要か」を考えてみてください。
第一章のまとめとして強調したいのは、
「情報や他人の価値観に振り回される前に、自分の内面を見つめる時間を持つ」
「小さな気づきを逃さず行動につなげる」
という二点です。これは、自分軸を確立するうえで不可欠な土台となる考え方です。
この章で扱ったポイントをベースに、次章では「悔しさ」や「ムカつき」といった感情をうまく使い、行動エネルギーへと転換する方法を掘り下げていきましょう。
ここから先のステップを少しずつ実践に移すことで、あなた自身の思考は停滞の沼から抜け出し、自然と「やりたいこと」や「本当に目指したい姿」へ歩みを進められるはずです。
どうか焦らず「今の自分が何を望んでいるのか」に耳を傾けながら、一緒に進めていきましょう。
第二章:悔しさ・ムカつきを成長のエネルギーに変える
ここでは、「悔しさ」や「ムカつき」をいかにして成長の原動力に変えていくかを探っていきます
多くの人は、ネガティブな感情に振り回されることを避けようとしますが、実はそこにこそ大きなエネルギーの源が隠れているのです
一方で、怒りや悔しさだけに頼って走り続けると、やがて疲れきってしまい、ストレスや burnout(燃え尽き)に陥る危険もあります
大切なのは、感情に飲み込まれるのではなく、うまく制御しながら前向きに活かすこと
この章では、「何クソ精神」と呼ばれる悔しさの活用法や、「負のエネルギーとの付き合い方」、“六秒ルール”をはじめとした具体的な感情コントロールの技術を解説します
さらに、悔しさを行動のトリガーにする視点や、そこから生まれる自己肯定感の高め方についても掘り下げていきます
一:「何クソ精神」は本当に悪いのか
「あの人にバカにされた」「絶対に見返してやる」
そんな思いを抱えて、ガムシャラに頑張った経験はないでしょうか
一般的には、「ネガティブな動機で頑張るのは良くない」と言われることも多いですが、実際にはそうした「何クソ精神」が大きな突破口を生む場面が少なくありません
もちろん、いつでもどこでも怒りを燃やし続けるのは危険ですし、周囲との人間関係がギクシャクしてしまうおそれもあります
しかし、人間は感情を完全にゼロにできる生き物ではありません
それどころか、「悔しさ」や「ムカつき」は行動を起こすための強烈な着火剤でもあります
重要なのは、「どんな感情を原動力にするか」というより、「その感情をどうコントロールし、建設的な方向に昇華させるか」なのです
一-一:動機はネガティブでも、行動をポジティブにする
例えば、仕事で評価されなかったとき、悔しさに駆られて「もう絶対にこの上司を見返してやる!」と燃えるのは決して悪いことではありません
その代わり、「なぜ見返したいのか」「自分は本当はどうなりたいのか」を問い直す視点を持ちましょう
悔しさの奥に潜む「本当の望み」は何か
どんな行動なら、単なる怒りや対抗心を超えて成長につながるか
こうした問いかけをするだけで、ネガティブな動機がポジティブな行動に変わりはじめます
「上司を黙らせたいから努力する」を超えて、「より良い成果を出してプロとして認められたい」という前向きな目標に作り変えるのです
一-二:ネガティブ感情からの卒業ではなく、活用する視点
「ネガティブな感情を捨てたい」「全部ポジティブに考えたい」という声もよく耳にします
しかし、どんな人でも全くムカつかない状態になることはまずありません
むしろ、ムカつきが生まれたときに「これはどんな行動のエネルギーに変えられるか」と発想を転換できる人は、感情と上手に付き合えていると言えるでしょう
「何クソ!」と思ったとき、それは「今の自分にとっての課題や課題意識を強く感じるサイン」かもしれません
だからこそ、課題をクリアするための情熱として、その悔しさを利用するのです
以上のように、「何クソ精神」自体は決して悪いものではないということを理解しておきましょう
ただし、その精神が行きすぎて、自分や周囲を傷つける方向にエスカレートしないよう注意が必要です
そこで役立つのが、次に紹介する「負のエネルギー」との上手な付き合い方です
二:負のエネルギーとの上手な付き合い方
「悔しさ」や「怒り」といった負の感情は、確かに人を突き動かす強力なエンジンになり得ます
しかし、そのエンジンは使い方を誤ると、やがて自分を壊してしまうことになりかねません
イライラが募りすぎて人間関係が崩壊する、怒りに任せて体調を崩すなど、リスクは大きいのです
ここでは、「負のエネルギー」を健全に保ち、自己成長につなげるためのポイントを探ってみます
二-一:一度は「客観的に眺める」時間をもつ
「ムカつく!」と感じたとき、多くの場合、すぐに行動してしまうのは危険です
なぜなら、衝動的な行動や発言は、ほぼ確実にあとで後悔をもたらすからです
まずは一度、怒りや悔しさを客観視する時間を持つことが大切です
「どうして私はここまでムカついているのだろうか?」「相手の言葉のどこに反応しているのだろう?」
そう問いかけてみると、怒りの根本にある自分の課題が見えてくるかもしれません
それが、「評価されていないと感じる不安」なのか、「能力を試す場が与えられない不満」なのか
あるいは、「相手の態度に自分の過去のトラウマが反応している」場合もあるでしょう
客観視できると、負の感情が「やみくもな怒り」から「具体的に対処すべき対象」へと姿を変えます
二-二:「緩衝地帯」をつくるコミュニケーション法
時には、自分だけで感情を処理できないケースもあります
そんなときは、「緩衝地帯」となる場所や相手を確保しておきましょう
例えば、話を聞いてくれる友人やカウンセラーがいるなら、まずはそこに感情を吐き出して整理するのです
怒りにまかせて直接相手にぶつけてしまう前に「ワンクッション」入れることができます
「実はこんなことで怒っているんだけど、自分でも整理できなくて…」と素直に話してみると、意外な気づきを得られ、冷静に状況をとらえ直せるかもしれません
コミュニケーションでの衝突を最小限に抑えながら負の感情を上手に対処するコツとして、こうした緩衝地帯の存在を意識してみてください
二-三:感情を長期的な動機に結びつける
負の感情が沸き起こった瞬間は、強烈なエネルギーを感じるものの、それが長続きするかどうかは別問題です
気をつけないと、最初だけは頑張れても、途中で「どうでもよくなる」ことが少なくありません
そこで、「この悔しさを、三年後どんな自分になるためのエネルギーにしたいか」をイメージしてみてください
三年後、どんなスキルや成果を手にしていたいのか
今の怒りが、将来のどんな姿に結びついたら自分は納得できるのか
明確な長期ビジョンをもてば、負の感情もブレずに持続する糧になります
逆に言えば、ビジョンが曖昧なままだと、ムカつきのエネルギーは短命で終わり、後には虚しさだけが残ってしまうのです
三:“六秒ルール”で感情をコントロールする
感情コントロールの具体策として、“六秒ルール”は非常に有名です
「怒りのピークは六秒間」とも言われるように、怒りが湧いた瞬間に六秒だけ深呼吸したり、その場でカウントを数えたりするだけで、衝動的な行動をかなり抑えられます
三-一:怒りは瞬発力が高い感情
「悲しみ」や「不安」がじわじわと継続するのに対し、「怒り」は瞬間的に爆発しやすい**という特徴があります
例えば、メールで失礼な内容を受け取った瞬間に、「なんだコイツ!」とカッとなること、誰しも一度はあるはずです
しかし、その一瞬の爆発こそがトラブルの元
怒りがピークに達している間に返信してしまうと、冷静さを失った文章を書いてしまい、後で取り返しがつかなくなるかもしれません
だからこそ、怒りが一番高い熱量を放つ「六秒間」をやりすごす意識が大事です
三-二:具体的な“六秒”対策
「六秒」が長いか短いかは人によって感覚が異なりますが、深呼吸や数を数えるといったルーティンを入れるだけで衝動がスッと落ち着くのを感じられるでしょう
例えば、心の中で「一、二、三、四、五、六」と数える
あるいは、「一度席を立ち、六秒以上かけて水を飲む」
ほんの些細な行動ですが、脳が「怒りモード」から「客観モード」に切り替わるきっかけを与えてくれます
ポイントは、ただ数を数えるだけでなく、「自分の身体感覚を意識する」こと
呼吸に集中する
手のひらや足の裏の感覚を意識する
周囲の音を聞きながらゆっくり数える
こうすることで、怒りという狭い視野から一旦抜け出して、冷静な判断を取り戻しやすくなるのです
三-三:“六秒”を超えた先の行動選択
六秒間で怒りの衝動が多少なりとも和らいだあと、あなたは「次にどうするか」を選ぶことができます
何事もなかったかのようにスルーする
思いをきちんと言葉にして相手に伝える
さらに時間をかけて冷静に文書をまとめる
どの行動を選ぶにしても、衝動による失敗を回避できるわけです
この“六秒ルール”を習慣化していくと、怒りを感じたときの最初の反応が格段に変わってきます
結果として、「ネガティブな感情が湧いたとき、自分で方向性をコントロールできる」という自信につながるのです
四:「行動を加速させるトリガー」としての悔しさ
ここまで、負の感情がもたらすエネルギーや、そのコントロール方法を紹介してきました
感情をコントロールできるようになると、次に必要なのは行動の加速です
悔しさやムカつきが生じたら、何をトリガーにして具体的なアクションを起こすかを意識してみましょう
四-一:感情→行動を結ぶ「きっかけの言葉」
例えば、落ち込んだり、怒ったりしたときに使う「お決まりのフレーズ」を用意しておくのも一つの手です
「そうか、これはチャンスだ」
「ここから学びを得るぞ」
「やってやるさ/見返してやる」(笑いながら言うと意外と冷静になれる)
こうした自分だけの合図を決めておくと、「感情」から「次の行動」へスムーズにつなげることができます
ポイントは、できるだけポジティブなニュアンスを含む言葉にすること
負の感情を引きずるのではなく、そこから一歩踏み出すイメージを意識します
四-二:小さな行動をセットしておく
