ドラマ 「ストーブリーグ」
日本プロ野球選手会が、今年(2023年)開幕時の12球団714人の支配下登録選手を対象とした年俸調査結果を発表した。平均年俸は、巨人がトップで、以下ソフトバンク、楽天と続く。ファイターズは今年も最下位。
ファイターズファンの愚痴になってしまうが、エスコンフィールドとその周辺のレジャー施設の大型開発に600億を投じて、選手にお金を使わない結果が、平均年俸だけでなく年俸総額も最下位で、チームの勝率も12球団最下位なんですけど!
とはいえ球団経営についてその内情なんて、ファンが知る由もないのだが、万年最下位のダメ球団を舞台にして、球団立て直しを図るドラマがあると知って、さっそく見て見た。ファイターズファンにとっては他人事とは思えない設定だから(笑)
「ストーブリーグ」はプロ野球の万年最下位チーム「ドリームズ」の球団立て直しをはかる新任GM(ゼネラルマネージャー)を中心に描いたドラマ。韓国では大ヒットドラマ「愛の不時着」と同時期に放送されたそうだが、最高視聴率は19.1%を記録して、2020年の百想芸術大賞・作品賞を受賞した作品(韓国ではこの賞の受賞は名作の証ともなるような賞らしい)。
文字通りシーズン終了から翌シーズン開幕までのいわゆるシーズンオフ期間(ストーブリーグと呼ばれる期間)の球団職員たちのドラマである。
実際のプロ野球球団の本拠地でロケされて、シーズンオフの球団経営のあれこれが丹念に描かれていて、お仕事ドラマとしても、野球ものとしても、とても楽しめる作品だった。
ラブの要素はないので、韓ドラで胸キュン癒しを求める人には向かない代わりに、ビジネス要素と野球愛はてんこ盛りなので、性別を関係なく楽しめる。
主人公は、シーズン終了時にチーム立て直しのために採用された新任GM。野球経験はないが、相撲やアイスホッケーなどのスポーツでGMとしてチーム立て直しの実績は十分にある。
このGM、無口・無表情、冷静で論理的な口調で、各部署の球団職員とあつれきを生じさせながら、チームが抱える課題を次々に解決していく様子が痛快なのだ。
球団職員たちはいろいろな課題を解消できないダメ職員だったというわけでもなく、野球愛や仕事愛はきちんと持っている人たちなのだというのが、観ているうちにわかってくる。
(もちろんダメ職員=スカウト部長のように、球団のレジェンドといわれる選手だった過去と面倒見のいい先輩という顔を持ちながら、不正にどっぷりつかって球団に不利なドラフト戦略を続けていたなんて人物も出てくる)
球団の親会社のビジネス戦略との対立や、予算配分に、選手の補強と球団経営のありとあらゆるテーマと課題が次々に起きては、GMが解決していく。
例えば外国人選手の獲得のため、エージェントが送られてきたデータをもとに目をつけた選手と契約するために渡米するが、目指す選手は他球団に獲られてしまう(人件費予算で負ける)。
だけどチームには戦力の補強が必要。で、見つけたのが逆輸入選手(自国の選手だが海外でプレーしている選手を連れてくる)なのが、「それってファイターズもよくやる!」と思った。
要するに予算が足らない弱小球団の考えうる補強策は、実績・実力がある高額外国人選手の獲得ではなく、逆輸入選手なんだなぁと、思いがけないファイターズとの共通点を見出した。
ただし、ドリームズの逆輸入選手は、韓国ならではの問題を抱えていて、それをどう克服してチームやファンが受け入れるかも丹念に描いている。
チーム内にも問題は山積みで、監督は軽んじられ(コーチ同士がいがみ合って派閥を作っていて、監督はそれを解消できない)、主力打者は傲岸不遜で性格に難ありで、チームメイトや後輩へのパワハラもある。
不摂生をあらためようとせずケガの多いキャッチャーや、伸び悩むドラ1の若手投手、貧弱な練習設備、春季キャンプ地までケチられてとんでもない(キャンプ地としてふさわしくない)場所でのキャンプになったりする。
それでも、やりくりを重ねて、球団職員も選手たちも監督やコーチ陣も、まとまりができてくる。
その過程は野球ファンとして見ていて感動的ですらある。どこの球団もこうあってほしいという願望を満たしてくれる展開が、あちこちにちりばめられている。
限られた予算をやりくりして、選手たちの年俸交渉の駆け引き、補強策(トレードや現役ドラフト)、チーム戦略のためのデータ分析など、次から次へと問題が可視化されてきて、それらに対する球団職員たちの奮闘が描かれているので、観ていて止まらなくなってしまうドラマだった。
あれこれあって、シーズン開幕前(最終回)のドリームズの戦力は、選手層の薄さはファイターズ並みだが、投打の軸が揃って(までの過程にいろいろあった)戦力はファイターズより上に仕上がってるぞと思った(笑)
野球もののドラマで、しかも主役がGMで、これだけ面白いドラマに仕上げるところに、韓国エンタメの底力を感じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?