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尊敬しているチェロ弾きさん

自分は感化されやすいタイプで、特にお気に入りのチェリスト(鈴木秀美、ビルスマ、イッサーリス、原田禎夫、、若い人だとガイヤールとか)の歌い回しを気にいるとすぐコピって取り入れたりして(自身の独創性は皆無💦)、、他のプロ奏者でもいいなと思うと無条件に受け入れて平伏してしまう単純で無個性なヤツだったりします。
(イ・ムジチのCDではこう弾いてたよ、、自分らも同じように弾くべきじゃない?とか言ってくる人いますよね、、自分もそういう所あるな😅)

一方でアマチュア奏者に納得することって中々なくて(そもそも技術的に不具合が多いわけだけど)、オケや室内楽で一緒に弾いていて、つい「●●さんとは好みが合わない。。」とか仲間に対して不満を持ってしまうことは、正直あります。よくないですよね😞、、わかってはいるんです。

特に室内楽など、少人数になるほどメンバーとの相性ってすごく大事だと思っていて。どんなに仲良しの友達でも演奏の方向性やフレージングの好みが全く合わなくて戸惑った、、って経験はありませんか?さらに楽器の音色まで含めると「この人と一緒に弾きたい!」って思える人との出会いはとても貴重だと思います。

前置きが長くなりましたが、昔出会ったチェロ弾きさんのお話です。

20代後半に6年ほどお世話になったなった社会人オケで、当時トップを務めていたTさん(私より2回りくらい年長でしたので今は70台半ばかな、、)は、包容力あるジェントルマンで、チェロの演奏スタイルや音色も穏やかで柔らかく、色々なことを学ばせていただいた恩人です。

当時の自分は若かったですし、ただチェロを弾くだけで楽しくて、、いま思うと勢いだけで弾いていたというか、テクニカルに音符を正確に追う競技のような心持ちで演奏していた気がします。
以前にビブラートの話題でもTさんに触発されたって書きましたが、節回しや右手のタッチの多様性も含めて、チェロの表現全般においてTさんから大いに影響を受けたと思います。
(なにぶん感化されやすいので😅)

正直テクニックでいえば、自分のほうが音量は大きいし、ミスタッチは少ないし、強弱に対応する瞬発力もある、、、でも聴いていて「なんかいいな」と思うのはTさんの演奏で、、何が違うのかな、自分に何が足りないのかなって自問する機会を与えてくれた方だったなと思います(本人から直接何かを教わったというより、自分が勝手にお手本にしてたって感じですけどね)。

Tさんの演奏スタイルは非常に丁寧で(力任せの演奏は絶対にしない、常にタッチは柔らかく穏やか)、パワフルな演奏が好きな方からすると物足りないかもしれませんが、音色も味付けも、私はとても好きでした。アマチュア奏者に対してここまで肯定的な気持ちを持てた方はTさんだけかもしれません。
ある時、Tさんのチェロ🎻が20万円、、って聞いた時は仰天しましたね(高いチェロ買おうとしたけど結局、車買っちゃったんだって😆)。
自分のチェロは10倍以上💴なんだけど、、ほんと値段に大した意味は無いなって思います。

こんな感じで尊敬できる人と一緒に演奏できるだけで楽しいわけですが、中でも2003年にドヴォルザークの弦楽セレナーデを弾いた時の感動は忘れられないです。
弦セレ1楽章前半、チェロ2本のソリでメロディを歌い上げる箇所があるのですが(下図/この楽譜ではト音記号は1オクターブ下げて弾きます)、

ドヴォルザーク弦セレ
1楽章チェロの美しいソリ

このソリをTさんとふたりで一緒に弾きはじめた瞬間、、脳内が満開の桜で埋め尽くされました。自分自身、弾きながら「うわぁー🌸🌸🌸」って感動しましたし、合奏の雰囲気が一変し、周囲の皆が眼を見張って👀自分達の音色に聴きいってくれている手応えもハッキリわかりました。
チェロを40年弾いてきて様々な感動があったと思うけど、この時以上の感激✨は無かったかもしれない、そう思えるほど身体の芯から喜びが溢れた瞬間でした。

どうしてこんな演奏ができたのか、、理屈はわからないですけど、でもあの時、私は全面的にTさんを肯定し寄り添う気持ちで弾いていたはずで、結果、弾き方や歌い方がシンクロしてお花が咲いたのかなと、、勝手に想像してます😊

一緒に弾く人との相性ってすごく大事、でも合わない部分があったとしても互いのことを考えながらベクトルを合わせていく作業が一番大事なのかなと思います。
原田禎夫のインタビュー記事にも「ソリストが4人集まっただけのクァルテットは一番ダメ、4人が1つの楽器のように響くことが大事」って書いてたな。。

まあできるだけストレス無く一緒に弾ける仲間で組めるのが理想なんですけど😅

いつか、もう一度満開の桜を咲かせたいです。

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