悔しさをエネルギーに変えるには、すぐに取りかかれる具体的な行動を準備しておくのが効果的です
例えば、「イライラしたら英単語帳を開く」とか、「自分のアイデアノートに書き込む」など、小さな行動で構いません
大事なのは、感情が湧き上がった瞬間に「どう行動するか」を決めておくことです
そうすることで、負の感情が湧いたとき、意識が行動の方へ自然に向かうようになります
結果的に、悲観的になって止まるより、ポジティブな方向へ流れやすいわけです
四-三:目標と結びつけると、より持続する
もしあなたが長期的な目標を持っているなら、悔しさが湧いたときこそ目標を再確認するチャンスです
「この目標のために、今できることは何だろう?」
「悔しい思いを糧に、どんなスキルを磨けばいいか?」
目標と結びつけることで、悔しさは単なる「不快な感情」から「やる気スイッチ」へと変貌します
これは、スポーツ選手がライバルの存在を糧にトレーニングを続けることと同じ原理です
「相手に負けたくない」→「練習を積んで己を高める」という構図
あなたの人生においても、悔しさが起爆剤となり得るのです
五:自己肯定感とモチベーションの循環を作る
最後に、この章のまとめとして、悔しさやムカつきを上手に活用しながら自己肯定感を高め、モチベーションを循環させるポイントを整理します
五-一:感情に振り回されるのではなく、必要に応じて使う
「感情を押し殺す」必要はありませんが、「感情に支配される」のは避けましょう
悔しさやムカつきが生じたとき、自分の心に問うてほしいのは「どう使おう?」です
「この怒りは何を教えてくれている?」
「次にどんな行動を起こすヒントを与えてくれている?」
自分への問いを通じて、感情を“ツール”のように扱えるようになると、自己肯定感は自然と上向きになります
なぜなら、「自分には感情をコントロールできる力がある」と実感できるからです
五-二:小さな成功を積み重ねる
悔しさを原動力に、実際に行動してみて得られた小さな成功体験は、自己肯定感を大いに育てます
「悔しくて始めた学習だけど、意外と力がついてきた」
「見返したい気持ちでSNS運用を頑張ったら、フォロワーが少しずつ増えた」
こうした小さな達成感が、「自分にもやれるかも」という自信の土台になるのです
負のエネルギーから行動を起こし、それがポジティブな結果を生むとわかれば、次も「やってみよう」と思えるようになる
これこそが、モチベーションの循環が回り始める瞬間です
五-三:悔しさ→行動→達成→さらに自分を肯定する流れ
まとめると、悔しさやムカつきが生じたら、それを行動のトリガーにする
行動によって少しずつ成果を積み重ねると、「自分はできる」と実感する
結果として、自己肯定感が高まり、次の挑戦へのモチベーションがさらに湧き上がってくるのです
もちろん、何度も言うように、やり過ぎは禁物です
心や体が疲弊してしまっては、成長のサイクルどころではありません
健全な範囲で、感情を燃料として使い、行動と成果を循環させることが、長期的な自己成長において非常に重要です
この第二章では、「何クソ精神」の正体や、「負のエネルギーをいかに活かすか」について掘り下げてきました
ネガティブな感情は一見、避けたいものに思えますが、実はそれが大きな行動力を生むのだということを理解していただけたでしょうか
「あの人にバカにされた」
「評価されなくてムカつく」
「クライアントに理不尽な要求を突きつけられた」
こんな瞬間は、人生において望ましくない出来事にも思えますが、それをどう捉えるかで結果は大きく変わります
「悔しいから、もっと勉強してやろう」
「怒りを飲み込む代わりに、自分のスキルアップに投資しよう」
「ムカつくということは、まだ自分はこの課題に本気で向き合える余力がある証拠だ」
そう考えると、ネガティブ感情がポジティブな成果に直結していくわけです
ただし、負の感情をうまく扱うには、衝動を抑える技術や、目標と結びつける発想、周囲との関係を壊さないコミュニケーションなどの工夫が必要です
この章で紹介した“六秒ルール”や「緩衝地帯」の考え方、そして「小さな行動と長期ビジョンをセットで考える」方法をぜひ活用してください
次の章では、自分の価値観を知り、抽象化と具体化のプロセスを繰り返すことで「自分軸」をさらに太くしていく方法を取り上げます
ムカつきから行動へつなげる力は、自分が何を求め、どう生きたいかが明確になればなるほど、より効果的に発揮されるものです
悔しさをエンジンに変えた先に待っているのは、「今までの自分」を乗り越えた新しい一面かもしれません
どうか、負の感情をただのストレスで終わらせず、あなた自身の成長に不可欠な燃料として使ってみてください
この章が、あなたの「ネガティブな感情」に対する見方を少しでも変え、次の行動につなげるヒントとなれば幸いです
第三章へ進む前に、今一度、あなたの中にある悔しさやムカつきのリストを書き出してみてはいかがでしょう
そこに、今すぐ着手できる「小さな行動」と「長期的な目標」をセットで書いてみることで、感情→行動→達成→自己肯定感の好循環をスタートさせる準備が整うはずです
ぜひ、負の感情を味方にして、あなたらしい成功と成長を手に入れてください
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第三章:自分の価値観を知る──抽象化と具体化を往復する
「ビジネスモデル」を買ってみたくなる心理
「自分には何か足りない気がする」
「今のままでは将来が不安だから、新しいノウハウを手に入れたい」
こうした思いから、私たちはつい「ビジネスモデルを買う」という行動をとりがちです。例えば、SNSで話題になった「副業で月数十万円稼げる方法」や、セミナー・教材などを購入することも珍しくありません。そこには、「自分らしい生き方」を模索する一方で、手っ取り早く稼ぎたい・結果を出したいという焦りが隠れている場合も多いのです。
しかし、実際にそうしたビジネスモデルを買っても、「使いこなせない」「思ったほど成果が出ない」というケースは少なくありません。なぜなら、それが「自分の価値観に合っているかどうか」を十分に検討しないまま、いわば表面的な魅力に飛びついてしまうからです。
ここでまず大切なのは、「なぜビジネスモデルを買ってみたくなるのか」という心理そのものを理解することです。
私たちがこうした行動をとる背景には、「どこかで自分に足りないものを埋めたい」という思いがある場合が多いのです。ビジネスモデルは、その埋め合わせをしてくれそうな「魔法の杖」のように見えるわけですね。
たとえば、次のような心理が働いていないでしょうか。
「今のままでは将来が不安。だから新しい手段やノウハウが必要だ」
「実績のあるモデルに乗っかれば、自分も成功できるかもしれない」
「“やり方”さえわかれば、すぐにお金が手に入るはず」
これらはいずれも、人間が抱える自然な欲求です。安心や成功、迅速な成果を求めるのは決して悪いことではありません。ただし、この心理だけに突き動かされてしまうと、結果として「本当に自分のやりたいことと合致しているのか」をじっくり考えないまま突き進むことになります。そうしたときに陥りがちなのが、「買ったはいいが活かしきれない」「表面のテクニックに振り回されて本質を見失う」といった状況です。
そこで本章では、「ビジネスモデル」という言葉だけにとらわれず、自分に合った挑戦を形にしていくための視点として、「抽象化と具体化の往復」の重要性をお伝えしていきます。自分の価値観と照らし合わせながら、具体的に行動を起こすためにはどうすればよいのか。そのヒントを得るためにも、まずは身近な例としてアサイーボウルをめぐるストーリーを見てみましょう。
アサイーボウルから見えたスモールビジネスの可能性
「自分が好きなものを形にして、誰かに喜んでもらいたい」
このシンプルな思いが、スモールビジネスを立ち上げる大きなきっかけになることがあります。ビジネスと聞くと、大きな投資や専門的な知識が必要だと思い込んでしまいがちですが、「まずは小さく始めてみる」という方法は、意外なほど多くの人にとって取り組みやすいのです。
たとえば、「アサイーボウルを自分でつくってみる」という話が出てきたとき、それがどんなビジネスの可能性を秘めているのか、最初は想像しにくいかもしれません。アサイーボウルは、もともと海外で人気になり、日本でもヘルシー志向の方を中心に広がってきた食品です。フルーツやグラノーラなどと合わせておいしく食べられ、その健康効果も注目されています。
では、なぜアサイーボウルを例に挙げるのか。そこには、「自分が本当に好きなものを“商品”にしてみる」という発想が含まれているからです。大がかりな店舗を構えるのではなく、「キッチンで作れる程度の量」から始め、友人や知り合いにふるまってみる。あるいはSNSで「試しに販売してみます」と告知して、少人数のお客さんに届けてみる。こうしたスモールスタートなら、それほど大きなリスクを取らなくてもすみます。
そして何より、「自分自身が好きで続けられる」というのは非常に大切な要素です。流行しているからという理由だけで選んだものは、飽きやすいし根気が続かない場合が多いです。逆に、自分がもともと好きなものであれば、学びや改善のモチベーションを保ちやすく、失敗してもそこから得られる学びを次につなげやすいというメリットがあります。
アサイーボウルを例にとると、「ヘルシー志向の人に喜ばれる食品を作りたい」「スイーツを通じて体に良いライフスタイルを提案したい」「おしゃれな朝食や軽食を広めたい」など、その人が何を大事に思っているかが自然と表れてきます。ここでポイントとなるのは、「自分が何を通じて、どんな価値観を提供したいのか」という視点を見つめ直すことです。
もともと、自分にとっては当たり前のように大切にしている価値観が、他の誰かにとっては新鮮な提案や嬉しいサービスになることがよくあります。アサイーボウルの例は、そのことをわかりやすく示してくれるだけでなく、「自分が好きなものを、まずは小さく始めて試してみる」というスモールビジネスの取り組み方を体現しています。
“他者から頼られる”ときに生まれる力
「頼まれると、なぜかやる気が出てくる」
これは多くの人に当てはまる心理ではないでしょうか。特に、自分自身のために行動することは苦手でも、「誰かの力になりたい」と思うと頑張れるタイプの人は少なくありません。
実際、「スモールビジネス」を始めるとき、あるいは副業や新しいチャレンジに踏み出すとき、「誰かからの要望」「誰かのために役立ちたい想い」が背中を押してくれる場面は多いのです。たとえば、前述のアサイーボウルの例でも、友人から「食べてみたい」「作り方を教えてほしい」と言われたことがきっかけで、一歩を踏み出す人がいます。
実のところ、こうした「誰かのリクエストに応じる」というスタイルは、自分軸を見つけるうえでも非常に有効です。なぜなら、人からの頼みごとを通じて、「自分は何を得意としているのか」「どんな価値を提供できるのか」を客観的に把握できるからです。
ただし、注意すべきなのは、「頼られること」に振り回されすぎないという点です。頼まれると嬉しいあまり、際限なく引き受けすぎて疲弊してしまうケースもあります。そこでは「自分が本当にやりたいことなのか」を見極める視点が必要になります。「やりたいからやる」のか、「断れないからやる」のかを区別しないと、自分軸がどんどんぶれてしまうのです。
一方、「他者から頼られる」ことで得られるエネルギーがポジティブに働くとき、私たちは大きな成長を遂げることができます。それはまさしく、「外部から与えられた目的」と「自分の内面にあるモチベーション」の調和とも言えます。自分の大事にしている価値観と、他者のニーズや期待が重なるとき、行動力も増すし、達成感も得やすくなるのです。
この章で取り上げている「価値観」というキーワードは、まさに「何を大切に感じるのか」「どう在りたいのか」を問うものです。他者の期待に応えているときも、それが自分の価値観に反していないかどうか、あるいは自分の価値観を生かせる形で相手をサポートできているかを見極めることが肝心です。
自分のコアを言語化する「抽象化→具体化」のステップ
「自分の価値観をどのように明確化するか」
これこそが、本章の中心的なテーマと言えます。前述の「ビジネスモデル」や「アサイーボウル」の例を見てもわかるように、重要なのは「自分が本当に重んじているもの」を掘り下げることです。しかし、多くの人はこれを頭の中で考えているだけで、しっかりと言語化する機会を持てていません。
そこで役立つのが、「抽象化→具体化」を繰り返す思考プロセスです。これは、コーチングの中でもよく使われる手法で、以下のようなステップを踏みます。
(ステップ一)感情や直感、ざっくりとした気づきを抽象化する
まずは、なんとなく抱いている感覚や憧れ、悔しさなど、言語化しにくいものを自由に書き出してみます。「SNSで人気のある人を見て、自分もそうなりたいと思った」「おしゃれなカフェを作ってみたい」「誰かの健康をサポートできる仕事がしたい」など、ここでは具体的な計画に縛られず、思いつくままに抽象的な欲求を列挙していきます。
(ステップ二)抽象的なキーワードを整理し、大事な共通項を見つける
書き出したものを見比べると「自分にとってこれは共通の価値かもしれない」というキーワードが浮かび上がってきます。たとえば、「健康」「コミュニティ」「美しさ」「経済的な安定」「自由度」などなど。ここで共通する価値観が見つかると、「ああ、私はこういうことを本当は大事にしていたのか」と気づけるのです。
(ステップ三)整理した価値観をもとに具体的なアクションを考える(具体化)
抽象的に整理した価値観から、「では、実際にどんな行動を起こすか」を考えます。もし「健康」と「美しさ」を重視する価値観に気づいたなら、たとえばアサイーボウルのように体にいいスイーツや軽食を作ってみる、あるいは美容や運動に関するサービスを副業で始めてみるなど、具体的なアイデアへと落とし込むわけです。
(ステップ四)行動して得られた感触や結果を再度抽象化し、学びを深める
実際に行動したら、必ずしも想定通りの結果になるとは限りません。むしろ、「想像以上に楽しかった」「苦痛だと思った」など、予想外の発見があるでしょう。
そこで、その発見を再び「なぜ楽しかったのか」「何が苦痛だったのか」と抽象化し、自分の価値観やコアがさらに明確になるようにフィードバックします。
このように、「抽象化と具体化を往復」することで、自分のコアが少しずつはっきりしてきます。最初はぼんやりとしていた価値観が、行動とフィードバックを繰り返すことで、「これこそが自分にとって大事なものだ」と自信を持って言えるようになるのです。
コーチングセッションでも、クライアントが「ビジネスモデル」を追いかけるばかりで深掘りが不足している場合や、「好きなことを形にしたい」と言いながら具体的な一歩を踏み出せないときには、必ずこの「抽象化→具体化の思考プロセス」を繰り返す場を設定します。なぜなら、本質的に自分が求めるものを捉えられていないと、行動してもうまくいかず、また別の新しいノウハウやモデルを探し続けてしまうからです。
価値観に合わないトレンドを捨てる勇気
「みんながやっているから」「稼げると聞いたから」という理由だけで取り組むビジネスや副業は、長続きしないことが多いものです。ここまでの流れからもわかるように、「自分のコア」と噛み合わないトレンドを追いかけるだけでは、エネルギーの無駄遣いになりがちなのです。
たとえば、SNSを見ていると、「今はこれが旬!」「これをやらないと時代に乗り遅れる!」といった言葉が日々目につきます。確かに、トレンドを活用してうまく成果をあげる人もいますが、それは「自分の価値観とトレンドがたまたま噛み合っている」場合に限ります。もし自分の心の奥底で「これはなんだかしっくりこない」「自分が本当にやりたいことじゃない」と感じているなら、そこに時間や資金を投下してもモチベーションを保つのが難しく、結果として中途半端な終わり方をしてしまう可能性が高いのです。
「価値観に合わないトレンドを捨てる」というのは、一見もったいないように感じるかもしれません。しかし、これは「自分にとって本質的に必要なことに集中するための勇気」でもあります。誰もが同じ情報を得られる現代において、差がつくのは「何を選び、何を捨てるか」という判断力です。周囲からは「もったいない」「せっかく流行っているのに」と言われるかもしれませんが、そこをあえて捨てることで、「自分ならではの取り組み」にエネルギーを注ぐことができるのです。
もちろん、「トレンドを完全に無視しましょう」というわけではありません。自分のコアと合致するものであれば、トレンドを上手に取り入れることでより大きなチャンスをつかめるでしょう。しかし、「やらねばならない」という脅迫観念に支配されていると感じたら、一度冷静に「自分の価値観との整合性」をチェックしてみることをおすすめします。もし整合性が薄いとわかったら、きっぱり手を引く勇気も必要です。そのほうが、長期的には「自分らしく成果を出せる」道へと近づくはずです。
この章のテーマである「自分の価値観を知る」というプロセスは、単に頭の中で考えるだけでは身につきません。「抽象化→具体化」のプロセスを何度も回し、自分が本当に大事だと思うものを言語化し、それを軸に行動を起こす。その行動からのフィードバックを再び抽象化して深めていく……この繰り返しで、自分軸がしだいに強固になっていくのです。
最後に、本章をまとめると、以下のポイントが浮かび上がります。
「ビジネスモデルを買ってみたくなる心理」には、安心や成功への強い欲求がある
「アサイーボウルから始めるスモールビジネス」など、自分が好きなものをまず小さく形にしてみるアプローチが有効
「他者から頼られる」ことで生まれるエネルギーを活かしつつも、やりすぎて自分軸を見失わないよう注意する
「抽象化→具体化」という往復を通じて、自分のコア(価値観)を明確化する
「トレンドを捨てる勇気」を持ち、自分に合わないものに振り回されないようにする
これらを踏まえて、次の章ではさらにAI時代に必要とされる「問いを立てる力」へと話を進めていきます。AIの進化が加速する中、「何を問い、何を判断していくのか」がますます重要になってきます。自分の価値観をしっかりと把握し、行動に落とし込む力を身につけることができれば、時代の変化に振り回されるのではなく、むしろチャンスをつかむ側になれるはずです。
そんなAI時代を前にしてもブレない自分軸を築くために、まずは今回お伝えした「自分の価値観を知る」手法をぜひ日常のなかで試してみてください。何か大きな決断をする前に、「それは自分の価値観とマッチしているのか」と自問するだけでも、行動の質は大きく変わります。焦りや周囲の声に惑わされず、心から納得できる形で挑戦を始めるためにも、この章で紹介したエッセンスを活かしていただければ幸いです。
第四章:AI時代に備える――「問い」を立てる力
AIが加速度的に進化する時代、私たちはこれまでにないほど多くの選択肢を手に入れると同時に、情報の洪水にさらされながら生きることになりました。
「チャットGPTに仕事を奪われるのではないか?」
「AIに判断を任せすぎて、自分で考える力が衰えないだろうか?」
そんな不安や疑問を感じる方は少なくありません。しかし、実はこうした状況は「新たな可能性」をもたらす大きなチャンスでもあります。なぜなら、AIの進化によって便利になった一方で、私たち人間だからこそできることがより際立ってくるからです。
この章では、「AI時代を生きるために必要な“問い”を立てる力」に焦点を当てます。AIと共存するためには、ただ最新のツールや技術を追いかけるだけではなく、「自分が本当に求めるものは何か?」という視点を持ち続けることが大切です。ここでは、五つの小見出しに分けて、その具体的な考え方と実践のためのヒントをお伝えします。
チャットGPTとの付き合い方は“問い”で決まる
「チャットGPTが何でも答えてくれるから、自分で考えなくてもいい」
そう思う人が増えているとしたら、それは少し危険な兆候かもしれません。
なぜなら、チャットGPTに何を問うかが、最終的な結果を左右するからです。もし的外れな問いを立てれば、いくらAIが優秀でもあなたにとって有益な答えは返ってきません。結局、質の高い答えを得るためには、質の高い問いを立てる必要があるのです。
ここで強調したいのは、「問い」のクオリティこそが、あなたの生き方や仕事の方向性を形作るということです。AIが答えを導き出すプロセスは、膨大なデータをもとにパターンを算出しているにすぎません。人間が抱く「自分ならではの疑問」こそが、新しいアイデアや価値を生み出す原動力になるのです。
たとえば、AIの助けを借りてビジネスアイデアを検討する場合、「この業界の成功事例は?」と問うだけでなく、「なぜその事例が成功したのか?」「自分の価値観や強みとどう結びつくのか?」といった深い問いを組み合わせると、より具体的かつ自分に合った答えが見えてきます。
良い問いを立てるために役立つアプローチとしては、まず自分が抱えている課題や興味をできるだけ言語化してみることが大切です。さらに、「その課題は本質的に何を解決しようとしているのか?」を何度も掘り下げることで、初めて明確なゴールや目的が見えてきます。
「なぜチャットGPTに聞こうとしているのか?」
「何を知りたいのか?」
こうした問いこそが、私たちの思考を深め、AIを使いこなすための第一歩になるのです。
思考の外注化が進む時代の自己管理
AIの発達は、思考の外注化を加速させるとも言われています。たとえば、文章を書くときにAIが自動で要約や推敲をしてくれる機能を使えば、確かに時間と労力は大幅に削減できます。
しかし、「楽だから」という理由だけで思考のプロセスをすべてAIに任せてしまうのは危険です。自分の頭で考えないまま成果物だけを受け取っていると、「自分で生み出す力」が育ちません。アイデアを思いつく面白さや、問題を解決する喜びを味わう機会が失われるのです。
もちろん、AIを使うこと自体が悪いわけではありません。時間やリソースが限られている中で、AIのサポートを上手に活用するのは有効な戦略です。ただ、「何をAIに任せて、何を自分の手でやるのか?」という線引きを意識的に行うことが大切です。
具体的には、「このタスクを自分自身がやる意義は何か?」と自問してみましょう。たとえば、文章を書くプロセスを通じて自分の考えを深めたいなら、AIの自動生成に頼りきるのではなく、自分が書いている意図や感情を反映させる部分は残すといった工夫が考えられます。あるいは、単純な作業はAIに任せ、アイデアの根幹や最終チェックは自分で行うなどの役割分担も有効です。
要するに、思考を外注することのメリットとデメリットを見極め、どこまで利用するかを決める「自己管理力」がますます重要になるというわけです。やみくもに「便利だから任せきりにする」のではなく、「自分にとって必要な部分を自らがコントロールする」という姿勢が、AI時代の生き方を左右します。
AIに奪われない仕事とは何か
「AIに奪われない仕事」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。確かに、ルーティンワークや定型化しやすい作業は、AIやロボットに置き換えられやすい傾向にあります。
しかし、だからといって「AIにできる仕事を避ける」という消極的な発想だけでキャリアを考えてしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。むしろ、AIが得意とする分野を活かしつつ「人間でないとできない付加価値」を提供できる人こそ、これからの時代に大きく飛躍できる可能性を秘めているのです。
たとえば、AIはパターン認識や大量データの処理に優れていますが、「相手の立場を想像して寄り添う」とか、「新しい価値観を創造する」といった柔軟な思考はまだまだ人間ならではの強みと言えます。特に、コミュニケーション力や共感力はAIが苦手とする領域でもあるため、そこに自分の得意分野を掛け合わせることで独自の仕事を生み出すことが可能です。
具体例としては、コーチングやコンサルティングのように「相手の話をじっくり聴き、背景を読み取り、最適な解を一緒に作り上げる」職種が挙げられます。AIが分析レポートを出すことはできても、その人の価値観や感情を理解して伴走するのは人間にしかできない部分が大きいからです。
あるいは、マーケティングやクリエイティブの領域でも、AIの生成機能を補完的に使いながら、人間の直感やユーモア、文化的背景への深い洞察を組み合わせることで、AI単独の成果をはるかに超えるクリエイションが期待できます。
このように、「AIではなく、AIと一緒に成果を出す」という視点を持てば、仕事の幅はぐんと広がります。AIに奪われない仕事は、決して「AIが苦手な仕事」に限定されるわけではありません。むしろ、AIが得意とする部分を活かしつつ、自分にしかない魅力やスキルで差別化することが、これからのキャリア形成のカギになるのです。
「自分で考え続ける」技術
AI時代は、「情報を手に入れる」こと自体が容易になります。以前なら専門の知識や長年の経験がなければ難しかった領域でも、チャットGPTに問い合わせればおおまかな概要を学べるケースも多いでしょう。
しかし、情報を得るだけで終わってしまっては、「知っているつもり」になって満足してしまう危険があります。私たちが本当に身につけるべきは、「自分で考え続ける」技術です。
具体的には、以下のようなステップを意識するとよいでしょう。
疑問や課題をできるだけ自分の言葉で整理する
AIに質問する前に、「自分は何に困っていて、どんな答えを求めているのか?」を一度書き出してみるのです。これをするだけで思考が整理され、AIに対する問いも自然に深まります。AIから返ってきた答えを鵜呑みにせず、検証する
AIが示した情報やアイデアは、あくまで仮説と捉えてください。「これは本当に正しいのか?」「自分の経験や現場感覚とどう違うのか?」と考えを巡らせることで、自分なりの納得感が得られます。「別の可能性はないか?」を常に問い続ける
AIは膨大なデータをもとに一般的な回答をしますが、そこから外れたユニークな視点を思いつくのは人間の得意分野です。「ここから新しいアイデアが生まれるとしたら何だろう?」と問いかけることが、思考の創造性を保つポイントです。
こうしたプロセスを踏むと、「AIが言うから正しい」ではなく、「自分が納得できる形にアレンジする」思考が身につきます。
「忙しくて自分で考える余裕がない」という声もありますが、むしろAIに頼れる部分が増えたからこそ、考える時間を確保することがより重要になったともいえます。情報収集や単純作業をAIに任せ、その余った時間と労力で自分の頭を動かすのがこれからの理想的な働き方ではないでしょうか。
AIと共創していくためのマインドセット
最後に、AI時代をたくましく生き抜くために必要な「マインドセット」について考えてみましょう。
まず、「AIは脅威である」という捉え方を変えることが大切です。確かに、従来のやり方を頑なに守っていると、仕事がAIに代替されてしまうリスクは否定できません。しかし、AIをパートナーとして捉え、自分の能力やアイデアをより発揮するための補完ツールと見ることができれば、一気にチャンスが広がります。
例えば、日常業務の一部をAIに委託し、空いた時間で「新しいサービスを考案する」「顧客と直接コミュニケーションをとって信頼関係を築く」など、人間ならではの活動に力を注ぐことが可能になります。そうすることで、より大きな価値を生み出せるようになるのです。
次に、「変化を受け入れる」という姿勢も欠かせません。AIの進化は止まることを知らず、数年先には想像もしなかった新機能が登場しているかもしれません。そんなとき、「もうこれ以上は学ぶのが面倒だ」と拒否反応を示すのではなく、「どんなふうに使えばもっと面白い結果を得られるだろう?」という好奇心を持ち続けることが大切です。
また、「自分なりの哲学や価値観を持つ」ことも重要になります。AIはあなたに代わって判断してはくれません。最終的な意思決定を下すのは人間の役目です。ここで、「自分が何を望み、何を大切にしているのか」という自分軸が曖昧だと、AIが出す結果に振り回されてしまいがちです。反対に、自分の大切にしているものを軸に据えていれば、AIの結果をどこまで採用するか、どこからは無視していいかが明確になるでしょう。
さらに、失敗を恐れないマインドも必要です。AI時代は技術やツールが次々とアップデートされるため、常に試行錯誤の連続です。「これをやってみたけど合わなかった」「違う方向でやり直した」というプロセスを経るうちに、思わぬ発見やイノベーションが生まれます。
結局のところ、AIと共創するためのマインドセットとは、「ポジティブな柔軟性」を培うことだといえます。固定観念にとらわれず、新しい可能性を楽しみながら、自分自身の価値観と合致する形でAIを活用していく――それが、これからの時代に必要とされる姿勢ではないでしょうか。
以上、第四章:AI時代に備える――「問い」を立てる力では、AIと共存・共創していくために重要な視点を五つの小見出しで整理してきました。
「チャットGPTとの付き合い方は“問い”で決まる」
「思考の外注化が進む時代の自己管理」
「AIに奪われない仕事とは何か」
「自分で考え続ける」技術
「AIと共創していくためのマインドセット」
これらを通じて伝えたかったのは、AIが進化すればするほど、「人間が考える力」の重要性が増すということです。表面的にはAIが万能に見えても、本当に価値あるアイデアや仕事は「自分で問いを立て、考え、行動する」ことからしか生まれません。
あなたはAIに何を任せ、どの領域で自分が輝くつもりですか?
どんな問いをAIに投げかけ、どんな可能性を切り開きたいですか?
こうした問いかけを続けることこそが、AIの時代をより豊かに、自分らしく生きる鍵となります。第五章では、さらにもう一歩踏み込んで、「心と体を結ぶ――記号設置問題」について考えていきましょう。そこでは、頭で理解していても行動できない理由や、身体感覚と納得感の関係性などに焦点を当て、人間にしかない本質的な強みを掘り下げていきます。
どうぞ引き続き、この思考の旅をお楽しみください。あなたの問いと行動が、AI時代における新たな可能性を拓いてくれるはずです。
第五章:心と体を結ぶ――「記号設置問題」とは何か
本書のここまでの章で、私たちが「自分軸」を持って生きるために必要な思考法や、感情をコントロールし行動に移すポイントなどを取り上げてきました。
しかし、どれほど素晴らしい方法論やノウハウを学んだとしても、「頭でわかっているのに、なぜか行動に移せない」という壁にぶつかることがあります。
そして、頭では理屈が通っているはずなのに心が動かず、「自分が本当にやりたいことが見えてこない」と感じることもあるかもしれません。
こうしたギャップはなぜ起こるのでしょうか。
そのヒントのひとつとして、本章では「記号設置問題」という視点を紹介します。
この言葉は一見難しそうですが、噛み砕いて言えば、「理論や言葉で理解していることを、どのように身体感覚へ結びつけるか」というテーマを示したものだと考えてください。
私たちは日々の生活のなかで、頭(思考)と体(感覚)が必ずしも一致していない場面があると気づきます。
本章では、この「頭と体を結ぶ」とはどういうことか、そして「腑に落ちる」という感覚を得るために必要なステップは何かを探っていきます。
言葉で説明されてもピンとこなかったものが、身体的な体験とリンクすると一気に理解が深まる――そんな経験を、あなたもお持ちではないでしょうか。
第五章では、そのメカニズムを紐解きながら、自分軸をより強固に育てるための具体的なヒントを提示していきます。
一 言葉が“腑に落ちる”瞬間とは
私たちは普段、「あ、それわかった!」とか「腑に落ちた!」といった表現を使います。
この「腑に落ちる」という感覚は、単に頭で理解するだけではなく、身体的な納得感をともなってくるのが特徴です。
たとえば、スポーツのコーチが「こう腕を振ったら速い球が投げられるよ」と理論を説明してくれたとします。
頭でその理屈を理解していても、初めはなかなか身につかず、実際にやってみると腕の振りがぎこちなく感じる――そんなことがよくあります。
ところがある日、ふとした瞬間にフォームがハマり、「あ、こういうことだったのか!」と体感として理解できるタイミングが訪れるのです。
これがスポーツにおける“腑に落ちる”瞬間です。
同じように、ビジネスの場面や日常生活でも、「自分で考えて行動する」というプロセスを踏むなかで、言葉での説明だけではつかみ切れなかったものが、一度体験してみることで身体にしっくりくる瞬間があります。
このとき、「記号設置問題」の観点からは、“言葉(記号)”と“身体感覚”が結びついたと言えます。
言葉は抽象的な「記号」にすぎません。
たとえば「悔しさ」という言葉を聞いたとき、私たちの頭の中には「何かに敗北したり、思いどおりにならなかったりするときに湧く感情」といった定義が浮かぶでしょう。
しかしその定義だけでは、実際に悔しさを味わったときの、胸の奥がじりじりと痛むような感覚までは伝わりません。
言葉と身体感覚が結びついてはじめて、“ああ、あれが悔しさなのか”と自分の中に深い理解が生まれるのです。
そして、私たちが心から「行動してみよう」と思う原動力は、往々にしてこの身体感覚をともなった理解に根ざしています。
逆に言えば、どれほど素敵な言葉や論理を並べられても、身体的な納得を得られなければ、「なんだかよくわからないけど、それいいね」止まりになってしまうのです。
二 頭でわかる→身体で納得するプロセス
「頭では理解しているのに、なぜ行動できないのか?」という疑問は、多くの人が抱える悩みのひとつでしょう。
ここには、**「頭でわかる」という段階から「身体で納得する」段階へ至るまでのプロセスが欠落している可能性があります。
ビジネスや学習の場面においては、セミナーや動画教材で知識をインプットし、それをメモにまとめたり、頭で整理したりすることがあります。
インプットの時点では、「なるほど、そういうやり方か」と理解できた気になるものですが、実際に手を動かして試してみると、なかなか上手くいかないこともしばしばです。
コーチングでもよく登場する話ですが、「自己肯定感を高めるためには、自分をほめる習慣を持つと良い」と聞き、納得したつもりでも、いざ日常生活に取り入れようとすると三日坊主で終わってしまう――なんて経験はないでしょうか。
ここには、「頭の理解」から「身体的な習慣」へと落とし込むプロセスを埋める作業が欠けているのかもしれません。
具体的には、まず「自分は何ができそうか」をイメージしたうえで、実際に行動してみることが欠かせません。
行動してみると最初はぎこちなくても、失敗や試行錯誤を繰り返すうちに、「こうやるとしっくりくる」という身体感覚をつかめる瞬間が出てきます。
この連続が「身体で納得する」プロセスであり、無理なく行動を継続できるポイントでもあるのです。
さらに、行動を通じて得た体感を自分の言葉で再確認すると頭と体がより深く連動し「理屈+実践」の相乗効果を得やすくなります。
この一連の流れを意識するだけでも「やってみたいけれど、どうせ続かない」という思い込みを外しやすくなり、自分軸を身につける道がぐっと開けてくるのです。
三 感情・感覚を見つめ直す「体験」の重要性
「身体で納得する」ために欠かせないのが、言うまでもなく「体験」です。
頭で理屈を聞いただけでは得られない学びは、実際に自分が体を動かし、感情を揺さぶられるシーンのなかに存在します。
ここで覚えておきたいのは、体験は何も壮大な挑戦や大掛かりなイベントだけを指すわけではないということです。
日々の生活のなかで、小さな新しい行動を試してみたり、ほんの少し踏み込んだコミュニケーションをとってみることも、立派な「体験」と言えます。
例えば、「いつも同じ道で通勤しているが、あえて違うルートを歩いてみたら、思いもよらない発見があった」なんてこともあるかもしれません。
この小さな変化によって「新鮮な気持ちで一日を始められた」とか「いつもの思考パターンから抜け出せた」という身体感覚を得る場合もあるでしょう。
こうした些細な行動であっても「なるほど、こうすると気分が変わるんだな」という納得感が生まれれば言葉(記号)と体感覚の結びつきはより強固になります。
感情についても同様で、「自分がどんなときに嬉しいのか」「どんなときに嫌だと感じるのか」という、自分の内面をあらためて観察する時間を持つことで、頭と体のズレを埋めるヒントが得られます。
意外にも、「自分が本当に嫌だと思っていること」を正確に把握していないケースも多いのです。
周囲の期待や常識に合わせて動いているうちに「嫌だけど我慢するのが普通」と決めつけてしまうと、身体感覚の声を無視する癖がついてしまいます。
しかし、そうした小さな無視の積み重ねが、やがて大きなストレスや行動の停止につながっていくことも少なくありません。
コーチングセッションでは、しばしば「どんなときにワクワクした?」「最近、やりたいと思ったことは?」といった質問が投げかけられます。
これらの質問は、「意識して自分の感情・感覚にフォーカスする」ために非常に有効です。
頭で「自分はこう思っているはずだ」と決め込むのではなく、実際の体験と感情をセットで振り返ることが大切なのです。
四 身体感覚が自己肯定感につながる
「頭の理解」だけではなく、「身体感覚を通じた納得」がなぜ大事なのでしょうか。
その大きな理由の一つが、身体感覚が自己肯定感を育む土台になるからです。
自己肯定感という言葉を聞くと、「自分の良いところを認めよう」「自信を持ちましょう」といったメッセージが思い浮かぶかもしれません。
しかし、実際にやってみると、頭で「わかった」つもりでも心の奥底で「でも自分にはムリかも」という気持ちが消えない、というケースは多々あります。
そこで、身体的な成功体験が加わるとどうなるかを考えてみましょう。
たとえば、今まで「運動は苦手」と決めつけていた人が、軽いジョギングを始めてみると、「思ったより走れるじゃん!」「走った後は気分がすっきりする」というポジティブな体験を得られることがあります。
このとき、自己肯定感の根拠は「頭での理屈」ではなく、「実際に走り終えた後の爽快感や達成感」という身体感覚に裏付けられるのです。
同様に、ビジネスや副業など新しい挑戦でも、小さな成果やポジティブなフィードバックを身体で感じることができれば、「自分にもやればできるじゃないか」という実感が湧き、自己肯定感が高まりやすくなります。
頭での評価や周囲の評価ではなく、「自分自身が体験を通じて感じる」という事実が、自己肯定感をしっかりと内面に根づかせてくれるのです。
五 ビジネスにも役立つ「身体知」の可能性
ここまで見てきたように、「記号設置問題」という視点は、一見すると抽象的な概念に思えるかもしれませんが、実はビジネスや日常生活のあらゆるシーンで応用が可能です。
なぜなら、どんな仕事やコミュニケーションでも、“言葉”だけで完結することはまれだからです。
「身体知」という言葉があります。
これは、知識や技術が「頭だけで理解している状態」を超えて、「体が覚えている状態」にまで至っていることを指します。
スポーツ選手にとっては「フォームを体が覚えている」ことが、音楽家にとっては「楽譜を見なくても演奏できる」ことが、典型的な身体知の例と言えます。
仕事においても、「ロジックは完璧なのに、なぜか人を動かせないプレゼン」がある一方で、「理屈はシンプルでも、説得力があって人を動かすプレゼン」があります。
この差は、プレゼンターの「言葉と身体感覚の一致度」に現れることが少なくありません。
つまり、話している本人が自分の言葉に身体的な納得を持っているかどうかが、相手に響くかどうかを大きく左右するのです。
また、マーケティングや企画の場面でも、データ分析や論理的な思考だけでなく、実際に顧客と話をしてみる、商品を手に取って試してみるといった行動が重要視されます。
これもまさしく「身体知」を獲得するためのステップと言えます。
現場で起こっている感覚を自分の体で味わい、それを言語化することで、純粋なデータや数字では掴みきれない価値を発見できる可能性が高まるのです。
ここまで第五章では、「記号設置問題」を軸に、頭と体のギャップを埋める方法や、身体感覚がどのように自己肯定感や行動の継続につながるかを解説してきました。
頭の理解だけで終わらせず、実際に小さな体験を積み重ねることが、あなたが自分軸を確立する大きな一歩となります。
「わかったつもり」でとどまるのではなく、ぜひ「体で味わう」プロセスを意識してみてください。
その際、あなたの行動には必ず「感情」が伴うはずです。嬉しい、楽しい、あるいは悔しい、辛い……どんな感情でも、「自分が何を感じているのか」を認識できたとき、初めて言葉があなた自身の身体と結びつく瞬間が訪れます。
そして、身体感覚が持つ可能性は、決して“自己満足”だけに留まりません。
ビジネスや人間関係においても、「相手に伝わる」という効果を強く発揮します。
あなたが「これは正しい」と頭で確信しているだけではなく、身体全体で「自分がそれを信じている」と感じていれば、言葉に力が宿りやすくなるのです。
これは、セールス、プレゼンテーション、チームマネジメントなど、あらゆる場面に応用できます。
最後に、「記号設置問題」とは何かをもう一度まとめましょう。
それは、「言葉と身体感覚がどう紐づいているか、どうすれば言葉が身をもって理解されるか」という問いです。
答えは一朝一夕には得られませんが、小さな体験の積み重ねが、少しずつこの問題をクリアにしていきます。
本章を読むことで、あなたが「ああ、だから私は行動できなかったのか」とか、「このやり方なら身体が納得してくれそうだ」と感じるきっかけを見つけていただければ幸いです。
この第五章で紹介した考え方やエピソードを参考に、ぜひ自分の身体感覚に素直に耳を傾け、実際に動いてみるというステップを取ってみてください。
そうすることで、次に訪れる第六章や終わりにの内容が、ますます自分事として理解できるはずです。
あなたの身体が「よし、これならいける」と感じる瞬間を増やしていくことが、自分軸をさらに強化するための大きな鍵となるでしょう。
第六章:一人でも仲間とでも――“自分軸”でコミュニティと関わる
改めて、これまでの章で取り組んできたように、「自分軸」を築くことは非常に重要です。自分という存在がどこに価値を感じ、何を大切にしたいのかを明確にしておくほどに、情報や環境の変化に流されにくくなります。
しかし、実際の生活では「完全に自分一人だけで生きていく」ということはほぼ不可能です。人は必ず、家族や友人、同僚、あるいはSNSなどのオンラインコミュニティを通じて誰かと関わりながら生きています。だからこそ、「自分軸」を保ちながら、人とのつながりを上手に活用し、お互いを高め合うことが大切になります。
この第六章では、「コミュニティと自分軸の関係」を中心に深く掘り下げていきます。自立した存在でありながら、ときに他者に支えられ、また自分も支える側に回る――そんな「協力しあう」姿勢を身につけるためのヒントを探っていきましょう。
“コミュニティ”が注目される理由
「コミュニティが大切だ」という言葉を、近年ますます耳にするようになりました。企業でもコミュニティ型の学習プログラムを導入したり、地域活性化の取り組みにコミュニティづくりを絡めたりなど、さまざまな分野で「横のつながり」が再評価されているのです。
なぜ、ここまで“コミュニティ”が注目されるのでしょうか。その背景には、大きく二つの要因があります。
一つ目は、情報化時代の孤立感です。インターネットのおかげで私たちはいつでも情報にアクセスできるようになりましたが、同時に「自分と似た考えの人ばかりを探してしまう」という傾向が強まっています。さらに、在宅ワークの普及やSNSの急増によって、「人と直接会わない生活」が当たり前になりつつある場面も増えました。
その結果、逆説的に「自分はひとりぼっちなのではないか」と感じる人が増え、リアルでもオンラインでも、コミュニティを求める声が高まっているわけです。
二つ目は、経済的・社会的環境の変化です。終身雇用が当たり前だった時代は、会社や所属組織が一種の「コミュニティ」として機能していました。しかし、転職や副業、フリーランスといった働き方が広がり、「一カ所に所属する安心感」が得にくくなりました。すると、仕事以外の場や、興味・関心の合う人たちとの学び合いの場など、新しいコミュニティを自分で探したり作ったりする必要が生じてきたのです。
こうした背景の中で、「コミュニティに所属すればすべてがうまくいく」かというと、決してそうではありません。むしろコミュニティとの関わり方を誤ると、「自分軸を失ってしまう」リスクさえあります。だからこそ、本章では「コミュニティを上手に活用し、自分軸を保ちながら仲間と高め合う」ためのポイントをお伝えしていきます。
協力しあう関係か、依存しあう関係か
コミュニティが持つ力は強大ですが、その力がプラスに働く場合とマイナスに働く場合があります。
プラスに働く場合とは、「協力しあう関係」が築かれているときです。互いの目標や価値観を尊重しながら、得意なことを活かしてサポートし合う、まさに“相乗効果”の生まれる関わり方です。例えば、ある人は資料作成が上手なのでチーム全体の資料を整え、別の人は営業トークが得意なので新規クライアント獲得に貢献する、といった具合に、お互いの強みを出し合うことで全体が底上げされます。
一方、マイナスに働く場合とは、「依存しあう関係」が強まっているときです。こちらはお互いの弱い部分や欲求不満をかき集め、慰め合うことで集団としてまとまっている状態に近いと言えるでしょう。内輪の結束は固くても、「自分軸」を見失いやすく、ときに排他的な空気を生み出してしまいます。
例えば、「上司や仕事への不満ばかりを言い合うグループ」では、ストレスを共有することで一体感が生まれる半面、そこに長く居続けると建設的な行動や前向きな変化が起こりにくくなりがちです。結果として、「なんとなく一緒に愚痴を言っているだけ」という関係に陥り、自分自身の成長や行動を阻害する要因ともなり得ます。
つまり、コミュニティの魅力を最大化するためには、「依存関係」に陥らないことが大切なのです。ここでカギになるのが、各メンバーが「自分で考える力」を保ち、「相手を尊重しているかどうか」を絶えず問い続ける姿勢です。
「みんなの言うことにただ従う」のではなく、「自分の意見を持ちながら周囲とすり合わせる」ことができれば、コミュニティはお互いを成長させる“プラスの空間”となります。
一対一が与えてくれる安心感と深い学び
コミュニティと聞くと、大人数のグループを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、実は「一対一(マンツーマン)の関係」こそ、濃密な学びや気づきをもたらす大きな鍵となります。
たとえば、コーチングやカウンセリングの場がイメージしやすいかもしれません。そこでは「一対一で対話する」ことによって、自分でも気づかなかった感情や思考パターンが浮き彫りになり、深いレベルでの自己理解が進みます。これは同じ話を大人数に向けてするのとは違い、「相手が自分だけを見てくれている」「自分も相手に集中できる」という強い安心感があるからこそ成立するものです。
もちろん、マンツーマンの関係はコーチングやカウンセリングに限られません。仕事でも趣味でも、「仲の良い同僚と雑談する時間」「気の置けない友人との深い対話」など、一対一で話をする場には特別なパワーがあります。
その際、「相手のために時間と意識をしっかり注ぐ」という姿勢が大事です。スマホを見ながら適当に相づちを打つのではなく、「今この瞬間、相手の話に100パーセント集中する」ことで、互いの理解が深まり、共感や学びが生まれます。
もう一つのポイントは、「役割を固定しすぎない」ことです。たとえば、片方が常に「教える側」で、もう片方が「教わる側」になってしまうと、長期的には関係が硬直化しがちです。むしろ、「お互いが教え合う・学び合う」姿勢を保つことで、良好な一対一の関係が長続きし、さらに成長のスピードも上がります。
一対一の関係を充実させることは、結果的に「大きなコミュニティ」での関わり方をも向上させるというメリットもあります。自分自身が「深く聞いてもらう体験」「相手を深く理解する体験」を味わうと、それを大人数の場でも応用できるからです。大きな集まりの中でも、「相手の話をじっくり聞く」「自分の意見を適切なタイミングで伝える」といったマインドが自然と身につきます。
自分の「問い」を軸に人とつながる
コミュニティを利用するうえで、もう一つ意識したいのが「自分の問い」を持って人とつながるということです。AI時代に必要な「問いを立てる力」は、実はコミュニティ形成においても大きな武器になります。
人と関わる際、なんとなく雑談をするだけでは表面的なつながりにとどまってしまいます。もちろん、軽い会話や冗談も大切ですが、そこに「自分なりの問い」を持ち込むことで、対話は一気に深みを増します。
たとえば、「いま取り組んでいるプロジェクトはどこに可能性があるのか?」という問いを相手に投げかけてみると、相手の経験や視点が返ってきます。逆に、相手から「あなたはそれをやることで何を実現したいの?」と問われれば、自分でも整理しきれていなかった思考が顕在化するでしょう。
こうした問いのキャッチボールが生まれるコミュニティは、「お互いの価値観やアイデアを活かし合う場」へと進化していきます。それは単に情報をやり取りするだけでなく、「刺激を受け、学び合い、共に成長する」関係を築くうえで欠かせないエッセンスです。
しかし注意点として、「自分軸を押し付けるだけ」にならないようにしましょう。自分が大切にしている思いを相手に伝えることは良いですが、「自分が正しい」「相手も従うべきだ」という態度では、建設的なコミュニケーションは生まれにくいのです。むしろ、「自分はこう考えるけれど、あなたはどう思う?」と問いかけ、相手の意見を尊重する姿勢を持つことが求められます。
このように、「自分の問い」を軸にしながらも相手を尊重するという姿勢を身につけると、自分軸はさらに強固になります。なぜなら、異なる意見や価値観に触れるたびに、自分自身の内面を再確認する機会が得られるからです。多様な人々とのコミュニケーションを通じて、「なるほど、こういう考え方もあるのか」と感心することもあれば、「やはり自分はここを譲れない」と再認識することもあるでしょう。
コミュニティとは、言い換えれば「自分軸を磨く場」とも言えます。
未来志向のコミュニティデザイン
最後に、コミュニティを長期的に活用していくための考え方として、「未来志向のコミュニティデザイン」を紹介します。
コミュニティは一度立ち上がったらそれで完成、というわけではありません。参加する人が変われば雰囲気も変わり、時代の変化によって目的や方向性が変わることもあります。だからこそ、「これはどんなコミュニティにしたいのか」「どんな未来を目指したいのか」を明確にし続ける姿勢が大事です。
たとえば、ビジネスの場におけるコミュニティなら、「参加メンバーがそれぞれの目標を持ち寄り、定期的にフィードバックし合う」ような仕組みを作ったり、「新しいプロジェクトを立ち上げたい人が自由にアイデアを出せる場所」を用意したりすることが考えられます。重要なのは、「ただ集まるだけではなく、何のために集まるのかを共有すること」です。
また、オンラインコミュニティであれば、「定期的にオフラインで実際に会ってみる」という取り組みも有効です。バーチャルな世界でのやり取りは手軽で便利ですが、「リアルに顔を合わせることで深まる信頼や絆」はやはり大きいものがあります。もちろん全員が集まるのは難しい場合もありますが、可能な範囲でリアルの場を取り入れることで、「この人たちと一緒に未来をつくっていきたい」という想いが強まるのです。
コミュニティを維持し、発展させるには、「自律と協調のバランス」が欠かせません。メンバー一人ひとりが自分の役割を認識し、自発的に動くことが基本となります。そこに「協力しあう関係」が重なることで、より大きなプロジェクトや新たな挑戦が可能になります。
逆に、誰かが全体をコントロールしすぎたり、他のメンバーが受け身になりすぎたりすると、コミュニティの活力は失われていきます。だからこそ、「お互いが主体的に関わる仕掛け」を随時考え、実行していくことが大切なのです。
未来志向のコミュニティは、「失敗を許容する文化」を持っています。新しいアイデアやプロジェクトに挑戦するうえで、失敗は避けて通れません。むしろ、小さく失敗して学ぶプロセスこそがコミュニティを進化させ、個人の経験値を高める糸口になるのです。
そこで、「失敗したら責める」「チャレンジしない方が無難」という空気が強いコミュニティだと、誰もが怖がって動かなくなってしまいます。そうではなく、「やってみよう」「ダメだったら検証してまた次」という流れを自然に回せる雰囲気をつくることで、メンバー間の信頼関係はより強固になり、新しいチャレンジも次々と生まれていくでしょう。
こうして見てみると、コミュニティとは、「自分軸を強化しながら互いに学び合い、新たな価値を創造する場」と表現できます。
しかし、コミュニティに全てを委ねるのではなく、「自分の価値観・目標」をはっきりさせ、それを共有しながら協働する」というスタンスを持ってこそ、そのメリットを最大限に活かせるのです。
もし「誰も周りにコミュニティがない」と感じるなら、「自分でつくる」ことだって可能です。一対一から始めて、同じ思いや目標を持つ人を徐々に増やしていくことで、少しずつ大きな輪が広がっていきます。あるいは、既に存在するコミュニティに勇気を出して参加してみるのも良い選択です。そのときは、「ただ受け身でいるのではなく、自分がどんな問いを持ち、どんな未来を描きたいのか」を考えながら動くことを意識してください。
「自分一人ではやりきれないことも、仲間とならできる」という考え方は、多くの人にとって大きな力となります。一方で、仲間とつながっているからこそ、「相手を尊重する気持ち」「自分を客観視する姿勢」を磨く必要があるでしょう。そこには、これまで学んできた「自分軸」「抽象化と具体化」「感情をコントロールするスキル」「身体感覚の納得感」など、あらゆる要素が関わってきます。
「自分軸を守りつつ、他者とつながる」というのは、一見すると矛盾しているようですが、実際にはそうではありません。むしろ、他者との関わりによって自分軸は磨かれ、さらに強固になっていくものです。コミュニティを通じて多様な価値観に触れるほど、「自分にとって大事なものは何か」を再認識できる機会が増えるからです。
ぜひ本章で紹介したポイントを踏まえながら、「一対一」「少人数」「大人数」などさまざまなコミュニティの場面で、自分の在り方を見直してみてください。どこかで自分と相容れない意見に出会ったり、衝突したりすることがあるかもしれません。しかし、そこから逃げるのではなく、「なぜ意見が食い違うのか」「どんな共通点があるのか」「自分はどう譲歩できるのか」を考え抜くことで、より豊かな学びと成長が得られるはずです。
以上が、本書第六章「一人でも仲間とでも――“自分軸”でコミュニティと関わる」の大きなテーマと、その具体的なヒントとなります。
これまでの章で培ってきた「自分軸」を、実際の人間関係やコミュニティでどのように活かしていくか。そこにこそ、本当の意味で「自分らしい生き方・働き方」が形づくられていく鍵があります。
次はいよいよ「終わりに」の章へと進みますが、ぜひこの章をきっかけに、自分と周囲のつながり方を改めて見直し、未来を切り拓くためのコミュニティづくりに挑戦してみてください。
共に学び合い、成長し合いながら、「自分軸」と「仲間との協力」の両立を追求していきましょう。あなた自身が主体的に関わるコミュニティが、きっと次のステージを切り開いてくれるはずです。
終わりに
ここまで、本書を通じて「自分軸」を持ちながら変化に対応する方法や、感情やコミュニティとの関わり方、さらにはAI時代を見据えた問いの立て方について、さまざまな角度から考えてきました。
多くの方は、慌ただしい毎日の中で、「このままの自分でいいのか」と揺れ動きながら生活しているかもしれません。ひょっとすると、自分の本音や価値観をじっくり見つめ直す時間すら、忙しさのあまり確保できていない人もいるでしょう。しかし、変化のスピードが加速する現代では、「本当は何が大切なのか」を確認するための小さな時間こそが、一歩先の未来を大きく左右する大切なカギになるのです。
「自分軸を磨き続ける」ということ
本書では、第一章から第六章までを通じて、「自分の内面を見つめ直し、軸を確立するプロセス」を段階的に紹介してきました。具体的には、
思考が停滞するメカニズムの理解
負の感情をポジティブに転換するためのスキル
スモールスタートから始めるビジネスや副業のアイデア
AI時代に必要な“問い”の立て方
身体知や体感覚を重視したアプローチ
コミュニティとの柔らかな関係の築き方
といったトピックを、コーチング的視点で紐解いてきたわけです。
これらは、あくまでも「自分軸の大切さを理解し、実際に行動を起こせる状態になる」ためのヒントにすぎません。「自分軸」とは、一度確立すればそれで終わりというものではなく、人生のあらゆる局面で試行錯誤を繰り返しながら育まれていくものです。新しい環境に身を置けば、また別の価値観に触れて軸が揺らぐこともあるでしょう。けれど、その揺らぎを感じ取ってこそ、「次に進むべき方向を考える機会が得られる」のです。
私たちは生きている限り、学びを止めることはありません。ときには、思いがけない挫折を経験するかもしれません。あるいは、自分が信じてきた価値観が大きく覆されるような出来事に直面するかもしれません。しかし、そうしたときこそ、「自分は今、何を感じ、どう進みたいのか」を問い直し、柔軟に軌道修正を図ることができれば、人生の流れを再び好転させることができるのです。
「試行錯誤を恐れずに、自分のペースで進む」
本書でたびたび強調してきたのが、「行動に移す前に完璧を求めるのではなく、小さく始めてみる」ことの大切さです。負の感情に押されて、「頑張らなきゃ」「結果を出さなきゃ」という焦りが募るときほど、視野が狭くなりがちです。そんなときこそ、あえて「スモールステップで検証」していくことが、結果的には成功への近道になるのです。
たとえば、「アサイーボウルを販売してみたい」「自分のコンテンツをネットで届けたい」と思うなら、いきなり大きな投資をするのではなく、小さな実験から入ってみるのがよいでしょう。対面で試しに友人に提供してみるとか、SNSで意見を募ってみるとか、小規模なトライを通じて「本当に自分がやりたいことか」「どんな課題があるのか」を明確化できます。そうした小さな積み重ねが、「自分軸に沿った成功」を実現するための糧となるのです。
これからの時代に必要なマインドセット
本書では、従来のやり方や価値観に縛られず、「AI時代の変化をチャンスに変える」ための心構えを随所で取り上げました。今後、技術の進歩はますます加速し、私たちの生活や働き方を根底から変えるイノベーションが次々と登場するでしょう。そのとき、ただ情報を受け身で取り入れるのではなく、「自分にとって何が必要か」を主体的に選べる人ほど、柔軟に対応していけます。
しかしそのためには、「自分だけが得をすればいい」という視点からは生まれにくいものがあります。むしろ、コミュニティの中で互いに学び合い、シェアし合うことで、より大きな成果を生むという流れが強まっていくはずです。「あなただけの価値観」があればこそ、他者に対してもオリジナルの価値を提供できますし、「他の人が大切にしていること」を尊重することもできるのです。
つまり、AIや技術に頼りながらも、人間同士が支え合い、高め合う関係――これが、今後ますます重要視される「新しい常識」になると言えます。その土台にあるのは、やはり「自分軸」です。自分が何を求め、何に喜びを感じ、どんな貢献をしたいのか――それらをしっかりつかんだうえで、時代の波を受け止めるからこそ、活路が見いだせるのです。
自分のペースで進むためのヒント
本書の中で紹介してきたセルフワークや質問例、そしてコーチング的なアプローチを実践する上で、ぜひ心掛けていただきたいのが「自分のペースを見失わない」という点です。どれほど素晴らしいメソッドでも、他人と比較して「あの人はもっと早く結果を出しているのに」「私はまだまだダメだ」というふうに捉えてしまうと、モチベーションが下がったり、途中で投げ出してしまったりする原因になるからです。
この世には人の数だけ価値観がありますし、人生のステージも一人ひとり違います。だからこそ「誰かの成功パターンが自分にも当てはまるとは限らない」ことを、しっかり理解する必要があるのです。もし「自分のペースがわからない」と感じるなら、本書で提案した一呼吸おくテクニックを使い、感情や思考を整理しながら、「自分が本当に望んでいること」を見つめ直してみてください。
たとえば、第二章で出てきた“六秒ルール”や、第三章で紹介した「抽象化と具体化」を往復するプロセスなどは、忙しい中でもサッと取り入れられる手法です。ふと思い立ったら、手帳やメモ帳、スマホのメモ機能などに「自分が今、なぜこの行動をしたいのか」「どんな感情が湧いているのか」を書き出してみる。そして落ち着いたタイミングで見返し、「自分にとってこれは本当に必要なのか」「これは誰かに評価されるためだけの行動ではないか」と問いかける――こうした小さなワークを積み重ねるだけでも、驚くほど自分の軸が定まっていきます。
次のステージへ向かうためのヒント
これまで、本書の内容を読んでいただきながら、あなたの中にも「やってみたい」「ちょっとチャレンジしてみよう」という想いが芽生えたかもしれません。あるいは、まだ「本当にできるのかな」という不安が勝っている状態かもしれません。どちらであっても、そこに「変わりたいという気持ち」があるのなら、それだけで大きな一歩です。
「変わる準備」というのは、自分でも意識しないうちに整っていくものです。最初は本書に書いてあることのうち、「これはすぐには無理かも」と思うものがたくさんあるでしょう。でも、その中の一つでも実践してみることで、小さな成功体験を得たり、新しい視点を手に入れたりすると、連鎖的に「次はもう少し踏み込んだことをやってみよう」という意欲が湧いてくるはずです。
もし、どうしても一人で進むのが難しいと感じたら、コーチングを受けてみるのも有効です。「自分軸を確立したい」「AI時代に適応したスキルを身につけたい」など、具体的なテーマを持ってコーチと対話することで、自分では気づかなかった強みや可能性を発見できるでしょう。また、同じ目標を持つ仲間と学び合うコミュニティに参加するのも、相互に刺激を与え合ういいきっかけになります。ただし、コミュニティへの依存が過度にならないようにするには、「常に自分が何を感じ、何を選んでいるか」を意識する必要があることは、これまで何度も述べた通りです。
感謝とともに
改めて、ここまで本書を読み進めてくださった方々に深い感謝を申し上げます。「自分軸を創るコーチング──AI時代にブレない私になる方法」という大きなテーマを掲げ、本書はコーチングセッションで得られた知見や実際の事例を一般化し、誰もが活かせる形でまとめることを目指してきました。
私たちが望むのは、「読者それぞれが自分なりのペースで、自分軸を形にしていく」ことです。ただ読み進めるだけでなく、少しでも実際の生活に落とし込み、行動していただけたら、それこそが本書の最大の喜びとなります。もちろん、ときには「失敗した」と感じる場面もあるかもしれませんが、失敗とは「学びにつながるサイン」でもあります。そして何より、あなた自身が自分の中にある「大切なもの」を知る手がかりになるのです。
最後になりましたが、本書で強調してきた「自分軸」は、AIがどれだけ進化しても奪われることのない、あなたの人生のエンジンとなるでしょう。最先端のテクノロジーに振り回されず、「自分にとって意味のある問いを立てる」ことができる人だけが、これからの予測不能な時代を楽しみながら活躍できるはずです。たった一度きりの人生を、どう充実させるか――その道を切り開くのは、他でもないあなた自身なのです。
こうして「終わりに」の章を迎えましたが、実はここからが本当のスタートとも言えます。もしあなたが、今の自分を少しでも変えたいと思ったのであれば、「まず一歩だけでも踏み出す」ことをおすすめします。小さな行動が積み重なっていく中で、きっと「自分らしさ」や「自分の本音」が、より鮮明に浮かび上がってくるでしょう。
本書の各章で触れたエピソードやワークを、日常の中で何度でも思い返し、そして実践し続けてみてください。ときにはうまくいかず、落ち込むこともあるかもしれません。しかし、そこで諦めるのではなく、「この失敗は何を教えてくれるのか」「自分の軸とのズレはどこにあったのか」を振り返ることで、あなた自身の可能性はさらに広がっていくはずです。
人生という大海原には、さまざまな波が押し寄せます。大きな波を前にしたときは、恐れや不安が膨らむでしょう。けれど、「自分軸」がしっかり定まっていれば、たとえ大波が来ても、「自分はどこへ向かっているのか」を見失わずに済むのです。その指針さえ手放さなければ、新しい景色に向かって進み続けることができるでしょう。
そして、もし周囲に同じような悩みを抱えている人がいたら、ぜひ本書で学んだことをシェアしてみてください。「自分軸を考える時間」をつくるためのちょっとしたコツや、「AI時代の問い」の設定など、あなたが得た気づきを分かち合うだけでも、大切な人の人生を豊かにする一助になるかもしれません。
最終的に、この世に同じ人生を歩む人は一人として存在しません。他の誰でもない、あなたの人生を充実させるために、本書がお役に立つことを切に願っています。「自分軸」の旅は、一度きりでは完結しません。五年後、十年後には、新たな技術や価値観が登場し、いま想像もできないような働き方やライフスタイルが生まれているでしょう。そのとき、自分の中の変化や成長に気づいたら、また改めて「自分は何を求めているのか」を問い直してみてください。
この繰り返しが「自己探求」であり、「学び続ける人生」をつくる秘訣です。いつまでも若々しい気持ちで挑戦を続けられるのは、「自分で考え、自分で行動する」姿勢を諦めない人だけが得られる特権かもしれません。時代の変化を嘆くよりも、「いまここにあるリソースを最大限に活用する」という積極的な姿勢を貫くほうが、はるかに建設的で楽しいはずです。
改めて、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。本書があなたの人生の糧となり、より充実した未来を切り開く指針になれば幸いです。どうか、これから先も「自分軸を創るコーチング」のエッセンスを活かして、AI時代を自由闊達に、そしてあなたらしく乗りこなしていってください。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
あなたの今後のご活躍と幸福を、心からお祈りしています。
チエロ
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チエロ
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